それは葵が登校して2週間経った時の出来事だった。
「ねえ一夏、明後日用事ある?」
食堂で夕食をいつものメンバーで食べていたら、葵はそう俺に話しかけてきた。
「明後日?別に無いが?」
「よかった。次に鈴、明後日用事ある?」
「あたし?いや無いけど。どうしたのよ急に?」
「いや用事ないなら明後日私と出掛けない?と思って」
俺と鈴を交互に見て言う葵。いや別に構わないけど、どうして俺と鈴だけなんだ?
「何故一夏と鈴だけ誘う葵?」
誘われなかったのが気に入らないのか、不満げな顔をして言う箒。そして名前を呼ばれなかったセシリア達も箒同様面白くないって顔をしている。
「ごめん。中学の時の友達に会いに行こうと思ってるから」
中学の時の友達?ああ、もしかして
「葵、もしかして弾に会いに行こうってわけか?」
「当たり。あいつにはまだ私がどうなったかとか説明してないし。話しておこうと思って。…一応聞くけど、一夏も鈴も弾にもう私の事メールや電話で話したりした?」
「いんや。やっぱこういうのは直接本人から話すべきと思ったからな」
「あたしも。というか私そういや日本に来てから弾に会いに行ってないわね。ちょうどいい機会かも」
その言葉に俺も葵も呆れた。いやお前、日本にいた時はあんだけ一緒に遊んだだろうが。顔ぐらい見せに行けよ。まあ俺も弾に会いに行く時誘わなかったのも悪いけどさ。
「…いや鈴。あんたそれはちょっと薄情じゃないの?まあいいや。久しぶりに四人揃って遊びに行きますか」
「そうだな。しかし今の葵見たら弾吃驚するだろうな」
「最悪信じないかもしれないわね」
「…だから二人も一緒に来てほしいのよ。まあ顔はそこまで変わって無いとは思うけどやっぱり体つきは激変してるしね」
…確かにな。二年前よりも少し身長が伸び髪も伸び、体つきも完全に女になってるしな。
その後行く事が決定した俺達は昔話に花を咲かせた。そんな俺達を箒達は羨ましそうに眺めていた。
それから二日後、俺達は弾に会いに五反田家に向かっている。一応弾に行く事は伝えてるため、家で待っているだろう。ちなみに弾には俺と鈴が行く事しか伝えていない。葵から黙っているよう頼まれたからだ。理由は、
「いや吃驚させようと思って」
…らしい。まあいいけどさ。
「ところで葵、あんた何でIS学園の制服着てるの?」
鈴が葵の服装を見て呆れている。俺も鈴も私服姿だが、葵だけ何故かIS学園の制服を着ている。
「いや女の子らしい服がこれしかないから。この格好の方が現状を説明するのに向いてるかなと思って」
「制服が一番女らしい格好って…。まあ確かに女子を象徴する服装だけど、葵、あんたも女として生きてくって決めてるんでしょ。ならそれらしい私服もちゃんと用意しなさいよ。なんならあたしが選んであげるわよ?」
「まあ確かにそう決めたのは私だしね。じゃあ今度お願いしようかな」
「まかせなさい。似合うの選んであげる」
葵と鈴が楽しそうに会話してるのを見ながら、なんか不思議な感じがする。最近じゃ千冬姉に矯正されてか、部屋で俺と二人の時位しか昔の口調で話さないもんなあ。いや鈴達も千冬姉に賛同し、葵が昔の口調で喋ったら注意するようにしてるせいもあるけど。にしてもこの二人、二年前よりも仲が良くなってるな。やはり同性になったからか?
そんなやり取りをしながら、俺達はその後五反田家に到着した。
店に入ると中には厳さんと弾と蘭とお客さんが数人いた。厳さんは中華鍋を振るい何か作っている。蘭は客に料理を運んでおり、弾は厨房で皿洗いしている。俺の姿を見た蘭は眼を見開き、
「い、一夏さん!え、ど、どうしたんですか急に!」
と酷く驚きながら俺に話しかけてきた。…いやその前に料理を客に運んだほうがいいぞ。
「おお一夏、早かったな。そして鈴!久しぶり!相変わらず元気そうだな。で、ところで…お前達と一緒にいる」
厨房から弾が出て来た。そして俺と鈴の後ろにいる葵が誰か聞こうとする前に、
「会いたかったわ! 弾!」
と葵がいきなり弾に抱きついた。は?
「え、い、いや…ええ!」
急に葵に抱きつかれ、顔を真っ赤にしてうろたえる弾。…まあ弾からすればいきなり見知らぬ美少女から抱きつかれてるからな。
「え、え~と、誰、君?」
顔を真っ赤にしながら葵に尋ねる弾。その瞬間葵は泣きそうな顔をしながら、弾から一歩離れた。
「そ、そんな酷い! 昔あんなに一緒だったのに!私の事忘れたの!?」
と言って両手で顔を覆い泣く真似をする葵。多分顔をよく見られたら気付かれるかもと思って隠してるんだろなあきっと。
「え、昔一緒だった? え~っと」
「一緒にお風呂にも入った仲なのに忘れるなんて…」
その台詞を言った瞬間、空気が確かに軋んだ。…まあ確かに一緒に銭湯に行ったから嘘は言ってないが。
「え、えええ!風呂!? 一緒に!?」
さらにうろたえる弾。葵はさらに何か言おうとしたが、
「この糞ガキがー!お前、一体この子に何をしたー!」
「グハアッ!」
厳さんに思いっきり弾は殴られた。蘭も追い打ちで「この女の敵!」と叫びながら弾を蹴っている。
「…いや葵、さすがにもうバラしなさいよ」
鈴が葵に呆れた声で言っている。さすがに弾が不憫に思えて来たんだろう。
「そうね。さすがにやりすぎちゃったかな。あのーすみません!実は私は…」
その後葵は弾達に正体をバラした。弾は葵の名前を聞き、事情があって女になったと話したら「ハア!?」と叫んだが、葵の顔をよく見て「…マジか?」と俺達に訊いてきた。俺と鈴が頷くと「嘘だろ…」と茫然となったが、葵が中学ん時の、しかも俺と弾しか知らない事を幾つか話したら、
「…なんてこった。こいつ本当に葵だ」
とようやく信じた。ちなみに厳さんと蘭はなかなか信じなかった。だが俺と鈴、そして納得した弾が保障することでようやく信じて貰えた。厳さんは、
「長生きしてみるもんだな…」
と呟き、蘭は、
「…狡い」
と葵の胸を凝視しながら呟いた。ちなみに鈴もうんうんと頷いていた。
その後俺達は積もる話もあるので、弾の部屋に移動することにした。
「しっかし二年前急に消えたと思ったら、女になって現れるとはなあ。さすがに予想外すぎる。そしてさっきはよくも俺を騙しやがったな」
ジト目をして葵を睨む弾。まあそのせいで厳さんに殴られるし蘭に蹴られるはされたもんな。
「わりーわりー。いやあお前の反応は面白かった」
と笑う葵。真っ赤になってうろたえてたもんな弾。
「うっせー! つーか二年前はよくも黙ってどっか行きやがったな。マジで心配したんだぞ俺は」
「…ああ、それについては本当にごめん。謝るよ」
弾の非難の言葉を聞き、申し訳ない顔をしながら謝る葵。弾は葵の表情を見たら頭をかきながら顔をそむけ、
「いや別にもういいよ。お前が元気だったってことはわかったから」
と、そっけなく返した。
「すまん」
さすがにしおらしくなる葵。そんな葵を弾はしばし見て唸った。
「…お前見た目本当に女の子になったな。しかも極上の。いや中学いた時から、女が男の制服着てると勘違いしてた奴が多かったが、それでも男と認識されていたが」
と言って葵の胸を凝視する弾。恥ずかしくなったのか葵は腕で胸を隠した。
「スケベ。厳さんにセクハラされたと言うぞ」
「いやそれは勘弁してくれ!…ていうか葵、余計なお世話かもしれんが話し方変えた方がいいぞ。今の姿で昔みたいな口調したら違和感ありすぎる」
「あ、弾もやっぱそう思う?あたしもそう思うのよね。いやさっきまでは弾に信じて貰うため昔の振る舞いさせてたけど、もうそれもいいわよね。葵、昔の口調はもう禁止!わかった!?」
いいわねと葵に念を押す鈴。それを聞いてえ~って顔をする葵だが、鈴に睨まれ渋々納得する。
「はいはいわかったわよ。鈴は厳しいわね」
「これもあんたのためでしょ」
やいやい言う二人を眺める俺と弾。なんか鈴が葵の姉さんみたいに見えるな。
「なあ一夏、なんか鈴と葵、気のせいか昔よりも仲が良くなってる気がするな。いや前から良かったけどさらにな」
「やっぱお前もそう思うか。やっぱ同性になったのが大きいんだろな」
「じゃあお前とは疎遠になったのか?」
「いやそれはないと俺は思うぞ。昔同様お互い馬鹿やったりするし。同室だけど気まずく感じる事は無いしな」
「はあ!お前葵と一緒の部屋なのか?」
かなり吃驚した顔で俺を凝視する弾。
「ああそうだが、何を驚いてるんだお前は?」
「いやだって、今は葵は女だろ!なのに同室って。ってそういやその前に一夏の言う女のファースト幼馴染とも一カ月位一緒に生活してたとか言ってたな。…何考えてるんだIS学園は?」
実は箒の後にまた別の女の子と同室になったんだが、ややこしくなるだけだから言うのは止めておこう。
「ま、葵が女になったからといって、お前がそれを理由で疎遠になるわけないか。中学の時初めてお前たち二人に会ったが、一目見て『ああ、この二人仲が良いな』と思ったしな。
それだけに葵が急にいなくなった時のお前の反応は…正直痛々しかった。だからまたお前ら二人が出会えて良かったと俺は心底思うぜ」
「ああ、俺もだ」
…あの時は本当に絶望した。あの頃は千冬姉も家にいなかったから余計寂しかった。一週間は飯もろくに喉を通さない日々が続いた。鈴と弾が俺を励ましてくれなかったら俺は本当に潰れてたかもしれない。
「鈴も帰ってきてよかったよ。お前結構強がってたけど、鈴が中国に帰った後しばらくは俺の家に入り浸りだったもんな。鈴はきちんと別れを告げたからそこまで大きなダメージ無かったようだが、それでもかなり堪えてたなお前」
「…そりゃな。箒を始めこうも親しくなった奴が俺の前から消えていったら落ち込まない方が変だろ。まあ鈴はまだ箒や葵と違い、別れをきちんと言えたのはせめてもの救いだったぜ」
いや一時期は本気で俺と仲良くなる奴は俺の前から消えるんだと思い詰めたりしたな。…家族の千冬姉だってあんまり家に顔出さないせいで。しかし、
「弾、さっきから俺が寂しい寂しい言ってたがお前だってそうだったじゃねーか。葵ん時も顔真っ赤にして怒ってたし鈴がいなくなった後は妙に中華料理食べるの多くなってただろ」
ニヤニヤしながら俺が言うと、
「いやそれはそうだがお前よりはマシ」
しれっと言いやがった。…うん否定できないかなこりゃ。葵と鈴、二人の付き合いの長さ的に考えて。
と、俺と弾が話をしていたら
「へ~そんなに寂しかったんだ。…ごめんね一夏、悲しい思いさせて」
「あたしの存在の重さがよくわかったようね。これからは大事にしなさい」
いつの間にか俺達の会話を聞いていた葵と鈴が、俺の頭に手を置いて「よしよ~し」と言いながら撫でまわしてきた。ってやめろこら。ガキか俺は!
「バカやってないでそろそろ始めようぜ」
と言って弾は俺達にそう言った後押入れを開け何かを探し始めた。
「ん、まさか弾」
葵が言い終わる前に弾は押入れから物を取り出し、俺達の前にそれをどんと置いた。
「このメンツが揃ってるんだ。ならやる事は一つだろ」
と言って俺達の前に置いた麻雀卓を見て笑った。
「ふ~ん、IS戦じゃお前らの中じゃ一番葵が強いのか」
「今はね。あたしがそのうち一番強くなるわよ」
「ふ~ん、まあ頑張れよ。……っと、取りあえずピンフ親だから千五百点」
タン タン
「って一夏に鈴。さっきから話聞いてれば葵って専用機持ってないんだろ。なのに負けるって…」
「うっさいわね!でも一夏は全敗だけど、あたしは葵に勝ったことはあるわよ!」
「いや鈴、それは打鉄の整備が甘かったのか私が酷使しすぎたせいなのかはわからないけど、鈴を殴りとばしたら殴った右手が砕けたせいでしょ。そのせいでシールドエネルギーは減るし片手だけになったから最終的に鈴にやられたけど、結構僅差まで追いつめたわよ」
「うっさいわね!勝ちは勝ちよ!」
「…まあお前がそう思うんならそれでいいけどな」
「全敗のお前もそういう要因がなければ勝てないだろーがな。……っと、リーチな」
「ま、私もラウラには勝ってないんだけどね」
「へ~お前にも勝てない奴がいるんだな。ロン。メンタンピン一発三色イーペーコードライチ!二万四千点な」
タン タン
「そういやお前らはIS学園では麻雀やんねえの?」
「IS学園じゃやらないわね。他に出来る子知らないし三人打ちじゃつまらないし」
「麻雀やる暇があればISの訓練やれと千冬さんに言われそうだし」
「てーか俺達だけで遊んでたら箒達が不機嫌になりそうだしなあ」
「ふーん、色々事情あるんだな。ま、だから弱くなってるのか。チートイドラドラ六千四百点」
「ってまたお前かよ!」
タン タン
「ま、俺は爺さん達とたまに打ったりしてるからなあ。お前達に勝っても不思議じゃねーよ」
「うっせー!今に見てろよ」
「ま、あたしもようやく勘が取り戻してきたからね。そろそろ反撃しようかなあ」
「しかしこうやって四人で卓を囲んでると懐かしいわね」
「…そうだな。中一の頃こうやって一夏の家で夢中になって遊んでたら気が付いたら朝だったってことがあったよな」
「…あの時は大変だったわ。連絡もせず朝帰りしたからあたしの両親が相当心配してたわね。しばらくは夕方五時になったら帰りなさいと言われたし」
「俺の家の電話がちょうどその時壊れてたからな。当時皆携帯持ってなかったし鈴と弾と葵の親達マジで心配してたな」
「私も心配した父さんから思いっきり殴られたっけ。あれは痛かったなあ。でもあれがきっかけで全員携帯を親からもたされるようになったのよね」
「俺も爺さんから殴られるししばらく店の手伝いを強制されたな。ったく一夏め!自分の家だからおとがめなしとかずるいよなあ」
「全くそうよね~。ってところでツモ!メンチンタンインリャンペーコー。三倍満二万四千」
「げえ何時の間に!葵このやろう…」
タン タン
「そういえば何で葵だけ専用機ないんだ?」
「話はあったけどコアの数の都合と、一夏の方が優先されたりしたからねえ」
「だから葵、それで俺を責めるなよ…って来た!リー即ツモオモテ3ウラ3オヤバイ!おら二万四千よこせ」
「ちっ、一夏も調子づいてきたか」
タン タン
「でもさあ、前葵の話聞いてたらあんたが訓練してた所に日本の代表候補生いたのよね。あんたそいつより強かったらしいじゃん。その子の専用機取り上げてあんたにあげればいいのに」
「そう簡単な話じゃないでしょ。専用機ってワンオフアビリティ開発の意味も強いし。…色々と複雑な理由あるのよ、ってリーチ」
「なんか聞く限りその専用機持ってる代表候補生ってIS学園にいないようだな。どこにいるんだ?とリーチな」
「う、葵も弾もリーチとはね…。でもそういやそうね。確か4組にいる子が日本の代表候補生とか言ってたけど、その子の機体は完成してないとかいってたっけ」
「あ、鈴。更識さんは違うから。更識さんは別の施設で訓練してたから私も面識無いわね」
「じゃあどこ行ったんだそいつ?あ、リーチ」
「……さあ。私も知らないかな。鈴!さあトリプルリーチになったけどどうする?」
「…なんか話逸らさせたいみたいね。まあ深くは追求しないであげるわ。ふっふっふ。あんた達みんな甘いのよ!これでもくらいなさい!」
タン
「「「こ、国士無双!!!!」」」
その後麻雀をやり続けていたら日もかなり暮れ、「いつまでやってやがるガキども!」という厳さんの一喝の下お開きとなった。ちなみに最終的に鈴がトップで次に弾、三位が俺でドベは葵。まあ元々麻雀の強さは昔から鈴が一番強く、俺と弾と葵はほぼ同じ位だったから妥当な順番だろう。これがTVゲームだと俺と弾がツートップで、次に葵、鈴は万年最下位となる。…だからあんまりTVゲームはしないようにしている。負け続けると鈴が暴れるからなあ…。
一階に降りたら厳さんが俺達の夕食を作ってくれていた。トンカツコロッケ野菜炒め肉じゃがハンバーグ唐揚げとかなりの豪勢な夕食がそこにあった。
「ま、お前達の再会記念だ。たらふく食え。うちの孫もお前達とまた会えて喜んでるからな」
「「「ありがとうございます!」」」
「あ、金はもらうからな」
「「「え?」」」
「嘘だ。ま、しっかり食え」
夕食は蘭も一緒になってたらふく頂いた。このときばかりは厳さんも食事中の会話は見逃してくれたので、和気あいあいと皆で夕食を楽しんだ。ちなみにテーブルに座る時、俺の隣をじーっと鈴と蘭が睨んでたが溜息ついた葵がさっさと俺の横に座ったら二人とも何故か葵を睨んでたな。なんでだろうか?弾はそんな二人を見て笑い二人から殴られたりした。
夕食を食べ終えたらもう外は暗く、IS学園に戻る時間となった。
「さてと、俺達ももう帰るか。これ以上は千冬姉に怒られる」
「そうね、名残惜しいけど」
「あ、ちょっと待って!」
俺と鈴が帰る準備をし始めたら、葵はポケットからデジカメを取りだした。
「帰る前に、皆で写真撮らない?この四人で撮った写真ってもう二年前の春のやつしかないし」
と言ってにっと笑う葵。
「へ~いいな。そういや葵がいなくなってからそんなに写真撮ってないよな俺等。鈴もいなくなってからは一枚も無い。ま、一夏と男二人でツーショットなんてキモいだけだしな」
「そりゃお互い様だろうが」
「いいわね。葵、あたしにも写真頂戴ね」
「もちろん、全員あげるに決まってるじゃん!」
「あ、それなら私が撮ってあげますよ」
「ありがとう。じゃあお願いね蘭」
蘭にカメラを渡し、横に並ぶ俺達。右から鈴、俺、葵、弾の順番で並んでいる。鈴は俺の左手に腕を絡め、俺と弾と葵は互いに肩を組む構図にしている。
「じゃあ撮りますよ!はいチーズ!」
カシャっという音がして無事撮影終了。撮り終わっても俺に腕を組んでいる鈴に蘭が睨んでいる。
「じゃあ次はわしが撮ってやるから蘭、お前も入れ」
蘭を交えもう一枚撮る事にした。並びは俺の両隣りに蘭と鈴。二人とも俺の腕を組んでいる。それを見て葵は弾の右手を左手で絡めている。「お、おい葵。胸当たってる!」「当ててるのよ」と言いながら顔を赤くしてる弾と笑ってる葵。ああ、完全に遊ばれてるな。
「…なんか色々思う所がある光景になっとるな。まあいい。一夏!弾達見てないで前向け!」
厳さんに一喝され前を向いた瞬間、カシャと写真が撮られた。
二枚の写真の画像を眺めながら、
「なんかこれ二枚目だけ見たら私と弾が付き合ってるみたいに見えるわね」
「ん?なんだ、じゃあ俺と付き合うか?二年前ならともかく、今のお前なら大歓迎だぜ」
「いや~、私は戦って自分より弱い男は嫌かなあ。というより、最低限私より強くないと、父さんが認めないでしょうし」
「そっか、なら残念」
ちっとも残念そうに見えない顔で言う弾。まあ本気じゃないだろうしな。しかし…お前より強い男って条件厳しすぎだろ。中学一年の時、部活で100人組み手して全勝したお前に勝てる奴って…同年代じゃ物凄く限られるぞ。
「じゃあ弾、次来た時にこの写真持ってくるから」
「おお、楽しみにしてるぜ」
「あ、いやこれデジカメだからメールで送ればいいか。携帯にでも送っとくわね」
「いや、次来た時直接持ってきてくれ! …いや俺の家写真を加工する機械ないからさ。ちゃんとプリントアウトしてくれたら助かる!」
妙に直接持ってきてくれとこだわる弾。別にお前機械音痴じゃないだろうに。そんな弾を見ていた鈴が微笑し、
「大丈夫よ。またあたし達はあんたと遊びに来るわよ」
と妙に優しい声で言った。その言葉を聞いて赤くなる弾。…ああ、なるほどな。葵を見たら葵も納得したようで、
「大丈夫よ。また私も弾の家に遊びに来るから。そんな小さいまた来る理由を作らなくともね」
葵の言葉にさらに赤くする弾。……そっか。俺達は今はIS学園で三人一緒に過ごしてるけど、弾は違うもんなあ。…こいつが一番別れが寂しいんだろなあ…。
「ま、じゃあこの写真は私が弾の言う通りにするとしますか。弾、今日は麻雀しかしなかったけど今度は外に遊びに行きたいわね」
「あたしはカラオケ行きたい!」
「お前マイク独占するからなあ…」
「下手糞な一夏が歌うよりかはマシでしょ!」
と、俺達はまた集まる時は何しようかと一通り話した後、五反田家を後にした。
その後、俺の家の机に飾っている写真立てが一つ増えた。それらの写真は、共通して四人とも最高の笑顔をして写っている。