IS~女の子になった幼馴染   作:ハルナガレ

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臨海学校(一日目 自由時間)

「あー海だー!皆ー!もうすぐ泳げるわよー!」

 IS学園をバスで出発してからはや数時間、目的地に近付いてきたためクラスの女子達はかなり興奮している。まあ無理もないか、今日の日を皆楽しみにしてたもんな。なんせこの臨海学校、初日はまるまる自由時間だから、クラスの皆バスの中で何して遊ぼうとか移動時間中そればっか話してたし。

 

「一夏さん、もうすぐ到着しますわね」

 通路の向かい側に居るセシリアも、楽しそうな顔をしている。

 

「海で泳ぐなんて久し振りだな~。ラウラ、一緒に泳ごうね」

 

「ああ、軍で鍛えられた泳法を披露しよう。そうだシャルロット、海に言ったら私と泳ぎで競争するとかどうだ」

 こちらも楽しそうな顔してラウラに話しかけるシャル。ラウラも笑みを浮かべながら、シャルと話をしている。

 

「へ~、軍隊仕込みの泳法か。それは興味あるな」

 

「うむ、嫁にも私の泳法をしっかり見せて……」

ん、何だ?急にラウラ、顔を赤くして俯いてしまったぞ?まさか急に具合が悪くなったのか?

 

「大丈夫かラウラ?気分悪いのか?悪いならすぐに言えよ」

 

「だ、大丈夫だ一夏!心配はしなくていい!………クラリッサに選んで貰った水着、一夏は気にいるだろうか」

 なにやら後半よく聞こえなかったが、顔を赤くしてそっぽむくラウラ。いや本当に大丈夫か?バス酔いか?

 

「そうか、でも無理するなよ。なにかあったら」

 

「わ、わかっている。私の事は気にするな」

 

「大丈夫だって一夏。少し敏感になりすぎだよ」

 

「葵さんの事はしかたありませんわよ。ですから一夏さんが責任を感じる必要はありませんことよ」

 

「でもなあ…」

 皆はそう言うけど、やっぱしなんかなあ。

 

「しかし葵も、何故よりにもよって今日に…」

 皆が楽しみにしていたこの臨海学校。目的地に向かうこのバスには葵の姿は無い。何故なら…

 

 

 

 

 

 

 

 

「38度6分。風邪ですね」

 

「体調管理位しっかりしろ。代表候補生だろ貴様は」

 

「も、申し訳ありません…」

 今日の朝、俺が起きたら隣のベットで顔を赤くしてうなされている葵がいた。葵の額に手を当ててみれば物凄く熱く、これはヤバいと思った俺は急いで寮監している千冬姉を呼んだ。山田先生も一緒になって俺の部屋に行き、葵の容体を見てもらった。

 

「しかしどうします織斑先生?普通の風邪でしたら注射を打って薬飲んでぐっすり寝れば、明日には治ってるでしょうけど」

 

「ま、まさか俺だけここに留守番しろなんて言いませんよね!千冬さん!」

 葵!お前風邪のせいで状況判断ヤバくなってるぞ!千冬姉の前でその口調にその呼びかけは!

 

「…まあ安心しろ。今回青崎が行かないと困る事になるからな。別の車に青崎は寝ながら運ぶ事にする。今日の所は向こうの旅館で寝てろ」

 お、さすがの千冬姉も病気で苦しんでる葵に鉄拳制裁はしないか。しかし葵が行かないと困る?何の事だろうか?そして千冬姉は葵を慈しむような目で見て言った。

 

「まあゆっくり休め。治ったら色々待ってるぞ。特に出席簿がな」

 …どうやら治るまでは見逃してやるだけのようだ。治ったら葵の運命は…ご愁傷さま。

 

「よかったな葵、臨海学校に行けるぞ」

 

「それはホッとしたが、…結局一番楽しみにしていた初日の自由時間が」

 

「まあ、それは諦めるんだな。ったくせっかく私が」

 

「?織斑先生どうしました?」

 

「いやなんでもない」

 そして葵のために色々用意すると言って部屋を出る千冬姉。山田先生も薬を取りに部屋を出て行った。

 

「あ~糞!なんで今日に限って俺は体調崩してるんだよ…」

 

「ごめんな。俺がお前の変化に早く気付いてれば」

 

「別に一夏が謝ることじゃないだろ。それに俺も何が原因でこうなったかなんて見当がつかないんだし」

 

「だが同室にいながら」

 

「だからお前が責任感じることは無いって。あ、そうそう」

 そう言って葵はベットから降り鞄を漁り始めた。

 

「おいちゃんと寝てろよ」

 

「あった。一夏、はいこれ」

 そういって葵は俺にカメラを渡した。

 

「一夏、俺の代わりにそのカメラで皆の水着姿撮ってきてくれ。俺はもう今日は動けないから頼む。皆どんな水着で勝負してくるのか楽しみだったのに遊べないとは…」

 勝負? なんの事かよくわからんが、皆で写真を撮るのは悪くないな。俺は葵の頼みを快く了承した。

 

 

「あ~、一夏にも移ったらヤバいから、もう荷物まとめてこの部屋でろ」

 葵はそういって扉を指差した。

 

「馬鹿か。看病位させろ」

 

「ここでお前まで風邪移ったら俺がへこむんだよ。頼むから出てけ。それに汗かいたから体も拭きたいんだよ。ああ、お前が俺を拭いてくれんの」

 と挑発的な笑みを浮かべる葵。くそ、そんなこと言われたら出るしかないじゃないか

 

「わかったよ。葵、お前もよく寝て早く元気になれよ」

 

「ああ。あ、一夏最後に頼みがある」

 

「頼み?」

 

「ああ、箒をここに呼んでくれ」

 

 

 

 

 

 以上回想終了。まあ葵は別便で向こうに行くと知った時は皆ホッとしてたな。箒は一番よかったよかったと言ってたっけ。

 …以前一人だけ除け者にされたと誤解したからな。一人の苦しみが一番わかるんだろう。

 

「そういや箒、葵はお前に何の用事があったんだ?」

 俺はバスに乗ってからずっと心ここにあらずな状態になっている箒に尋ねてみた。

 

「あ、な、なんだ一夏!何か言ったか?」

 

「いや葵は箒に何の用事があったのかと思ってな」

 

「あ、いやそれは…」

 と言って顔を赤くする箒。何故に?

 

「と、とにかく!葵も明日には元気になるんだ。心配はいらないな、うん」

 いや俺が聞きたかったのはそういう事ではないんだが。

 

「そうだね、まあ今日は葵の分まで僕達は楽しんでこうよ」

 

「うむ、葵が言っていた海の家とやらで不味いラーメンを食べ、食べにくくなっても目を隠して棒でスイカを割り、海に向かって「バカヤロー!」と叫ぶのを代わりにやっておいてやろう。葵はそれらが日本の風物詩で、海に行ったらやらなければいけないとか言ってたからな」

 

「…日本には随分変わった風習があるのですわね」

 いやラウラ、セシリア。確かにそれはある意味間違ってはないんだが…あー説明が難しい!葵、絶対わざとぼかして話してやがるな。

 と、そんな事話してるうちに俺達は目的地に到着した。

 

 

 旅館に到着後、俺の部屋は千冬姉と一緒と山田先生から聞かされた。それは俺が一人部屋だと就寝時間後部屋に突撃する女子が必ず出るからとか。…まあたしかに千冬姉と一緒だとそんなことする度胸の奴はいないか。ちなみに今回葵は一緒では無い。聞いた限りでは箒とのほほんさん達と一緒らしい。

 

「いや~アオアオと同室なんて楽しみだよ~。風邪治ったらたくさんガールズトークやりたいよ~」

 

「本当よね。こういう機会でも無いと青崎さんいつも織斑君といるし。ま、それは篠ノ之さんも同じだけど」

 

「全くそうよね~。ねえ篠ノ之さん、織斑君との昔話よろしくね~」

 

「う、ああ」

 おお箒、のほほんさん達に押されてるなあ。しかし安心した。入学したての頃とは随分変わったな箒も。

 

「…おい一夏、何故娘を見る父親みたいな目で私を見ている」

 

「気のせいだ」

 そう言った後、旅館の前に一台の救急車が現れた。もしかしてと思ったら、案の定そこからストレッチャーに乗せられた葵と千冬姉が出て来た。

 

「…救急車で来たのか」

 

「確かに寝ながら運べますけど…」

 救急車から出た葵は熟睡している。顔色も朝よりもかなり良くなっており、これならすぐに元気になりそうだ。葵はそのまま旅館の一室に運ばれ、そして救急車から降りた千冬姉と一緒に、俺は旅館の女将から部屋を案内された。部屋までの道中俺は千冬姉に葵の容体を聞いてみたら、注射と薬を飲んだらかなり容体は良くなっていて、明日には山田先生の言うとおり元気になるとの事らしい。いや本当に安心した。

 早く元気になれよ。

 

 

 部屋着くと千冬姉は開口一番に、

「まあ部屋割の都合上、お前と私は一緒の部屋になったが、あくまで私が教員だと言う事を忘れるなよ織斑」

 と言ってきた。相変わらず仕事人間だな。

 

「わかってますよ織斑先生」

 

「ならばいい」

 …う~ん、千冬姉少し硬すぎないかな。部屋で二人っきりの時位は千冬姉と呼んでも良いじゃんか。

 

「公私の区別はつけんといかん」

 …相変わらず俺の考えてる事は何故か読まれてるし。その後俺は千冬姉から風呂場等のいくつかの注意事項を聞かされた。

 

「まあ以上だ。さて初日は自由時間だ。着替えて海にでも行ってこい」

 

「織斑先生は行かないんですが?」

 

「私は他の先生達と連絡なり色々ある。まあ、どこかの弟がせっかく水着を選んでくれたからな。暇になったら海に行こうと思ってる」

 おお、千冬姉もやっぱり泳ぎに行くんだ。しかし千冬姉の水着姿か……、何年振りかなあ。

 

「では私は仕事に戻る。織斑お前は遊んで来い」

 

「わかりました織斑先生」

 千冬姉に行ってきますと言って、俺は水着を片手に海へ行く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ箒、これどう思う?」

 

「知らん」

 更衣室がある別館に行く途中箒と出会い、一緒に歩いてたんだがその道中に珍妙な物があった。ウサ耳。どうみてもウサ耳にしか見えない物が地面に埋まっている。そしてその横には「引っ張ってください」と書かれた看板。…まあこんなことする人はあの人位しかいないよな。

 

「なあ箒これ」

 

「…」

 無言で先に行ってしまう箒。う~ん、相変わらずだなあ。しかしやっぱり箒もこのウサ耳は……箒の姉、束さんだと確信してるんだな。

 

「まあ他の誰かが抜いたら面倒な事があるだろうし……」

 そう思って俺はウサ耳を抜く事にした。えい、ってあれ?てっきり地面の下に束さんがいるかと思ったのに、ウサ耳の下は何も無かった。

 

「どうしましたの一夏さん、そんな物持って?」

 

「いやウサ耳が地面にはえててそれを抜いたんだが下に何も無くて」

 

「はい?」

 わけわからんって顔をするセシリア。…うん、俺も言ってて支離滅裂だと思う。

 

「いや束さんが」

 しかし俺が言い終わる前に、空から巨大なニンジンが落ちてきて、俺達の前に突き刺さった。

 

「な、なんですの!」

 セシリアがニンジンに向かって叫ぶ。そのニンジンだが急に二つに割れ、

 

「ふっふっふ、天才の罠にひっかっかたねいっくん!」

 と叫びながら、世界一の天才、束さんが現れた。…しっかしなんていうファンシーな格好だろう。なんだろう、ゴスロリ系なんかなこういうのは? 千冬姉なら絶対着ないだろうな。いや束さん似合ってるからいいんだけど。束さんは俺から先程抜いたウサ耳を取り、頭に装着した。

 

「いや~久しぶり!本当に久しぶりだね-!元気だったいっくん。で、ところで箒ちゃんはどこかな?さっきまで一緒だったよね?」

 

「あ~それなんですが」

 まさか束さんと会いたくないから逃げたとは言えないし、どうしようかと思ったら

 

「まあ私にかかればあっという間に見つける事はできるけどね~。じゃあいっくん、名残惜しいけど先に箒ちゃんに用があるからまたね~」

 と言って走り去ってしまった。相変わらずゴーイングマイウェイな人だ。

 

「あの一夏さん、先ほどの方は一体…?」

 

「ああ、さっきの人が箒の姉の篠ノ之束さんだよ」

 

「えええ!さっきの方が箒さんのお姉さまで、現在各国が探してる行方不明中の篠ノ之博士?!」

 かなり驚いてるセシリア。まあそうだよな。ISを開発した天才科学者があんな人だとは普通思わないよな。

 

「そうそういっくん」

 

「どわあ!」

 いつの間にかまたこっちに戻ってきた束さん。気配感じなかったぞ今!

 

「たしかあーちゃん風邪ひいたんだよね。だったらこれ渡しといてね~」

 と言って俺に紙袋渡して、また何処かに行ってしまった。ていうか何で葵が風邪引いているって束さん知ってるんだろう?まあ束さんだからで納得するけど。

 

「あーちゃんとはもしかして…」

 

「ああ、葵の事だよ。束さん、昔から葵の事はあーちゃんって呼んでるんだよ」

 …多分これ薬だよな?まあ束さんが変な物渡すとは思えないし。

 

「じゃあ俺一旦葵のとこまで行ってこれ渡してくるよ。セシリアは先に行っててくれ」

 

「あ、ちょっと待ってください一夏さん!」

 その後俺はセシリアにサンオイルを塗る約束をさせられた。友達に縫ってもらえばいいのにどうして俺なんだろう?

 

 

 そして俺は葵の部屋まで行った。そして部屋に入ろうとしたら、

 

「こら貴方!寝てる女の子の部屋に何入ろうとしてるの!」

 …部屋の中にいた旅館の従業員に止められた。どうやらこの人は葵の看病を任されてるらしい

 

「いや友達の見舞いに」

 

「何言ってるの! 気持ちはわかるけど女の子の寝顔を見て良い理由にはならないわよ。さあさあ行った行った!」

 と俺を部屋から遠ざけようとする従業員さん。いやちょっと待ってくれ!

 

「わかりましたよ! 部屋には入りません! ですからお願いですがこれを葵の部屋に置いてくれませんか」

 と言って俺は束さんがくれた紙袋と伝言を書いたメモを従業員さんに渡した。

 

「まあそれならいいでしょう」

 と言って俺から紙袋とメモを受け取る従業員さん。そして俺を見てニヤっと笑い、

 

「ところでさっき貴方友達とか言ってたけど、実はこの子の彼氏?」

 と、とんでもない事を聞いてきた。

 

「いや違いますって!」

 

「ふ~ん」

 なんだよこの人。ニヤニヤ俺を見て! なんか恥ずかしくなった俺は逃げるようにその場を後にした。

 

 そして俺は、皆がいる海に向かう事にした。

 

蒼い空、白い雲、輝く太陽が煌めく絶好の海水浴日和の日。そして砂浜にたくさんいる自分と同年代の少女達。しかも全員水着姿。そしてこの場に男は俺だけ。弾とかに今の状況を言ったら呪い殺される事は間違いないだろう。で、そんな中俺こと織斑一夏は現在…砂浜に体を完全に埋められ頭だけ出ている状態になっている。そして俺の前方にはラウラ。ラウラは目隠しをされ、手には…木刀を持っている。

 

「さて、葵が言っていた日本の風物詩とやらを体験するか。割るのはスイカではないが」

 

「頑張ってくださいラウラさん!わたくし達がちゃんと誘導してさしあげますわ」

 

「ラウラ―!その馬鹿スイカ粉々にするのよー!」

 

「まあ割っても食べれないけどね」

 ラウラに声援をかけるセシリア、鈴、シャル。皆その目は怒気を孕んでいる。セシリア達の後ろでは千冬姉が呆れた顔で、山田先生はオロオロしながら俺とラウラを見て、そして…箒は顔を真っ赤にして俺を見ている。

 おかしいな、何でこんなことになったんだろう?

 

 

 

 

 葵に束さんから渡された物を届けた後、俺は水着に着替え海に向かった。すでに多くの生徒が着替えて海に来ており、かなり賑やかになっている。俺は数人の女子からビーチバレーやサンオイル塗って等の誘いを受けたりした。そんな中水着に着替えた鈴が俺の前に現れ、

 

「どう一夏、あたしの水着姿!」

 と胸を張って俺に水着姿を見せつけた。…うん相変わらず胸ないなと言ったら殺されるな。しかし鈴はタンキニタイプの水着か。うん似合ってるな。

 

「おお鈴、その水着似合ってて可愛いじゃんか」

 

「か、可愛い!」

 やたらと笑顔になって嬉しがる鈴。よし、俺の返事は間違ってはないようだな。前買い物行った時葵がこういう場合は可愛いとか言うのが男の嗜みとか言ってたし。

 

 そしてその後も

 

「どうですか一夏さん、わたくしのこの姿は!」

 

「どう一夏、前も見せたけど…似合ってる?」

 

「一、一夏!わ、笑いたければ笑え!」

 と水着の感想を聞いてきたセシリア、シャル、ラウラに

 

「おお、似合ってて可愛いぜ!」

 と答えていった。まあ実際に似合ってて可愛いし嘘は言ってない。しかしラウラの水着姿は普段と違った印象を受けて…いや本当に可愛いと思えた。ツインテールがまた良い感じに映えてる。しかしラウラに感想言った辺りで鈴が、

 

「ねえ一夏。あんたまさか取りあえず似合ってるとか可愛いとか言えばいいと思って無い?」

 と目を座らせて俺に聞いてきた。

 

「バ、バカ違う!本当に似合ってるし可愛いと思ったからそう言ってるんだよ!」

 

「ふ~ん」

 まだ疑いの目を向ける鈴。いやまあ…そう言えば大丈夫だろと思ってたのは事実だけどな。あ、鈴の話聞いてラウラ達も俺にそんな目を向けている。

 

「何をしてるんだお前らは?」

 

「皆仲良く遊んでますか~」

 俺が皆から不審な視線にさらされてる時、千冬姉と山田先生が俺達の前に現れた。あ、千冬姉あの水着ちゃんと着てる。…うん、弟の俺から見ても凄く似合ってる。いや弟じゃなかったらマジでヤバい位千冬姉の水着姿は…綺麗だ。う~ん、千冬姉胸大きいなこうして見ると。しかも形良いし。山田先生もビキニの水着を着てるんだけど、俺の視線は千冬姉に注がれてしまう。

 

「…何を無言でじっと見てるんだ貴様」

 

「グハッ!」

 若干顔が赤くなった千冬姉に俺は頭を叩かれた。うん確かにちょっと見過ぎてた。しかし白でなくやっぱ黒のビキニが似合うと思った俺の直感は正しかった。

 

「はい一夏。ずばり織斑先生の水着姿の感想は?」

 

「凄く似合ってて綺麗だ」

 鈴が横から俺に聞いてきて、俺は無意識に答えた。

 

「へ~、あたし達は可愛いだけど織斑先生の感想は綺麗なんだ」

 と言って俺を睨む鈴。いやちょっと待て!

 

「いや鈴!それは深読みしすぎだ!大体千、いや織斑先生は可愛いより綺麗の方が的確だろ!」

 

「うむ、確かに教官は綺麗だ。しかし…」

 

「普通姉にそこまではっきり言いますかしら?」

 

「ていうか一夏完全に見惚れてたよね。僕達と比べて明らかに反応違ったし」

 うわ、なんか千冬姉の感想で皆の不満がいきなり爆発しやがった。

 

「いやよかったですねえ織斑先生。織斑君から綺麗とか言われて」「ふん、別にどうでもいい」「照れなくてもいいじゃありませんか~」「山田先生、ここで生徒達に砂浜での格闘術を披露しましょう。相手をお願いします」「ま。待ってください織斑先生!今は少ない休憩を満喫しましょう!」

 

 なんか千冬姉と山田先生が言いあってるが取りあえず無視。まあその後は「まあ一夏はシスコンだし」というかなり不名誉な理由で皆が勝手に納得した。…いやまあここで下手に反論したらまたややこしくなるから黙ったけどさ。

 

 その後ビーチバレー等して一通り遊んだ後、お腹が空いたので海の家で何か食べる事にした。セシリア達は勿論、千冬姉と山田先生も一緒に俺達と食べる事となった。

 

「さて、海の家で不味いラーメンとやらを食べるとするか」

 

「ラウラ、わかってて不味い物食べるの?」

 

「しかしそれが日本の風物詩らしいからな」

 

「もしかして葵さん出鱈目を言ってるのでは?山田先生、本当ですの?」

 

「え、え~とまあ確かに青崎さんの言ってる事は間違っては無いんですが~」

 どう言えばいいのか迷ってる山田先生。うん、確かに間違ってはないからややこしいんだよなあ。

 

「ところで織斑、篠ノ之はどうした。いつもお前達と一緒にいるのに姿が見えないが?」

 

「いや俺も知らないんです。先に行ったはずなんですが。…ここに来る前に束さんに会いまして箒を探してましたから…束さんから逃げてるかもしれません」

 

「束が?あいつもうここに来てるのか。なるほど、納得した」

 

「え、もうってどういう」

 と千冬姉と話してたら海の家の前で話題の人物の箒が息を荒くして膝に手をついていた。…どうやら束さんから逃げ切ったようだな。しかし箒の奴このクソ熱い中パーカーなんか着てる。

 

「あ、箒どうしたのよこんなに息荒くして。てかさっきから姿見えなかったけど何処行ってたわけ?」

 

「はあはあ、鈴、いや少し悪魔から逃げていた」

 疲労困憊って顔で答える箒。いや悪魔はないだろ。

 

「なにがあったのかはわかりませんが、かなりお疲れのようですわね。箒さん、ちょうどわたくし達もこの海の家で食事をとりますから一緒にどうですか。休憩いたしましょう」

 

「うむ、一緒に不味いラーメンを食べようではないか」

 

「…ラウラ、やけにラーメンにこだわるね」

 

「あ、ああそうさせてもらう。い、いやその前に」

 と言って俺の前に立つ箒。顔を赤くしてもじもじし、

 

「あ~そ、その」

 と言いながらパーカーに手をかけるもまた手を放したりする。何がしたいんだ?

 

「あ~もうじれったいわね!」

 と言って鈴は箒が着ていたパーカーを強引に剥ぎ取った。

 

「こら鈴!」

 

「一夏に水着の感想ききたいんでしょ。まあどうせ一夏はあたし達と同じ事言うだろうけどね!」

 鈴によってパーカーを取られ、その下に隠された水着はって、え?

 

「あ、あれ箒、その水着は…」

 

「ど、どうだ一夏!私の水着姿は!」

 顔を真っ赤にして聞いてくる箒。白のビキニで機能性重視の作り。その水着は…そう先日水着を買いに行った時、千冬姉が黒の水着以外で候補に持ってきたあの水着だった。そしてそれは…あの日思い浮かべた通り箒に、いや想像以上に似合っていた。しかし箒も千冬姉同様、胸デカイな。そしてその白い水着は、箒の体に本当に合っていて…うわヤバい。なんかすごく気恥かしい。

 

「どうなんだ一夏?」

 もはや耳まで真っ赤にして上目遣いで俺に聞いてくる箒。輝く太陽の下その日差しにさらされたその姿に、

 

「ああ、いや、まあなんだ。箒、綺麗だな」

 と思わず言ってしまった。

 

「き、綺麗だと…」

 俺の言葉を聞いてもはやゆでダコのようになった箒。あ、両膝が地面についた。

 

「だ、大丈夫か箒?」

 

「キレイキレイキレイキレイキレイキレイ」

 なんかうわ言のようにキレイを繰り返し言う箒。おいおい大丈夫か?ん、何やら背中から殺気がする。恐る恐る振り向いたら…鬼が四人いました。

 

「ふ~~~~~ん、僕達は可愛いだけど箒だけ綺麗なんだ」

 

「一夏さん、この違いを明確に答えて貰えませんか?」

 

「ねえ、一夏ついでにさっきの態度の違いも教えて貰おうかしら」

 

「私以外の女に私以上の賛辞を送るとはな。嫁失格だな」

 うわなんか凄い怒ってるし!あ、千冬姉そんな呆れ顔しないで助けてくれよ。

 

「知らん。ガキ共の色恋沙汰なぞ興味も無い」

 ひでえ。や、山田先生助けて!

 

「織斑君、頑張ってください」

 いや何ですかその極上の笑顔は!面白がってますよね絶対!

 

「さてと、一夏。懺悔の時間は終わった?」

 こうして俺は鈴達に生き埋めにされる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今一夏はラウラ達にスイカ割りの刑に処されている。理由は一夏が私だけ水着姿を見て綺麗と言ったかららしい。それを聞いて私は頬が緩むのが止まらなくなる。そうかそうか一夏、私だけ特別に綺麗と言ったのか。こ、これはあれか!私は他の皆よりも一夏に対しリードしていると言う事なのか!

 

「ずいぶんと嬉しそうだな篠ノ之」

 と、私の水着を見ながら千冬さんが私に言ってきた。ええ、物凄く嬉しいです。ってあれ? 千冬さん、何故私を睨んでるのですか? いや、これは…私で無く私の水着を睨んでいる?

 

「ところで篠ノ之。その水着ずいぶん似合ってるな。良いセンスをしている」

 

「いえ、これはその実は今日学園を出発する前に葵に呼ばれまして、その時渡されたんです。なんでも一夏にこれ着て見せたら好感度上がる事間違い無しとかあいつが言いまして。しかし、そのどうやら本当だったようで葵に感謝してます」

 

「そうか青崎が…」

 そう言って千冬さんは溜息をついた。え、何故?

 

「いやそうか、なら青崎に礼を言っとくんだな」

 と言って千冬さんは山田先生と一緒に海の家に入っていく。そして一夏達の方を見てみると

 

「「「「待て~~~~~!」」」」

 

「誰がまつかーーーー!」

 どうやらISを展開して生き埋めから脱出した一夏をセシリア達が追いかけてるようだ。長くなりそうだし私も千冬さんと同様に海の家に入る事にしよう。

 

 

 

 

 

 あやうく殺されそうになったりもしたが、まあなんとか落ち着いた鈴、シャル、セシリア、ラウラから半殺しにまけてもらい、ボロボロになったがその後は皆で海の家で食事をし、午後も皆で楽しく遊んで楽しい時間を過ごした。葵に頼まれた写真も、皆ノリノリで撮影されていった。妙に皆俺とツーショット写真を撮ってくれと頼まれたなあ。いやとにかく、葵に頼まれたとはいえ、こうして皆との思い出残せてよかった。

ちなみに

 

「葵の奴嘘を言いおって!凄く美味しいではないかここのラーメンは!」

 

「うん、確かに美味しいね。不味いと覚悟してただけに吃驚だよ」

 

「いえわたくしは不味いですわよ…」

 とセシリアを除き俺も鈴も箒も、葵が言っていた海の家のラーメンは美味いと絶賛した。…まあこれをここ以外で食べたら食えたもんではないんだけどな。

 初日の自由時間、葵がいないのは残念だったが、皆と一緒に良い思い出を俺は作る事が出来た。

 

 

 

 

 

 

「ふ~ん、よかったね楽しそうな思い出が出来て。私は目が覚めたらもう沈んでいく夕陽しか見れなかったけど」

 

「いやそれはお前が」

 

「い~もんい~もんど~せねえ」

 時間も過ぎ、今俺達は大宴会場で夕食を食べている。葵も風邪が完全に治ったとのことなので、俺達と一緒に夕食を食べている。

 

「しかし目が覚めた後束さんがくれた薬を飲んでみたけど、怖い位一瞬にして完治したわ。起きた当初はまだ体だるかったのに。さすが天才としかいいようがないわね」

 

「全くだ。束さんに感謝しないとな」

 

「ああ~~~。どうして私はもっと早く目が覚めなかったのだろ…。せめて昼にでも一回起きて薬を飲んでれば…」 

 

「まあだからしかたないだろ」

 

「う~~~~」

 さっきからずっとこんな調子で嘆いている葵。気持ちはわかるがな。そしてその気持ちを紛らわせようとさっきから恐ろしく食べまくっている。病み上がりだってのに元気なこった。

 

「まあ元気だしなよ葵。海ならまた夏休みにでも皆と一緒にいこうよ」

 可哀想に思ったのか、シャルが葵を元気づけている。

 

「そうですわよ葵さん。夏休みは今日以上に皆と遊びましょう」

 とセシリアも同調。俺もそうだ次また皆と遊ぼうぜと励ました。そのかいもあって葵も次第に元気を取り戻し、

 

「ええ、そうね!次回リベンジすることにする!」

 と笑顔で夏休みになったら遊びにいくと決意した。

 

「ああ、ところで一夏」

 

「なんだよ」

 なにやらニヤニヤした顔で俺に聞いてくる葵。どうやら本当に調子を取り戻してきたなこいつ。

 

「どうだった、皆の水着姿。そしてその中でも箒の水着姿はどうだったかな。凄かったでしょ?」

 

「そういやあれはお前の仕業だったな。ああ、凄かったよ。あやうく殺されかける位な」

 

「は?それは箒に悩殺されかけたってこと?」

 

「違う…まあまた今度話すよ」

 

「そう。わかった。あ、すみませーん、刺し盛り追加で。出来ればトロとかあったら最高です」 

 といってまた食事を再開する葵。しかしさっきから勝手に刺身を追加注文したりしてるけどいいのか? 千冬にバレたらヤバくないか?

 

「そういや箒が着てた水着、もしかしてお前あの時千冬姉と二人だけでどっか行ってたけど、その時買ったのか?」

 

「ピンポーン」

 

「しかし何で箒に?それにもしかして、今日お前が着る予定だった水着って」

 と俺が最後まで言い終わる前に、葵は人差し指を唇に当て、笑顔で言った。

 

「それは秘密です」

 


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