第15話
Aクラス戦から数日後……。
優衣と一緒に学校に向かっていると、校門の前で雄二に会った。
「おはよう雄二」
「おはようございます」
「おう、おはよう2人とも」
そういえば気になっていたけど今まで聞けなかったことを訊いてみるか。幸い周りにはFFF団の連中はいないみたいだしな。
「なあ、雄二」
「なんだ?」
「あの後、霧島さんとはどうなったんだ?」
「ぶっ!? いきなりなんてことを言いやがる!」
俺の言葉に雄二は驚くと同時にきょろきょろと見まわし始めた。
俺が確認してからこの話題を出したというのに警戒しすぎじゃないか?
Aクラス戦の後雄二は霧島さんと付き合うことになった。あの時、雄二側に何かあるのかと思っていたのだがまさか霧島さんが雄二のことが好きだったとは思わなかった。その直後にFFF団が襲ってきたのは言うまでもないな……。
おかげでクラスでは奴らが襲ってくるからこの話題は出せない。だからここで追及してみるのもありか。
「その反応からすると何かあったのか?」
と、そのタイミングで俺の携帯にメールが来た。
「か、和也。携帯鳴ってるぞ」
雄二がこれ以上聞かれないようにするためか、すぐに指摘してきた。
何というタイミング、天は雄二の味方なのか?
仕方がない。このことはあとで霧島さんの方に聞くとして携帯を出して確認する。
詩織からだ。珍しいな、向こうからメールしてくるなんて。
『今日一緒に帰りませんか?』
メールにはこの12文字が書かれていただけだった。詩織のことだ、このメールを送るのに相当時間をかけたんじゃないか。
それにしてもこれ、どういう意味だ? 今日はなんかあったか?
「誰からだ?」
「誰からですか?」
雄二と優衣、2人が同時に聞いてくる。
別に隠す必要もないし、どうせ優衣には後で話さなきゃならないから、ここは言っておいた方が面倒なことにならないだろう。
「詩織からだよ」
「詩織ってAクラスの神崎のことか?」
「そうだよ」
「(いつの間に名前で呼び合うようになっていたのですか)」
「優衣?」
優衣が小声で何かつぶやいているが全く聞こえなかった。少し黒いオーラが見えた気がするが気のせいだろう。
「Aクラス戦の時も思ったが、どうして神崎と知り合いなんだ? 去年もクラスも違ったし特に接点なかっただろ」
確かに雄二の言うとおり学校での接点はない。俺が詩織と会ったのは学校の外なのだから。
「話すと長いから簡潔に言うと俺が事故から彼女を助けたってところか」
俺が詩織と出会ったのはえっと……ちょうど1年前か。俺の家の近くの交差点で信号待ちをしている彼女にスリップした思われる乗用車が突っ込んできたところを間一髪で助けた。彼女が車に気が付かなかったのは引っ越してきたばかりで迷ってしまいパニックに陥ってしまっていたかららしい。
1年前……なるほどそういうことか。いや、でも、だからって、あれ?
「それはどういう意味だ?」
「どういう意味も何もそのままの意味だぞ」
「そういえば去年、腕骨折していたな」
「詩織抱えて飛んで着地に失敗したせいでな。相手がトラックじゃなくてよかったよ」
その時は優衣にしこたま怒られた。だからこのことがあってからは自重している。これ以上優衣に心配させたくないし、迷惑もかけたくないからだ。
「そういう問題じゃないだろ」
「何が?」
「トラックだろうが乗用車だろうが下手したら死んでるだろ」
「仕方ないだろ。体が動いたんだから」
そう、ただ勝手に体が動いただけ。その直前に見えたものが俺を動かしたのは間違いないけど。
『なっ、なんじゃこりゃぁぁ!!』
唐突に校舎の方から叫び声がした。
「今のは?」
「たぶん明久君ですよね?」
「とりあえず行ってみるか」
☆ ☆ ☆
3人で下駄箱に向かうと、さっきの声の主の明久が何かを持って固まっていた。
「どうした、明久?」
「さっきの叫び声はどうしたんだ?」
「おわぁぁ!!」
声をかけた途端明久は大声を上げて1mほど飛び退いた。後ろから声をかけたからとはいえ、いくらなんでも驚き過ぎな気がする。
そして手に持っていた何かを鞄にしまった。しまったというより隠したと言った方がいいか。
「あ、ああ。なんだ、雄二達か。おはよう」
「おう」
「おはよう」
「おはようございます」
おはようの三段活用?みたいな感じになってる。
「き、今日はいい天気だね! すごくいいことがありそうだよね!!」
突然わけのわからないことを言い出す明久。
「何を動揺している?」
「べべべ別に動揺ななななんてししししてにゃいよ!?」
「思いっきり動揺しているだろ」
この吃り具合と噛んでいるというのに、動揺してないとか嘘にもほどがあるだろ……。
「さっき、手紙のようなものを隠していましたが……」
「っ!?」
明久が手紙という単語に少し反応する。
手紙・下駄箱・さっきの叫び声……なるほど、ラブレターか。
……いや、待て。どうしてラブレターを貰って叫ぶ必要があるんだ? 叫んだら普通に注目される。しかもあいつらがいるこの学校でそれは完全に死亡フラグだ。明久は死にたいのか?
「た、ただのプリントだよ! それよりもそろそろHRが始まるから急ごう!」
そう言って明久は足元にあったサッカーゴールのネットを担いで走り出した。
今頃になって気が付いたが観察処分者の仕事をしていたらしい。だから横に愛莉がいなかったのか。
「もうそんな時間になっていたのか」
「校内にいるのに遅刻にされるのも癪だしな」
「はい。私たちも急ぎましょう」
明久の叫び声のせいで話がうやむやになって良かったのか悪かったのか。
そういえばメールの返信どうしよう。さすがにもう電源切ってるよな……。