俺と馬鹿と召喚獣   作:友狩

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第12話

『Fクラス 吉井明久 VS Aクラス 佐藤美穂

  日本史   0点 VS   0点     』

 

「両者戦死によりこの勝負は引き分け」

 佐藤さんの召喚獣の鎖刀が明久の召喚獣の頭を撥ね飛ばし、明久の召喚獣の木刀が佐藤さんの召喚獣の首に突き刺していた。

「まさかあの状態でカウンターを仕掛けてくるとはさすがです」

「とっさの行動でうまくいってよかったよ」

 明久は佐藤さんと握手をしてから戻ってきた。

「痛っ……。ごめん、勝てなかったよ」

 切られた首が痛むのか首をさすっている。

「いや、気にするな。俺は正直負けると思っていたからな」

 こいつ、ホントはどう思っていたんだ?

 言っていることがコロコロ変わって全く本音がわからない。

「その割に科目選択はさせたよな?」

「それは愛莉にさせなかった分だ」

「私が選んでも結果は同じだったもんね」

 それは確かにそうだったんだが、そもそもどうしてそのことを雄二が知っていたのかが問題だ。

「雄二よ。なぜ愛莉に科目を選択させなかったのじゃ?」

「明久から萩原の得意教科を聞いていたからな」

 明久はいつ聞いたんだ? 中学の時か?

「なんでアキがそんなこと知ってるのよ?」

「明久の中学の同級生だと」

 同級生だからって言っても普通は知らないけどな。それだけ親しかったのか? まさか今朝の萩原さんの反応って……。

「和也君たちは知っていたの?」

「知らないよ?」

「私も知らないですよ」

「俺も」

 俺も優衣も愛莉も明久と一度も同じクラスになっていない。ちなみに愛莉とは3年間同じクラスだった。

「そ、その話は後にして次の戦い始まるよ」

 強引に終わらせたな。これはこっちもかなり怪しい。

「では、三人目の方どうぞ」

 逃げた明久を捕まえて話をもう少し聞こうかと思ったところに高橋先生の呼びかけがあった。仕方ない、あとで聞くか。

「ムッツリーニ」

「…………わかった」

 こっちからはムッツリーニが出る。

 ムッツリーニは総合科目の実に80%の点数を保健体育で獲得しているらしい。単科勝負ならAクラスにすら負けはしないだろう。ちなみに俺がこのことを知ったのはこの戦いが始まる前、出場メンバーを決める時だ。

「じゃ、ボクが行こうかな」

 Aクラスからはえっと誰だったっけ? 大体の人はわかるんだけど見覚えがないな。

「1年の終わりに転校してきた工藤愛子です。よろしくね」

 転校生か。道理で見覚えがないわけだ。

「教科は何にしますか?」

「…………保健体育」

 ムッツリーニの唯一にして最強の武器が選択される。

「土屋君だっけ? 随分と保健体育が得意みたいだね?」

 工藤さんがムッツリーニに話しかける。随分と余裕そうだが、俺同様ムッツリーニの実力を知らないのか? それとも彼女の得意科目が保健体育なのだろうか。

「でも、ボクだってかなり得意なんだよ? ……君と違って、実技で、ね♪」

「…………じ……実技……(ボタボタボタ)」

 って、工藤さん。いきなり何てことを言い出すんだ……。

 そんなこと言ったらムッツリーニが鼻血を――もう出てるな……。

 そして工藤さんは標的を康太からなぜか明久に変えた。

「そっちのキミ、吉井君だっけ? 勉強苦手そうだし、保健体育でよかったらボクが教えてあげようか? もちろん実技……で……」

「フッ。望むとこ―――」

「何を言い出すんだ、工藤さん!」

 とりあえず明久の言葉を遮って工藤さんを止める。

 これ以上はムッツリーニが危険だ。それにAクラス側や後ろのたぶん美波から殺気が出ているからだ。背筋が凍ったぞ……。

 工藤さんは言っている途中で気づいたみたいだけど、明久本人は全く気付いていないみたいだ。いくらなんでも鈍感すぎる。教室内の室温が数度下がったように感じるというのになんで気づかないんだ……。

「そろそろ召喚を開始してください」

 そんな空気を読んだのか、一切気にしていないのか高橋先生が試合開始を促した。

 高橋先生ありがとうございます。というかよくこの殺気に満ちている状況で冷静でいられますね……。

「はーい。試獣召喚っと」

「…………試獣召喚」

 ムッツリーニは小太刀の二刀流。工藤さんは巨大な斧。

「実践派と理論派、どっちが強いか見せてあげるよ」

 腕輪を発動させながら工藤さんは召喚獣を突撃させる。

「…………『加速』」

 ムッツリーニの腕輪が輝き、召喚獣の姿がブレた。

「えっ……?」

「…………加速終了」

 そうムッツリーニがつぶやいた直後、工藤さんの召喚獣が倒れた。

 

『Fクラス 土屋康太 VS Aクラス 工藤愛子

 保健体育 572点 VS 446点     』

 

 保健体育でこの点数か。――ってちょっと待て。この点数が全体の80%だったか。ということは総合だと715点……。残り13教科の平均点が11点。いくらなんでもここまで低いなんてことはないはずだからおそらく誇張されているのだろう。もしこれが本当なら後で勉強会を開催しないといけないかもしれない。

「そ、そんな……」

 工藤さんが床に膝をつく。得意科目で負けたのが相当ショックだったらしい。

 そこにムッツリーニが近づいて行って何か話しているが遠すぎて聞こえなかった。

「次は誰が行くの?」

「今、1勝1敗1分だよね」

「残っておるのは姉上と和也、優衣の3人じゃな」

 雄二も残っているが代表の相手だから今回は数えていないのだろう。

「アタシが行くわ」

「いいのか?」

「アタシが負けても2人が勝ってくれるでしょ?」

「もちろんです」

「負けるつもりは端からない」

「それじゃ、行ってくるわ」

 こっちからは優子さんが出ることになった。

「俺が出るかな」

 Aクラスからは男子生徒が出てきた。

「俺は川越勇人。よろしく」

 勇人か。中学の頃に知り合った仲のいい俺の友人だ。確か歴史系が得意だったはずだ。

 となると科目選択権がAクラスにある以上この勝負は分が悪い。

「木下優子よ。よろしく」

「教科はどうしますか?」

「あなたが決めていいわよ」

「いいのか? じゃあ世界史で」

『試獣召喚』

 

『Fクラス 木下優子 VS Aクラス 川越勇人

  世界史 295点 VS 472点     』

 

「さすがAクラスね」

「まあ、俺の得意教科だから。負けないよ」

 勇人の召喚獣の武器はハルバード。

 リーチでは優子さんのランスといい勝負だがこっちには今まで戦ってきた経験がある。でも相手は400点を超えているから腕輪がある。これがどんなものかによるが経験の差は一切関係なくなってしまう。

「アタシもタダで負けるわけにはいかないわ」

 優子さんが召喚獣を相手の方に走らせる。

「いきなりで悪いけど、腕輪使わせてもらうよ」

 川越君が腕輪を発動した途端、

「えっ? 動きが鈍く……」

 優子さんの召喚獣がゆっくりに、いや止まっているようにも見える。

「これも勝負だから」

 そういって勇人は優子さんの召喚獣にとどめを刺そうと上段から切りかかった。

 

『Fクラス 木下優子 VS Aクラス 川越勇人

  世界史   0点 VS 417点     』

 

「切りかかった瞬間にランスを出してくるとは」

「ただじゃ負けないって言ったでしょ。掠っただけだけど」

 思ったより点数が減っていたのは優子さんがギリギリのところでランスを掠らせたらしい。

 優子さんが戻ってきた。

「……負けたわ」

「お疲れ様」

「お疲れ様じゃ、姉上」

「あとは私たちに任せてください」

「頼んだわ」

「頼まれた」

 

 

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