IS~女の子になった幼馴染   作:ハルナガレ

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買い物狂想曲

「なあ葵、次の休みの日に買い物に出かけようぜ」

 俺はベットの上で横になりながらジャンプを読んでいる葵に尋ねてみた。目を悪くするから止めとけ。

 

「買い物?何を買いにいくんだよ?」

 

「来週は臨海学校があるだろ。お前どうせ学校の水着しか持ってないだろ。俺もそうだから一緒に買いに行こうぜ」

 俺の言葉に葵はふむ、と頷いた。

 

「ん?二人で出掛けるのか?他は誘わないのか?」

 

「ああシャルルも誘っていこうと思う。あいつも確か前水着持ってないって言ってたからな」

 

「シャルルね……、いや一夏、誘ってくれて悪いが俺は次の休みは用事がある。だから≪シャルロット≫と一緒に買いに行って来てくれ」

 葵は妙にシャルロットの名前を強調して言った。

 

「用事?早く終わるんなら待つぞ」

 

「いやいつ終わるかは俺にもわからないから俺に構わず≪シャルロット≫と行って来い。ああ、そうそう≪シャルロット≫はこの辺の地理とか知らないし、女の子なんだからちゃんとお前がリードしてやれよ」

 また≪シャルロット≫と強調して言っていく葵。なんでだ?

 

「ああ、言われなくてもわかってるよ」

 

「おう、デート楽しんでこい」

 

「デ、デート!?」

 顔が赤くなる俺をニヤニヤしながら見る葵。くそ、変な事言うからただ一緒に買い物誘うだけなのに、妙に緊張してしまうじゃねーか。

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 週末の日曜日、天気は快晴。お出かけには絶好の日に、今僕は一夏と一緒に電車に乗っている。昨日いきなり一夏からメールが来て、『二人で水着買いに行こうぜ』と誘われたから。確かに僕は水着をまだ買ってないから、今日でも買いに行こうかなとは思ってたけど、まさか一夏から誘ってくれるなんて!しかも二人っきりで! 僕が学園に女の子だとカミングアウトしてからは初めての二人っきりだよ!ここ最近一夏葵とべったりだったから余計に嬉しいよ!

 

「ああ、良い天気だなぁ」

 電車に揺られながら風景を眺めてる一夏に、僕は聞いてみる事にした。

 

「あのね、一夏。ちょっと聞いていいかな?」

 

「何をだ?」

 

「えっとさ、どうして僕だけ誘ってくれたのかな?てっきりこういうのは葵も誘うとばかり思ってたから」

 

 勇気を振り絞って聞いてみた。ま、まさか僕の事が好きだから!そして二人っきりになりたかったからとかかな!

 

「葵も誘ったが用事があって来られないんだと。誘った理由だけどもうすぐ臨海学校あるだろ。確か男として入学したから女物の水着は買えなかったって言ってたよな。俺も用意してなかったから、丁度いいかと思って誘ったんだよ」

 

「…そ、そうなんだ。気遣いありがとう一夏」

 さっきまでエベレストまで届きそうな舞い上がってた気持ちが一気にマリアナ海溝まで下がっていったよ…。だって…これって一夏が水着持っていたら買う必要無いから、今日の二人きりの買い物は無かったってことだし。

 うん、一夏にその辺を期待した僕がバカだったんだよね……、それにこの二人っきりも葵が用事があっただけなんだ。

 

「まあ! どうせそんなことだろうと思ってたけどね!」

 落胆を誤魔化すためちょっと語気を荒くした。八つ当たりだけど、一夏が僕だけの為に誘ったわけじゃないとわかると…。

 

「何怒ってるんだシャルル?」

 シャルル。その言葉を聞いた瞬間僕の怒りは再度噴出した。

 

「シャルロット!二人きりの時はそう呼んでっていったじゃない!」

 

「わ、悪いシャルロット!ん、そういえば二人きりで思い出したけど、葵が来てからシャルロットと二人きりになったのって今日が初めてだな」

 

「そうだよ、だから色々期待したのに…」

 いくら久しぶりに親友と再会したからって、一夏ってば毎日毎日葵と一緒にいるし! まあ昔から仲が良かったのは箒や鈴から聞いてたけどさ。その葵もいなくて今日一夏から誘ってくれたのに!

 

「乙女心を踏みにじる男は最低だよ!」

 

「何だいきなり?でも確かにそんな男は最低だな」

 ……鏡見なよ一夏。最低な男の顔が見れるよ。僕はは~、と大きな溜息をついた。

 

 

 

 

 駅について電車から降りても不機嫌な僕に、一夏が僕の機嫌を取ろうとしてきた。

 

「あ、あの~シャルロット。理由はわからないけど、お前を傷つけたんなら謝る。ごめん!だから機嫌直してくれ」

 そういって何度も頭を下げて謝る一夏。うん、もう許してあげよっかな。

 

「もういいよ。一夏が悪いとわかったんなら」

 

「そ、そうか。 じゃあ買い物にいこうとするか! ここは俺が昔からよく来てるから案内するぜ。あ」

 そう言って一夏は僕の前に右手を出した。え、これってまさか!

 

「はぐれたら大変だもんな。手を繋いでいこうぜ」

 ま、まさか一夏からこんな提案するなんて。ゆ、夢じゃないよね!

 

「う、うん!」

 僕は慈しむように一夏の右手を左手で握った。

 

 

    

 

 

 

 

「……ねえセシリア。あれって手を繋いでない?」

 

「……ええ、繋いでますわね。しかも見てた所一夏さんから手を出してましたわ」

 

「そっか、見間違いでも白昼夢でもないんだ。よし、殺そう!!」

  セシリアと一アリーナで訓練しようと歩いてたら、偶然一夏とシャルロットが歩いているのが見えて気になって二人でついて来たけど、、まさかこんな事態になるなんて!

 一夏~~~!あたし以外の女と二人っきりで出掛けるだけで無く手も繋ぐなんて!殺す!IS部分展開!衝撃砲用意!発

 

「やめなさいっての馬鹿」

 

「グエッ!」

 いきなりあたしは襟首を後ろから強く引っ張られ、服に首が圧迫された。誰よ! 邪魔するのは! って、

 

「葵!」

 

「はあ~い」

 葵はあたしの襟首を掴んでいた。下手人はあんたかい! さらに葵の後ろにはラウラもいた。

 

「葵さん、ラウラさんも! どうしてここに?」

 

「いや昨日からシャルロットが浮かれてたのが気になってたのでな。今日の朝、えらく身だしなみを気にして出掛けたシャルロットを見て、もしやと思ったら案の定一夏と一緒になった。そして私も二人に交ざろうとしたら」

 

「私が止めたって訳。ま、ここは二人の様子を見るだけで我慢してくれない?」

 そうあたしとセシリアに言って歩き出す葵。その後をついていくラウラ。ってちょっとまって。

 

「ねえ葵。もしかして今日二人が出掛けるの知ってた?」

 

「知ってたわよ。だって元々一夏から誘われてたから。でも断ってシャルロットと二人で行くように仕向けたけど」

 

「はあ! それどういういことよ!」

 なんであんたシャルロットの味方してんのよ! どうせならあたしの味方しなさいよ!

 

「まあまあ落ち着きなさいって鈴。大声出すと二人に気付かれるわよ」

 

「そうですわよ鈴さん、少し落ち着いてください」

 あたしを宥める二人。葵はともかく、セシリアあんたは何で落ち着いてるのよ!

 まああたし達がこうしてるうちにも一夏達は移動し続けてるため、取りあえず皆で尾行を再開することにした。う~、まだ手を握ってるし。

 

「ところで葵さん、一つ聞いてもよろしいですか?」

 

「何セシリア?」

 

「先ほどの台詞から考えますと、葵さんは一夏さんとシャルロットさんを二人っきりの状況を意図的に誘導したように思えますけど?」

 

「さすがセシリア!鋭い!でも意図的っていうよりこれは偶然かな。一夏が買い物行こうと誘って、そのメンバーが私とシャルロットの二人だけだったから出来た事だし」

 

「葵、あんた何であの二人を二人っきりにしたかったのよ。まああんたのことだからただ面白そうだからって訳じゃないんでしょ」

 あたしの言葉を聞いて少し驚いた顔をする葵。だてにあんたと幼馴染してるわけじゃないのよ。ほら、早く言いなさいよ、あたしの言葉を聞いてセシリアもラウラも葵に教えて欲しそうに見てるわよ。

 

「う~ん、簡単に言えば一夏とシャルロットの関係をリセットさせたいから」

 そういって何故か葵は申し訳ないって顔をしてシャルロットの方を向いた。

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 休日でごった返しているショッピングモール『レゾナンス』を、俺はシャルロットと一緒に手を繋いで歩いている。全く凄い人ごみだ、出発前に葵が言っていた「あそこはぐれたら面倒だからシャルロットと手を繋いでいた方がいいぞ」は本当だな。あいつの忠告に感謝しないとな。しかしさっきまでかなり不機嫌だったのに、今のシャルロットはかなり機嫌が良いな。鼻歌まで歌ってるし。

 人の流れも落ち着いた噴水がある広場まで歩いてきて、俺はなんとなく上機嫌の理由を聞いてみた。

 

「なあシャルロット、どうしてそんなに機嫌が良いんだ?」

 俺の質問にシャルロットは、

 

「え、だってこうして一夏と手を繋いで買い物に来てるんだよ!嬉しくない方がおかしいよ!」

 と、満面の笑顔で返した。いやそう臆面も無く言われると少し照れるな。

 

「そうだシャルロット、さっき思ったんだが皆もうお前が女の子だって知ってるんだから別に二人っきりの時にシャルロットて呼ぶのも普通だよな。だったらどうせだし別の呼び名考えようか、俺とシャルロットだけの呼び名」

 俺の言葉に吃驚した顔をするシャルロット。え、そんなに可笑しなこといったか?

 

「え、いいの!?」

 

「おう、そうだシャルロットだからシャルなんてどうだ。呼びやすいし」

 

「うん、いいよ凄く良いよ!」

 

「そ、そうかそんなに気に入ったならなによりだ」

 俺は笑顔で「シャル、シャルか~」と喜んでいるシャルを見る。いつものIS学園の制服で無く、私服姿なんだが、シャルってミニスカート履くんだな。そこから見える脚線美がって何見てるんだ俺!

 しかしこうして見るとシャルって本当に女の子だな。男として入学してきたのが嘘のようだ。ん、男、シャルル…

 

「なあシャル、一つ聞いていいか?」

 

「なあに一夏」

 

「もしかしてだが、シャルが学園側に女だって公表した後も俺はずっとシャルルって呼んでたけど、…実は嫌だったか?」

 俺の言葉にシャルは複雑な顔をした。

 

「う~ん、どうだろ。最初にシャルルって紹介しちゃったから一夏の中でそれが定着してしまったんだなあと思ってたけど、……本心じゃシャルロットって本名で呼んでほしかったかな」

 シャルの苦笑いを見て……俺でもシャルがそう言われるのは嫌だったのを理解した。

 

「そっか、すまんシャル! 俺……無神経にお前の事傷つけてた」

 

「良いよ別にそんなの。だって今じゃ一夏から素敵な愛称もらっちゃったし。それになんとなくだけど理由もわかるし」

 

「理由?」 

 何だ?シャルは何を知ってるってんだ?

 

「タイミングが悪かったんだよねえ。僕が学園に女の子だって公表した日は一夏、皆から一日中追いかけられてたし。そして翌日は休日。さらにその翌日は葵の初登校で衝撃的な告白。でね、一夏は葵が女の子になっても変わらないって思ってるでしょ。多分だけどその意識を僕にも向けてたんだよ。正式にシャルロットに戻ったけど、一夏の中じゃ僕は変わらずルームメイトのシャルルのままって」

 シャルの言葉に俺は衝撃が走った。ああ、そうか俺シャルが堂々と女の子に戻ったってのに心の奥底では、男の、部屋が一緒の頃のシャルルの方を意識し続けて……。なるほど、それで葵は昨日…。

 

「ごめんなシャル、確かにその通りだったよ。お前が勇気振り絞って女に戻ったってのに俺は…」

 

「だからいいよもうそれは。一夏も今謝ってるし、それに」

 そういってシャルは右手を胸に当て、

 

「今の僕はどう見える一夏。男の子?女の子?」

 と笑顔で聞いてきた。んなもん決まってる!

 

「ああ、可愛い女の子に見えるぜ」

 俺の台詞を聞いて、シャルは耳まで真っ赤になった。なんだ? 風邪でもひいたのか?

 

 

 

  

 

 

 

 

 

「うんうん、作戦は大成功!これでシャルロットも報われるってものよね」

 

「いやあんたが一夏とシャルロットを二人きりにしたかったのはわかったけど……あんた何時の間に一夏に盗聴器つけたわけ?」

 先ほどまでの会話は、葵が一夏に取り付けていた盗聴器で全員聞いていた。葵が一夏をシャルロットと二人きりにさせた理由がわかり、セシリアもラウラも二人の会話を聞いて複雑な顔をしている。…あたしもね。二人にそういうのがあったなんて、全くわからなかった。

 

「そんなの同室で生活してるんだからいくらでもあるわよ。でもこの問題に一夏が気付くかは賭けだったけどね」

 

「まさに穴だらけの作戦だな。一夏の鈍感さを考えたら、普通に何も無く終わる可能性の方が高かっただろうに」

 ラウラの言葉にはあたしも同感。あの一夏が今回ここまで頭が回ったのは奇跡としか思えない。

 

「まあ多少の仕込みはしたわよ。でも私は一夏はちゃんと気付くと思ってたけどね。まあ愛称までは予想外だったけど」

 

「どうして一夏さんが気付くと?」

 セシリアの疑問に葵は笑顔で言った。

 

 

 

 

 

「ん?敷いて言えば親友としての勘」

 

 

 

 

 …その言葉にあたしは少し悔しくなる。なんだかんだでやっぱ葵、一番一夏の事見てるし、……一夏を信頼してるんだってわかったから。

 

「いやあこれでようやく肩の荷が下りたわ。ところで」

 そういって、あたしとセシリアとラウラを見ていく葵。何よ一体。

 

「これで一夏も本当の意味でシャルロットを女の子として認識したわよ。そして前は一ヶ月間寝食を共にした相手。はっきりいって強敵ね」

 あ~~~~そうだった! え、これってちょっと不味いわよ!

 

「いや~~これから楽しくなりそう」

 葵は他人事のように言って、苦悩するあたし達を眺めていった。そしてまた一夏とシャルロットが二人で移動するのを見ると、

 

「さてと、予想よりも早く懸案事項は解消されたからもう私は自分の買い物に行くけど、皆どうする?」

 そういってこの場から離れようとする葵。ってちょっと待ちなさい。

 

「なによ葵、あんたさっきあんな事言っておいて続き見ない訳?あの二人の事気になんないの?」

 

「あんまり。だってあの一夏だし。今日はシャルロットを本当の意味で女の子だと自覚したようだけど、それだけで一気に関係が進むようなら中学の時に鈴、あんたととっくに結ばれてるわよ」

 

「……悲しいけど確かにそうね」

 あのキングオブ鈍感の一夏の事だし。凄い説得力あるわね。

 

「それにしても」

 そういって一夏とシャルロットの二人を交互に見る葵。そして一夏を見て、

 

「シャルロットとデートしてこいと煽ったのに、一夏の奴黒のジーパンに柄物Tシャツ一枚とは……。シャルロットが気合入ってる分余計に浮いてる…」

 一夏の服装に呆れてる葵。うん、確かに一夏の服装はデートに行く服装とは思えないけどさ。葵、あんたには言われたくないと思うわよ。

 

「…いや葵さん、貴方もそれは女の子としてどうなんですか?」

 そういって若干呆れ顔をしながら指摘するセシリア。あたしも同感。だって葵、……上は無地の白Tシャツ、下は青い若干くたびれたジーパン。シンプルにも程があるわよあんた。

 

「そう? 変かな?夏らしく、そして私に似合う服装だと思うけど」

 …まあ似合ってるわよ。でもねえ。

 

「そんなことより、二人はもうかなり先に行ってしまっているぞ。葵、あの二人に交ざるのを邪魔して様子を見ようと言ったのはお前だろう。なら責任持って二人が水着を買うまでは付き合え」

 ラウラが一夏達を見ながら言ってくる。まあラウラの言い分も一理あるわね。ラウラの行動の邪魔をしたのは葵だし。

 

「あーもうわかったわよ。それまでは付き合うわよ。でもそれ以降は知らないからね。私も買い物したいし。でもさすがに目的は達成したから盗聴機能は止めるわよ。これ以上は無粋だし」

 渋々同行する葵。そしてまた、あたし達四人は一夏達の追跡を始めたのだった。

 

 

  

 

 

 

 

 

 どうしてこうなってるんだろう?

 俺は現在正座されている。隣にはシャル。俺と同様正座されている。そして俺達の眼前には、

 

「いいですか織斑君、シャルロットさん。二人の仲が良いのはいいことです! ですが男女が一緒になって更衣室に……」

 と、『私怒ってますよー』って顔をして俺達に説教してる山田先生。その隣に呆れた顔をした千冬姉が立っている。う~、どうしてこうなった?水着コーナーに来た俺達は別々で水着を買いに行って、俺の分は早く終わったからシャルを待っていたら急にシャルが来て俺の手を掴んで試着室に引きずりこんで……

 それから急にシャルが脱ぎだして、水着に着替えて俺に見せて、そして急にレースを開けて俺達を見て呆れてる千冬姉達がいて。

 

 …あ~カオスだ。なんなんだこの流れは。シャルが急に謎の行動をするし、何故か千冬姉に見つかって山田先生に説教されてるし。しかし…、あの時のシャルの生着替えは拷問物だったなあ。

 

「織斑君、なんで貴方は説教中なのに顔を赤くしてるんですか!」

 

「大方先ほどの試着室での事を思い出したんだろう。何をしてたかは知らんが」

 

「お、織斑くん~!」

 千冬姉の言葉を聞き、さらに激昂する山田先生に耳まで真っ赤になるシャル。千、千冬姉!何でわかるんだよ!

 

「それよりもいい加減出てきたらどうなんだおまえら」

 千冬姉はそう言って近くの柱に語りかける。すると、

 

「あ~、やっぱりばれてました?」

 と葵が出てきて、その後にセシリア、ラウラ、鈴が出て来た。

 

「おまえら結構前からこそこそ俺達の後ついてきてたのは知ってたが、何をやってるんだよ?それと葵、お前今日は用事があって来れないんじゃなかったのか?」

 

「用事が終わったからここに来たまでよ。文句ある?」

 俺が睨んでもしれっと答えやがった。この野郎。その後もあ~だこ~だ騒ぐ俺達を見て、

 

「あ、そういえば私も用事があるんです。学園関係の用事なんで、鳳さん、シャルロットさん、セシリアさん、ボーデヴィッヒさん、青崎さん、お手伝いお願いします! 織斑先生は別件お願いします!」

 と言って山田先生は葵達を強引に引きつれてどこかに行ってしまった。いいのか生徒を仕事につき合わせて?

 

「全く、山田先生も変な気をつかってくれる」

 呆れた顔をして、その後事態を把握してない俺に千冬姉は説明してくれた。なるほど姉弟水入らずね。千冬姉もこの場は千冬姉と呼んでいいと許可してくれたし、久々に千冬姉と本当の意味で二人きりになって俺もちょっと嬉しくなった。山田先生に感謝しないとな。

 

「そうだ一夏、どうせだから私の水着を選んでくれ」

 と言って俺に二つの水着を見せる千冬姉。黒と白のビキニか。千冬姉なら……黒だな。でもこの水着だとなあ。男が寄るか? なら白の方がいいかな。しかしこの白の水着……これは……

 

「どっちがいいと思った?」

 色々考えてたら千冬姉が俺に聞いてきた。うん、害虫防止のためにもここは白だな!

 

「白かな」

 

「嘘をつくな。お前は黒の水着を一番注視していた。お前は気に入った方をよく見るからすぐにわかる」

 と言って黒の水着を掲げる千冬姉。え、俺ってそんな癖があったのか?

 

「じゃあお前が気に入った方を買うとしよう。ところで一夏、さっき白の水着も急に見だしてたがどうしてだ?」

 少し笑いながら俺に聞いてくる千冬姉。何故に?

 

「いやその白い方は葵か、箒に似合いそうだなあと思ったんだよ。いやあの二人も千冬姉同様スタイルいいし」

 

「ほう」

 と言って何故か少し笑いながら俺を見る千冬姉。な、なんだよ。

 

「いや何、お前も少しは異性を意識しだしてきたなと思ってな。水着を見て似合う女の姿を連想するとはな。葵と箒もさぞ喜ぶだろうな」

 

「いや千冬姉、さっきも言ったけど体型似てるからつい想像しただけだって! それに葵は現在進行形で、箒も以前一ヶ月位同室だったんだからそりゃ意識するさ。…昔とはやっぱ違うんだから」

 

「それでも似合う水着を自然に連想するとはな。さっきはデュノアとデートしてたしな。これも同室相手か。…もしかしてお前は同室位せんと相手を意識しない朴念仁ではあるまいな?」

 

「ちげーよ! 何言ってるんだよ千冬姉! それにシャルとは買い物に来ただけだっての!」

 

「…憐れだな」

 と言ってはあ~、と溜息をつく千冬姉。何変な事言ったか俺?

 

「で、どうなんだお前は。人の水着を見て私の事を心配する余裕ないだろう。お前もいい年頃だからそういう相手でも見つけろ。周りには余るほどたくさん異性がいるだろうが」

 

「いやそんなこと言っても千冬姉。今はまだ俺そういうの考えられないよ。まだ友達と騒いで遊ぶ方が好きだな」

 

「友達…か。そういえば葵が登校し出してからお前以前よりも楽しそうに過ごしてるな。周りにいる連中は変わらないのに、葵が来ただけでお前の笑顔が増えている」

 

「まあね。やっぱ気の置けない友達が増えるのは嬉しいし楽しいぜ」

 

「…でも、お前も葵はもう異性として意識してるんだよな」

 

「それは…まあ多少は。さすがにもう男に思えないだろ。本人も女になったと公言してるんだし。でも、……やっぱり俺の中ではあいつは大切な幼馴染だ。それだけは変わらない」

 

「そうか…わかった。まあ今はお前は皆と馬鹿騒ぎでもして、良い思い出を作る方がいいのかもな」

 と言って、千冬姉は水着を持ってカウンターに向かうようなので、俺もまだ他に買う物があるから千冬姉に用件伝えて別れる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「山田先生~、生徒五人も引き連れなければならない用事って何よ~?」

 鈴さんが不満顔で山田先生に質問しています。まあ大体山田先生がしたい事はわかりますけど。

 

「それはですね~ってボーデヴィッヒさんは何処へ?!まさか織斑先生の所に?!」

 

「ラウラでしたら水着コーナーに居ましたけど、急に真剣な顔して電話しに行きましたよ。先ほど用件を済ましたらこちらに来るとメールが来ましたから心配は無いと思います」

 

「そうでしたか、ふ~よかったです」

 と言って胸をなでおろす山田先生。やっぱり胸大きいですわね。

 

「ところで山田先生、久しぶりの姉弟水入らずをさせるのは良いですけど、その間どうします?お茶でもしますか?」

 

「あ、青崎さん!何で私の計画を?」

 

「いや僕もすぐわかりましたけど」

 

「一夏さんだけ連れないだけでバレバレですわよ」

 

「そ、そうよバレバレよ。すぐにわかったわよ!」

 ……鈴さん先ほどの発言は?それに目が泳ぎまくってますわよ。

 

「そ、そんな。そんなにバレバレだったなんて」

 

「まあそれは置いときまして。山田先生、何も無ければ私自分の買い物に行きたいんですけどいいですか?」

 

「買い物ですか。いいですよ。あ、どうせですから青崎さんの買い物に皆で付き合いましょうか。いいですか青崎さん?」

 

「構いませんよ。それに皆の意見も聞いた方が良い物買えそうですし」

 わたくし達の意見? 葵さんは何を買おうとしてるんでしょう?

 

「葵、何を買いに行くの?」

 

「ん、皆もう買ってるとは思うけど来週で7月7日、箒の誕生日じゃない。まだ私はプレゼント買ってないからここ」

 

「「「誕生日~~~~!」」」

 

 葵さんの言葉に、鈴さん、シャルロットさん、わたくしは絶叫しました。そんなの聞いてませんわ!

 

「嘘、みんな知らなかったの?」

 葵さんが吃驚してますが、それ以上にわたくし達が吃驚です!

 

「聞いてないわよそんなの!」

 

「…何でこういうの黙ってるかな~」

 

「危ない所でしたわ。危うく当日何もおめでとうの言葉も無いまま過ごすはめになりそうでしたわ!」

 そんなことがあって後で知ったりしましたら……気まず過ぎますわ!

 

「あら、皆とっくに知ってるとばかり。まあ確かに誕生日の話なんてしなかったけど」

 

「まあ確かにしてませんでしたけど…」

 

「葵も一応僕達に確認しておいてよ…」

 

「一夏もファースト幼馴染が聞いて呆れるわよ。誕生日なんて自分から言い出しにくいものなんだからあいつから私達に話しなさいよったく」

 まったくですわ。一夏さんはこういう配慮が欠けてますわ。葵さんもですけど。…葵さんは気配り出来る方と思ってましたのに…、やっぱり一夏さんの親友ですわね。

 

「待たせたな。どうした皆、さっきから騒いで」

 そうこうしてるうちにさっき何処かへ行かれてたラウラさんが戻ってきました。なにやら紙袋を持ってますが何を買ったのでしょうか?

 

「ちょうどラウラも来たし、皆で誕生日プレゼント買いにいこうか」

 

「誕生日?何の事だ?」

 

「後で説明してあげるわよ」

 こうして私達は箒さんの誕生日プレゼントを買いに行く事になりました。後ろから山田先生が「青春ですね~」と微笑んでます。…なんか恥ずかしいですわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千冬姉と再度合流し、まだ皆戻って来ないから近くのカフェで時間を潰す事にした。なんか本当に久しぶりに千冬姉と二人っきりで過ごしてるなあ。今は家族として話も出来るし、山田先生には本当に感謝しないとな。

 

「しかし休日に弟に水着を選んで貰い、カフェで一緒にコーヒーを飲むってのも……私も一夏に言える立場でも無いな」

 

「何で?家族なんだからおかしくないじゃないか?」

 

「それを平然と言える事に私はお前の教育を間違えたのかと思えてくるな」

 なにやら難しい顔をして溜息をつく千冬姉。俺変な事言ったか?とか考えてると

 

「織斑先生~!織斑君~!お待たせしました~!」

 と皆を引っ張って行った山田先生が戻ってきた。山田先生の後ろにはセシリア、シャル、鈴、そして…え!?

 

「…葵、ラウラ。その格好どうしたんだ?」

 

「あ、あまりじりじり見るな!」

 

「はあ、こういうのはあんまり好きじゃないのに…」

 顔を真っ赤にして恥ずかしがるラウラに、こちらも恥ずかしそうに自分の体を見る葵。俺と別れる前はラウラは制服、葵は白Tシャツにジーパン姿だったのに、今では、

 

「どう一夏!あたし達がプロデュースしてあげたこの姿は!似合ってるでしょ!」

 

「ラウラは制服しか持ってないって言うし、葵もちょっとオシャレというか、もうちょっと服装に気を配った方がいいかなと思ってね」

 

「それでわたくし達が似合う服装を選んでさしあげましたって訳です。どうです一夏さん?」

 胸を張って答える鈴、シャル、セシリア。なるほどねえ。しかし、

 

「いやラウラの服、確かに似合ってて可愛いんだけど…普段着で黒のゴスロリ服はどうなんだ?」

 いや似合ってるし可愛いんだけど…これ来て街中歩くのはラウラ的にはどうなんだろう?

 

「何言ってるんだよ一夏!こんなに似合ってるんだよ!問題なんてあるわけ無いよ!」

 と言って「可愛いよラウラ~」と抱きつくシャル。完全にお前の好みだろそれ!

 

「か、可愛い…」

 ラウラは顔を真っ赤にしてぶつぶつ言っている。大丈夫か?そして、

 

「………」

 

「無言で見るのはやめてくれない。余計恥ずかしい」

 葵は俺をそういって睨むが…どうコメントしようか。いつもTシャツジーパンなのに今は、赤の可愛らしいデザインのキャミソールに、白いミニスカート。そして黒の二ーソックスでこちらもシャルに負けず劣らず綺麗な脚線美…って何をまた考えてるんだ俺は!しかもいつもはストレートにしてる髪をポニーテールにしてるし。うん、箒とはまた違った印象がする。全体を見てこれは…

 

「ほう、ラウラもかなり見違えたが葵はそれ以上だな。キャミソールはオルコット、お前の見立てだな」

 

「ええ、そうですわ織斑先生!何でわかりましたの?」

 

「いやお前がこういう服装が好きそうだからだ。で、このミニは鈴、おまえだな?」

 

「え、ええ!そうです!千冬さん!」

 急に昔の呼び名で呼ばれたため、鈴も昔からの呼び名で答えたが、直後にしまった! って顔をする。

 

「大丈夫だ鈴。今はオフだから千冬姉もそれで注意しないぜ」

 

「そ、そう。よかった」

 かなりホッとした顔で答える鈴。まあ頭叩かれたくないからなあ

 

「ふむ、かなり見違えたな。ラウラも葵もかなり似合っている。一夏、お前もこういうのを相手にプレゼントできる男になれよ」

 精進します。

 

 「で、一夏。どうこれ」

 葵がニヤつきながら俺に聞いてきた。いやどうってお前…。ってなんだ皆無言で俺を見て! 山田先生も千冬姉も俺に注目してるし!

 

「葵、い、いやあまあ、あれだ。に、似合ってるぞ」

 

「つまらない回答だなあ。可愛いとか一言位言えないの?普通それくらいは男のたしなみと思うんだけど」

 と言ってつまらない顔をする葵。いやだって可愛いし凄く似合ってるし正直……。

 でもお前にそれ言うのは何故か凄く恥ずかしいし、言えるかよ!

 

「全く、つまらん男だなお前は……」

 …千冬姉までそう言わなくてもいいじゃないかよ。そして千冬姉、葵に何か言った後葵連れて何処かに行ってるし。

 その後は山田先生からは「織斑君には失望しました」と残念な子扱いされるし散々だ。

 

 

 

 

 

 

「ねえ、さっきの一夏の態度さ、ヤバくない?」

 

「わたくし達、もしかしたらとんでもない事をしてしまったのでは?」

 

「同じ私服を見たってのに、僕とラウラと葵じゃ差がありすぎないかなあ…」

 

「可愛い…」

 

 

 

 

 

 なんか鈴達顔を寄せ合って何か話し合ってるな。何を話してるんだ?そうこうしてるうちに千冬姉と葵が戻ってきた。葵の手には紙袋。何を買ったんだろう?

 

「さてと、もうすぐ夕方だ。学園に戻るぞお前ら」

 こうして俺達は買い物を終え、学園に戻ることにした。色々あったけどまあ結構充実した一日だったかな。そして俺は隣にいる葵を見る。……俺の評価が気に入らなかったのか、また元にTシャツジーパン姿に戻っている。

 

「どうかした?」

 

「いやなんでもない」

 …やっぱ少し位褒めとくべきだったかな。あの姿…良かったし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    おまけ

 

「一夏も、葵も、鈴も、セシリアも、シャルロットも、ラウラもいない。私以外誰もいない…。何故私だけ除者にされたんだー!!」

 

「あ、あの篠ノ之さん!部活に精を出すのは嬉しいけどちょっともう勘弁して!皆もう疲れて」

 

「どうして私だけー!」

 

「あーもう!誰かなんとかしてー!部長もこんな時だけいないしー!」

 本当に偶然が重なった結果箒だけ皆と一緒になれなかったのだが、無論箒にはそのような事はわかるはずも無く、一夏達が帰ってくるまで荒れに荒れた箒であった。

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