光次元ゲイムネプテューヌ~聖なる祈りと極光の守護神~   作:EDENCROSS

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光ネプ第48話

《前回までのあらすじ》
ネプギアと共に一夜を過ごしたエルク。
そしてその日の翌日、朝食を共にしたうずめに自分と
出掛けないかと誘われるのであった。


♯ 48 うずめとお出掛け

朝9時、僕は今リビングでうずめちゃんと一緒に朝食を取っている。

ちなみにメニューは、塩味を効かせた目玉焼きを乗せたトーストに、

ヨーグルトとサラダといったバランスのいいものだ。

 

 

エルク

「はあ・・・えらい目にあったよ・・・」

 

うずめ

「おい、大丈夫か、えるっち?」

 

エルク

「うん、まあね。

 まさかネプテューヌ達に朝っぱらからあんな取り調べを受けるとは思わなかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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アイエフ

「エルク、なぜあなたの部屋でネプギアと同じベッドで寝ていたのかしら?

 正直に言えば、今なら罪は軽くなるわよ?」

 

 

そう言ってアイエフちゃんは、取り調べ室にある机に取り付けられたライトを

僕に向ける。

 

 

エルク

「ちょっ、アイエフちゃん、眩しい・・・!」

 

ネプテューヌ

「まさかネプギアがエルくんと一緒に寝るなんて、

 なんてうらやま・・・けしからんよ、エルくん!」

 

エルク

「いや、それはネプギアの方から一緒に寝たいって言ってきたから・・・」

 

ネプテューヌ

「なん・・・だと・・・! あの真面目でいい子のネプギアがそんな大胆なことを!

 ネプギア・・・我が妹ながら恐ろしい子!」

 

コンパ

「エ、エルクさん、不潔です!///」

 

エルク

「いや、だから僕の話も聞いてよ」

 

コンパ

「こうなったら、自白剤を打つです!」

 

エルク

「お、落ち着いて、コンパちゃん! 早まらないで!

 まずは話し合おう!」

 

ネプテューヌ

「ほら、エルくん、カツ丼だよ。

 素直に白状して罪を認めたら食べさせてあげるよ?」

 

エルク

「朝からそんなガッツリしたものなんて食べれないよ。

 って言うか、アイエフちゃんも言ってたけど罪って何!?

 それにどこから出したのそれ!?」

 

ネプテューヌ·アイエフ·コンパ

「エルくん?「エルク?「エルクさん?」」」

 

エルク

「か、勘弁してくれー!」

 

 

その後、ネプギアが事の顛末を皆に話して、

僕は無事に無罪?を勝ち取ることが出来た。

それでも、年頃の男女が同じベッドで寝るべきではないとお叱りを受けた。

 

 

ネプテューヌ

「ちなみに、あのカツ丼はネプ子さんがおいしくいただきました!」

 

 

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うずめ

「はははっ、まあなんつーか、大変だったな」

 

エルク

「あの後、ネプギアが皆に話してくれたからよかったけどね」

 

うずめ

「ねぷっち達も、えるっちのことになるとすぐそうなるからなぁ。

 なんでだろうな?」

 

エルク

「それは僕が聞きたいよ・・・」

 

 

僕、ネプテューヌ達になにかしたっけ?

まったく心当たりがない・・・。

 

 

うずめ

「ところでえるっち、このあと何か予定ってあるか?」

 

エルク

「ううん、特にこれといってないかな。 どうして?」

 

うずめ

「ああ、これから出掛けようと思ってんだけど、

 よかったらえるっちもどうだ?」

 

エルク

「うん、分かった。

 せっかくだし、うずめちゃんと一緒に行くよ」

 

うずめ

「よっし、そうこなくっちゃな!」

 

エルク

「そういえば、ネプテューヌはどうしたんだろう?」

 

うずめ

「ねぷっちなら、イストワールに捕まって仕事中だ。

 海男とぎあっちも手伝ってるみたいだぜ」

 

エルク

「そうなんだ。 なんか、海男さんに申し訳ないな・・・」

 

うずめ

「気にすんなって。

 そもそもお前を誘って出掛けてこいって言ったのは海男なんだしさ」

 

エルク

「そっか。 それならお言葉に甘えようかな」

 

うずめ

「そんじゃ、さっそく行こうぜ!」

 

 

朝食を済ませた僕とうずめちゃんは、プラネテューヌの街へ出掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              ━ プラネテューヌ ━

 

 

ここはプラネテューヌの中でもっとも賑わう広場。

こうして見てみると、ハンター御用達の武器屋に、

今の若者に人気のアパレルショップや、ゲームショップにレストランがある。

僕が寝巻きに使っている紫ジャージも、あのアパレルショップで買ったものだ。

ちなみに昨日訪れたチューコさんの店は、ここからちょっと離れた所にある。

 

 

うずめ

「うわ、すっげぇ人混みだな・・・!

 やっぱ国の中心なだけあって、賑わってんなぁ」

 

エルク

「うん、そうだね。

 僕もこうして街を見て回るのは初めてかもしれない」

 

うずめ

「そうなのか?」

 

エルク

「今まで仕事や他国の体験入国、それにモンスターとの戦いの連続だったからね。

 だから、誰かと街に出掛ける余裕がなかったんだ」

 

うずめ

「そうだったのか・・・。

 それじゃあ今日は思いっきり羽伸ばして楽しもうぜ!」

 

エルク

「うずめちゃん・・・うん、そうだね!

 今日は二人で楽しもう!」

 

うずめ

「っと、その前に、一度行ってみたかった所があるんだ。

 こっちだ、えるっち。 はぐれんなよ」

 

 

そして僕達は、人混みを掻き分けながら進み。

ある店の前に立った。

 

 

うずめ

「なあえるっち、ここのクレープ食ったことあるか?

 実は前々から気になってたんだよな、俺」

 

エルク

「そうなんだ。 それじゃあ、うずめちゃんが行ってみたかったのって?」

 

うずめ

「ああ、それにここのクレープって、うまいって有名なんだぜ!」

 

エルク

「それじゃあ、食べない手はないね。

 でも、有名なだけあってかなりの行列だね」

 

うずめ

「だな。 でも、せっかくここまで来たんだ。

 ここはおとなしく待とうぜ」

 

 

やっぱり有名な店って、人気があって行列なんて当たり前なんだろう。

こうして並んでいるだけで、生地を焼く芳ばしくも甘い匂いと、

美味しそうなその見た目から、近くを通る人々が一人、また一人と店の前に並び、

気が付くとかなりの大行列が出来ていた。

そしてしばらく並び、僕達の順番が来たのでクレープ注文してそれを受け取り、

店の前に設けられていたベンチに座る。

僕が注文したのは、ホイップクリームとカスタードクリームにイチゴ、

そしてミルフィーユ生地をトッピングしたイチゴミルフィーユというクレープ。

うずめちゃんはイチゴ、キウイ、バナナ、オレンジといった色んな果物がトッピングされた

フルーツクリームというクレープ。

しかもメニュー表にあった全てのトッピングを乗せた、所謂全部乗せのというやつである。

 

 

エルク

「うずちゃんのクレープ、なんか凄いことになってるけど、大丈夫?」

 

うずめ

「大丈夫だって、カッコいい俺にかかればこれくらい楽勝だぜ!」

 

 

本人はそう言ってるけど、バニラアイス、チョコアイス、チョコチップ、

プリン、ミルフィーユ、ホイップクリーム、カスタードクリームとets、ets・・・

とにかくそれは、もはやクレープというよりパフェのようだった。

うずちゃんの「全部乗せで!」と言う注文を聞いた時の店員さんの驚いた顔を、

僕はハッキリと覚えている。

 

 

エルク

「しつこいようだけど、本当に大丈夫?

 今にもトッピングのアイスがこぼれ落ちそうだけど・・・」

 

うずめ

「いいから、見とけって。

 心配性だな、えるっちは」

 

エルク

「まあ、うずめちゃんがいいならもう何も言わないけど・・・」

 

うずめ

「なにひとりでブツブツ言ってんだ?

 んなことより、早く食おうぜ」

 

エルク

「そうだね。

 それじゃあ、いただきます」

 

 

僕は自分の手にしたクレープを口いっぱいに頬張った。

イチゴのほどよい酸味と、ホイップクリームとカスタードクリームの

甘さが絶妙にマッチし、砕いたミルフィーユの生地の歯応えがアクセントになっていて

とても美味しい。

これだけで長時間並んだ甲斐があったというものだ。

 

 

エルク

「美味しい! うずちゃんの言った通りとても美味しいよ!」

 

うずめ

「へへっ、だろ?

 前に雑誌で宣伝されてたのを見たねぷっちとぎあっちにすすめられたんだよ」

 

エルク

「その雑誌って、確かゲームやグルメを中心に取材してるっていう

 デンゲキファミ通社だよね?」

 

うずめ

「そんな名前だったっけか? 詳しいんだな」

 

エルク

「そうでもないよ。

 前にプラネテューヌ通信っていうネットに、デンゲキコさんと

 ファミ通さんって人が新しく始めた会社って載っていたのを読んだから」

 

うずめ

「へぇ、俺は雑誌なんて読まねぇから全然分かんねぇや」

 

 

ちなみに、この二人は前まで互いにいがみ合い、競い合っていたライバル関係だったが、

先の猛争事件で意気投合し、デンゲキファミ通社と言う会社を立ち上げたらしい。

最初はデンゲキファミ通社か、ファミ通デンゲキ社にするかでもめたようだが、

長きに渡る数々の対決の結果、今の名前になったと言うエピソードが、

プラネテューヌ通信に載っていた。

 

 

うずめ

「そういえば、ゆりっちは元気か?

 ここ最近顔出さねえから、ちょっと気になってな」

 

エルク

「うん、元気だよ。

 今は教会の書斎で書物を読んでるよ。

 なんでも、ゲイムギョウ界の歴史を改めて知りたいんだって」

 

うずめ

「そっか。

 もしかしたら、俺達に気を遣ってくれたのかもな」

 

エルク

「そうかもね」

 

 

うずめちゃんとそんな話をしながら、僕達はそれぞれ手にしたクレープを食べ進める。

 

 

うずめ

「・・・」

 

 

しかし、しばらくしてうずめちゃんの動きが止まってしまった。

と言うよりも、なんだか少し苦しそうだ。

 

 

エルク

「ど、どうしたの、うずめちゃん?

 なんか、苦しそうだけど・・・大丈夫?」

 

うずめ

「な、なんでもねぇ・・・いや、あるか。

 甘すぎて、そして量が多くて苦しくなってきやがった・・・」

 

エルク

「なら、無理せずに残してもいいんだよ?」

 

うずめ

「いや! 自分で注文した以上は責任持って全部食うぜ!

 残すなんてそんなカッコ悪いこと出来ねえよ。

 それに、せっかく作ってくれた店員にも申し訳ねえからな」

 

エルク

「でも・・・」

 

うずめ

「まあ、見てろって!

 すぐに終わらせてやるからな。 モグモグ・・・」

 

 

と、うずめちゃんは一心不乱にクレープを食べ始める。

本人は真剣そのものだが、僕から見れば無理をしているようで、

いや、実際にそうなのでとても心配だ。

その姿は、まるでフードファイターのようだ。

 

 

エルク

「う、うずめちゃん、もうやめた方が・・・」

 

うずめ

「止めるな、えるっち。

 これは俺とこいつのタイマン勝負だからな」

 

 

そう言ってさらに食べ進めるうずめちゃん。

それからしばらくして・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うずめ

「・・・」

 

 

完全に動きが止まり、ただ手に持ったクレープを見つめていた。

 

 

うずめ

「うぐっ、認めよう・・・!

 この勝負、俺の負けだ・・・!」

 

 

しかし、そこからなんとか我に帰り、

潔く負けを認めるのであった。

 

 

エルク

「うずめちゃん、大丈夫? はい、飲み物買ってきたよ」

 

うずめ

「おう、サンキュー!

 でも、けっこう残っちまったな・・・」

 

エルク

「うん、そうだね・・・。 じゃあ、僕がもらうよ」

 

うずめ

「えっ!? い、いや、いいって!

 俺の食べ残しなんて!」

 

エルク

「そんなことないよ。

 実はまだ、食べ足りなかったんだ。

 だから、僕がもらうよ。

 うずめちゃんのクレープがどんなのかも気になってたしね」

 

 

教会で朝食を取ってからそれほど時間は経っていないが、

あれだけの行列の中待っていたので、小腹が空いてしまった。

 

 

うずめ

「・・・悪いな、えるっち。

 カッコ悪いとこ見せちまったな」

 

エルク

「気にしないでよ。

 うずめちゃん自身もそうだけど、

 これを作ってくれた店員さんのことを思ってのことでしょ?

 カッコ悪いわけないじゃないか」

 

うずめ

「えるっち・・・」

 

エルク

「それに、ネプテューヌから聞いたよ。

 うずめちゃんは零次元って所で仲間達を守るために、

 ダークメガミっていうのとずっと一人で戦ってたんでしょ?

 それは凄いことだし、カッコいいことだし、とても立派だよ」

 

うずめ

「そ、そんなことねえよ!

 あいつらは俺の大切な家族だから守ってやらねえとって思ったからそうしただけだ」

 

エルク

「だとしてもだよ。

 一人で戦うなんてとても勇気のいることだと思うよ。

 僕とは大違いだ」

 

うずめ

「何言ってんだよ、お前だって十分すげえじゃねえか」

 

エルク

「いや、僕は皆に支えられ、助けられながら強くなることができた。

 うずめちゃん、君も含めてね。

 だから僕は、そんな皆のためにもっともっと強くなって、

 皆の気持ちに応えたいんだ」

 

うずめ

「・・・やっぱすげえよ、お前は」

 

エルク

「だから、これからもよろしくね、うずめちゃん!」

 

うずめ

「おう、こちらこそ、よろしくな!

 っと、そうだ。 俺のことはうずめって呼んでくれないか?

 今更かもしれないが、ちゃん付けって、なんかくすぐったくてな・・・」

 

エルク

「うん、分かったよ、うずめ」

 

 

僕は改めてうずめにそう言う。

そして手にしたクレープを完食した。

 

 

エルク

「ふう、ご馳走さま」

 

うずめ

「もう食ったのかよ、早えな・・・」

 

エルク

「まあ、元々空腹だったってのもあるけど、

 なによりこのクレープが美味しかったからね」

 

うずめ

「そうか。 ・・・?」

 

 

この時、うずめはあることに気付く。

 

 

うずめ

「(待てよ、俺が食ってたクレープをえるっちが食ったってことは、

 これって・・・か、間接キスってことか!?)」

 

エルク

「どうしたの、うずめ? なんか、顔が赤いけど?」

 

うずめ

「ほにゃぁっ! な、ななななんでもねえよ!///

 ほ、ほら、腹ごしらえが済んだら他行こうぜ!

 行ってみたい所がたくさんあるんだからな!」

 

エルク

「う、うん・・・」

 

 

僕とうずめは、プラネテューヌの色々な場所を巡って様々な物を見て回り、

ゲームセンターではUFOキャッチャーやレースゲームと言った

そこに置かれてあるゲームと言うゲームを遊び尽くした。

 

 

うずめ

「くっそー! あそこで甲羅に当たらなかったらなー!」

 

エルク

「惜しかったね、うずめ」

 

うずめ

「つーか、えるっちが上手すぎるんだって!

 なんであそこで当ててくんだよ!」

 

エルク

「いや、なんでって言われても、当てれそうだったから・・・」

 

うずめ

「やっぱ普段からねぷっちと一緒に居るから、そこんとこ鍛えられてんのか?」

 

 

エルク

「まあ、ちょっと前までよくネプテューヌとゲームしてたからね。

 ひょっとしたらそうかも」

 

 

と、先程のゲームセンターでプレイしたカートゲームで負けて露骨に悔しがるうずめ。

ネプテューヌとは色んなゲームをするけれど、特にプレイしていたのはカートゲームだ。

初めは彼女の持ち前のゲームセンスと、使い方の上手いアイテムで勝てなかったけど、

僕もそれらを学び、今では接戦って所でまで上達した。

 

 

うずめ

「ちぇー・・・。

 お、見ろよ、えるっち! 桜が咲いてるぜ!」

 

 

うずめが指をさしたのは、道沿いに咲き誇る桜の木々だった。

そよ風にあおられて宙を舞う花びらが、まるで踊っているように見えて、

芸術的な風景を作り出している。

 

 

エルク

「桜か・・・。 そういえば、もうそんな季節か」

 

うずめ

「だな。 なんか、時の流れってあっという間だよな。

 半年前の戦いが嘘みたいだ」

 

エルク

「うずめ・・・」

 

うずめ

「って、なにシケた面してんだよ、えるっち。

 俺はもう大丈夫だから、そんな顔すんなって」

 

 

当時の事を、海男さんやネプテューヌから聞いたから

うずめの事情は知っているつもりだ。

その昔、うずめがプラネテューヌの女神様だった時代、

自分の妄想の力が暴走して国民達から危険視され、

イストワールさんに頼んで封印してもらい、

ネガティブエネルギーを吸収したことで生まれた、

もう一人の自分の暗黒星くろめと戦って一度は滅びかけたが、

ネプテューヌ達の願いと祈りが届き、復活することが出来た。

よく考えてみれば・・・いや、考えなくても分かる。

うずめが零次元で一人孤独に戦い、どんな辛い思いをしていたのかを・・・。

だから僕は、そんな彼女には幸せになって欲しいと、

二人からこの話を聞いた時そう思った。

きっとうずめには、これから楽しい事や幸せな事もあるはずと、そう信じて・・・。

 

 

エルク

「ごめん、なんでもないよ」

 

うずめ

「そっか、ならいいんだ。

 なあ、もっと近くに行ってみようぜ!」

 

 

そう言うと、うずめは僕の手を取って走り出す。

 

 

エルク

「うわっ! ちょ、ちょっと待ってよ、うずめ!

 自分で走れるから!」

 

うずめ

「ほらほら遅えぞ、えるっち!」

 

 

と、笑顔でそう言いながら僕を引っ張るように走るうずめ。

急なことで驚いたが、こうして手を握っていると、温かくて小さな女の子の手だ。

 

 

うずめ

「よし、ここら辺でいいな。

 なあ、せっかくだから写真撮ってかねえか?」

 

エルク

「うん、そうだね」

 

 

桜が咲き誇る木の下まで着くと、うずめが写真を撮ろうと言う。

僕はスマホを取り出し、カメラモードにする。

 

 

うずめ

「えるっち、ちょっとスマホ貸してくれないか?」

 

エルク

「うん、いいよ」

 

 

そしてそれをうずめに貸す。

 

 

うずめ

「うーん、これじゃあカメラに入らねえな・・・。

 んしょっと・・・」

 

 

うずめは、僕の肩に腕を回して肩を組む感じで密着した。

 

 

エルク

「エッ!? う、うずめ!?///」

 

うずめ

「じっとしてろって! こうでもしなきゃ二人とも入らねえだろ?///

 お、俺だって恥ずかしいんだからな・・・///」

 

 

ならやらなければいいのに、なんて言えない。

それでもうずめは僕と写真を撮りたいと言ってくれたのだから。

 

 

うずめ

「そ、それじゃあ、撮るぞ?///」

 

エルク

「う、うん///」

 

 

画面をタップして、撮れた写真を見てみると、

顔を赤くしてひきつっていた僕達二人の写真が撮れていた。

 

 

エルク

「え、えーっと・・・」

 

うずめ

「まあ、なんつーか、あれだな・・・カッコ悪いな・・・」

 

エルク

「それじゃあ、撮り直す?」

 

うずめ

「・・・いや、これでいいよ。 なんか、気に入った」

 

 

まるで互いに異性になれていないウブな反応を見せるそんな感じの写真を見て、

エルクと肩を組ながらうずめは少し微笑みながら言う。。

本当なら撮り直すべきだろうが、彼女がそう望んでいるのならそれでいいと、

エルクはそう思い、何も言わなかった。

 

 

エルク

「えっと、うずめ・・・。 そろそろ・・・///」

 

うずめ

「え? って、うわっ! わ、悪い、えるっち!///」

 ほら、これ! 返すぜ!」

 

エルク

「い、いや、いいんだ。 気にしないで、うずめ///」

 

 

そのまましばらくの間、僕達はお互いの顔を見れずに顔を伏せたまま

無言の間が続いた。

 

 

うずめ

「よ、よし! いい写真も撮れたことだし、次はどこに行こうか?

 って、もう夕方か・・・」

 

エルク

「本当だ、もうこんな時間か。

 それじゃあ最後に、僕のとっておきの場所に連れていってあげるよ」

 

うずめ

「とっておきの場所か・・・。

 それって、どんなとこなんだ?」

 

エルク

「それは着いてからのお楽しみってね」

 

 

そう言って、僕はうずめをその場所へと連れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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エルク

「着いたよ、うずめ。

 ここが僕のとっておきの場所さ」

 

うずめ

「うおぉ・・・!」

 

 

僕のとっておきの場所、それは夕日の上がった波打つ崖際の海岸。

燃え上がる炎のように真っ赤な大きい丸い夕日の光が、

海面に照らされそれがプリズム反射してキラキラ輝き、

とても美しい光景だった。

 

 

うずめ

「すげぇ・・・プラネテューヌにこんな所もあったんだな」

 

エルク

「この前、たまたまクエストの帰りに見つけたんだ。

 気に入ってくれたかな?」

 

うずめ

「うん! なんていうかぁ、海がキラキラのでピカピカ光っててとてもキレイで、

 うずめマジ感動しちゃった! みたいな♪」

 

エルク

「・・・」

 

うずめ

「っ!? ゴ、ゴホン!

 まあ、なかなか綺麗じゃねえか。

 俺は好きだぜ、こういうの。

 お前が気に入るのも納得だな」

 

エルク

「ありがとう、うずめ。

 そう言ってくれると、僕も連れてきた甲斐があったよ。

 それにしても、さっきのって・・・」

 

うずめ

「い、いや、今のは・・・って、これ以上聞くな!

 あんなの、カッコいい俺には似合わねえだろ・・・」

 

エルク

「そうかな?

 僕は可愛いと思うけど?」

 

うずめ

「か、かわいいだと!?

 このカッコいい俺がそんなわけねえだろうが!

 バ、バッカじゃねえの!?///」

 

 

いつもはぶっきらぼうで男口調の男勝りなうずめだけど、

たまに覗かせる女の子の部分とのギャップがすごい。

女神化した時と同じ口調だったけど、

ひょっとしたらあれがうずめの素なのかもしれない。

 

 

エルク

「いやいや、そんなことないよ。

 僕は本当にそう思ってるけど?」

 

うずめ

「~っ! と、とにかく、この話は終わりだ終わり! いいな!?」

 

エルク

「はは。 うん、分かったよ」

 

うずめ

「ったく、えるっちってたまに意地悪だよな」

 

エルク

「別にそういうつもりで言ってるわけじゃないんだけどなぁ・・・」

 

うずめ

「まあ、それにしてもよくこんな所見つけたな」

 

エルク

「さっきも言ったけど、僕が他国に体験入国に行く前に、

 クエストの帰りにたまたま見つけたんだ。

 またここに来ることがあったら、誰かを誘って来ようと思ってね」

 

うずめ

「だったら、俺じゃなくてねぷっちとかぎあっちを誘えばよかったんじゃねえか?」

 

エルク

「確かに最初はそのつもりだったけど、

 ネプテューヌとネプギアにうずめの話を聞いた時、君を誘うって決めたんだ」

 

うずめ

「なんで、俺なんだ?」

 

エルク

「・・・それは、うずめにネプテューヌとネプギアが守ってる今のプラネテューヌを

 見て欲しいと思ったからさ」

 

うずめ

「今のプラネテューヌ?」

 

エルク

「うん。 君がプラネテューヌを治めていた時、悲しい事が起こった事も聞いてるし、

 僕の中でそれを理解したつもり。

 でも、今は当時みたいに人々が女神様を必要とせず、

 暗殺を企てようとする国民もいない。

 だからうずめには、ネプテューヌが治める今のプラネテューヌはこんなにも綺麗で

 平和だっていう所を見せたかった。

 それが、僕が君を誘った理由」

 

うずめ

「えるっち・・・」

 

エルク

「それにさ、過去に悲しい経験をした君には、笑顔でいて欲しいんだ。

 だってそうじゃなきゃ、君がかわいそうだよ・・・」

 

うずめ

「なんでお前が悲しい目をするんだよ」

 

エルク

「だって・・・」

 

 

悲しい表情をし、うつ向いている僕の肩に手を置いてうずめは言う。

 

 

うずめ

「・・・心配してくれてありがとうな、えるっち。

 あの戦いから昔の記憶が戻って思い出したんだ。

 俺は昔、自分の妄想の力が暴走して当時の国民達に迷惑掛けちまった。

 その結果、さっきお前が言った通り暗殺されかけた俺の代わりに、

 一緒にいた男が死んじまったんだ・・・」

 

エルク

「・・・」

 

うずめ

「だから、俺はイストワールに自分を封印するように頼んだんだ。

 まあ、あれから何十年と時間が経っちまってたみたいだけどな」

 

エルク

「うずめ・・・」

 

うずめ

「ねぷっちとぎあっち達と零次元で出会わなかったら、

 きっと俺はこうしてお前と話すことはもちろん、

 この綺麗な景色を見ることは出来なかったろうな。

 でも、今はお前が・・・皆がいる。

 だからさ、俺のことはもう心配いらねえよ」

 

エルク

「・・・うん、分かった。

 ごめんね、気を遣わせちゃって」

 

うずめ

「気にすんなって。

 お前は俺を心配して励ますつもりでここに連れてきてくれたんだろ?」

 

エルク

「まあ、本当は僕が君を元気付けるつもりだったんだけどね・・・」

 

うずめ

「ありがとうな、えるっち。

 本当に優しいんだな、お前は」

 

 

そう言って手を離すと、その拳を握って僕に突き出す。

 

 

うずめ

「繰り返しになるが、これからもよろしくな、えるっち!」

 

エルク

「うん、こちらこそ、うずめ!」

 

 

それに応えるように、僕も同じように拳を握り、

突き出したうずめの拳に軽く当ててそう言う。

赤い夕日をバックにしたそれは、まるで同性同士の友情のようだった。

 

 

うずめ

「よし、そろそろ暗くなるし、今日はもう帰るか」

 

エルク

「そうだね。 皆を心配させちゃうしね」

 

うずめ

「そんじゃ、教会まで競争だ!

 行くぞ、えるっち! 遅れても知らねえぞ!」

 

エルク

「エっ!? ちょっと待ってよ、うずめ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うずめside

 

 

えるっちか・・・ねぷっちが言ってた通り優しい奴だな。

こうして向かい合ってみたらあいつ心の強さがなんなのか、今分かったぜ。

それは誰よりも優しくて、誰よりも仲間思いで、

そして誰よりも人の痛みと悲しみを分かってやれて、寄りそえる奴なんだってな。

だから俺は、あいつと一緒にいると楽しくて安心できるんだな。

でも、それ以外に心が温かくなるようなこの気持ち、一体なんなんだろうな?

 

 

うずめsideend

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕とうずめは、どちらが先に教会に着くか互いに全力疾走で帰るのであった。

ちなみに勝敗は、同着で引き分けだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ポケモン最新作、ソード、シールドがついに発売されましたね!
やっと殿堂入り出来ました。
今作のチャンピオン、強かったと思ったのは僕だけでしょうか?
皆さんはお気に入りのポケモンはいますか?
僕のお気に入りはワンパチです!
あのコーギーのような見た目はもちろん、
おケツのあのハートマークが可愛いですよね!
ちなみに、ゲーム中ずっとワンパチのことをワンパチさんと呼んでましたw

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