「では、両名共準備はいいですか?」
今日はここ数日の戦争でお世話になっている、Aクラス担任であり学年主任の高橋先生が立会人を務める。
「ああ」
「……問題ない」
一騎討ちの会場はAクラス教室。こっちの方が広いから当然だろう。Fクラスには2クラスもの生徒が入ることすらできないし、入れたとしても密集しすぎて一騎討ちどころの話じゃないだろう。
「それでは1人目の方、どうぞ」
「私から行くわ」
Aクラスからは萩原文乃さんが出てきた。
この一騎討ちのFクラスの出場選手は俺、明久、雄二、ムッツリーニ、優衣、優子さん、愛莉の7人だ。
「愛莉、頼んだ」
「私でいいの?」
「ああ。でも科目は選択するな」
「わかった♪ いってくるね」
「頑張って、愛莉」
Fクラスからは愛莉が出る。
でもなんで愛莉に科目選択をさせないんだ? 愛莉は英語系の2教科以外だとAクラスの相手はきついと思うけど……。
「萩原文乃よ。よろしく」
「吉井愛莉です。よろしく♪」
「吉井って吉井明久君の……」
萩原さんは明久に双子の妹がいるのは知らなかったらしい。
確かに中学からの付き合いなら知らない可能性はある。愛莉から明久に会いに行くことは一度もなかったからだ。
「はい。妹です♪」
「道理で似ているわけね」
「教科は何にしますか?」
高橋先生が科目選択を聞いてくる。
「萩原さんが選んでいいよ♪」
「わかったわ。先生、英語でお願いします。試獣召喚」
「試獣召喚」
英語? ということは、雄二はわかっていて科目選択をさせなかったのか? いつ調べたんだ……。
『Fクラス 吉井愛莉 VS Aクラス 萩原文乃
英語 314点 VS 432点 』
「Fクラスなのに相当高いな」
「俺より点数高いよ」
愛莉の点数にAクラスの生徒は少なからず驚いているようだ。
「結構点数高いのね」
「私も得意科目だから。さすがにAクラスの人にはかなわないけど」
「それじゃ、行くわよ」
「私もっ!」
愛莉の召喚獣は二刀流。それに対しては萩原さんの召喚獣はハンマー。
最初の方は対等にぶつかり合っていたが、操作技術で上に立つ愛莉の二刀流による斬撃により徐々に萩原さんが押されてきた。
「こうなったら! 自分もダメージを受けるけど」
萩原さんの召喚獣の腕輪が光りだし、
「『爆破』」
「えっ?」
『Fクラス 吉井愛莉 VS Aクラス 萩原文乃
英語 0点 VS 184点 』
愛莉の召喚獣が消し飛んだ。
「勝者Aクラス萩原文乃」
「すみません。負けちゃいました」
トボトボと愛莉が戻ってきた。
「ナイスファイトでしたよ」
優衣が愛莉を励ます。
「では次の方どうぞ」
そしてすぐに招集がかかる。
「私が出ます」
Aクラスからは確か……佐藤美穂さん、が出てきた。
「明久、ここは頼んだ。科目も選択していい」
明久が出るのはわかるが、どうして科目選択を?
「え!? ここで僕!?」
「大丈夫だ。俺はお前を信じている」
雄二、本当か?
「ふぅ……。やれやれ、それは僕に本気を出せってこと?」
「ああ。もう隠さなくていいだろ。ここにいる全員にお前の本気を見せてやれ」
なるほど、相手をだますための芝居か。
「吉井って実はすごいやつなのか?」
「そんな話聞いたことないよ」
Aクラスの人達、大丈夫だ。俺も聞いたことがない。最近はちゃんと勉強はしているみたいだけど、Aクラスの人より上なんてことはあり得ない。
「頑張って、お兄ちゃん」
「頑張れ、明久」
だから俺は普通に応援する。
「吉井君、でしたか? あなた、まさか……」
佐藤さんまでさっきの芝居を気にしているのか……。
「あれ、気付いた? 今までの僕は本気なんて出しちゃいない」
「それじゃ……」
「高橋先生、日本史でお願いします」
最近勉強していたのは日本史だったのか。あれは確か世界史だったような気がするが…。
『Fクラス 吉井明久 VS Aクラス 佐藤美穂
日本史 141点 VS 294点 』
「何っ!? 明久が3桁だと!?」
「…………ビックリ」
……お前ら、さっきと言ってることが違うぞ。
「雄二。お前さっき信じているとか言ってたよな」
「あの明久だぞ!?」
「あのって……アイツだって妹に見習って勉強してるんだぞ」
妹にわからないところを聞けないとか言って俺に泣きついてくるから俺も時々教えている。まあ、全部愛莉には知られているけど。
「前よりかなり点数上がりましたね」
「90点位だったもんな」
そう考えると雄二達の言い分もわからなくもない。前回から50点も上がっているのだから驚いても変ではないだろう。代表なんだからちゃんと把握しておいてほしいところではあるけど。
「それじゃ、佐藤さん。いくよっ!」
佐藤さんの召喚獣の武器は鎖刀。リーチや武器強度では明久が不利だ。
リーチで不利だと分かっているのか明久は召喚獣を突撃させる。
「させません」
佐藤さんも接近を阻止しようと鎖刀を振るが、明久が横飛びやしゃがむ、木刀で逸らすなどをして全く当たらない。
明久は避けている間に隙を見て少しずつ点数を削っていた。
「さすが学年一の操作技術」
「回避能力はメタルスライム並みだな」
「雄二。それって褒めているのか?」
「一応な」
「一応なのか」
と言っている間に明久の召喚獣が右肩に攻撃を受けた。
「痛っ」
フィードバックに顔をしかめる明久。かすめた程度とはいえやはり刃物で切られる痛みはかなりの物のようだ。
攻撃を受けたためか仕切り直しのためか、明久は少し距離をとった。
『Fクラス 吉井明久 VS Aクラス 佐藤美穂
日本史 62点 VS 83点 』
150点以上あった点差がほとんどなくなっている。
「点数差がほとんどなくなったな」
「操作だけでダブルスコアの相手にここまでやれるとはな」
操作だけ、まあ確かにそうだな。武器が金属製ですらないからダメージも素手よりある程度だし。
「もしかしたら勝てるかもね」
「そうですね」
「ここっ!」
そんなことを話していたら明久が生んでしまったちょっとした隙を突かれ鎖で召喚獣の動きを封じられてしまった。
「しまった!」
そして―――