「ラウラさんとシャルロットさんとの戦いで葵さんはついに重火器を使用しましたわね。鈴さん、間違いなく私達との試合でも使われるでしょう」
「今まで何故か頑なに使わなかったのは何だったのよ一体! いや確かに使わない方が異常だったんだけどさ。でもセシリア、これで葵がこの大会ガチの本気だってよくわかったでしょ」
「……ええ、あの時はふざけてますの?と怒りましたが、ラウラさんとシャルロットさんとの戦いを見て、その認識はもうやめましたわ」
「葵もそれ聞いたらほっとするでしょうね。じゃあセシリア、次の試合だけど葵が銃を解禁してるけど作戦に変更無しで行くわよ!」
「専用機専門タッグトーナメントですが今までで3試合終わり、これで4戦目! 今までの試合が悉く大方の予想を裏切ってきました! 一人で出場し見事勝利した青崎選手に、安定した強さを誇る先輩コンビを倒したセシリア&鈴ペア。この準決勝ではどちらが勝つのか、大変楽しみな試合となっております」
もうすぐ葵と鈴、セシリアの3人の試合が始まる。アリーナ内ではすでに鈴とセシリアが待機しているが、葵の姿はまだない。
「まだアリーナに青崎選手は姿を現していませんが、織斑先生はこの試合どう予想しますか?」
「青崎が圧倒的不利だな。今のままでは下手したらボロ負けの可能性もある」
「……え?」
千冬姉の予想に黛さんが驚いている。いや、黛さんだけでなく会場にいる多くの観客も千冬姉の予想に驚いているな。
「私もちーちゃんと一緒かな。あーちゃんがあのままだったら負けちゃうかも」
さらにあれだけ葵を贔屓していた束さんまでも葵が負けると言われ、会場中が騒然となった。
千冬姉と束さんは葵が負けると予想しているようだ。確かに一回戦で鈴とセシリアが見せたあの戦い。あれはその発言を納得するだけのものはあったけど……二人が言っている“今のまま”、“そのまま”って言葉が妙に気になるな。
「教官があそこまではっきり言うとは……」
「……僕たちの時と違うよね」
千冬姉と束さんの言葉の意味を考えてたら、俺の両隣にラウラとシャルが腰かけた。
「おめでとう一夏。まさか会長と箒の二人を倒すだなんて」
「会長の武器を破壊し、あれだけ一瞬にして発動された零落白夜。まさに教官の戦いを彷彿させていたぞ」
「俺だけの力じゃない。簪のおかげでもあるさ」
「そういえば嫁よ、その簪は一緒じゃないのか?」
「……ああ、今はちょっと休んでるよ」
さっきの試合で無理をした簪は、試合ギリギリまで休むと言って医務室で寝ている。楯無さんが言うには限界以上に脳を酷使したから、今はとにかく頭を休めて回復を待つのが一番と言ってたけど……。
「そうだシャルにラウラ。二人はこの試合をどう読む?」
「この試合か。先ほど葵と戦った私としては葵が勝つと断言したいのだが……難しいな。ここに転入したばかり頃聞かれたら迷わず葵と答えるのだが」
ラウラが転入した頃……そういえばラウラ、鈴とセシリアの二人を相手にして圧倒してたな。
「あのダリル先輩とフォルテ先輩のコンビを倒した鈴とセシリアの二人は、かつてと比べ物にならない位強くなってたもんね」
セシリアとシャルもどっちが勝つか判断が難しいようだ。
「ただ葵には勝ってほしい」
「僕もね。心情的には葵が勝つのを願うよ」
「そっか。二人共葵と戦ったからな。自分が勝った相手を応援したいわけだ」
「いや、2対1で負けたからな……」
「……こうなったら相手が一人でも優勝するイレギュラー相手にしましたとかでないと、僕達祖国から怒られるし」
……ああ、そういう理由もあんのか。
「一夏はどうなの? 葵と鈴、セシリア。どっちが勝つと思う?」
「俺は」
シャルとラウラにどっちが勝つかを言おうとしたら、
「! 青崎選手ですが今アリーナに現れましたが、おお!?」
黛さんのアナウンスを聞いて、俺達はアリーナに視線を向けた。そしてアリーナにいる葵の姿を見て、
「え?」
「どういうことだ?」
黛さんにシャルにラウラ、そして観客の多くが葵の姿を見て驚いている。いや俺もだけど、あれはどういうわけだ?
アリーナに現れた葵は、すでに完全戦闘状態と言っても過言ではなかった。右手に天叢雲剣、左手には八尺瓊勾玉を装備しさらに対IS用重機関銃を握りしめている。さらに両腰には大型短銃、背中にはグレネードランチャーを背負い、試合というより戦争装備としか見えない。ラウラとシャルの試合で銃火器を解禁した葵だが、どうしたんだこれ?
「……ねえ、これあからさまに怪しくない?」
「天叢雲剣に八尺瓊勾玉に機関銃まではまだわかる。ただ腰の銃と背中のグレネードランチャー。あれはわざわざ持ち運ぶ理由が無いだろう。葵なら試合中でも一瞬にして展開可能だろうに」
「……ここまであからさまに何かやりますと宣言してるのは馬鹿じゃないか?」
案の定、会場にいる多くが最初から武装を展開している葵に憶測が飛び交っている。拡張機能が壊れただの、今出してる武装の容量が入れない程新しい武装を積んでるだの。
「とりあえず、葵も鈴とセシリアに勝つ為の策を用意してきたようだな」
露骨に怪しい葵を、鈴とセシリアは怪し気に見つめている。葵の姿を見て二人はどう判断するんだろうか?
そして葵がアリーナに入り、準備が整ったので
「ではこれより専用機専門タッグトーナメント準決勝、青崎葵 VS セシリア・オルコット&凰 鈴音の試合を始めます!」
黛さんの合図によって、試合が開始された。
試合と同時に一直線に鈴が向かってきたので、まずは左手の機関銃を浴びせながら後退。逃げる私に鈴はさらにスピードを上げ近づいて来たので、天叢雲剣のレーザー斬撃も追加して鈴からまず離れる。そしてハイパーセンサーで周囲を確認。セシリアの位置とビットがどこにいるかを調べる。セシリアは開始位置から移動していないが、ビットは私を取り囲むように移動している。
鈴は私と接近戦を希望しているようだ。先ほどから私が撃つ機関銃に天叢雲剣のレーザー斬撃を多少被弾しながらも私に迫ってくる。予想では後もう少しで
「!!」
撃ち出している機関銃の弾丸が鈴からそれたと同時に、私は横に急移動した。それと同時さっきまでいた場所を衝撃砲が通過した。ああもう、相変わらず射角に砲身が見えないあの兵器は厄介ね!
ハイパーセンサーで周りを見ると、このまま行けば周りをビットに囲まれそうだ。
先にビットから叩き落そうかと思ってたけど、それを実行する前に鈴に追いつかれそうだし……先に鈴から叩こう。
私は鈴に向けて撃っていた機関銃をセシリアに向けて掃射。慌ててセシリアは避けているが、セシリアが動いている間はビットは動かせない。私を取り囲む前にビットの動きを止めておこう。
機関銃が鈴からセシリアに向けられた為、鈴は一気に私に近づいて来た。衝撃砲を何回かこちらに放ち、それを私は勘で避けていたら鈴が瞬時加速を使い一気にこちらと距離を詰めた。
私は天叢雲剣の刀身にレーザーを纏わせて、近づいて来た鈴に一閃。私の斬撃を鈴は双天牙月で受け止めた。
ここで鈴と近接戦をダラダラとしていたら、セシリアのビットの集中攻撃を受けてしまう。すぐに鈴を殴るか蹴るか斬るかしてどこか吹き飛ばさないといけない。
私は天叢雲剣を振るい鈴に連撃を放つが、
「ああああああ!!」
私の連撃を鈴は雄たけびをあげながら双天牙月で全てかろうじて防いでいる。ならばと動きが止まった鈴に、私は至近距離から直蹴りを放つが、
「はああ!」
私の直蹴りを鈴は膝を上げて防御した。しかし衝撃は吸収しきれず、鈴は数メートル後退した。鈴を追撃したいが、さっきの天叢雲剣の連撃を防がれた時点で動きを止め過ぎた。ハイパーセンサーで確認するとビットはまだこちらに射角を向けていない。
しかしその状態からビットからレーザーが発射され、レーザーは軌道を曲げて私に迫ってきた。
セシリアのレーザーを勘で避けたと思ったら、私から前方から衝撃を受けて後ろに吹き飛ばされた。鈴が再度私に衝撃砲を放ちながら近接戦しようと近づいてきている。
吹き飛ばされてる間もどこからか飛んでくるビットのレーザーに私は翻弄された。射角なんてもはや何の意味も無い。セシリアのビットはどの方向向いていようが私に襲い掛かってくる。迫りくる鈴に意識を向けたら、ビットからレーザーが容赦なく襲い掛かい、ビットとセシリアに意識を集中したら鈴の衝撃砲の餌食となる。
……う~ん、予想していたとはいえやりづらい!
何か予想以上にセシリアのビットの射程範囲広いし、気が付いたらセシリアも私に向かってスターライトmkⅢを撃ってきている。これのレーザーも曲がるから手に負えない。単純に避けたら逃げた先を予測して私を狙い撃ってるし。
レーザーに衝撃砲を私でもよくわからない出鱈目な動きをして無我夢中で躱してたけど、鈴が私に追いつき双天牙月を打ち付けてくるから、私はそれを天叢雲剣で受け止めるが、
「!!」
セシリアのレーザーが軌道を曲げて私の背中を連続掃射。衝撃に仰け反る私に鈴が衝撃砲を放つ気配を感じ、急いで離れようとしたけど、
「逃がさないわよ!」
鈴がそう言って放つ衝撃砲に、私は避けきれず吹き飛ばされた。
吹き飛ばされながら私は残りエネルギーを確認したら、気が付いたら私のシールドエネルギーは既に半分を切っていた。
「青崎選手、セシリア&鈴ペアの猛攻に翻弄されております!青崎選手、このまま負けてしまうのか!?」」
黛さんの実況通り、この試合葵は完全に追い詰めらえている。というかもう勝負になってない。ラウラとシャルの時も葵は追い詰められてはいたが、ここまでタコ殴りにはされていない。
「……うわあ、完全にハメられてるね。鈴の衝撃砲ってただでさえ避けるの難しいのに、セシリアのあの縦横無尽に放たれる偏向射撃。こんなの防ぐなんて無茶だよ」
「しかも葵の近接戦を辛うじて防ぐ鈴の格闘技術。一回戦でも見たがあの二人レベルが本当に上がっている」
「超攻撃的な二人の猛攻に葵は完全に押されてるな。つーか葵が最初に用意していた武装だが、すでに背中のグレネードランチャーも腰の銃も使う前に破壊されてるんだが。何の為に用意したんだあれ?」
大仰に武装していたが、装備を露にしていたせいで避けてる時当たって破壊されている。
そして最初に持っていた機関銃も先程弾切れし放り投げていた。
「……結局あいつ何がしたかったんだ?」
アリーナの葵は必死な形相で逃げ続けてるが、それを追う鈴、離れた場所で偏向射撃で攻撃するセシリアの構図がもう固定化されている。この状況を打開できるとはもはや思えない。
アリーナにいる葵は瞬時加速で後退しているが、同時に鈴も瞬時加速を使い追っている。セシリアのビットも葵を追うべく移動し、状況が変わるとは思えない。
しかし、
「ああああ!」
次の瞬間に、葵の反撃が始まった。
(勝った! この試合、完全にあたしたちが掌握している)
眼前で後方に逃げる葵を見ながら、あたしは確信した。
近接戦で無類の強さを誇る葵だけど、短時間ならあたしは防ぐことが出来る。伊達に夏休みに葵とひたすら近接戦で戦ったわけではないのよ。無論葵にそれで勝つのは無理だけど、少しの時間葵の足止めは出来る。その短時間だけで充分、その間にどんな角度でも撃てるセシリアのレーザーが葵を貫いてくれるんだから。
葵はラウラ達に戦いで銃火器を使用し、この試合でも使ったけど……いや使うのは予想してたけど、なんなのあの最初の装備?
わざわざ武装展開し身に着けてたけど、結局機関銃だけ使用し他はあたしたちの攻撃を受けて壊されたし。その機関銃も弾切れで捨てて、結局今の葵はいつもの装備した姿だし。
まあいいわ、天叢雲剣や八尺瓊勾玉のレーザー攻撃程度じゃもうあたしは止められないんだし!
攻撃手段が乏しくなった葵は、後方に瞬時加速をして逃げるようだ。もちろんあたしは逃がさない、あたしも瞬時加速をして追いかける。
大きく距離が動いたが、あたしが動きを封じている間にビットが射程距離に追いつくでしょ。
逃げる葵に、瞬時加速したあたしが追い付いた。葵は天叢雲剣のレーザー斬撃を放つが、あたしはそれを少し体を反らすだけで回避。勢いに乗ったまま双天牙月を葵に叩きつけた。葵は天叢雲剣で防ぐも、あたしは双天牙月の連結を解除し二刀流にして葵に攻撃する。無論あたしの剣術では葵に通用しないけど、それでも防ぐために動きを止める。
その間にセシリアのビットがこっちに来て、射程距離に入った。
ビットからレーザーが放たれ、それは葵の背後を攻撃し――突如として葵の背後に現れた光輝く“壁”に防がれた。
「え?」
突然葵の背後に現れた“壁”によってレーザーが防がれたことにあたしは一瞬動揺してしまった。そしてそんな隙を――葵が見逃すわけがなかった。
「ああああ!」
葵は雄たけびをあげると同時に、天叢雲剣に最大出力でレーザーを纏わせてあたしの双天牙月を打ち据えた。想像以上の衝撃であたしの手から双天牙月が吹き飛ばされた。
不味いと思い、至近距離であたしは衝撃砲を放とうとしたが
「はあ!」
それよりも前に葵の右手から放たれた正拳突きがあたしの胸を襲った。
葵の正拳突きを喰らい、あたしは後方に大きく吹き飛ばされる――と思ったが、
「ガハッ!ってええ!」
衝撃で吹き飛ばされたが、あたしは数メートル飛んだだけであたしの後に出現した光輝く“壁”に阻まれた。いやよく見ると周囲をあたしは“壁”に覆われており、逃げ場が無くなっている。
そして眼前には,左手に装着した八尺瓊勾玉を光らせ正拳突きの構えをした葵が、
「チェックメイト」
そう呟いた後、拳を振りぬいた。
な、なんですの!?
追い詰めたと思った葵さんに四基のビットによる集中砲火を行ったと思ったら、葵さんの背後に光り輝く“壁”が現れ、わたくしのレーザーを全てそれで防ぎ、即座に鈴さんに攻撃をしたと思ったらまた壁が現れてそれが消え、
「り、鈴さん……」
壁が消えましたら、鈴さんが気絶して地面に落下してます。掲示板に載っている鈴さんのシールドエネルギーですけど……0になってますわ。
茫然としてるわたくしを嘲笑うかのように、葵さんは瞬時加速を行い一直線に――わたくしのビットを急襲し一基を破壊したと思ったら、次の瞬間には瞬時加速でまた移動しもう一基を斬り壊していた。さらに瞬時加速でもう一つのビットに向かったので急いで移動させましたが、次の瞬間方向転回した葵さんが瞬時加速で残る一つのビットを破壊。
一瞬にしてあたしのビットが3基破壊されてしまいました。
わたくしは一瞬体が震えましたが、それでもまだ勝負は終わっておりません! 鈴さんとここまで追い詰めたのです! 負けるわけにはいきませんわ!
「……勝負あったな」
まだアリーナで葵とセシリアが戦っているが、もう葵の勝利は揺るがないだろう。まさにほんの一瞬で再度葵は戦況をひっくり返した。鈴を失った今、セシリアだけではもう葵には勝てない。
「な、何あの葵の周囲に現れた壁みたいなの!? 葵のスサノオにそんな機能あった!?」
「いや私も初めて見た。私達の試合で銃火器を初めてしようしたように、葵はあの壁を最後まで取っておいたようだ……」
「……もしかして、あの壁が葵が以前言っていたスサノオの第三世代特殊兵装の八咫鏡じゃないか?」
以前葵の第三世代特殊兵装は八咫鏡と聞いたことがある。どのような兵器かは聞いたことないが、あの壁はなんとなくそれっぽい。
「そういえば以前葵が言ってはいたが、まだ完成するのは当分先とか言ってなかったか?」
「でも葵って大会前に一週間ほど学園休んでたよね。理由は不明だったけど、このために休んだとしか思えないよ」
あの光り輝く壁がなんなのか気になるが、俺はそれよりもセシリアのビットを破壊した時に見せたあの動き。連続して瞬時加速を行いビットを破壊していったあれは!
「個別連続瞬時加速……あれがそうなのか」
簪のIS講座で教えてくれた、ISの超高等技術。スラスターの数だけ順次噴射させ連続で瞬時加速を行う、世界大会でも成功率が低いと言われている。
あれが出来たら、俺の戦闘の幅がもっと広がるから出来るように練習したが一回も成功できなかった。
それを本番でやりやがった!
「負けられねえ……」
葵を睨みながら、俺は拳を握りしめながらそう呟いた。
その後全てのピットを破壊されたセシリアが葵の攻撃を受けて全てのシールドエネルギーを失い、葵の勝利が決まった。
「ねえ教えなさい葵、あの壁は何!」
試合が終わりISを解除した私に、気絶から復活した鈴が私に詰め寄ってきた。
「お、落ち着いて鈴! 多分鈴も薄々気付いてるとは思うけど、あれは」
「葵さんのスサノオの第三世代兵装八咫鏡ですね?」
「あ、そう正解」
鈴に答えを言おうとしたら、その前にセシリアに答えを言われてしまった。
「そう、あれはがこのスサノオの最終奥義八咫鏡!効果は試合で見せたように超高密度の実体シールドとエネルギーシールドを併せ持つ鉄壁の防護壁を任意の空間に貼ることが出来るわ。通種ATフィールド! 核を直撃しても防ぐことが出来るわ」
「ふーん、凄いわね。専守防衛に特化した日本の機体らしいといえばらしいけど。……で、欠点は?」
「……まあ気付いてると思うけど、それだけ鉄壁を誇る防御装置だからISの領域を全て使われてるわ。ようは一夏が零落白夜しか使えないように、八咫鏡を搭載したらもう何も武装取り出せないわ」
うん、防御としては鬼のように凄いけど、これだとISの強みの武装を取り出すことが出来ないのよねえ。完全に防御特化だから、拠点防衛にはいいけど攻撃には向いてない。でも、それは使いようなわけであって。
「……とんだピーキーな兵装ね。あんたが試合前から完全武装で出てきたから何かあるとは思ってたけど」
「結局用意してた武装全部二人に壊されたけどね」
私も二人の猛攻があそこまで激しいとは思わなかった。
「葵さん」
戦いを思い出し、かなりヤバかったことを思いだしていると、セシリアから声をかけられた。……そういやさっきはいつものノリで話したけど、セシリアとはまだあの食堂の一件以来気まずい。
多少顔を強張らせてセシリアの方を向くと、セシリアも顔を強張らせて私を見ていたが、ふうっとため息をつくと
「負けましたわ、葵さん。そしてあの時はすみませんでした。あの時の葵さんは、わたくし達を舐めてなどいなかったと、戦ってよくわかりましたわ」
そう言って笑みを浮かべてセシリアは右手を差し出した。
「わたくし達に勝ったのです。次の相手は一夏さん達ですが、負けるのは許しませんわよ」
「……ええ、貴方達に勝った分、私も負けられない。絶対優勝して見せるから!」
私はセシリアの右手を握り、必ず優勝してみせると宣言した。
さて、この試合で無理して八咫鏡を使って騙し討ちみたいに鈴達を倒せたけど、もはや銃も使うのがバレ、八咫鏡も存在がバレて、しかも突貫工事で作った未完成品だからもうガタが来ている。次簪と一夏相手にもう手の内全てバレてるからどうやって戦おうか?
ラウラとシャルロットの時は銃火器の解禁という不意打ちで勝ち、鈴とセシリアには八咫鏡を使って意表をついて勝利。
決勝戦を前に、私は全ての手の内を使い果たしてしまった……。
Aリーグ二回戦
〇青崎 葵VS×セシリア・オルコット&凰 鈴音
次回決勝戦です。
原作をとことん無視して進んでますし、戦闘もこれどうなん?と思う方が沢山おられると思いますが、うちの作品はそういう仕様で最後まで突っ走ります。