俺と馬鹿と召喚獣   作:友狩

10 / 24
第9話

 Cクラス教室を覗くとまだかなりの生徒が残っていた。

 これは俺の仮説が正しいことを裏付けている。人数を多くすることでカモフラージュをしようとしたのだろうが、その中に紛れて根本がいるのが確認できる。確証はないがおそらくその周りにいるのはBクラスの生徒だろう。

 さらに数学の長谷川先生もつれている。数学なら好都合だ。

 そして丁度いいことに新野さんの姿も見える。

「ここからは俺1人で行かせてくれ」

「理由は?」

「新野さんとは顔見知りだからな、警戒されないだろ? それで、合図をしたら入ってきてくれ。ただしそこで出てくるのは雄二と明久だけだ。ついでにここで決着をつけるつもりだ」

 ここで決着をつければDクラスが設備を壊さなくて済む。無駄なことは出来るだけ省きたい。

「了解だ」

「アタシたちは?」

「根本が逃げるかもしれないからな。そのために残っていてくれ。優衣は竹内先生を呼んできてくれ」

「了解です、兄さん」

「それじゃあ、行ってくる」

 そう言って俺はCクラスに入った。

「新野さんいる?」

 俺は教室に入るなりそう聞いた。

「青山君? わざわざ私の所に来るなんて珍しいね。どうかした?」

「いや、Cクラスの代表って誰かと思って……」

 知っているけど一応確認する。

「唐突だね。代表は小山さんだけど。それがどうかしたの?」

「ちょっと用事があってな」

「ふーん」

 疑問に思いながらも新野さんは代表の小山さんのことを呼びに行ってくれた。

「私に何の用かしら?」

「いや、1つ聞きたいことがあるだけさ」

 少し間をあけて、

「どうしてBクラス代表の根本がこの教室にいるんだ?」

 率直に訊いた。

「……っ!?」

 奥の方でかすかに反応したのが見える。

「……何を急に?」

「今、FクラスとBクラスって戦争中なのは当然知ってるだろ? そこで1つ協定を結んだんだけど、その中で『試召戦争に関するすべてのことを禁止する』っていうのがあるんだ。それで聞いたんだけど、別に何もないならいいんだ」

 そしてさっき反応があった方に向かって、声をかけた。

「出てきなよ、根本」

「なんだよ」

「酷いな、根本。そっちから持ちかけてきた協定なのに破るなんてさ」

「や、破ってなんかいないぞ。俺は友香に会いに来ただけだからな」

 その言い訳は想定済み。先生がいる時点で白を切っても無駄なのに。

 それじゃ、1つカマをかけてみますか。

「そっか、じゃあBクラスの人がいるのはどういうこと?」

「こ、こいつらCクラスに用があった奴らだぞ」

「あ、本当にBクラスの人がいたんだ」

「!?」

 俺の言葉に根本が固まる。

「それで、長谷川先生」

 固まっているので質問する相手を根本から長谷川先生に変える。

「なんでしょう?」

「どうしてこの教室にいるのですか?」

「私は根本君にこの教室にいればFクラスが協定違反をしているのがわかると言われたので、でも先に破ったのはBクラスのようですね」

「そうですか、ありがとうございます」

 質問に答えてくれた長谷川先生に礼を言ってから根本に向き直る。

「根本、何か言い訳は?」

「くっ。だが相手がお前1人ならやれるな」

 タネが割れたからか、いきなり戦闘に入ろうとしてきた。もう少し頭が回るのかと思っていたが違ったようだ。俺が1人で来たと思っているらしいが、敵の前に1人で来るわけがないだろ。

「いつ俺が1人で来たって言った?」

 そういって俺は外に合図を出す。

「なにっ!」

 大袈裟に反応しすぎだよ。このくらい予測できなくてどうするのさ。

「さすがだな、和也」

「全部和也の予想通りだったね」

 指示を出した通り、雄二と明久が姿を現す。

「Fクラス代表と観察処分者の2人かよ。ビビらせやがって。まあいい、ここで決着をつけるか?」

「代表、それは―――」

「最初からそのつもりだ。長谷川先生、召喚許可を」

 後ろにいるBクラスの生徒が何か言おうとしていたのを遮り、俺は長谷川先生に召喚許可を求めた。

「承認します」

『試獣召喚』

 さっき声を発した彼はおそらくDクラス戦での俺の点数を聞いていたのだろう。召喚許可をもらった今、何を言ってももう遅い。それに言い出したのは根本の方だ。俺はそれに応じただけ。もう待ったはない。

 それがわかっているのか彼は少し悔しそうな顔をしながら他のBクラス生徒とともに召喚する。

 大体平均155点ところか。Bクラスの中でも数学が得意な人を連れてきていたのか。

「さすが、Bクラスってだけはあるな。試獣召喚」

「そうだね。試獣召喚」

「明久は雄二の護衛な。戦闘は俺一人でやる。試獣召喚」

 雄二はクラス代表だ。一応護衛はつけておかないと。

 長谷川先生で数学だから出番はないだろう。自分もびっくりの点数だったしな。

 

『Fクラス 青山和也 & 吉井明久 & 坂本雄二

  数学  594点 &  51点 & 97点 』

 

『500点越え!?』

 Cクラス教室にいる生徒全員が驚いていた。

「まあ、和也ならこれくらいじゃないか」

「そうだね。前回は半分以下の時間で400点越えだったし」

 雄二達は驚いてはいないようだけどな。

 そして俺は雄二の点数に驚いていた。97点ってなんだよ…。

 まあいい、そのことは置いておこう。

「全員まとめてかかってこい」

「初めて見たぞ、こんな点数」

 相手は点数差のためか動きを見せない。

「来ないなら撃つよ?」

 俺の武器をちゃんと見ていなかったらしい。呆然としているからとりあえず1人。

「えっ? しまった!」

 先ほどの彼の召喚獣に狙いを定めて引き金を引いた。

 

『Fクラス 青山和也 VS Bクラス 葛城竜司

  数学  594点 VS 0点(戦死)     』

 

 頭を撃ち抜いて戦死。

「全員で一気に取り囲めば倒せるはずだ」

 敵は5体の召喚獣で俺の召喚獣を囲い始める。なんか見たことある光景だな。

「全員で囲んだら全滅するだけなのに。『放電』」

『なにっ!?』

 全員が驚きの声を出す。400点越えているんだから腕輪は警戒しないとだめじゃないか。

 麻痺しているせいで相手の召喚獣は身動きが取れないからその場から動かない。さらに残っている点数が40点前後しかない。点数が高いせいかDクラスの時より威力が上がっている。もしくは割合ダメージなのだろうか。

「根本、あと一撃で全滅するがお前はどうするんだ?」

「くそっ」

 根本はそう言い捨ててドアの方へ走り出す。

 全く俺の考えを読めてない。さっきのやり取りから一切学んでない。逃げた方が強い相手がいるのに。

「俺が逃げられるようにしていると思う?」

 俺の言葉と同時に。

「通しません、竹内先生」

「Bクラス根本恭二に試召戦争を申し込みます」

『試獣召喚』

 うちの最高戦力の2人、優衣と優子さんが根本の前に召喚する。

「なん……だと……」

 

『Fクラス 木下優子 & 青山優衣 

  現国  287点 & 499点 』

 

「ウソだろ……」

 Aクラス上位クラスの2人だからな。生きて外に出ることなんてできるはずがない。

「アタシ達を抜けられると思ってるの?」

「何にしても早く召喚しないと敵前逃亡とみなされて戦死扱いになってしまいますよ?」

 そう、勝てないとわかっていても召喚しないと戦死扱いになってしまう。根本は苦虫を噛み潰したような顔をしながら召喚し、一瞬のうちに優衣に消し飛ばされた。

 こうしてBクラス戦は終結した。

 

 

 優衣が根本の召喚獣を塵にいたことで俺たちFクラスの勝利になった。

「それじゃ、戦後対談といくか。根本」

「……」

「本来なら設備を明け渡してもらい、お前たちには素敵な卓袱台をプレゼントするところだが、条件を呑めば特別に免除してやってもいい」

 Dクラスのときもそうだったからもしやとは思っていたが、やっぱり設備の交換はしないんだな。

「……条件はなんだ」

「条件? それは、根本。お前がAクラスに行って試召戦争の準備ができていると宣言してこい。ただし、宣戦布告はするな。あくまで戦争の意思と準備があるとだけ伝えるんだ」

「……それだけでいいのか?」

 俺から1つあるし、ちょっと口を挟ませてもらおうかな。

「ああ、他に特にな――」

「もう1つ条件、俺に決めさせてくれないか?」

 雄二の言葉を遮って俺は話を持ちかけた。

「ああ。ここで決着がついたのもお前のおかげだしな。問題ないぞ」

「サンキュー。それで条件……の前に一言。根本、あれはやり過ぎだよ。確かに戦術として補給を断つのは効果的だが、これはあくまで学生の戦争、限度があるよ。器物破損として訴えられてもおかしくない。これからは気を付けた方がいい」

「……ああ」

「それで条件だけど君たちが壊した教室を修理してくれ」

「……わかった」

「遺恨は残したくないからな。明日からでいいから修理してくれれば今回の件は水に流す。いいよな、みんな?」

「兄さんがそういうのであれば問題ないです」

 優衣の言葉に他のメンバーも頷く。

「試召戦争の方は終わりだな。Bクラスの連中はもう戻っていいぞ」

 雄二がそういうとBクラスの生徒は自分の教室の方へ戻っていった。

「それでCクラス代表に聞きたいことがあるのだが」

 雄二が小山さんに尋ねた。

「何かしら?」

「俺たちに試召戦争を仕掛ける気はまだあるのか?」

 俺たちがここに来た理由はこれだからな。訊いておかないとまずいだろう。

「無いわよ。もともとこれは恭二の作戦だったからね」

「そうか。それなら提案がある」

「提案?」

「俺たちと3か月間の不可侵条約を結んでほしい」

 さすが雄二、妥当な判断だな。不可侵条約さえ結んでしまえば攻め込まれる心配がなくなるからな。

「不可侵条約?」

「そうだ。というより同盟と言った方がいいか?」

 ピンとこなかったみたいだから俺が補足する。

「……そうね。その提案受けるわ」

 少し考えた後俺たちの提案にのってくれた。

「ありがとう」

「口頭だけだと忘れる可能性があるし、文書に調印しましょう。先生も2人いることだし」

「そうだな」

 2人は文書に調印する。

 これで正式にFクラスとCクラスは3か月間の同盟関係になった。

「これで調印が済んだし今日は帰るか」

「そうだね」

 そういって俺たちはCクラスを後にした。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。