俺と馬鹿と召喚獣   作:友狩

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第4話

「全員聞いてくれ。これから作戦を説明する」

 俺はそういって、全員の意識を自分に向けさせた。

「まず、明久と愛莉、和也、優衣、木下姉は回復試験を受けてくれ。その他の奴は、5人のために時間稼ぎをしてほしい」

 俺はまずそう指示を出した。振り分け試験を受けていないため、この5人は点数がないからだ。

「科目はどうするんだ?」

「先鋒は島田で行く予定だからな、数学だ」

 和也の質問に俺はそう答えた。

 数学を選んだ理由は簡単で残っている奴の中では島田の数学が1番高いからだ。したがって数学が時間を稼ぐには最善の手だ。次点で秀吉の古典があるがのだがクラスの平均点を見る限り数学の方がいいと判断した。ムッツリーニの保健体育はこのクラスの秘密兵器なのでこんなところで使うわけにはいかないというのも理由の1つだ。

「そうか、数学か」

 そう言って和也は少し考えこむ。

「それはいいけど、そんなに持たないわよ?」

 島田が少し不安げな声を出す。

 最善と言っても相手はDクラスだ。島田の数学がBクラスレベルでも長い間の足止めは厳しい。

 厳しくなったらそこで策を考えるつもりだ。最悪の場合は古典に切り替えればどうにかなるだろう。

「どのくらいなら持つんだ?」

 下を向いていた和也が顔を上げ、今度は稼げる時間を聞いてきた。

 時間を聞いたところで試験時間は1時間。さすがにそこまでの時間は稼げないだろう。

「20~30分くらいよ」

「それなら問題ないな」

 問題ない? まさか半分で切り上げるつもりなのか?

 試験を切り上げることは確かに可能だが、そこまでの点数が取れるはずがない。

「兄さん……」

「25分位だけだから大丈夫だよ」

 心配そうに和也の事を見る優衣をなだめる和也。

 こっちとしては何が心配で、何が大丈夫なのか全くわからないんだが。

「どういうことだ?」

「まあ見てのお楽しみだ」

 和也が数学の点数が高いことは聞いたことがないが、とりあえず任せてみるか。

 1年近く付き合いがあるのに知らないのは、いつもこいつは全科目同じ点数しかとらないからだ。そのせいで得意科目も苦手科目もわからないのだ。全教科120点という普通に解くより難しいことをやっているからそれなりに成績はいいはずなのだが。

 まあ、何かあるのならそれにかけてみるのも悪くはないか。

「よし、行くぞ」

『おお――!!』

 鐘が鳴り、初の試召戦争が始まった。

 

             ☆  ☆  ☆

 

 開戦してからそろそろ30分経つと言ったところで廊下から伝令が駆け込んできた。

「代表、そろそろまずいぞ」

「そうか」

 点数的には向こうの方が上だからな、それに大体島田が言っていたくらいの時間だな。となると――

「雄二」

 策を考えようとしたところで和也が現れた。本当に回復試験を途中で切り上げてきたらしい。

「和也、もういいのか?」

「ああ、問題ない。前線の戦況はどうなってる?」

 試験を受けている教室からここまでくる時間を引くと25分位か。それで問題ないなのか? Aクラスの生徒で数学が得意なやつでもせいぜい150点に届くかどうかくらいだろう。ということは70~80点くらいか。

 相手は100点前後だろうし、明久レベルの操作技術がないと厳しくないか?

「戦況の方はかなり厳しくなっているらしい」

「わかった。それじゃ、行ってくる」

「ああ。たのんだぞ」

 あいつの得意科目は数学だったのか?

 あとで優衣辺りに聞いてみるか。

 

 

「島田、大丈夫か?」

 前線についた俺は指揮をとっている島田に声をかけた。

「青山、やっと来たのね。そろそろウチもまずいわ」

 言っていた通りくらいの時間だしな。全体的に疲弊しているようだ。そうなると出すべき指示は、1つだな。

「そうか。それなら点数が厳しい人は回復試験を受けに行ってくれ。その他は俺の援護に回って欲しい」

『えっ?』

 この場にいるFクラス全員が唖然とする。

「それじゃ、試獣召喚(サモン)」

 俺は召喚ワードを口にした。

 

 

 青山の召喚獣は右手に拳銃、左手に短剣、防具は防弾チョッキという他の召喚獣にはない飛び道具を持っていた。

『はぁあ!?』

 さっきはウチたちFクラス先鋒のメンバーだけが驚いていたが、今度はDクラスの生徒も目が点になる。この驚きは装備ではなく点数の方だ。

 

『Fクラス 青山和也

  数学  428点』

 

「あ、青山。その点数って?」

 おそらくこの場にいる生徒のほとんどが思っていることを聞いてみる。

「俺の本気だが?」

 事も無げに答える青山。

 いくら本気だからって、青山がここに来た時間から逆算すると大体試験時間は25分くらい。この計算で行くと1時間受けたら900点くらいになる。

 さすがに何かの間違いだと思いたい……。

「ここは問題ないから、島田は戻って回復試験でも受けに行って大丈夫だ」

 確かに青山の言う通りこの点数なら全然問題はなさそうだ。

 ここまでの戦いで相当点数を削られたから一応受けてきた方がいいのだろうけど、でもウチが試験受ける意味はたぶんないと思う。

「Fクラスになんでこんな点数をとれる奴がいるんだよ」

 Dクラスの生徒の1人が呟いた。

 それはたぶんAクラスにもいないと思う。

「ウチは、試験受けに行くわね」

「了解」

 そう言って前線を離れた。

 

 

 前衛部隊は15人、点数は大体平均95点ぐらいか。どうにかなるだろう。 

「それじゃ、行くぞ」

 Fクラスの前線にいた半数位が下がったところで俺は召喚獣を前に送り出した。

「いくら点数が高いからって1人でだと!」

「なめるな!」

 敵がまず4人で突っ込んでくる。

 まとまってくれると俺としても助かる。

「まずは『放電』」

 腕輪が使いやすいから。

 1教科の点数が400点を超えると使える腕輪。総合科目では4400点を超えれば使える。

 俺の腕輪の力は『電撃』。ただし使い方がいくつかある。

「召喚獣が動かない」

「どうなってるんだ」

「点数も減ってるよ」

「腕輪なの?」

 俺の電撃を受けた4人は成績的に腕輪と縁がないらしく俺の腕輪にただただ驚いているだけ。

 この『放電』には召喚獣を中心とした全方位攻撃で麻痺効果が付けられている。その分威力自体は低い。そして全方位攻撃のため場所によっては味方にも被害が出てしまう。全員を引かせたうえで前に突っ込んだのはこのためだ。

 腕輪は基本的に即死級の攻撃らしいのだが、俺の腕輪はバリエーションがあるためか全体的に威力が低い。

「まず4人と」

 短剣で四体の召喚獣の頭をはねる。

 銃で撃った方が早いが7発という弾数制限がある上、弾倉を入れ替えるのに10点消費し、その間無防備になってしまうという欠点があるため極力使わない。

 さらには、召喚獣本体の点数に関係なくダメージが固定。例えば足に当たった場合40点といった感じで結構使いにくい。点数が低いときは重宝するが、点数が低いと撃った反動で弾道が安定しないという欠点がある。まあ、見た目がM1911、通称コルト・ガバメントで気に入っているから何も問題ないけどな。

「戦死者は補習」

 どこからともなく現れた西村先生が4人を補習室に連れて行く。

 どうやったら高校生を4人も抱えられるんだ。どこかの傭兵さんでも1人しか運べないんじゃ。

 それは置いておいて、Dクラスの残っている生徒は4人が一瞬でやられたのと腕輪で怖気づいたらしい、突っ込んでこなくなった。

「かかってきなよ。時間かけてたらこっちが有利になるだけだよ?」

『くっ』

 雄二の指示では時間稼ぎをするように言われているが、そんなに悠長にやってもいられない状況ではないのだ。『副作用』の頭痛がさっきから少しずつ酷くなってきている。長期戦は不可能みたいだ。

 ぶっ倒れて優衣に心配をかけるわけにもいかないからこの1発にすべてをかける。

「来ないなら終わらせるよ」

 召喚獣の持っている拳銃に電力を集中する。これは出来れば使いたくなかったが。

『レールガン』

 俺の召喚獣が使える最強の技。色々と無理があるせいかこれを使うと3分くらい何もできずに逃げ回るしかなくなる。短剣で攻撃しようにも腕が動かなくなるのだ。

 まあDクラス位ならどうにかなるはずだ。

『なっ!?』

 一直線にDクラスの召喚獣の間を弾が一瞬で通り過ぎた。

「か、勝てるわけねぇ」

「全滅はさせられなかったか……」

 弾から他のより離れていたせいか少しだけ体力が残っているのがいた。

 この攻撃も弾丸からの距離によってダメージ値が変動する。

 でもこれくらいなら俺がいなくても大丈夫だろう。

 思った通り隙をついて須川達が残っていた召喚獣にとどめを刺した。

「戦死者は補習」

 またどこから現れた西村先生が残っていた11人を連れて行った。

 これでここにいるのはFクラスの生徒だけになった。

「このまま突っ込むか?」

「いや、このままでいい。俺たちの目的はあくまで時間稼ぎだ。ここを防衛していればいい。Dクラスの本隊が来るなら別だが」

 須川の意見に俺はそう答えた。

 本音を言うと俺がこれ以上戦えそうにない。眩暈と頭痛が酷くなっているし、これは倒れる寸前だぞ。

「顔色が悪いが、大丈夫か?」

「いや……相当まずいが……まだ大丈夫だ」

 本隊が来るまではここにいないといけない。時間的にはあと10分くらいだろう。

「それならいいが……」

 須川もそれ以上何も言えなかったらしい、そのまま引き下がった。

 それからしばらくして。

「よくやった、和也。というかDクラスがいないな」

「来たか……雄二」

 回復試験が終わったらしくFクラスの本隊が来た。

「これなら俺は下がってても大丈夫だよ……な?」

 そろそろ真面目にまずい。できるだけ平然を保とうとしているがこれ以上は無理だ。

「問題ない。下がって休んでいてくれ。あとは俺たちで何とかする」

「それじゃ、後は頼んだ」

 とりあえず教室に戻って寝るか……。

 

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