Dクラス戦の翌日、いつも通り優衣と2人で登校していた。
「今日は1日中テストか」
「今回はちゃんと受けてくださいよ、兄さん」
「わかってるよ」
雄二達と約束したし、自分の今の成績を把握するためでもあるからな。
「あ、おはよう、和也君、優衣ちゃん♪」
「おはようございます」
反対側の道から明久と愛莉が歩いてきた。
「今日は早いな2人とも」
「今日はテストだから学校行って勉強しようと思って」
明久にしては珍しい台詞だ。
「そっか。じゃあ急がないとな」
教室に入ると既にほとんどクラスメイトが来ていた。昨日はギリギリだったし、みんな早いんだな。
「おはよう、雄二」
「おう明久、今日は早いな」
雄二も俺と同じことを聞いてるよ。やっぱり珍しいからか?
「テスト前に勉強しようと思って」
「そうか」
「そういえば、Dクラスの設備のことみんなに説明したの?」
「ああ。みんなにはちゃんと説明したからな。問題ない」
明久と雄二がそんなことを話している――ってもう説明し終わったのか! また聞けなかった……。
「それはいいとして明久、勉強するんじゃなかったのか?」
「へ? ってもうこんな時間!」
明久が急いで勉強を始める。折角感心していたのに、素で忘れていたな。
「和也、そういうお前は勉強しなくていいのか?」
「大丈夫だ。昨日の夜やっておいたからな」
あくまで毎日の日課でやっている。テスト前だからという理由で勉強してうっかり『リミッター』が外れたら大変だからな。
「そういえば雄二、次はBクラスなんだよな?」
暇だからテストが終わったら始まる次の召戦争について聞いてみる。
「そうだが、何か問題でもあるのか?」
「いや、なんとなくBクラスの代表って誰かと思っただけだ」
「そのことはすでにムッツリーニに調べるように頼んである」
「そっか」
そこはクラス代表、ちゃんと動いているらしい。噂では面倒な相手らしいけど、どうなのだろか。
「おはようじゃ」
「おはよう、2人とも」
優子さんと秀吉が教室に入ってきた。
『おはよう』
「2人で何話していたの?」
「次の試召戦争についてだ」
雄二がそう答える。
「そう。2人ともテストの方は大丈夫なの?」
「大丈夫だ」
「そろそろ始業のようじゃぞ」
「それじゃ、席に着きますか」
「それでは席についてください」
俺が言ったのと同時に福原先生が入ってきた。
☆ ☆ ☆
午前中の4科目が終了して昼休みになった。
「うあー……疲れたー」
そういって明久は卓袱台に突っ伏す。
「うむ。疲れたのう」
「…………(こくこく)」
クラスの大半が机に突っ伏している。普通にしているのが4,5人しかいない。
「そうか?」
「えっ? 疲れないの?」
俺の言葉に愛莉が驚いたような声を出した。
「ああ」
確かにいつもより真面目に受けた分疲れてはいるがそこまでじゃない。むしろ家にいる時の優衣の行動の方が疲れる。昨日も――ってこの話はやめておこう。思い出すだけでも恥ずかしくなってくる。
「私もあまり疲れてないですよ」
その優衣もそう言っている。優子さんもそこまで疲れているようには見えない。
「よし、今日も昼食を含めて屋上でミーティングだ」
「明久、今日はちゃんと作ってきてるよな?」
昨日のことがあるから一応確認する。
「当たり前だよ。愛莉の分だってあるんだから」
「そうか」
明久でも2日連続で同じミスはしないか。
昨日と同じくみんなで屋上に行き、弁当を広げる。
「和也よ、今日の弁当はいつもと違うようじゃが」
俺の弁当箱を覗きこんで秀吉が指摘してくる。
よく気が付くな。形が不揃いだったりするからか?
「これか? 今日は俺が作ったからな」
「今日は私のも兄さんが作ってくれたお弁当です。私が寝坊してしまったので」
今日は優衣が時間になっても起きてこないから部屋を覗いたらまだ寝ていた。どうやら年に数回ある寝坊の日だったらしい。
そこでいつも作ってもらっているお礼を兼ねて起こさずに俺が弁当を作ったのだ。久しぶりに作ったから少し手間取ったけど。
作り終えてから部屋に見にいったらまだ寝ていて、起こそうとしたら布団に引きずり込まれそうになったというのは言わないでおこう。言ったら危険そうだし。それにしても俺が抵抗するだけで精一杯のあのパワーは一体どこから出てるのだろうか?
「和也って料理できたのね」
「まぁ、人並みには」
人並みにできるとは言うがいつもは優衣が全部やっている。手伝い位はいつもしているが。
「ちょっと味見してもいい?」
「別にいいけど」
「じゃあアタシも」
俺の弁当からおかずを1つとって食べる美波と優子さん。そして口にした途端崩れ落ちた。
味見をしたときは問題なかったはずだけど何か変な味付けしていたか?
「ど、どうしたんだ2人とも。まさか味付け間違えてたとか?」
そう言いながら俺も1つ口にする。普通の卵焼きだな、問題ない。
もしかして俺の味覚がおかしいのか?
「……そういうことじゃないわよ。とてもおいしいもの」
「……だからこそ落ち込むというか」
「えっ?」
俺は素で驚いてしまった。そしてそれと同時に安堵した。別に俺の味覚がおかしいわけではなかったらしい。
でも俺としては普通の、むしろ前より少し腕が落ちた気がするくらいなんだけど。
「和也、お前は自分の料理の腕を過小評価しすぎなんだ」
そんな俺を見て雄二がやれやれと言ってきた。
「そうなのか?」
過小評価も何も優衣や明久のものに比べたら全然だと思うけど。
「気づいてなかったのじゃな」
「兄さんは十分料理が上手ですよ」
「そうなのか?」
優衣にまで言われてしまった。
「和也君、もしかして優衣ちゃんかお兄ちゃんと比べてたの?」
俺は愛莉の言葉に頷いた。
「…………それは比べる相手が悪い」
ムッツリーニがそう言うけど、比べる相手がそれくらいしか周りにいないし。
「優衣ちゃんの料理はすごくおいしいからね」
「……そういうことだったのね」
溜め息をついて優子さんがポツリと言った。
☆ ☆ ☆
「そういえば雄二、次の相手ってBクラスなんだよね?」
食事が終わり、Bクラス戦の話に移った。
「ああ。そうだ」
「なぜBクラスなのじゃ?」
「目標はAクラスなんでしょ?」
「正直に言おう。優衣と優子がいても、うちのクラスの戦力じゃ勝てない。和也がどの程度かわからないが、たとえ2人と同レベルでも、な」
俺の話は置いておいて、Aクラスは他のクラスとはレベルが違う。五十人のAクラス生徒のうち、四十人はまだいい。Bクラスの生徒より多少高い程度の普通の生徒だ。それに比べ上位十人は圧倒的だ。まあ、そのうちの2人はここにいるわけなんだが。
「それじゃ、僕らの目標はBクラスに変更ってこと?」
明久の言葉はたぶんありえない。雄二が一度言ったことを変えるはずがないからだ。
「いいや、そんなことはない。Aクラスをやる」
俺が思った通り雄二は明久の言葉を否定した。
「言っておることが矛盾しておるぞ」
確かに矛盾している。Aクラスと戦わずにAクラスを倒すと言っているのだから。
「クラス単位では勝てないだろうから、一騎討ちに持ち込むつもりだ」
「一騎討ちに? どうやって持ち込むの?」
愛莉が全員を代表して訊く。
「Bクラスを使う」
「なるほど、そういうことか」
「兄さん分かったのですか?」
優衣の言葉に俺は頷いた。
「ああ。試召戦争のシステムを利用するってことだろ、雄二」
「そういうことだ」
やっぱりそういうことか。
「全くわかんないんだけど」
「はぁ……。明久、試召戦争で下位のクラスが負けた場合設備はどうなる?」
いきなり雄二が試召戦争に負けた場合の話を始める。これがわからない明久のための説明になるらしい。
「設備のランクが1つ落とされるわ」
「じゃあ、上位のクラスが負けた場合は?」
「相手のクラスと設備が交換になるのじゃな」
雄二の問いに優子さんと秀吉が答える。ここは明久が答えるところじゃないのか? いや、頭の上に?を並べているあいつが答えられるわけないか。
「そうだ。今回はこのシステムを利用して交渉する」
「交渉?」
「まずBクラスを倒したら、設備の交換の代わりにAクラスに攻め込むように交渉する。設備を入れ替えたらFクラスだが、Aクラスに負けてもCクラス設備で済むからな。Fクラスの教室にはなりたくないだろうし、Bクラスはまず拒否しないだろう」
「それで?」
「それをネタにAクラスと交渉する。『Bクラスとの勝負直後に攻め込むぞ』といった感じにな。いくらAクラスでも1つ下のクラスに挑まれてすぐ他のクラスと戦うのは嫌なはずだ」
「なるほどね」
「でも、そううまくいくでしょうか?」
大体納得したところに優衣が唐突に口を挟んだ。
「どういうことだ?」
「Aクラスにとっては一騎討ちより試召戦争の方が確実ですから。それに」
「それに?」
「それに一騎討ちで勝てるでしょうか? こちらに私たちがいるのは知られているのですよ?」
確かに優衣の言っていることは間違っていない。すでにDクラス戦のことは全クラスに知られている。俺の方はどうかわからないが優衣と優子さんについては確実だ。
「その辺に関しては考えがある。大丈夫だ」
「そうですか」
「とにかくBクラスを落とす。細かい作戦はそのあと教える」
『了解』
確かにBクラスに勝たないとその作戦は役に立たないからな。
「それで、明久」
「なに?」
「今日のテストが終わったら、愛莉と一緒にBクラスに宣戦布告してきてくれ。開戦時刻は明後日の午後だ」
「わかった」
ここでとりあえずの説明は終了したみたいだ。
「そろそろ戻るか」
「そうね」
午後のテストも無事終了し、明久達の宣戦布告も何事もなく終了し帰路についた。