光次元ゲイムネプテューヌ~聖なる祈りと極光の守護神~   作:EDENCROSS

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光ネプ第50話

《前回までのあらすじ》
エルクがネプテューヌとクロワール達と共に、
ナナイロアゲハと言う絶滅危惧種の昆虫をモンスターから助けたその翌日、
今度は緊急の連絡が入った。


♯ 50 マジェコン組織

エルク

「ねぇ、アイエフちゃん。 ひょっとしてここが?」

 

アイエフ

「ええ、私達諜報部が長年追い続けてきたマジェコンを扱う犯罪組織のアジトよ」

 

 

天候は曇り、そして生暖かい風の中聳えるのは、まるで工場のような大きな建造物。

僕とアイエフちゃんは、その犯罪組織のアジトの入口前にある茂みに隠れている。

なぜ僕達がそこにいるかと言うと、それは少し時間を遡ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          ━ プラネテューヌ教会 自室 ━

 

 

エルク

「(神次元に行くまで、まだ日がある。

 今の内に自分にできることをやっておこう)」

 

 

朝食を済ませ、いつもの普段着に着替えて身だしなみを鏡の前で整えながらそう思い、

ギルドへ行こうと部屋を出る。

それからしばらくして、ある人物から連絡が入る。

 

 

アイエフ

『もしもし、エルク。

 アイエフだけど、今、時間あるかしら?』

 

エルク

『アイエフちゃん? どうしたの?」

 

アイエフ

『前にマジェコンの取引をしてたネズミを捕まえたのを覚えてる?』

 

エルク

『うん、覚えてるよ。

 僕とアイエフちゃんとビーシャの三人で捕まえたあのネズミのことだよね?』

 

アイエフ

『そうよ。

 実はマジェコンを扱う犯罪組織のアジトの場所を特定したの』

 

エルク

『本当!? なら、早く乗り込んだ方が・・・』

 

アイエフ

『もちろんそうしたいのはやまやまなんだけど、

 諜報部の仲間達は別件で忙しくて、応援の要請ができなくて私一人だけなの。

 だからあんたに協力してほしいと思って連絡したんだけど、お願いできるかしら?』

 

エルク

『あの一件に関わったからには僕も無関係じゃないからね。

 もちろん協力させてもらうよ』

 

アイエフ

『ありがとう、あんたならそう言ってくれると思ったわ。

 それじゃあギルド前で会いましょう。

 そこから私が奴等のアジトまで案内するわ』

 

エルク

『了解。 僕もすぐ向かうよ』

 

 

アイエフちゃんからの電話を切り、急いで待ち合わせ場所のギルドへ向かい、

それから彼女の案内でアジトに着き、今に至る。

 

 

エルク

「それにしても、よくアジトの場所を特定できたね?」

 

アイエフ

「あの日よりもずっと前から奴等の足取りを追ってたからね。

 で、昨日やっとそれを掴めて特定できたってわけ」

 

エルク

「なるほど、流石諜報部だね。

 でも、疑うってわけじゃないけど、その情報って確かなものなの?」

 

アイエフ

「諜報部のオトメちゃんや他の仲間達と情報を共有したものだから、

 まず間違いないわ」

 

エルク

「それじゃあ僕達がこうしてここにいることも?」

 

アイエフ

「ええ、バレていないはずよ。

 だから今うちにアジトに潜入して、奴等を一匹残らず取っ捕まえようってわけよ」

 

 

と、アイエフちゃんは拳を強く握りしめてそう言う。

・・・なんだか目がメラメラ燃えている気がする。

 

 

アイエフ

「それに、あんたとはこれで二度目ね。

 頼りにしてるわよ、エルク」

 

エルク

「うん、僕も頼りにしてるよ、アイエフちゃん!」

 

アイエフ

「任せなさい! じゃあ、早速行きましょうか」

 

エルク

「でも、真正面から行くわけじゃないんでしょ?」

 

アイエフ

「もちろん潜入ルートは考えてるわ。 こっちよ」

 

 

茂みに隠れながらアイエフちゃんに付いて行き、

アジトの正面から見て右に回り込むと、そこには小さなダクトがあった。 

 

 

エルク

「もしかして、ここから?」

 

アイエフ

「察しがいいわね。

 そうよ、ここから潜入するわよ」

 

 

アイエフちゃんは、ダクトの小さな鉄格子を外そうと背を伸ばすが、

なかなか届かない。

 

 

アイエフ

「くっ、と、届かないわね・・・」

 

エルク

「僕がやるよ。 よっと・・・」

 

 

僕の方が背が高いので、代わってそれに手を掛けて外す。

 

 

エルク

「よし、外れたよ」

 

アイエフ

「ありがとう、エルク。

 なんだかカッコ悪い所を見せちゃったわね」

 

エルク

「気にしないでよ。

 僕の方が背が高いんだから、これくらいはね」

 

 

ダクト。 本来は内部の空気を循環するためのものだが、

まさかここから潜入するとは思わなかった。

 

 

エルク

「・・・」

 

アイエフ

「どうかした?」

 

エルク

「ああ、いや、こういった潜入も久しぶりだなって」

 

アイエフ

「前にどこかで経験したことがあるの?」

 

エルク

「うん、前にラステイションでケーシャちゃんと・・・あっ」

 

アイエフ

「ふーん、ケーシャとねぇ・・・。

 やっぱりあの事件、あんたも絡んでたのね。

 ラステイションで女神と一緒に国の中心である教会にいて知らないはずないし、

 あんたのことだから自分から首を突っ込んだんじゃないかって思ってのよ」

 

エルク

「よ、よくご存じで・・・」

 

アイエフ

「まあ、伊達にあんたのこと見てないからね」

 

エルク

「エ? それってどういう・・・」

 

アイエフ

「な、なんでもないわ。 ほら、さっさと行くわよ!」

 

 

そう言ってアイエフちゃんは、顔を赤くしてダクトに近づく。

僕はただ意味を聞きたかっただけなんだけど・・・。

 

 

エルク

「あ、そうだ。 ちょっと待って、アイエフちゃん」

 

アイエフ

「なによ?」

 

エルク

「ここは僕が先行するから、アイエフちゃんは後ろから付いてきて」

 

アイエフ

「なんでよ?」

 

エルク

「もしこのままアイエフちゃんが先行して、僕がその後ろを付いていくとしたら、

 僕の目の前になにがあると思う?」

 

アイエフ

「なにって、そりゃあ・・・っ!///」

 

エルク

「そう。 だからここは僕がそうした方がいいと思って言ったんだけど、どうする?」

 

アイエフ

「そ、そうね! そうしましょう!

 それじゃあ先行頼んだわよ」

 

エルク

「了解」

 

 

僕達は犯罪組織のアジトの潜入を開始した。

 

 

アイエフ

「やっぱり狭いわね・・・。

 本来人が通る所じゃないから当然ね」

 

エルク

「大丈夫、アイエフちゃん?」

 

アイエフ

「ええ、大丈夫よ。 そういうあんたは?」

 

エルク

「僕も大丈夫だよ。

 まあ、確かに狭いと言えば狭いけどね・・・」

 

アイエフ

「他にルートがなかったから、こればかりは仕方ないわね」

 

 

敵のアジトに潜入するんだからこれくらいは仕方がない。

あの時のように地下から行くルートがないのだから。

 

 

エルク

「それにしても、奴等は一体どうやってマジェコンを作ってるんだろう?

 まえの戦いで、マジェコンは全て破壊したんでしょう?」

 

アイエフ

「ええ、間違いなくそのはずよ。

 それだけに諜報部のの方でも情報が掴めてないのよ」

 

エルク

「・・・もしかして、古代魔道具(アーティファクト)かな?」

 

アイエフ

古代魔道具(アーティファクト)って確か、大昔にあった魔法のアイテムのことよね?」

 

エルク

「うん。 僕とユリウスは今まで色んな古代魔法道具(アーティファクト)を見てきたから

 その可能性はあると思うんだ」

 

アイエフ

「なるほどね。

 古代魔法道具(アーティファクト)の事なら、あの遺跡の調査から諜報部の方にも情報が入ったわ。

 どれもでたらめな能力なものばかりってね」

 

ユリウス

「ああ。 だが、その分誰でも使えると言うわけではない」

 

アイエフ

「それって、使い手を選ぶってこと?」

 

ユリウス

「確かにそなたの言う通り、古代魔法道具(アーティファクト)は強力な能力を持った物だが、

 それの波長に合った者でなければ使うことが出来ないようになっている。

 威力、効力は使い手の魔力に依存するため、

 恐らくその能力を十分に発揮させるための原理だろう」

 

アイエフ

「そんなものが悪用されたら、言うまでもなく厄介ね・・・。

 っていうか、もう実際に悪用されてるんだけど」

 

 

僕達が今まで見てきたのは、対象者を操る精神操作(マインドソーサー)

人や物質を吸い込み、閉じ込める暗黒幻想本(イヴィルファンタジア)

本来なら不可能とされる物を造り出せる禁忌錬金釜(オーバーアルケミー)と、

たった三つと少ないけれど、どれも強力な能力を持った物ばかりだった。

アイエフちゃんの言っていたマジェコンも、

何かしらの古代魔法道具(アーティファクト)によって造られたのかもしれない。

 

 

アイエフ

「まあ、古代魔法道具(アーティファクト)は未知の物だから、まだまだ分からない部分が殆どね」

 

エルク

「それに、遺跡に現れたクロノスも、それと何か関係してるかもしれないしね」

 

 

狭いダクトの中を四つん這いになって進み、曲がり角を曲がると、光が見えた。

僕は入ってきた時と同じようにダクトの鉄格子を外して、

できるだけ物音を立てないように下へ降りて、周囲を確認する。

 

 

アイエフ

「どう、エルク?」

 

エルク

「うん、降りてきて大丈夫だよ」

 

アイエフ

「分かったわ。 って結構高いわね・・・」

 

 

僕に続いて、アイエフちゃんも降りる。

 

 

エルク

「とりあえず、潜入成功だね」

 

アイエフ

「ええ、ここからは慎重に行きましょう」

 

 

アイエフちゃんは部屋の扉を少し開き、その隙間から外の様子を見て僕達は部屋を出た。

しかしそこには、人の影も形も気配もなく、ただ薄暗い通路が続いていた。

 

 

アイエフ

「誰も居ないわね・・・。 このまま進みましょう」

 

 

僕達はそのまま通路を進む。

 

 

アイエフ

「でも、妙ね。

 こんなに大きなアジトなら、構成員と遭遇してもおかしくないのに・・・」

 

エルク

「アイエフちゃんもそう思う? 実は僕も気になってたんだ。

 奴等にとって、ここは仲間以外に知られたくない場所のはずなのに、

 構成員はもちろん警備兵もいない。

 やっぱりこれって・・・」

 

アイエフ

「考えたくないけど、罠かもしれないわね・・・」

 

エルク

「けど、引く気はないんでしょ?」

 

アイエフ

「当然っ! たとえそうだったとしても、ここが奴等のアジトに変わりないもの!」

 

エルク

「なら、このまま進もう!

 それは僕も同じ気持ちだしね!」

 

 

そのまま廊下を駆け抜け、突き当たりを左に曲がると、大きな扉があった。

僕達はそれを開いて中に入る。

 

 

エルク

「ここは、武器庫かな?」

 

アイエフ

「みたいね。 それにしても、かなりの数ね。

 一体どこから入手してるのかしら?

 それとも、独自の密輸ルートがあるとか・・・」

 

 

僕達が入った広々とした部屋は、どうやら武器庫のようだ。

壁にはマシンガンやショットガン、スナイパーライフルといった様々な銃が立て掛けられ、

他にもたくさんの剣などの武器があった。

よく見ると、どれも手入れされている。

定期的にやっているようだ。

 

 

エルク

「・・・ここも誰も居ないみたいだね」

 

アイエフ

「そうみたいね。 このまま進みましょう」

 

 

誰も居ないことを確認し、そのまま武器庫から出ようと出口に近付いた瞬間、

突然大きなサイレンが鳴り響き、扉にシャッターが閉まり閉じ込められてしまった。

 

 

アイエフ

「っ! しまった!」

 

エルク

「閉じ込められたみたいだね・・・!」

 

「シンニュウシャハッケン! シンニュウシャハッケン!

 コレヨリ、シンニュウシャヲハイジョスル!」

 

 

そんな機械的音声の後、天井のハッチのようなものが開き、

そこから二体の白と黒を基調とした大型のロボットが現れた。

 

 

エルク

「こいつらは・・・!」

 

ユリウス

「どうやら、警備するガードロボのようだな」

 

アイエフ

「なによ、ちゃんと侵入者対策してるんじゃない」

 

ガードロボ

「シンニュウシャ、ハイジョスル!」

 

 

二体のガードロボは、装備した大剣を構えて突撃してきた!

 

 

________________________________________

戦闘曲

テイルズオブグレイセスF

抜刀!研ぎ澄ませ!

通常戦闘曲

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

ユリウス

「来るぞっ!」

 

アイエフ

「はっ!」

 

エルク

「ふっ!」

 

 

アイエフは二刀のカタールで、相手の初撃を難なく受け流す。

エルクは回避せず、真正面からそれを受け止めて弾き、素早く懐に潜り込む。

 

 

エルク

「雷鳴剣·紫電刃ッ!」

 

 

雷の魔法剣紫電刃による雷を纏った斬撃が、ガードロボの胴体を両断し、爆発を起こした。

 

 

エルク

「やっぱり、機械の敵には電撃系だね!」

 

アイエフ

「やるじゃない! 私もさっさと終わらせますか!

 喰らいなさい! 烈火死霊斬ッ!」

 

 

アイエフはカタールに炎を纏わせ、ガードロボに接近して斬りつける。

それによって炎上して倒れると、そのまま機能を停止した。

やはり、彼女は強い。

諜報部員としても優秀だが、長年ネプテューヌ達女神と共に世界中を旅をして

様々な強敵と戦ってきただけのことはある。

実践経験で言うなら、エルクよりも遥かに上だろう。

自分も負けないよう、さらに強くなろうとこの時エルクはそう思った。

 

 

アイエフ

「エルク、敵の増援よ!」

 

 

そう思っていると、そこからさらにガードロボが現れた。

カラーリングは同じだが、今度は剣を装備したタイプとは違い、

脚部がホイールになっており、レーザー銃を装備した機動性の高いガードロボだった。

 

 

ユリウス

「先程とは違うタイプのようだな。

 二人共、油断するな!」

 

ガードロボ

「ハイジョスル!」

 

 

機械音声で再びそう言いながら、エルク達にビームを放つ。

実弾とは違い、レーザービームはそれに比べて遅く弾くことも可能だが、

しかし数が数なだけにそれも難しくなる。

四方八方から飛んでくるレーザービームをかわし、防ぎ、

または弾きながら攻撃に転じるが、相手のヒットアンドアウェイで思うように当たらない。

 

 

アイエフ

「すっかり囲まれたみたいね・・・。

 どうする、エルク?」

 

エルク

「そうだね・・・」

 

 

ガードロボ達はエルクとアイエフを囲うように陣形を組み、

その間合いを徐々に詰めて行く。

 

 

エルク

「アイエフちゃん、僕から離れないでね」

 

アイエフ

「え、どうするの?」

 

エルク

「こうするのさ!」

 

 

神威の刀身を左手でなぞるように当てて、光の魔力を集中させる。

 

 

エルク

「輝剣·光破───乱!」

 

 

それを地面に突き立ててさらに魔力を込めると、

光破による光の間欠泉のようなものが連続で噴出され、一体、また一体と倒して行く。

 

 

アイエフ

「す、すごい・・・!」

 

 

エルクの技によって十体居たガードロボは、その半数の五体となった。

 

 

アイエフ

「あんたばかりいいカッコさせないわ!

 ラ·デルフェス!」

 

 

アイエフは光魔法ラ·デルフェスを発動し、

地面に浮かび上がった魔方陣の中に居た、残りの五体のガードロボを倒した。

 

 

アイエフ

「ふう、これで全部かしら?」

 

エルク

「そうみたいだね。

 それにしても・・・」

 

 

僕は煙が晴れた後、敵が残っていないか確認するため周囲を見渡した。

そこには、先程増援で現れたガードロボの姿はなく、

その残骸と戦闘によって滅茶苦茶になった武器庫だった。

 

 

エルク

「もしかして、やり過ぎたかな?」

 

アイエフ

「仕方ないわよ。

 たぶん、私達がここに入った次点で、

 ここを武器ごと破壊するつもりだったんでしょうね」

 

エルク

「どういうこと?」

 

アイエフ

「所持していた武器が証拠として押収された場合、

 そこから密輸ルートから自分達の足がつく可能性があるのよ。

 奴等はそれを避けるため、こんな対策をしたんでしょうね」

 

エルク

「なるほど・・・」

 

 

武器庫にあった武器を見てみると、手入れされていたそれらが原型を留めていないほど

バラバラに砕け散っていた。

 

 

ユリウス

「先程の戦闘で我々の潜入が奴等に知られた可能性が高いな」

 

アイエフ

「そうね。

 もうこんな所に長居は無用よ。

 先を急ぎましょう、二人共」

 

 

僕達は、閉ざされた扉を無理矢理こじ開け、

そのまま武器庫を後にして先に進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  ━ 監視室 ━

 

 

???

「ふむ。 やはり突破されてしまったか」

 

???

「まあ、特に問題はないだろう。

 しかし、少数でも手練れだからねぇ。

 特にあのエルクと言う少年は」

 

???

「あの緑頭の小僧の事か?

 確かにそうみたいだが、えらく買ってるんだな。

 個人的に何かあるのか?」

 

???

「うん。

 ヤツはワタシの大切な部下を捕らえた憎き相手だからねぇ・・・!

 だからワタシの自身のこの手で叩き潰さないと

 腹の虫が治まらないんだよ・・・!」

 

???

「お前の部下・・・リーダーチュウの事か。

 なら、ヤツの相手はお前に任せるぞ」

 

???

「ああ、任せてくれ。 ンフフフ、ンフフフフフフ・・・!」

 

 

エルクとアイエフの二人を大きなモニター越しで見ている監視室らしき場所で、

黒いスーツと黒のサングラスを掛けた小柄な男ブラックは二人の監視を続け、

白衣を着た長身の科学者風の男ホワイトは部屋を出る。

 

 

ホワイト

「ワタシのカワイイ部下リーダーチュウ、

 キミの無念はワタシが必ず晴らしてあげるからね・・・!」

 

 

この時、ホワイトの顔はエルクに対する憎悪で歪ませていた。

 

 

ブラック

「さて、オレもそろそろ準備をしておくか」

 

 

そしてブラックも、その準備のため部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、エルクとアイエフは再び廊下を走っていた。

 

 

エルク

「やっぱり、さっきの戦闘で派手にやり過ぎたかな?」

 

アイエフ

「あの時はああでもしないとこっちがやられてたから仕方ないわ」

 

 

追ってくる警備兵のネズミ達をやり過ごすため、

僕達は物陰に隠れながらそう話す。

 

 

ネズミ兵

「おい、そっちはどうっちゅか」

 

ネズミ兵

「いや、こっちには居ないッちゅ」

 

ネズミ兵

「まったく、逃げ足の早いネズミっちゅ!」

 

アイエフ

「いや、ネズミはあんた達の方でしょ」

 

エルク

「あはは・・・」

 

 

と、物陰からネズミ兵達にツッコミを入れるアイエフちゃんに、苦笑いする僕。

 

 

アイエフ

「なんて言ってる場合じゃないわね。

 移動しましょう、エルク」

 

 

周囲を捜索する兵士達から逃れるため、

僕達は彼等の目を盗んでその場を離れる。

 

 

アイエフ

「周囲に人の気配はないし、とりあえず今は安全かしらね」

 

 

そう言いつつ、周囲を見渡して安全を確認するアイエフちゃん。

やはり仕事上こういった場面は慣れているんだろうか、

状況を把握出来る冷静さが頼もしく、そして心強い。

 

 

エルク

「・・・」

 

アイエフ

「なに? どうしたの?」

 

エルク

「ああ、いや、アイエフちゃんは凄いなって」

 

アイエフ

「そ、そうかしら?」

 

エルク

「うん、それに頼もしいよ。

 ねえ、諜報部員の仕事って、具体的にどんなものなの?」

 

アイエフ

「そうね・・・詳しくは言えないけど、情報を集めたりするのはもちろん、

 偽の情報を流して混乱させたりするってところかしら」

 

エルク

「・・・結構、悪どいんだね」

 

アイエフ

「た、例えばの話よ!

 それに、そうは言うけれど、私達が情報を掴んだお陰で、

 こうして犯罪組織のアジトを特定できて、潜入もできてるのよ?」

 

エルク

「そうだね。 流石は諜報部員だね」

 

アイエフ

「ええ、そうでしょう?」

 

 

腕を組んでドヤ顔する彼女と雑談する僕。

敵のアジトのど真ん中だからこそ、

緊張を解すためにこう言ったことも必要なのかもしれない。

 

 

アイエフ

「さあ、楽しいお喋りもここまでにして、先に進みましょう。

 こうしてても、またネズミ達に見つかるのも時間の問題だからね」

 

 

そして、僕達は再び廊下を駆け出す。

それからしばらく進むと、大きな扉があった。

 

 

アイエフ

「ここまで見つかることなく来れたけど、また怪しげな扉ね・・・。

 さっさと開いて先へ進みましょう」

 

 

アイエフちゃんはその大きな扉を開こうとそれに触れようとした。

しかし、その時───

 

 

アイエフ

「えっ、うそっ!? 扉が!」

 

エルク

「アイエフちゃんっ!」

 

 

エルク·アイエフ

「うわあぁぁぁぁっ!「きゃあぁぁぁぁっ!」」

 

 

突然扉が消え、その拍子で体勢を崩したアイエフちゃんは、

扉が消えた場所にあった穴に落ちかける。

僕は咄嗟に手を掴むが支えきれず、そのまま一緒に落ちてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルク

「・・・う、う~ん・・・アイエフちゃん、大丈夫?」

 

アイエフ

「ええ、なんとかね・・・。

 どこにいるの、エルク」

 

 

どうやら僕達が落ちた先は、声の反響からして地下のようだ。

しかし、部屋が真っ暗なのでなにも見えない。

 

 

エルク

「ここにいるよ」

 

アイエフ

「ここって言われても、こんな真っ暗じゃ分からないわよ」

 

エルク

「そ、それもそうか・・・って、うわぁっ!?」

 

アイエフ

「きゃあっ!」

 

 

互いに探し合って暗闇の中歩いていると、

なにかにぶつかり、前に倒れ込んでしまった。

しかし、僕の顔になにやら柔らかいものが当たっている。

 

 

エルク

「いたた・・・。

 な、なんだろう? この微妙な弾力は・・・」

 

アイエフ

「ひゃあっ! ど、どこ触ってんのよ!///」

 

エルク

「エっ? そ、それじゃあ、この柔らかいものって、まさか・・・!」

 

 

そう思っていると、真っ暗だったフロアに照明が付き、明るくなった。

急な明かりに眩しく感じながらも、僕の予感は最悪な形で的中することになった。

あお向けに倒れているアイエフちゃんに、僕が押し倒している状態だった。

つまり、僕の顔に当たっていたもの・・・それは。

 

 

アイエフ

「・・・っ!///」

 

 

アイエフちゃんは涙目になりながら顔を赤くして、腕をクロスして胸を隠していた。

 

 

エルク

「あの・・・えっと・・・こ、これはですね、アイエフさん・・・」

 

アイエフ

「微妙で悪かったなッ!」

 

エルク

「えぼーぅっ!」(エコー

 

 

その体勢で放った彼女の渾身の膝蹴りが、()の急所にクリティカルヒットした!

そのあまりの痛みに、もはやいつもの如くぶべらっ! なんて言ってられない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルク

「~~っ!」

 

アイエフ

「・・・えっと、大丈夫、エルク・・・?

 なんていうか、ごめんなさい」

 

 

下半身を押さえて踞り、痛みに悶えている僕に、

アイエフちゃんは心配そうに謝るが、何も言うことが出来ない。

急所に本気の膝蹴りを食らったら、男は誰でもこうなるはずだ。

それでも僕は、力を振り絞って声を出す。

 

 

エルク

「・・・う、うん、なんとかね・・・。

 僕の方こそごめんね・・・」

 

 

そして、徐々に痛みが引いて行くのを待ち、それが引くと立ち上がり、彼女に謝る。

 

 

アイエフ

「わ、私もやり過ぎたわ。

 あんたがあんなに痛がるとは思わなかったわ・・・」

 

 

アイエフちゃんも、自分がやり過ぎたと反省しているみたいだ。

でも、悪いのは全部僕なんだけどね・・・。

 

 

エルク

「いいんだ、悪いのは僕の方なんだから」

 

アイエフ

「エルク・・・」

 

エルク

「それじゃあ、気を取り直して先に進もう!

 落ちたってことは、ここは地下みたいだね」

 

アイエフ

「そうみたいね。

 これは完全に私のミスね・・・。

 足引っ張っちゃって、ごめんなさい」

 

エルク

「大丈夫だよ、アイエフちゃん。

 落ちたってことは、どこかに上に行くための階段があるはずだよ。

 まずはそれを見つけよう」

 

アイエフ

「・・・そうね、私としたことが少し弱気になってたみたい。 

 ありがとう、エルク」

 

エルク

「どういたしまして」

 

アイエフ

「それにしても、あんたも随分頼もしくなったわね。

 正直とても心強いわ」

 

エルク

「そ、そうかな?

 そう言ってくれると、嬉しいよ」

 

アイエフ

「ふふ。 それじゃあ、遅れた分を取り返すわよ!」

 

 

とりあえず、上に上がるための階段を見つけるため、地下フロアを探索する僕達。

しばらくして上の階へと続く階段を見つけ、なんとか元の階まで戻ることが出来た。

しかし、その道中で今まで僕達を追っていた兵達の姿がないことに疑問に思いつつも、

ここまで来た以上、進む以外の選択肢はなかった。

さらに奥に進むと、今までとは明らかに作りの異なる扉を見つけてそれを開くと、

そこにあったのは・・・。

 

 

アイエフ

「な、なによ、これ・・・!」

 

 

マジェコンを生産している生産ラインだろうか。

これまで来たどの場所よりも広いフロアのいたる所にベルトコンベアがあり、

その上にはマジェコンらしき部品が乗っている。

その部品と部品を組み合わせ、またひとつ、またひとつとマジェコンが作り出されている。

 

 

エルク

「ねえ、アイエフちゃん。

 ひょっとして、ここって・・・」

 

アイエフ

「ええ、マジェコンの生産ラインでしょうね。

 それだけじゃない、エネミーディスクまであるわ」

 

エルク

「本当だ、一枚や十枚じゃない・・・一体何枚あるんだ?」

 

アイエフ

「なんにせよ、破壊するしかないわね・・・!」

 

???

「おっと、それは困るなぁ」

 

 

広々とした空間に突如響く男の声。

目の前の大きなモニターに、黒いスーツを着たブラックと

白衣を着たホワイトの二人の男の姿が写し出されていた。

 

 

ブラック

「ようこそ、我らがアジトへ。 オレの名はブラック。

 お前達諜報部員共が追っている組織のトップだ」

 

ホワイト

「そしてワタシが、この組織の科学者のホワイト。

 アナタがエルクだね?

 いきなりだが、ワタシはアナタに強い憎しみを待ってるんだよ」

 

エルク

「憎しみ? 僕はお前のことなんて知らないぞ」

 

ホワイト

「まあ確かに、ワタシはアナタとの直接的な面識はない。

 でも、アナタは知ってるはずだ、

 先のマジェコンの取引でアナタが捕まえたワタシの部下、リーダーチュウをねぇ!」

 

アイエフ

「っ! リーダーチュウって、あの時の・・・!」

 

ホワイト

「ああ、そうさ!

 そしてさっきも言ったように、ワタシはアナタに強い憎しみを持っている。

 だから、ワタシがこの手でアナタを葬らなければ気が済まないんだよ、エルク!」

 

アイエフ

「それって、ただの逆恨みじゃない。

 馬鹿馬鹿しいわね」

 

ブラック

「ふふ、まあそう言うな。

 お前達には、ホワイトの報復劇に付き合ってもらうぞ」

 

アイエフ

「私達がはいそうですかって付き合ってあげると思ってるの?」

 

ホワイト

「いいや、付き合ってもらうよ。

 アナタ達の居るその部屋は見ての通りマジェコン、

 及びエネミーディスクの生産ラインだ。

 そしてワタシ達の居るフロアに、それの制御装置がある。

 この意味が分かるよね?」

 

エルク

「・・・分かった。

 お前達の居るフロアに行けばいいんだな?」

 

アイエフ

「ちょっと、エルク!

 これは明らかに奴等の罠よ!?」

 

エルク

「もちろん分かってる。

 でも、僕達は奴等を捕まえるために来たんでしょ?

 なら、ここは罠でも行くべきだよ。

 それに、あの二人の居る場所にこれの制御装置があるんなら尚更だよ」

 

アイエフ

「虎穴に入らずんば虎児を得ず、ね・・・。

 確かに行くしかないようね・・・」」

 

ホワイト

「話は纏まったかい?

 では、そこから奥の扉に向かってくれ。

 その先のフロアで待ってるよ、エルク」

 

 

そう言い残すと、モニターが消え、奥にあった扉が開いた。

 

 

エルク

「行こう、アイエフちゃん。

 こんな物をこのまま放置できないよ」

 

アイエフ

「ええ、そうね。

 あいつら、私達がここに来た目的を知ってたっぽいし、

 ここに居ても仕方ないしね」

 

 

僕達は奴等の言う通り、その扉から再び薄暗い通路を駆け抜け、

ブラックとホワイトの居るフロアに辿り着いた。

 

 

ホワイト

「待ってたよ、エルク。

 そして諜報部員アイエフ。

 ワタシの誘いに乗ってくれて嬉しいよ」

 

ブラック

「もっとも、お前達にとってそれ以外の選択の余地は無かったようだがな」

 

 

先程居たフロアよりもさらに広い空間の中、

まるで僕達を見下ろすかのような場所に、奴等は居た。

 

 

アイエフ

「私達がここに来たことはバレてないはずなのに、

 どうしてこっちの目的を知ってたの?」

 

ブラック

「なぜ、だと?

 それは、こっちの情報を諜報部(お前達)に流したのは他でもない、

 このオレなんだからな!

 

アイエフ

「う、嘘よ!

 なんでそんなこと・・・!」

 

ブラック

「考えてもみろ、なぜ長年追い続けていまだにその足取りを掴めずにいた組織の情報を

 こんな簡単に手に入れられたのかを」

 

アイエフ

「・・・つまり、誘き出されたってわけね・・・」

 

ブラック

「そういうことだ」

 

エルク

「でも、そんなことをすれば諜報部はもちろん、

 プラネテューヌが他国と総力を上げて、お前達を潰しに掛かるぞ」

 

ブラック

「そんなことは分かっている。

 このオレが、オレ達がなんの考えもなしにそんなことをすると思うか?」

 

エルク

「どういうことだ」

 

ホワイト

「こういうことさ」

 

 

ホワイトが指を鳴らすと、床にあったハッチが開き、

そこから巨大な二足歩行型の機械モンスターが現れた!

 

 

________________________________________

戦闘曲

ゼノブレイド

行く手を阻む者

ボス戦闘曲

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

アイエフ

「っ! 機械モンスター!?

 ・・・あんた達が強気な理由はこれだったのね」

 

ホワイト

「ただの機械モンスターじゃないぞ。

 こいつは搭乗することで力を発揮する特別なモンスターだ!」

 

アイエフ

「なによそれ・・・!

 そんなモンスター聞いたことないわ!」

 

ホワイト

「フフフ、驚くのも無理もない。

 なぜなら、これはワタシが造り上げた最高傑作なのだから!」

 

ブラック

「まあ、機械やら部品やら色んなものを用いて造ったから、

 その分かなり苦労したがな」

 

ホワイト

「まあね。

 でも、その甲斐あって素晴らしい出来になったよ。

 見なよ、このオリハルコンの輝きを!」

 

 

現れた機械モンスターを見ると、青く輝く装甲を身に纏っていた。

 

 

アイエフ

「オリハルコンっ!?

 希少価値の高い鉱石を、一体どうやって・・・!」

 

ホワイト

「フフフ、知りたいかい?

 いいよ、今は気分がいいからね。

 答えは、こ·れ·さ!」

 

 

そう言って、ホワイトは懐から一枚の鏡を取り出した。

 

 

エルク

「あれは、鏡・・・?」

 

ホワイト

「鏡は鏡でも、ただの鏡じゃあないよ。

 これは複製鏡(クローンミラー)と言って、これに写された物を何でも複製して生み出せるんだ。

 だからオリジナルがあれば、無限にそれを生み出せる。

 ・・・でも、生物に対してはその限りじゃないみたいだけどね」

 

アイエフ

「それってもしかして、古代魔法道具(アーティファクト)

 それじゃあ、さっきのフロアにあったのも全部・・・」

 

ブラック

「ほう、流石は諜報部員、コイツの事を知ってるようだな。

 ご名答、その通りだ。

 まあ、オレ達も実際にお目にかかるのは初めてだがな」

 

アイエフ

「だからこんなものも造ることが出来たってわけね・・・」

 

ホワイト

「さあ、どうする? 尻尾巻いて逃げる?

 まあ、逃がしたりはしないけどねぇ!」

 

アイエフ

「冗談っ!

 エルク、あんなふざけたものとっととぶっ壊すわよ!」

 

エルク

「うんっ!」

 

ブラック

「威勢がいいな。

 だが今回はお前には傍観してもらうぞ、小娘」

 

アイエフ

「なんですって? きゃあ!」

 

エルク

「アイエフちゃん!」

 

 

ブラックが手に持ったボタンを押すと、

床から檻が現れ、アイエフを捕らえるとそのまま高台にいるブラックの隣に移された!

 

 

エルク

「おい、彼女を解放しろ!」

 

ブラック

「そうはいかん。

 何せコイツは保険だからな」

 

エルク

「どういう意味だ」

 

ブラック

「言葉通りの意味だ。

 エルク、確かにお前は強い。

 だが、このオリハルコンアーマーを纏ったモンスターの敵ではない。

 しかし、念には念を入れる」

 

ホワイト

「そこで、彼女には人質になってもらう。

 そうすることで、アナタはワタシ達に手を出せなくなる。

 これはその保険さ」

 

アイエフ

「くっ、そんな・・・!」

 

ブラック

「さあ、分かったら武器を捨てろ!

 さもなくば・・・」

 

 

ブラックはゆっくりとした動作で、アイエフに銃口を向ける。

 

 

エルク

「・・・分かった」

 

 

僕はブラックの言う通り、神威をコールアウトした。

 

 

ホワイト

「フフフ、それじゃあ行くよぉ!」

 

 

ホワイトは機械モンスターにの頭部にある操縦席に乗り込んで操縦し、

その巨大なアームでエルクを殴り飛ばす!

 

 

エルク

「がっ!」

 

アイエフ

「っ! エルクっ!」

 

 

殴り飛ばされ立ち上がったエルクに、ホワイトは容赦なく滅多打ちにする。

 

 

エルク

「くっ! うぐっ! がはっ!」

 

ホワイト

「どうしたんだ? 反撃しないのか?」

 

ブラック

「だが、そんな事をしたら、分かるよなぁ?」

 

 

と、下卑た表情を浮かべながら、再びアイエフに銃口を向ける。

 

 

アイエフ

「こいつら、調子に乗って・・・!」

 

ホワイト

「これぞまさに、人間サンドバッグ!

 はあぁぁぁっ!」

 

エルク

「ぐあぁぁぁっ!」

 

ユリウス

『エルクっ! このままでは・・・!』

 

 

ホワイトの操縦する巨大な機械モンスターの蹴りで、

エルクは弧を描いて吹き飛ぶ!

そして、宙に浮いている彼にハンマーナックルで追撃し、

地面とアームに挟まれるように叩き付けられる。

 

 

ホワイト

「無抵抗の相手を一方的に痛め付けるのは気持ちいいなぁ!

 もっとも、この程度で終わらせるつもりはないけどね・・・!」

 

 

アームを退けて、操縦席から見下ろすようにボロボロになったエルクを見て、

歪んだ笑みを浮かべながらホワイトは言う。

 

 

エルク

「・・・うっ・・・!」

 

 

しかし、エルクは立ち上がる。

 

 

ブラック

「ほう、あれだけ受けてまだ立つか」

 

ホワイト

「しかし、そうでなければ困る。

 なにせ、ワタシがアナタに対する怒りと憎しみはこんなものじゃないからねぇ!」

 

アイエフ

「エルク! 私のことはいいから、こいつらやっつけちゃって!」

 

ブラック

「黙れ、小娘が!」

 

アイエフ

「っ!」

 

エルク

「アイ・・・エフちゃん・・・」

 

ホワイト

「他人を心配している場合か?

 ワタシはまだまだ物足りないんだよぉ!」

 

エルク

「がはっ!」

 

 

ボロボロになりながらも、立ち上がったエルクを蹴り上げ、

空中で両腕のアームで掴んでそのまま握り潰す。

 

 

エルク

「ぐああぁぁぁぁぁっ!!」

 

アイエフ

「エルクっ!」

 

ホワイト

「フハハハ! いい悲鳴だ!

 もっともっと、アナタの悲鳴を聞かせてくれ!」

 さあっ! さあっ!」

 

アイエフ

「な、なんなの、こいつ・・・!?」

 

 

ホワイトの異常なまでの異常な執念に、アイエフは恐怖を覚えた。

機械モンスターの巨大な両腕が、彼を握り潰そうとさらに力を込める。

この時、エルクの体からミシミシと軋む痛々しい音を立てていた。

 

 

アイエフ

「やめて! もうやめて!

 エルクが・・・エルクが死んじゃう!」

 

エルク

「大・・・丈夫だよ・・・アイエフ・・・ちゃん。

 必ず僕が・・・助ける・・・から・・・!」

 

アイエフ

「・・・っ!」

 

ホワイト

「っ! コイツ! フンッ!」

 

エルク

「がっ!」

 

 

エルクの言葉に腹を立てたホワイトは、彼を思い切り地面に叩き付けた!

 

 

ホワイト

「自分が傷付きながらも、他者を心配するその想い、反吐がでる!」

 

 

そして、エルクを踏み潰そうとその重く大きな足をゆっくりとした動作で上げる。

 

 

ホワイト

「これ以上やったやっても不愉快だ!

 もういい、死ねぇ!」

 

アイエフ

「(エルクが死んでしまう!

 私のせいで・・・! 私が捕まったせいで・・・!)」

 

 

エルクを助けに行こうと檻をカタールで斬り裂くアイエフ。

しかし、その檻は特別な金属で出来ており、傷ひとつ付けることすら出来ない。

自分せいでエルクが死んでしまう。

アイエフは自分の不甲斐なさを責めながら、

何とか彼を助けようとひたすら檻に必死に斬り掛かる。

その時、アイエフはエルクの言葉を思い出す。

 

 

 

 

───────────────

 

 

「大丈夫、僕が君を守るよ!」

 

「僕達は仲間なんだ。 これくらい、当然だよ!」

 

 

───────────────

 

 

 

 

アイエフ

「(思えば、今までエルクに助けられっぱなしだった。

 最初の遺跡の時はもちろん、今回だってそう。

 彼がいてくれたから、ここまで来ることが出来た。

 私はこのままでいいの?

 エルクに助けられるだけの存在で、本当にいいの?

 いや、違う! 今度は私がエルクを助ける番よ!)」

 

 

アイエフがここの中でそう強く思っていると、

自分の中で熱い何かが湧いてきた!

 

 

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戦闘曲

ゼノブレイド

敵との対峙

イベント戦闘曲

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

アイエフ

「はあぁぁぁっ!」

 

 

突然アイエフから炎のような真っ赤に燃え上がるオーラが、彼女を包み込んだ!

 

 

ブラック

「くっ! なんだ、これは!? 熱いっ!」

 

ホワイト

「な、何事!?」

 

 

そして、そのオーラから現れたのは、リボンと目が緑から炎のような真紅になり、

髪は茶色から金髪に変わり、衣装は炎を思わせる赤く染まったアイエフだった!

 

 

アイエフ

「凄い・・・!

 何これ・・・力を湧いてくる・・・」

 

ブラック

「キ、キサマ! 何をした!? なんだ、その姿は!」

 

アイエフ

「さあね、私にも分からないわ。

 でも、これ以上あんた達の好きにはさせないわ! はあっ!」

 

 

ブラックは、自分の目に前で起きた出来事に理解が追い付かず、

少し怯えた表情でアイエフに問う。

そしてアイエフは、自分を閉じ込めていた檻をまるで飴のように溶かし、

容易く斬り裂いた!

 

 

ブラック

「な、なにっ!? ぐあっ!」

 

 

間髪いれず、ブラックに蹴りを入れてエルクの元へと駆け付ける。

 

 

エルク

「ア・・・アイエフちゃん・・・?」

 

アイエフ

「今は喋らないでじっとしてなさい。 グリーンノア」

 

 

アイエフは、回復魔法グリーンノアをエルクに掛けて回復する。

 

 

エルク

「傷が治ってく・・・それに、止血まで」

 

 

本来応急措置程度だったが、変身したことによって強化され、

エルクが受けた傷が回復した。

そしてエルクを抱えて素早くフロアの隅に移動し、

そのまま壁にもたれかけさせる。

 

 

アイエフ

「あんたはここにいて」

 

エルク

「で、でも・・・」

 

アイエフ

「大丈夫、あんたは私が守るわ!」

 

エルク

「・・・ぁ・・・」

 

 

そう言ってアイエフはエルクを優しく抱き寄せる。

自分が彼女や皆に言っていた言葉が、こんなにも心強く頼もしい言葉だと

この時エルクは初めて知った。

そしてエルクを再び壁にもたれかけさせる。

 

 

エルク

「アイエフちゃん、その姿は・・・?」

 

アイエフ

「私にも分からないわ。

 でも、あんたの事を想うと、体の底から力がみなぎってくる感じがして、

 気が付いたらこんな格好になってたわ」

 

エルク

「だからって一人じゃ・・・」

 

アイエフ

「大丈夫、言ったでしょ? 力がみなぎってくるって。

 いつまでもあんたに助けられっぱなしじゃ、それこそ格好がつかないからね!」

 

エルク

「アイエフちゃん・・・」

 

アイエフ

「まあ、見てなさい!

 もう一度言うけど、あんたは私が守るわ!」

 

 

アイエフはエルクの不安と心配を払うかのように、ウインクしてそう言う。

 

 

アイエフ

「それじゃあ、行ってくるわね」

 

エルク

「アイエフちゃん、気を付けて。

 動けるようになったら僕も加勢するから」

 

アイエフ

「まったく、あんたって男は・・・。

 ええ、任せなさい! 一陣の風を吹かせてやるわ!

 ユリウス、エルクのことお願い」

 

ユリウス

「ああ、分かった。

 アイエフ、そなたも気を付けろ。

 何か切り札のようなものを隠し持っているかもしれん」

 

アイエフ

「・・・そうね、気を付けるわ。

 ありがとう、ユリウス」

 

 

アイエフは、二刀のカタールを構えてホワイトの操縦する機械モンスターと対峙する。

 

 

アイエフ

「待たせたわね。

 ここからは私が相手よ!」

 

ブラック

「ぐっ・・・! やってくれたな、小娘!

 絶対に許さんぞ!」

 

ホワイト

「ワタシとしては、あの男をもっと痛め付けたかったんだけどねぇ」

 

アイエフ

「ゴチャゴチャ言ってないで掛かってきたらどうなの?

 それとも、女一人にビビってるの?」

 

 

と、らしくなく二人を挑発するアイエフ。

 

 

ホワイト

「フフフ、いいだろう・・・。

 望み通り叩き潰して上げるよ!」

 

 

ホワイトは、機械モンスターのアームで叩き潰そうと、それを振り下ろす!

 

 

アイエフ

「遅いわね!」

 

 

しかし、アイエフは余裕の笑みを浮かべて回避する。

 

 

ブラック

「小娘が! 死ねっ!」

 

 

次にブラックがアイエフに向けて手にした銃を発砲する!

 

 

アイエフ

「どこ狙ってるの? 私はこっちよ!」

 

ブラック

「なにっ!?」

 

 

彼女の得意とする流れるような華麗なフットワークで、銃弾を回避する。

本来これは不可能に近いが、自身の体の奥底から湧いてくる不思議な力によって

魔法だけでなく、身体能力も強化され、これによりそれを可能としている。

 

 

ホワイト

「おのれ、ちょこまかと! 食らえっ!」

 

 

その素早い動きに翻弄され、腹を立てたホワイトは、

アイエフを薙ぎ払おうとアームを振るが、スライディングで紙一重で回避される。

 

 

アイエフ

「銃ってのはね───こうやって撃つのよ!」

 

 

ホワイトの攻撃をスライディングで避けつつ、

そのままブラックに向けて二発撃つ。

一発目は彼の持つ銃に、そして二発目で肩を撃ち抜いた!

 

 

ブラック

「ぐあぁぁっ!」

 

アイエフ

「安心なさい、実弾じゃなくてゴム弾だから、死にはしないわ。

 まあ、凄くい痛いけどね」

 

ホワイト

「キサマ、よくもブラックを! 許さん、許さんぞっ!」

 

アイエフ

「そのセリフ、もう聞き飽きたわ、よっ!」

 

 

仲間を撃たれ、憤慨したホワイトは、アイエフの背後から襲い掛かるが、

アームパンチをカタールで受け止め、そのまま競り合う!

 

 

アイエフ

「どうしたの? そんなものなの?」

 

ホワイト

「くっ、小娘が・・・調子に乗るな! リミッター解除!」

 

 

ホワイトは自身が操縦する機械モンスターのリミッターを解除した。

すると蒸気のようなものが吹き出して赤く染まり、

先程とは比べ物にならないほどのパワーを発揮する!

 

 

アイエフ

「な、なによ・・・このパワーは!」

 

ホワイト

「フフフ、このワタシがなんの奥の手もなしにこれを持ち出したと思うか?

 このまま潰してやるッ!」

 

アイエフ

「きゃあっ!」

 

 

それによって得た桁外れな力によって、

先程まで互角に渡り合っていたアイエフは競り負け、弾き飛ばされてしまう!

 

 

アイエフ

「まだまだっ!

 ───あれ? 力が・・・?」

 

 

反撃しようしたが、時間切れなのか、髪も服も元に戻ると急な脱力感が、

アイエフを襲う。

 

 

アイエフ

「元に戻ってる・・・? まさか、時間切れ・・・?」

 

ホワイト

「なんだか知らんが、どうやらそのようだなぁっ! 死ねぇっ!」

 

アイエフ

「くっ・・・!」

 

 

この時、ホワイトは自分の勝利を確信していた。

しかしそれと同時に忘れていた。

彼女には、頼れる相棒が居ると言うことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

               シルバーチェーンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホワイト

「な、なにっ!?」

 

エルク

「大丈夫、アイエフちゃん!」

 

 

光輝く銀の鎖が、アームに絡み付いて動きを拘束した!

そしてホワイトの後方には、エルクがその魔法を発動させ、

力強く引っ張っていた!

 

 

アイエフ

「エ、エルク! あんた、体の方はもう大丈夫なの!?」

 

エルク

「流石に全快ってわけじゃないけど、なんとか動けるようになったよ」

 

ホワイト

「くそっ、死に損ないが! こんなもの!」

 

エルク

「なっ! うわあぁっ!」

 

 

絡み付いたシルバーチェーンを振りほどこうと、ホワイトはアームを大きく振るう。

その拍子に、エルクはアイエフの元まで投げ飛ばされた!

 

 

エルク

「ぐっ!」

 

アイエフ

「エルク!」

 

ホワイト

「フフフ、今更満身創痍のアナタが来ても、ワタシの有利に変わりはない!」

 

エルク

「アイエフちゃん、ブラックは?」

 

アイエフ

「あいつならあの高台の上で気絶してるわ。

 ってそんなことよりあんた、血が出てるわよ!」

 

エルク

「これくらい、大したことないよ」

 

アイエフ

「何言ってるのよ!

 さっきので傷が開いてるじゃない!」

 

 

彼女の回復魔法で一度ふさがった傷が開き、そこから血が流れている。

そんな痛々しいエルクを見たアイエフは・・・。

 

 

アイエフ

「どうして、あんたはいつもいつも無茶ばかりするの・・・?

 あれだけやられてボロボロになって、立ってるのがやっとのはずなのに、

 なんで・・・なんでよ・・・!」

 

 

と、その場に座り込んで両手を地面につき、涙を流してエルクにそう言うアイエフ。

誰かを、皆を、そして自分を助け守ってくれる。

しかし、そのために彼が傷付くのを、彼女は耐えられなかった。

 

 

エルク

「心配かけてごめん。

 でも、目の前で大切な人が傷付くのを見ていられなかったんだ・・・」

 

アイエフ

「エ、エルク・・・」

 

 

エルクはアイエフの涙をそっと手で拭う。

 

 

エルク

「僕は絶対に諦めない!

 たとえ血だらけで体がボロボロになっても、あいつを倒す!

 だからもう泣かないで、アイエフちゃん。

 君のことは、必ず僕が守るから!」

 

 

そして、エルクは立ち上がり、ホワイトの前に立って奴と対峙する。

 

 

ホワイト

「ワタシを倒す、だと?

 そんな体のアナタに何が出来るというんだ?」

 

エルク

「ホワイト、窮鼠猫を噛むと言う言葉を知ってるか」

 

ホワイト

「何をわけの分からないことを!

 いい加減死ねぇぇぇッ!」

 

 

そう叫びながらホワイトはエルクを叩き潰そうと、両腕のアームを振り下ろした!

 

 

アイエフ

「エルクーーーッ!」

 

 

エルク神威をコールして構える。

 

 

エルク

「お前から受けた痛み、そのまま返してやる!」

 

 

抜刀した神威を持った右手首を左手で握る。

するとエルクの体が白く光出し、その光が神威に集まって行く。

 

 

エルク

「輝剣秘技·八ノ型───臥龍ッ!」

 

ホワイト

「な、なにっ!? ぐわあぁぁぁぁッ!」

 

 

そして、上段に構え魔力を溜めた神威をそのまま力任せに振り下ろすと、

眩しい光が一閃の刃となり、激しい轟音と共にホワイトの乗っている機械モンスターを

両断し、その拍子でホワイトは投げ出された。

さらにエルクの放った光の刃は、オリハルコンアーマーを纏った

機械モンスターだけでなく、彼の後ろのフロアの壁までも斬り裂き、大きな風穴を開けた。

そしてホワイトが持っていた複製鏡(クローンミラー)が、粉々に砕け散った。

 

 

 

アイエフ

「す、すごい・・・! なに、今の技・・・!」

 

ホワイト

「そ、そんな・・・ワタシの最高傑作が、たった一撃で・・・!

 ぐふっ・・・」

 

 

自慢の機械モンスターを倒され、仲間のブラックまでやられ、逃げ道もない。

ホワイトは自分が負けることなど想像もしなかったことが現実に起こり、

それを否定する前に気を失った。

 

 

エルク

「よし・・・これで・・・」

 

アイエフ

「エルクっ!」

 

 

相手が気絶したのを見て、神威をコールアウトする。

その瞬間意識が朦朧とし、倒れかかったを見たアイエフは慌てて駆け出し、

エルクを優しく抱き止め、胸に抱く。

 

 

アイエフ

「ちょっと、しっかりしなさいよ!」

 

エルク

「ごめん、アイエフちゃん・・・。

 今回は流石に・・・魔力を使いすぎたみたいだ・・・」

 

アイエフ

「なんで・・・?

 なんでこんなに消耗してるの?」

 

ユリウス

「先程のエルクの技は、受けたダメージを魔力に変換して放つ技だ。

 強力な技だけにその魔力の消費が激しく、体への負もが大きいのだ」

 

アイエフ

「なんでそんなことを・・・」

 

ユリウス

「そうでもしなければ、奴を倒せないと判断したからだろう。

 しかし、ここまで反動があるとは・・・」

 

アイエフ

「待ってて、今回復するから! グリーンノア!」

 

 

アイエフは必死にエルクに回復魔法を掛けたが、効果が薄い。

 

 

アイエフ

「っ! 私もさっきので魔力が・・・!」

 

エルク

「アイエフちゃん、離れて・・・じゃないと、君の服が僕の血で汚れちゃう・・・」

 

アイエフ

「バカッ! 私の服のことなんてどうでもいいのよ!

 そんなものより、あんたの方がずっと大切よ!」

 

 

その後も、何度も何度も回復魔法をかけるが血が止まらず、

彼の足元におびただしい量の血溜まりが広がっていく。

 

 

アイエフ

「くそッ! 止まれ! 止まってよ!

 お願いだから止まってよぉ!」

 

ユリウス

「アイエフ・・・。

 こういう時、私は何も出来ないのか・・・!」

 

 

それから回復魔法を掛け続けるもやはり効果は低く、

自身の魔力が尽きるまでそれを止めなかった。

そしてユリウスは、何も出来ず傍観しかできない自分をに対し、悔しさを露にした。

 

 

警察官

「おい、なんだ今の大きな音は!?」

 

警察官

「アイエフさん、大丈夫ですか!?」

 

アイエフ

「私よりも早く彼を!」

 

警察官

「なっ、エルクさん!

 なんてことだ、出血がすごいぞ!」

 

警察官

「救護班! 早く彼を病院へっ!」

 

 

その時、事前に連絡していたのか、警察官と救護班が先程のエルクが開けた壁から

雪崩れ込むように次々にやって来た。

 

 

救護班

「は、はい! アイエフさん、離れて!」

 

アイエフ

「お願い! エルクを助けて!

 私の大切な人を助けてっ!」

 

救護班

「ええ、もちろんです!

 皆急げ! 絶対に彼を死なせるなっ!」

 

 

エルクの意識が遠退くなか、救護班達に担架に乗せられて運ばれ、

それに付き添い助けるようにと必死に懇願するアイエフの声を聞きながら、

エルクは意識を手放した・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルク

「う、う~ん・・・」

 

 

次に僕が目を覚ましたのは、白いベッドに白い部屋だった。

ここは・・・病院だろうか?

目覚めたばかりで意識はあまりハッキリとしていないが、

病院特有の薬の匂いでそれだけは理解出来た。

そしてベッドから出て深緑色の病院服を脱ぐと、上半身が包帯だらけだった。

 

 

エルク

「凄い、傷が治ってる・・・!

 っていうか、傷跡がなくなってる・・・」

 

 

包帯を取って確認してみると、あれだけの重症だったにも関わらず、

傷だけでなく傷跡そのものまでもが、初めからなかったかのように完治していた。

技術力の高い先進国家なだけに医療技術も高いんだなと、

驚き関心しつつ僕は部屋を見渡す。

どうやら病院の個室みたいだ。

あれからどれくらい時間が経ったんだろう?

最後に覚えているのは、必死に僕の名前を呼ぶアイエフちゃんの声だった。

 

 

ユリウス

「エルク! よかった、目が覚めたようだな・・・」

 

 

そう思っていると、ユリウスが僕に声を掛けてきた。

 

 

エルク

「ユリウス。 その・・・心配掛けてごめん」

 

ユリウス

「いや、そなたは悪くはない。

 私はあの時、ただ見ていることしか出来なかった・・・。

 助けられず、済まなかった・・・」

 

 

ユリウスは僕に頭を下げて、そう謝罪する。

 

 

エルク

「あ、頭を上げてよ、ユリウス!

 ユリウスが謝ることじゃないよ!」

 

ユリウス

「・・・エルク、私は常々そなたが戦い傷付くのを見て何も出来ないのかと、

 そう思っていた。。

 そして今回の事がまさにそれだった・・・」

 

エルク

「ユリウス・・・」

 

 

彼は真剣な、そして自分を責めているような表情で僕を見る。

こんなユリウスを見たのは初めてだ。

この時、常に冷静な彼はどこにもおらず、

ただ自分の行いを後悔しているかのようだった。

 

 

エルク

「・・・大丈夫だよ。

 確かに今回はかなり無茶をしたけど、それでも僕はこうして生きてる。

 だから、そうやって自分を責めないでよ」

 

ユリウス

「エルク・・・」

 

エルク

「それにさ、何も出来ないなんてことないよ。

 いつもユリウスには助けてもらってるし、

 僕の知らないことも教えてくれるしね」

 

 

そんなユリウスに、僕はそう言葉を掛ける。

実際にその通りだし、ユリウスが隣に居てくれるだけで心強い。

もしかして、僕はユリウスのことを憧れていたのかもしれない。

 

 

ユリウス

「・・・そう言ってくれると助かる。

 私らしくなかったかもしれんな。

 これからもよろしく頼む、相棒」

 

エルク

「うん、こちらこそ!」

 

ユリウス

「悪いが私はもう休むとしよう。

 エルク、大事にな」

 

エルク

「ありがとう、ユリウスもね」

 

 

そう言ってユリウスは、光となって僕の中へと消えた。

 

 

エルク

「・・・今回のこと、アイエフちゃんに謝らないとな・・・。

 あれだけ心配させちゃったんだから、きっと怒ってるだろうなぁ・・・。

 ・・・ビンタは覚悟した方がいいかもしれない」

 

 

と、頭を掻きながらそう独り言を溢す僕。

 

 

???

「へえー、よくよく分かってるじゃない」

 

エルク

「・・・?」

 

 

その時、聞き覚えのある声がそう言うと、まるで石化したかのように動きが止まり、

恐る恐る後ろを向くと、ムスっとした表情で腕を組んだアイエフちゃんが立っていた。

 

 

エルク

「ア、アイエフちゃん!? 何でここに!?」

 

アイエフ

「そりゃあ私もあの戦いで怪我したからね。

 あんたがここに運ばれるのと同じく、私も治療と検査を受けたのよ」

 

エルク

「そ、そうなんだ・・・。 でも、無事でよかったよ」

 

アイエフ

「何言ってんのよ、あんたなんて私に比べたらましな方よ。

 体中傷だらけで、しかも出血も凄くて死にかけたのよ?」

 

エルク

「・・・うん、心配かけてごめんね、アイエフちゃん」

 

アイエフ

「それじゃあ、どうなるか分かるわよね?

 これだけ私を心配させたんだから」

 

 

そう言って、アイエフちゃんは組んだ腕を解いてズカズカと僕に迫り、右手を上げる。

 

 

エルク

「(や、やっぱり、ビンタか・・・!)」

 

 

確かに彼女に心配かけてしまったことに変わりはない。

ここは甘んじてそれを受け入れようと目を瞑り、歯を食いしばる。

 

 

アイエフ

「・・・っ!」

 

エルク

「エ・・・」

 

 

しかし、僕の予想はアイエフちゃんの優しいハグによって裏切られる。

 

 

エルク

「ア、アイエフちゃん・・・!?」

 

アイエフ

「本当に・・・本当に心配したんだからね・・・!

 あんたが死んじゃうんじゃないかって!

 もう、あんたに会えないんじゃないかって!」

 

 

アイエフちゃんは、僕の胸に顔を埋めて涙声でそう言う。

 

 

アイエフ

「・・・ぁ・・・」

 

エルク

「本当にごめんね、心配かけて」

 

 

そして僕は、そんな彼女を優しくハグし返す。

 

 

アイエフ

「本当よ!

 何であんたはそんなに無茶ばかりするの?

 死ぬのが怖くないの?」

 

 

エルク

「もちろん、怖いさ。

 でもあの時、君にもしもの事があったらって思ったら、

 いてもたってもいられなくて気が付いたら体が勝手に動いてたんだ。

 君は僕の大切な人だ。

 だから、死ぬよりも君を失うことの方が怖い」

 

アイエフ

「エルク・・・」

 

 

涙声で今にも泣きそうなアイエフちゃんをなだめるように、

僕は彼女の頭に手を置く。

 

 

アイエフ

「だからって、あんたが死んだら元も子もないじゃない!

 お願いだから・・・もっと自分を大切にしてよ・・・!

 あんたが死んだら・・・私は・・・!」

 

 

そして、アイエフちゃんは大粒の涙を流した。

結局彼女を泣かせてしまった・・・。

 

 

エルク

「・・・うん、そうだね、君の言う通りだ。

 女の子を泣かせるなんて男として最低だな、僕は・・・」

 

アイエフ

「まったくよ・・・!

 女を泣かせる男なんて最っ低なんだから!

 あんたがこうして目を覚ますまで、生きた心地がしなかったんだから!」

 

エルク

「アイエフちゃん・・・」

 

アイエフ

「ねえ、約束して、エルク。

 もう二度とあんな無茶はしないって。

 あんたがそんなことしなくていいように、私も強くなるから・・・!」

 

エルク

「・・・うん、分かったよ、アイエフ。

 僕も君を守れるように、強くなるから」

 

アイエフ

「やっと、呼び捨てで呼んでくれたわね」

 

エルク

「あ、嫌だった?」

 

アイエフ

「ううん、やっぱりあんた・・・あなたには、そう呼んで欲しいわ」

 

エルク

「僕はちゃん付けの方がいいと思うけどなぁ」

 

アイエフ

「こ、こら! からかわないの!///」

 

エルク

「ははは、ごめんごめん。

 でも、すっかり泣き止んだみたいだね」

 

アイエフ

「うっ・・・わ、悪い!?

 私だって、泣く時くらいあるわよ!」

 

エルク

「いや、全然。

 僕にだって、そういう時もあるからね」

 

アイエフ

「でも、あなたが泣いてる所なんて見たことないけど?」

 

エルク

「男はそう簡単に泣いたりしないものさ」

 

アイエフ

「私には、そういうのはちょっと分からないわね・・・」

 

 

こうして話して行くうちに、アイエフの表情が明るくなって行く。

 

 

アイエフ

「分かってるとは思うけど、この事は皆には内緒にしてちょうだい。

 ネプ子やコンパにだって、こんな所見せたことないんだから・・・」

 

エルク

「うん、分かった」

 

アイエフ

「それと、もうひとつ」

 

エルク

「なに?」

 

アイエフ

「し、しばらくこのままにさせてちょうだい!

 その・・・こうしてると、落ち着くから・・・///」

 

エルク

「・・・うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイエフSaido

 

 

最近、エルクの事を意識して気にするようになったのはいつからだったかしら?

気が付いたら彼の事を目で追ってて、エルクの力が必要だったり、

エルクの力になりたい、助けになりたいって思うようになってた。

今回の事でエルクが死にそうに成った時、生きた心地がしなかった。

私のせいで、本当なら負わなくていい怪我や傷を負ったのに、

私を責める言い方をしなかった。

それどころか自分の身を省みず、私を助けてくれた。

ただ優しいだけじゃなくて、彼にはそれを裏付ける強い心を持ってる。

だから皆エルクに惹かれるのね。 この私も含めて。

・・・認めるわ。 私はエルクの事が好きなんだって。

でも、エルクは恋愛方面はかなり鈍いみたいだから、じっくりやるとするわ。

ネプ子達には悪いけど、ね。

 

 

アイエフSaidoend

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイエフ

「・・・自分から言っておいてなんだけど、

 やっぱり照れ臭いわね、こういうのって///」

 

エルク

「そ、そうだね。

 なんだから僕もそう思ってきたよ・・・///」

 

エルク·アイエフ

「ははは「ふふふ」」

 

 

僕とアイエフは、互いに顔を赤くしてそう言う。

そして見つめ合って笑い合う。

 

 

ネプテューヌ

「エルくん、大丈夫!?

 大怪我したって本当・・・って、あーーーーっ!」

 

エルク·アイエフ

「エ・・・?「え・・・?」」

 

ノワール

「ネプテューヌ、ここは病院でしかも夜中なのよ?

 少しは静かに・・・って、あーーーーっ!」

 

 

するとそこへ、ネプテューヌとノワールが入室し、大声を上げる。

 

 

ブラン

「ちょっと、うるさいわよ、二人とも。

 何をそんなに・・・って、あーーーーっ!」

 

ベール

「ブラン、あなたもですわよ。

 廊下まで聞こえてますわよ・・・って、あーーーーっ!」

 

ネプギア

「どうしたんですか、皆さん。

 そんなに大声を出して・・・って、あーーーーっ!」

 

ユニ

「あんたまでどうしたのよ、ネプギア・・・って、あーーーーっ!」

 

ロム

「おにいちゃんとアイエフさん、抱き合ってる・・・!(ドキドキ)」

 

ラム

「アイエフ、ずるーいっ!」

 

うずめ

「えるっち、大丈夫か?

 って、おいおい、なにしてんだよ、お前ら」

 

海男

「よかった、無事のようだね、えるっち」

 

ケーシャ

「アイエフさん、羨ましいですっ!」

 

ビーシャ

「や、やっぱり、アイエフもエルクのことを・・・!?」

 

シーシャ

「おやおや、アイエフちゃんも中々大胆じゃないか。

 お姉さん、妬いちゃうね」

 

エスーシャ

「こうして皆が集まると、賑やかだな。

 そしてカオスだ」

 

イーシャ

「はい。 でも、エルクさんが無事でよかったわね、エスーシャ」

 

エスーシャ

「・・・ああ、そうだな。

 大方、いつものように無茶をしたんだろう。

 懲りない男だ、まったく」

 

 

さらに他の皆も病室に入ってきた。

咄嗟に僕はアイエフから離れた。

 

 

アイエフ

「ネ、ネプ子!? それに皆まで!」

 

エルク

「どうしてここに!?」

 

ネプテューヌ

「どうしてもなにも、エルくんとあいちゃんが入院したって聞いたから、

 みんなで様子を見に来たんだよ!

 なのにあいちゃんとイチャイチャしてるってどういうことなの、エルくん!

 わたしなんて5話ぶりの出番なのに、こんな扱いなんてひどいよ!

 どっかの世界じゃあもう年越しちゃってるんだよ!

 メインヒロインはわたしなのにさぁ!」

 

ノワール

「そうね。

 こっちはあなたが大怪我をしてこの病院に運ばれたのを聞いたから

 いてもたってもいられなくなって心配して慌てて飛んできたっていうのに、

 これはどういうことなのか詳しく聞きたいわねぇ・・・!」

 

ブラン

「返答次第じゃあどうなるか、分かってるよなぁ・・・?」

 

ベール

「アイエフさんだけずるいですわ!

 わたくしだって、エルちゃんと・・・」

 

エルク

「ちょ、ちょっと待ってよ! イチャイチャって何!?

 僕とアイエフはそんなことをしたつもりもそんな関係じゃないよ!

 ねえ、アイエフからも何か言ってあげてよ!

 ・・・アイエフ?」

 

アイエフ

「・・・もう知らない! バカ・・・」

 

エルク

「エっ!? 何で君が怒ってるの!?

 この状況の中、僕だけにしないで!」

 

 

アイエフはそのまま病室を出て行ったしまった。

 

 

エルク

「えっと、その・・・皆さん?」

 

うずめ

「こりゃあ、俺もどういうわけか聞かねえとなぁ? えるっち?」

 

ネプテューヌ(大)

「もしかして・・・二人はもう男女の関係とか?

 いつの間に二人はそんな関係になったの!?」

 

ケーシャ

「そ、そんなの駄目ですっ!」

 

ビーシャ

「そ、そうだよ、おっきいねぷねぷ!

 わたしは認めないからねー!」

 

ネプテューヌ

「しかも、今まであいちゃんのこと【ちゃん】付けで呼んでたのに

 呼び捨てで呼んでたあたり、そうなのかもしれないよ!」

 

ブラン

「そういえば・・・おい、それは本当か! エルク!」

 

エルク

「いや、だから皆、僕の話を───」

 

ネプテューヌ(大)

「こうなったら、エルくんを徹底的に拷問・・・尋問するしかないね、小さいわたし!

 

ネプテューヌ

「そうだね、大きいわたし!」

 

エルク

「ご、拷問って、拷問って言ったー!」

 

ネプギア·ユニ·ロム·ラム

「「お兄ちゃん!「「おにいちゃん!」」

 

エルク

「だ、だからなんで皆がそんなにムキになってるのさ!?」

 

ケーシャ

「では、エルクさん。 詳しくお聞かせ願いますか・・・?」(ヤンデレフェイス

 

エルク

「怖い怖い! ケーシャちゃん、怖い!

 そのヤンデレフェイスやめてっ!」

 

ビーシャ

「もちろん、わたしはエルクのこと信じてるよ!

 だから、本当のこと話してくれないかなぁ・・・?」

 

エルク

「信じてるんだったら、そのバズーカを僕に向けないでくれませんか?

 ビーシャさん・・・」

 

うずめ

「そうだぜ、えるっち。

 いい加減ゲロって楽になっちまえよ」

 

エルク

「ビーシャにうずめまで!

 そ、そうだ、エスーシャ、助けて!」

 

エスーシャ

「そうだな・・・この事については、私も興味あるな」

 

イーシャ

「はい、私も知りたいです・・・」

 

エルク

「なんでこういう時だけ興味あるの!?

 ていうかここは病院なんだから、そんな物騒な物しまってよ!」

 

一同

「エルくん?「エルク?「エルちゃん?「えるっち?「エル君?「お兄ちゃん?

 「おにいちゃん?「エルクさん?」」」」」」」」

 

エルク

「か、勘弁してくれー!!」

 

 

皆がそれぞれ武器を持ち、病室の片隅に追い込まれた僕は、

ただそう叫ぶしかなかった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイエフ

「・・・まったく、予想通りの展開ね・・・。

 どうして皆がああなるのか、本当に分からないのかしら?

 まあ、その原因を作った私が言うのもなんだけどね・・・」

 

 

一方アイエフは、エルク達の居る病室のすぐ横の壁にもたれ掛かかり、

皆のやり取りを聞いてそう思った。

 

 

アイエフ

「私を守ってくれてありがとう、エルク。

 大好きよ・・・///」

 

 

再び顔を赤くしそんな感謝と告白の言葉が、彼の耳に届くことはなかった・・・。

 

 

エルク

「ギャーッ!!」

 

アイエフ

「っと、そろそろ止めに行かないとね」

 

 

そう言ってアイエフは病室に入り、皆に説明した。

それによって九死に一生を得た?エルクだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最近、スプラトゥーン2のサーモンランをやり過ぎて、
気が付けば所持金が9000000の大金持ちになってましたw
ちなみにウデマエの方はそれぞれ
ガチエリア A-
ガチヤグラ A
ガチホコ  B+
ガチアサリ C-
と、なっています。
ちなみに使っているブキは【オーバーフロッシャー】です。
サーモンランよりもガチマッチを頑張れ・・・。

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