俺と馬鹿と召喚獣   作:友狩

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第2話です。


第2話

 朝のHRが始まった。

「えー、おはようございます。私がこの2年F組の担任の福原です」

 先生は黒板に名前を書こうとしたがやめた。チョークがないらしい。いったいどうやって授業するんだ? 先生が各自持ってくるのか? 去年はちゃんと置いてあったしどういうことなんだ……。

「皆さん卓袱台と座布団は支給されていますか? 不備があったら申し出てください」

 この卓袱台ガタガタしてるし、座布団に座っているという感触がないくらい綿が入っていないだけどこれはどうすればいいんだ?

「先生、俺の座布団ほとんど綿が入っていないのですが」

 と、クラスメイトの誰かが不備を申し出る。他のも似たような状態のようだ。

「我慢してください」

「せんせー、卓袱台の脚が折れているのですが」

「あとで木工用ボンドを渡すので、自分で直してください」

 なるほどこれは不備ではないらしい。

 これは何言っても我慢しろ、自分で調達しろ、なんだろうな。仕方がない、明日からは自分の物を持って来よう。

「先生、窓が割れてて風が寒いのですが」

「ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきます。必要なものは極力自分たちで用意してください」

 ここは本当に教室といえるのか。窓が割れているとか危ないだろ。それにカーテンもないし。

 それとこの畳、古いけど腐ってない、よな?

「それでは窓側の席の人から自己紹介をしてもらいます」

 なんでもないかのように次に進める先生は何と言うか……。

 …………あ、最初は俺か。

「青山和也だ。妹がいるから苗字以外ならどう呼んでもらっても構わない。よろしく」

 他に言っておかないといけないこともないしこんなところだろう。

「次の人、お願いします」

「青山優衣です。趣味は料理と読書です。よろしくお願いします」

「吉井愛莉です。演劇部に所属しています。よろしくお願いします♪」

 さっきここ1列が空いていたから知り合いが連続する。普通ならば真っ先に埋まりそうな窓側が1列空いていたのはカーテンがないせいだろう。これから暑くなるだろうし勝手に設置してしまおうか。必要なものは自分たちで用意しろ、と言っていたし問題ないだろう。

「吉井明久です。気軽に『ダーリン』って呼んでくださいね♪」

『ダァァーーリィーーン!!』

 そんなことを考えていると野太い声の大合唱が聞こえた。何を言わせてるんだよ、明久。

 あいつの事だから軽いジョークのつもりだったんだろうけど、Fクラス、ましてや男子ばかりのクラスなんだからもう少し考えろよな。

「失礼、忘れてください……」

 作り笑いをしながら席に着く明久。

 自分でやっておいて吐き気を催したようだ。

 自己紹介は順当に進んでいき木下さんの番になった。

「木下優子よ。よろしく」

「はーい。質問」

「何かしら?」

「なんでここにいるんですか?」

 一見とてつもなく失礼な質問が飛び出した。もう少しほかの言い方はなかったのか?

 でもまあその疑問はわかる。わかるんだが、なんで優衣には聞かなかったんだ? 優衣は去年学年次席にいたというのに。

 まさか俺がこのクラスにいるからいてもおかしくないとか思われたのか?

「熱を出して振り分け試験を欠席したからよ」

 俺と似たような事情か。やっぱり風邪が流行っていたのだろう。

「そういえば俺も熱(の問題)が出たせいでFクラスに」

「化学のあれか? 確かに難しかったよな」

「俺は弟が事故にあったって聞いて本気出せなかったんだよな」

「黙れ、1人っ子」

「前日に彼女が寝か――」

「異端者を発見した! 総員奴を捕らえるんだ!」

 さすがFクラスだな、想像以上の馬鹿ばかりだ。というか彼女がとか言ったやつ大丈夫か、黒ずくめの集団に取り押さえられて縄で巻かれてるが。

「はいはい、静かにしてください」

 福原先生が静かにさせようと軽く教卓を叩いた。

 

 バラバラ……

 

「替えを用意してくるので静かに待っていてください」

 軽く叩いただけで教卓が崩れ落ちるのはいくらなんでも脆すぎるんじゃないか。あれだと重いものを置いただけでも崩れるだろ。

 想像以上に酷い設備だ。この環境は流石にまずい。

 確か試召戦争で他のクラスに勝つと教室の設備を交換できる、でも……。

「雄二、和也ちょっといい?」

 担任が出て行ったところで明久が声をかけてきた。

「なんだ、明久?」

「俺もか?」

「ここじゃなんだし、廊下で話すよ」

 どうしたんだ、明久のやつ。廊下で、ってことは他に聞かれたくないってことか?

 3人で廊下に出て問いかける。

「で、話って?」

「単刀直入に言うよ。Aクラスに『試召戦争』を仕掛けてみない?」

「何が目的だ?」

 雄二がすぐに本音を聞こうとする。この聞き方だと雄二も仕掛けようと思っているのか?

「いや、あまりに酷い設備だから」

「明久、嘘をつくな」

「嘘なんかじゃないよ!?」

「嘘じゃないにしてもそれだけじゃないだろ?」

「うっ……」

 俺の問いかけに言葉がつまる明久。

 詰まった、ということは別の理由もあるのだろう。あると分かれば聞かなくても大体わかる。誰かの、おそらく愛莉辺りのためだろう。

 こいつはそういうやつだ。本人は否定しているがシスコンだしな。

「深くは聞かないでおく。まあ、俺もAクラスとは言わないが仕掛けたいと思ってたしな」

 俺はもちろん優衣のためだ。さっきのあれもそうだがいくらなんでもこの環境は体に悪すぎる。

「そうなの?」

「ああ。雄二、お前もじゃないのか?」

「相変わらず鋭いな、和也。そうだ、俺も仕掛けようと思っていたところだ」

「え? どうして? 雄二、勉強なんて全然してないよね?」

「世の中学力がすべてじゃないことを証明したくてな。そのために点数を調整してまでFクラスの代表になったんだ」

 そういうことだったのか。

 これでさっきの疑問も解決した。というか雄二が代表だったのか。

「でも雄二、本当にそれだけか?」

 雄二がそれだけのことで、わざわざ点数調整までしてAクラスに試召戦争を仕掛けようとするはずがない。何かほかの理由があってそう言っているはずだ。

「なんだ、それだけって?」

 そのまま聞きたかったのだが、視界の端に担任の姿が映った。

「いや……なんでもない。先生戻ってきたし、2人とも教室に戻ろう」

「そうだな」

 2人にはそう言ったが、俺はそのまま廊下を歩いて行った。

「和也、どこ行くの?」

「手伝い」

 短く応えて、少し走り出した。

 

             ☆  ☆  ☆

 

 自己紹介が再開し、1人を除いて終了した。

「坂本君、君が最後ですよ」

「了解」

 雄二が席を立って、教卓のところまで行く。

「Fクラス代表の坂本雄二だ。代表でも坂本でも、好きなように呼んでくれ」

 自信に満ちた顔でそういう雄二。

 でも、Fクラス代表って自信満々に言えることじゃないよな。学力最低クラスの代表ってだけだし、微妙な肩書だろう。むしろ無い方がましなんじゃないか。

「それでみんなに1つ相談があるんだが」

 雄二が教室の各所に視線を移す。さっき話していたのをもう実行するのか?

「Aクラスは冷暖房完備の上に、椅子はリクライニングシートらしいが」

 一呼吸置いて、静かに告げる。

「――――不満はないか?」

『大ありじゃぁっ!!!』

 その雄二の言葉にFクラスの男子の魂の叫びが続いた。

「そうだろう? 俺だって不満だ。で、提案なんだが、俺たちFクラスはAクラスに『試召戦争』を仕掛けようと思う」

 そう言って雄二は戦争への引き金を引いた。

 

 

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