俺と馬鹿と召喚獣   作:友狩

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第13話

 俺たちは1勝2敗1分と絶対に負けられない状態になってしまった。

「次はどっちが行く?」

「私が行きます」

「そうか。科目選択はどっちがする?」

「兄さんでいいですよ」

「わかった。頑張れ」

 選択するのは俺か。まあ、どの教科でも優衣ならまず負けないだろう。

「それなら僕が相手をしよう」

 Aクラスからは久保利光が出てきた。

 彼がいくら男子のトップだからとはいえ、Aクラス側からだと優衣との相性は最悪のはずだ。優衣は元学年次席。彼よりが順位は2つ上だ。そして得意科目も同じなのだ。

「ここで久保か、姫路が来ると思ったんだが」

 俺もそう思った。

「でもまあ普通に考えたら次だろ」

 優衣に当てて勝てる確率と他の人に当てて勝つ確率を考えたら確実に後者だろう。ということは俺の相手は姫路さんか。

 それより気になるのは萩原さんの後ろに隠れている彼女の方だ。宣戦布告しに来た時はいなかったから休みだと思っていたが、ちゃんといたのか詩織。彼女の方がまだ優衣との相性はいいはずだけど、どうして彼女じゃないんだろう。

 それに俺の知る限り科目を選択できるなら出すべき水瀬も見当たらない。こっちは休みなのか?

 ……そういえば、昨夜は満天の星空。なるほど、いつものあれか。

「教科は何にしますか?」

「総合科目でお願いします」

 久保君が総合科目を選択して、Aクラスの科目選択権がなくなった。優衣相手に総合科目は自殺行為なんだけど。

「それでは、試合開始です」

『試獣召喚』

 

『Fクラス  青山優衣 VS Aクラス 久保利光

 総合科目 4700点 VS 3994点    』

 

「マ、マジか!?」

「代表に匹敵する点数よ!?」

 驚くのも無理はない。成績上位者は貼り出されるけど、点数は書かれていないからな。とはいっても去年よりかなり上がっているんだよな。一体どこまで点数が上がるんだか。

「また点数上がったな」

「学年次席にいたとはいえこれはすごいな」

「点差700点以上なんて」

 勝負は一瞬で決着した。

「これで2勝2敗1分です」

 優衣が戻ってきたところで俺はみんなに提案することにした。

「これで五分五分に戻ったな。それでみんなに1つ提案がある」

「どうしたの?」

「どの教科がいい?」

『えっ?』

 俺の言葉に全員が驚いた。意味が分からなかったのか?

「だからどの教科で戦ってほしい?」

「何を言い出すんだ!?」

「和也君の得意科目じゃないの?」

 得意科目と言われると数学だ。でも、試召戦争は今までずっと数学だったのだ。だからほかの科目がいい。

「数学でいいのか? それだとつまらなくて」

「つまらないという問題じゃないじゃろ!」

「まぁ、みんながそういうならそれで―――」

「……総合科目」

 行くかと言おうとしたが、優子さんが俺の言葉を遮ってそういった。

「総合科目?」

「和也君、成績まだ言ってないわよね?」

「そういえば」

「まだ」

「聞いておらんかったのう」

 そういえばあまりにもあれだったから言わなかったんだっけ。というか、なんでリレーして話しているんだ。

「わかった。総合科目な」

「それでは6戦目。代表者は前へ」

 そこで高橋先生から呼び掛けがあった。 

「了解です」

 Fクラスはもちろん俺だ。

「あ、は、はいっ。私ですっ」

 Aクラスからは、予想通り姫路さんが出てきた。

「久しぶりだな、姫路さん」

「お久しぶりです。中学校以来ですね」

「同じ学校にいるのに、な」

「そうですね」

「対戦教科は何にしますか?」

 それ優子さんの要望通りに。

「総合科目で」

 

 

 優子さんが要望した通りに和也は総合科目を選択したけど、和也が負けたらFクラスの勝ちはなくなる。相手は学年次席の姫路さんなのに!!

「雄二。なんで止めなかったんだ!!」

「止める前に行っちまったんだから仕方ないだろ」

「2人は和也を信じておらんのか?」

「信じてるけど、相手は学年次席の姫路さんだよ!?」

 正確には3位だけど。

 いくら数学が良くても総合科目じゃ勝ち目なんて。

「大丈夫ですよ」

 さっきまで黙っていた優衣ちゃんが口を開いた。

 大丈夫って何が大丈夫なの?

「今回、兄さんに負けましたから」

『えっ?』

 一瞬、彼女が何を言ったのかわからなかった。

 兄さんに負けた……和也に負けた?

「それってどういうこと?」

 優子さんが僕らの代わりに聞いてくれた。

「見ていればわかります」

 見ていればわかるって……まさかっ!

「それでは試合開始です」

「試獣召喚」

「今回は真面目にやったからな。試獣召喚」

 先生の合図で2人が召喚獣を召喚する。

 

『Fクラス  青山和也 VS Aクラス 姫路瑞希

 総合科目 5484点 VS 4406点    』

 

「……全く兄さんは限度というのを知らないのですか」

 5500点弱!?

「代表より点数が高い」

「学年次席に1000点以上の差を」

「あの兄妹どうなってるんだ」

 Aクラスの人たちも驚いているけどぼくたちの方がその数倍は驚いていると思う。

 今までの和也の点数は全教科120点ジャストだった。でもこの間のBクラス戦の時数学で600点弱の点数を出したりしてたけど、総合科目まで。

「こんなに点数高かったの?」

「明久、お前幼馴染なのに知らなかったのか?」

「中学の時は全教科で平均点より少し上って感じなだけだったよ」

 それに幼馴染だからって何でも知っているわけじゃない。僕にだって知らないことはたくさんあるんだ。小5の春に僕達のいる睦月小に転校してきたあの時だって。

 

 

「とりあえず、1発」

 俺は召喚獣を操作して銃弾を1発姫路さんの召喚獣に向けて撃った。

「あまいです」

 が、簡単にガードされてしまう。やはり高点数なだけはある、武器側面でガードして傷1つはいらないとは……。

「やっぱり一対一だと銃は使いにくいな」

 そういって俺は武器の構えを変える。

「こっちからも行きます」

 姫路さんが召喚獣を突撃させてきた。でも、

「えっ? 青山君の召喚獣がいない?」

「悪いがゲームセットだ」

 

『Fクラス  青山和也 VS Aクラス 姫路瑞希

 総合科目 5439点 VS 0点       』

 

 俺の召喚獣はすでに姫路さんの召喚獣の後ろにいた。

「勝者Fクラス、青山和也」

「えっ? 何が?」

「ちょっと腕輪を使っただけだ」

「そういうこと、ですか。油断しちゃいました」

「時間かけると武器とか装備の差で負けそうだったからな」

 拳銃と短剣で真面目に戦ってもいいが出来るだけ点数を消費したくないというのが本音だ。それに拳銃だと頭か胸にでも当てない限り時間がかかり過ぎてしまう。たとえ当たったとしてもあの鎧を貫いてダメージになるかも怪しい。短剣だけではあの大剣に力負けっしてしまうし、この手しかなかったというのもある。

「それじゃ」

「はい」

 俺がFクラスのところに戻ると、

「お疲れ様です、兄さん」

「まさかあそこまで点数が高いとはな」

「学年主席以上なんて驚いたわ」

「そ、そうか」

 予想外の賛辞が待っていた。なんか少し照れくさい。

「でも、なんで隠していたのさ?」

「俺は隠していたつもりはない。今まで真面目に受けたことがなかったからわからなかっただけだ」

 これを言ったらたぶん、確実に――

「真面目に受けてないってどういうことなの?」

 やっぱりこの質問が来たか。どう応えようか?

「私の予想だとあれが原因ですよね?」

「あれってこの間言っていた『リミッター』のことかしら?」

 俺が迷っていると優衣が先に答えを言ってくれた。

 やっぱり優衣はわかっていたのか。優子さんもそれであってる。

「その通りだ」

 否定する理由もないから全面肯定した。

「あと補足しておくけど、今回の点数はまぐれだぞ?」

 今回は山が当たって暗記科目が異常にできたからな。暗記はそこまで得意じゃないのに400点越えるとかありえないし。

「そうなのか?」

「たぶん最低でも800~1000点は下がると思う」

「それでもさっきの姫路さんより高いよね?」

「あくまで最低だって言ってるだろ」

 成績については定期試験でもう一回か。

 何にしてもこれでFクラスがリードをとれたわけだ。

「最後の人、前へ」

「……はい」

 相手は学年主席の霧島さん。

「俺の出番だな」

 こっちからはもちろん、雄二。

「教科はどうしますか?」

「教科は日本史、内容は小学生レベルで方式は100点満点の上限ありのテスト対決」

 

  ざわ……ざわ……

 

 雄二の言葉で、Aクラスにざわめきが生まれる。Fクラスは今朝雄二が説明していたので静かなままだ。

「テスト対決?」

「さらに上限ありだって」

「しかも小学生レベルだから満点確実だぞ」

「注意力と集中力の勝負になるよ」

「ただでさえFクラスにリーチがかかっているのに」

 俺が姫路さんに勝った時点でAクラスの勝ちはなくなっている。そのためかAクラス側の動揺も大きいみたいだ。

「わかりました。そうなると問題を用意しなくてはいけませんね。少しこのまま待っていてください」

 一度ノートパソコンを閉じ、教室から出ていく。

 高橋先生のことだ、小学生レベルのテストも資料として持っていたりするのだろう。

「雄二、後は任せたよ」

 明久が雄二の手を握る。

「ああ。任された」

「…………後は頼んだ」

 ムッツリーニが歩み寄り、ピースサインを雄二に向ける。

「頑張ってね、雄二君」

「ここまで来たのだから頑張りなさいよ」

「頑張ってください」

「頑張るのじゃぞ、雄二」

「お前らの力には随分助けられた。感謝している」

 雄二がみんなの励ましにこたえる。俺は何て言おうか……まあ普通に簡単な感じでいいか。

「雄二、しくじるなよ」

「わかってるさ」

 

「では、最後の勝負、日本史を行います。霧島さんと坂本君は視聴覚室に向かって下さい」

 戻ってきた高橋先生がクラス代表の2人に話しかける。日本史のテスト対決は視聴覚室で行うらしい。

「……はい」

「じゃ、行ってくるか」

 2人が教室を出ていく。試験の様子は、Aクラスの巨大ディスプレイで見ることができる。

『では、始めてください』

 画面の向こうで担当の先生が開始の合図をした。

 

 

「いよいよだね、お兄ちゃん」

「そうだね」

「これで、あの問題が出ていなかったら……」

「十中八九、雄二が負けるだろ」

 和也の言うとおり出ていなかったらブランクがある雄二が負けると思う。

「出ておれば」

「うん」

 もし出ていたら、僕らの勝ちだ。

 誰もが固唾を飲んで見守る中、ディスプレイに問題が映し出される。その問題が出ているのかな?

 

《次の( )に正しい年号を記入しなさい》

(  )年 平城京遷都

(  )年 平安京遷都

 

 流石は小学生レベルの問題。僕でも満点がとれそうだ。

 

(  )年 鎌倉幕府設立

(  )年 大化の改新

 

『あ……!!』

 思わず口から声が出てしまった。

「お兄ちゃんっ」

「うん」

「これでウチら……!」

「うん。これで僕らの卓袱台が」

『システムデスクに!!』

「勝ったね、和也」

 さっきまで隣にいた和也に話しかけた。

「あれ、和也?」

 でも返事はなく、横を見るとそこには誰もいなかった。

「お兄ちゃん、どうしたの?」

「さっきまでここにいたんだけど」

「和也なら向こうで優衣と話しておるぞ」

 秀吉が指差した方向を見ると真剣な顔をした2人がいた。何の話をしているんだろう?

「そっか。それはともかくこれで僕らの勝ちだ!!」

『うぉぉぉぉっ!』

 教室を揺るがすようなFクラスの歓喜の声。

 この試験の結果は2人が戻ってきてから公開するらしい。

 

 そして2人が戻ってきて結果が出る。

 その結果は―――

 

 

 

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