俺と馬鹿と召喚獣   作:友狩

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第21話

 気が付くと俺は車に乗っていた。

 さっきまで学園長室にいたはずなんだが、どうしてこんなところに座っているんだ? それにどうして車に乗っているのに音がないのだろう。夢にしてはやけにリアルだし。

 そういえばこんなことは昔から何度かあった。それは決まってリミッターを外してそのまま気を失った時だ。ということは今回もまたやってしまったらしい。

 ただ、いつもは誰か知らない5人の少年少女が遊んでいるのを眺めるだけなのに、今回は俺自身が行動している。

 いつもと違うことに戸惑いながら顔を上げるとそこには30代くらいの男女が運転席と助手席に座っていた。2人とも楽しそうに笑っている。

 俺はその2人の横顔に見覚えが無かった。でもどこか懐かしい感じがするのはなぜだろう。

 そもそもこれは本当に夢なのか、どうして俺は思考することが出来ているんだ?

 そんな疑問が頭の中を渦巻いた。

 そこまで考えてバックミラーに映った自分を見て体が縮んでいることに気が付いた。見間違えるはずもないこの少年は俺だ。大体小学校中学年くらいだろうか。今の俺から逆算すると大体7,8年くらい前の俺だろう。

 まさかと思い時計に目を向けると、7月24日、13時7分。

 時期が合った。完全に一致した。

 でもおかしい。どうして俺はここにいるんだ?

 確かに俺が7年前の7月24日に事故に遭ったのは聞いている。でもそれは俺が車に撥ねられたというものだ。それならどうして俺はその日に車に乗っている? この車から降りたところで俺は轢かれたのか? それなら彼らは一体どこの誰なんだ?

 そう考えた途端、目の前が真っ暗になった。

 

 

 そこで目が覚めた。

 最初に目に入ってきたのは真っ白な天井。そして消毒液のようなにおいがする。

 ここはどこだ? 自分の部屋ではないのは確かだが。

「目が覚めましたか。思ったより早くてよかったです。あと丸一日は目を覚まさないかと思いました」

 誰もいないのかと思ったが、優衣の声がし、その顔が俺の顔を覗き込んだ。

「ここは?」

「文月病院ですよ」

 そうか。そういえば学園長室で倒れたんだった。それで俺はここに運び込まれたのか。

 ……ん?

「文月病院……」

 俺はそう繰り返してから、窓の外を見る。雲ひとつない快晴、見たところ昼間だ。

 それを確認するために脇の時計を確認する。午前10時28分。

「俺がぶっ倒れてから何日たった?」

「1日ですよ」

 となると今日は平日のはずだ。にもかかわらず優衣は私服姿でここにいる。制服なら遅れてでも行くのかと思うがこれではどう考えても……。

「……学校はどうした?」

「休みましたよ?」

 平然とそう答えてきやがった。

 厨房班のトップだというのにこいつは……。

「さすがに今日は学校に行こうと思いましたよ? でも明久君が今日は兄さんの所にいるべきだ、こっちは僕達がやるからって」

 俺のため息が聞こえたのかそんなことを言ってきた。

 なるほど、明久ならそう言うのもあり得るな。こういうことに気が回るなら日頃からもっとちゃんとしてほしい。

「……そういうことか」

「そういうことです。それで、兄さん」

「なんだ?」

「召喚大会に出るそうですね。でも、1人足りないとか」

 ……どこで情報が漏れたんだ? 明久達か?

「……それがどうかしたのか?」

「このままではだれか1人が大会に出られませんよね?」

 確かに優衣の言うとおり1人では大会に出られない。俺達の誰かが出られないとなるとその時点で教室の改修がなかったことになるだろう。俺は学園長が隠していることが何か大体わかっているからそれで脅すという手もあるが、出来れば使いたくない。

 そしてなぜかさっきから俺のことをちらちらと見ている優衣。

 この話をしてきた時に薄々気がついてはいたが……。

「……俺とペアで出たいのか?」

 俺がそう言った瞬間、優衣の頭の上にハートマークが出た――様な気がした。ついに幻覚まで見せるようになったのかこいつは……。

 こう反応するのはわかっていたが、少し困った。優衣だと強すぎる。

「ペアになるのはいいが、俺は優勝しないぞ?」

「どういうことですか?」

 俺の答えに優衣は当然の疑問をぶつけてくる。

 さて、どう説明するか。

 学園長との取引は、俺達が決勝に出場することだ。そして学園長は言っていなかったが、明久雄二ペアが優勝し、俺とそのペアが準優勝というシナリオなはずだ。

 なにせ……ってこれは秘密だった。しかしこれを言わずにどう説明するか……。

 …………だめだ、どうでっち上げてもこいつに疑われない説明ができる気がしない。

「……絶対に誰にも言うなよ?」

「大丈夫です」

 仕方なく、昨日の学園長室での話の一部を除いてすべてを話した。

「―――というわけで、俺は優勝しないんだ」

「……なるほど」

「優衣がそれでもいいのなら、よろしく頼むよ」

「はい、兄さん。私がお手伝いします」

 

 

 

 目を開けると、真っ白な部屋にいた。俺はベッドに寝ていて、すぐ目の前に女の子の泣き顔があった。その奥には大人の人と一緒にたぶん女の子がいる。奥の方は視界がぼやけて顔がよく見えなかった。

「……ぁ…………?」

 俺から発せられたと思われる声が聞こえたのか、目の前の女の子は俺に抱きついた。

「よかった…………までいなくなったらわたし……」

 病室。これが俺のおぼろげに覚えている最古の記憶。まさか続けてこの時期の夢を見るとは思わなかった

 確か俺は1か月くらい眼を覚まさなかったとか言っていた。良く考えてみればおかしな話だ。どうして当時の俺は全く疑問に思わなかったのか、1か月も何の理由もなしで眠り続けるわけがないじゃないか。いや、理解すらしてなかったのかもしれない。あの頃の俺には何も、本当に何もなかった。

 なぜか鮮明に覚えている今朝の夢。そしてこの夢。間違いなくつながる。つながるが、やはりあの二人が誰なのかがわからない。

 この夢が俺の記憶通りなら奥にいるのは優衣、その横にいるのは両親。そして、目の前にいるのが、確か……あれ、誰だっけ? 確かに知っているはずなのに名前すら出てこない。

 俺はいったいどこまで忘れ、いや、覚えているのだろうか?

 

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