光次元ゲイムネプテューヌ~聖なる祈りと極光の守護神~   作:EDENCROSS

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光ネプ第54話

《前回までのあらすじ》
ユニとのデートの約束をしたエルクは今日、
その待ち合わせ場所であるラスティションの噴水公園に向かうのであった。


♯ 54 ユニとの思い出

ユニside

 

 

今日は待ちに待ったお兄ちゃんとのデートの日。

でも、デートって何をしたらいいんだろう?

一緒にラスティションを回るって言ったけど、

結局具体的な計画を立てられなくて、どうしたらいいか全然わからないわ・・・。

自分の部屋の鏡に前で、身だしなみを整えながらそう不安な気持ちになるアタシ。

それでもお兄ちゃんとのデートが楽しみっていうことには変わらない。

 

 

ユニ

「がんばれ! 女は度胸よ、ユニ!

 今日のデートでお兄ちゃんとの思い出を作るんだから!」

 

 

アタシは気合いを入れるように、軽く自分のほっぺたを叩く。

そして準備を済ませて、お兄ちゃんと待ち合わせにした噴水公園に向かう。

 

 

ノワール

「あら、ユニ。 どこか出掛けるの?」

 

 

靴を履いて外に出ようとした時、お姉ちゃんと鉢合わせた。

 

 

ユニ

「あ、お姉ちゃん。 うん、ちょっと用事で」

 

ノワール

「そう。 気を付けて行きなさい」

 

ユニ

「うん! 行ってきます!」

 

 

お姉ちゃんにそう言って、アタシは教会を出た。

 

 

ノワール

「ユニ、なんだか機嫌がよかったわね。

 何かいいことでもあったのかしら?」

 

 

ユニsideend

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???side

 

 

一方、ラスティションのある書店で、ある人物が本を読み漁っていた。

 

 

拙者の名は、ステマックス。

アフィモウジャス将軍に仕える忍で御座る。

今回ある任務でこの書店に来ているので御座るが、ひとつ大きな問題があるで御座る。

それは将軍に頼まれていたこのビニ本が欲しいので御座るが、

事もあろうか何とレジの店員が若い女性なので御座る!

男性ならまだしも女性だとそれが買いにくい。

しかし将軍の命に背くわけにもいかないで御座る。

かなり抵抗があるで御座るが、意を決した拙者はそのビニ本を手にする。

だがその時、書店入り口の自動ドア越しに見慣れた黒髪ツーサイドアップの少女が、

拙者の視界に飛び込んだで御座る!

 

 

ステマックス

「(あれは・・・ユニ殿!? 何やらご機嫌のようで御座るが、

 どこかへ出掛けるので御座ろうか・・・?)」

 

 

ユニ殿の行方が気になった拙者は、ビニ本を買って女性店員の冷たい視線を尻目に、

気付かれないようユニ殿の後を追う。

 

 

ステマックスsideend

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルク

「さて、約束の場所に到着っと・・・」

 

 

僕はユニとの約束で、ラスティションの噴水公園に来ている。

ここに来ると体験入国の時にノワールとユニと待ち合わせていた時の事を思い出す。

今の時刻は午前9時30分。

少し早めに来すぎたかなと思いつつ、僕は噴水を眺めていた。

 

 

エルク

「ここはいつ来ても平和だな。

 前に傭兵組織の件で少し荒れてたけど、今じゃすっかり元通りだ」

 

 

とりあえず近くにあったベンチに座り、ユニが来るまで待つことにした。

しかしそこに現れたのはユニではなく、別の見覚えのある一人の少年だった。

 

 

???

「よお、久しぶりだな、エルク!

 ここで何してるんだ?」

 

エルク

「君は・・・グレン!? 久しぶりね、元気だった?」

 

グレン

「おう! お陰さまでな」

 

エルク

「なんていうか、見違えたね。

 一瞬誰だか分からなかったよ」

 

グレン

「そ、そうか? まあ、前の俺は不良だったからな。

 お前がそう思うのも無理ねえか」

 

 

彼の名はグレン。

以前僕がケーシャと一緒にラスティション高校生を調査した時に出会った学生で、

当時は教師も手を焼く程の不良で、皆から怖がられたけどその時がきっかけで

グレンは今までの行いを省みて、今では真面目に高校生活を送っている。

当時は赤髪のオールバックで目付きも悪く、制服も着崩していて言葉使いも悪かったが

髪を下ろして制服のボタンとネクタイを閉め、悪かった目付きと言葉使いを直して

全体的に丸くなったグレンに、その時の面影はどこにもなかった。

 

 

エルク

「それで、学校の方はどう?」

 

グレン

「ああ、今まで俺を避けてた生徒も教師も、今じゃ仲良くしてくれてるよ」

 

エルク

「そっか。 よかったね、グレン」

 

グレン

「・・・メールでも書いてたと思うけど、

 今の俺がこうしていられんのも全部お前のお陰だ、エルク。

 お前には本っっ当に感謝してる!

 俺が生まれ変われるきっかけをくれたのは、お前だからな」

 

エルク

「ありがとう、グレン。

 でもそれは君がそうしたいと心から思ったからさ。

 僕は特別な事は何もしてないよ」

 

グレン

「・・・お前は本当にいいヤツだな。

 だからケーシャちゃんはお前のことを・・・」

 

エルク

「エ? ケーシャがなに?」

 

グレン

「いや、なんでもねえよ。

 ってか、お前いつからケーシャちゃんのこと呼び捨てにできる仲になったんだよ?」

 

エルク

「いや、それは・・・」

 

男子生徒

「おーいグレーン!

 早く来ねえと置いてくぞー!」

 

グレン

「ああ、今行く!」

 

エルク

「あの人達は、グレンの友達?」

 

グレン

「まあな。 じゃあ、俺はもう行くぜ。

 あいつらを待たせると悪いしな」

 

エルク

「うん、分かった。

 これからもがんばってね、グレン」

 

グレン

「おう! お前もな!」

 

 

そう言って僕はグレンと握手を交わし、彼は駆け足で友人達の所へ行った。

これからグレンはどんな学校生活を送るんだろう。

友人に囲まれた明るく楽しいものになればいいなと思いつつ、ユニを待った。

 

 

ユニ

「あっ、お兄ちゃん!」

 

 

それからしばらく待つと、ユニが駆け足でやって来た。

 

 

ユニ

「ごめんね、待たせちゃった?」

 

エルク

「ユニ。 ううん、僕もちょうど今来たところだよ」

 

ユニ

「よかったぁ・・・。

 お兄ちゃんを待たせちゃったらどうしようかと思ったわ」

 

エルク

「そんなことないよ。

 あ、でも、髪が乱れてるね?」

 

ユニ

「えっ? うわ、ホントだ!

 せっかく整えて来たのに、もう最悪!」

 

 

ユニは急いで乱れた髪を直す。

 

 

ユニ

「はあ、ごめんね、お兄ちゃん。 みっともないとこ見せちゃって」

 

エルク

「気にしないでよ、ユニ。

 乱れたっていってもほんの少しだけだったし」

 

ユニ

「それでも、女の子は気にするものなの!」

 

エルク

「そ、そうなんだ・・・。

 でも僕にもその気持ち、分かる気がするよ」

 

ユニ

「お兄ちゃんにも?」

 

エルク

「うん。 リーンボックスからプラネテューヌに帰る日に、

 朝起きたら変な寝癖ができてて、姉さんがそれ用のヘアスプレーで直してもらったんだ」

 

ユニ

「へえ、そんなことがあったんだ」

 

エルク

「だから、女の子が髪を気にするっていう気持ち、僕にも分かるんだ。

 僕も毎朝やってるからね」

 

ユニ

「それじゃあ、お兄ちゃんも髪の手入れをしてるの?」

 

エルク

「まあ、手入れいってもお風呂から出てくクシでとかしながら

 ドライヤーで乾かしてるだけなんだけどね」

 

ユニ

「本当にそれだけ?」

 

エルク

「うん、それだけ」

 

ユニ

「たったそれだけでこんなに綺麗になるなんて、いいなぁ・・・」

 

エルク

「そ、そうかな?」

 

ユニ

「そうよ! はじめて見た時お兄ちゃんの髪、綺麗だなって思ってたから」

 

エルク

「ありがとう、ユニ。

 そう言ってくれると嬉しいよ」

 

ユニ

「ねえ、お兄ちゃんの髪、さわっていい?」

 

エルク

「エ? う、うん、どうぞ・・・」

 

 

僕は少し屈んで、ユニに頭を出す。

 

 

ユニ

「わあ・・・本当にサラサラで綺麗・・・」

 

エルク

「・・・///」

 

 

今までネプテューヌとネプギアや姉さんにも同じことを言われたが、

やっぱりこういうのは恥ずかしい。

 

 

ユニ

「(本当にドライヤーで乾かしながらくしでとかしてるだけかしら?

 アタシだったらたぶん、ボサボサになると思うけど・・・)」

 

 

エルクの髪を触りながらそう思うユニ。

しかし、あるひとつの影が彼等を見ていた。

 

 

ステマックス

「・・・ユニ殿を見掛けたので後をつけたで御座るが、

 何やらあの男とえらく親しいようで御座るな。

 彼は一体何者なので御座るか・・・?」

 

 

ステマックスは二人の様子をうかがうため、

身を潜めながら引き続き後をつけることにした。

 

 

ステマックス

「しかし、こうして見ているとまるでカップルのようで御座るな。

 いや、それはあり得ないで御座る!

 きっとユニ殿はあの男に弱味でも握られているに違いないで御座る!

 ならば拙者のやるべき事はひとつ、それはあの男からユニ殿をお救いする事で御座る!

 ・・・とりあえず今は様子を見る事にするで御座る・・・」

 

 

一人で勝手に妄想をして盛り上がるステマックス。

本来彼のしている事は怪しさそのものだが、

影も存在感も薄く周囲から気付かれにくいという体質がある。

それ故誰からも気付かれることなく尾行出来るのである。

 

 

ユニ

「ありがとう、お兄ちゃん。 なんかごめんね」

 

エルク

「いいよ、これくらい。

 それで、これからどこに行こうか?」

 

ユニ

「ゲームセンターに行かない?

 そこにアタシのおすすめのゲームがあるの」

 

エルク

「そうなんだ。 それじゃあさっそく行こうよ!」

 

ユニ

「うんっ!」

 

ステマックス

「むっ? 二人に動き出したで御座る。

 ここからでは二人の会話が聞こえないで御座るが、とにかく後を追うで御座る」

 

???

「デュフフ、見つけたよ、ユニたん。

 やっとキミをボクのものにできるよ。

 待っててね、ボクのユニたん。

 デュフフフフ・・・!」

 

 

荒い鼻息に気味の悪い笑い声を上げる男の存在に、

エルクとユニはもちろん、ステマックスにも気付く者は誰もいなかった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニ

「お兄ちゃん、ここがアタシの行きつけのゲームセンター、ミッドガルよ!」

 

 

ユニに連れてこられたのは、ミッドガルというラスティション最大のゲームセンターだった。

僕も何度かネプテューヌ達とゲームセンターで遊んだことはあるけど、

プラネテューヌの明るい内装とは対照的に、

黒を貴重としたラスティションらしい落ち着いた内装だ。

ラスティション最大と言うだけあって、UFOキャッチャーやスロットゲームといった

メジャーなゲームはもちろん、プラネテューヌにはなかった乗り物に乗って楽しむ

アクションゲーム等もあった。

 

 

エルク

「なんていうか、大きな所だね。 大勢の人でごった返してる」

 

ユニ

「まあ、いつもはもっと空いてるんだけど、今日はあるイベントがあるのよ」

 

エルク

「イベント? それってどんなイベントなの?」

 

ユニ

「ふっふっふ、それはね・・・」

 

エルク

「ゴクリ・・・」

 

ユニ

「ヒミツよ!」

 

エルク

「ズコー!

 あれだけ引っ張っておいて秘密って・・・」

 

ユニ

「教えてほしい?」

 

エルク

「そりゃあ、秘密にされたらもちろん気になるよ」

 

ユニ

「へぇ、どうしよっかなぁ・・・」

 

 

まるで僕を嘲笑うかのようにニヤニヤしながらユニは言う。

それは女神というより、小悪魔のようだ。

 

 

エルク

「お願いします、ユニ様ー!」

 

ユニ

「やっぱりダーメ!」

 

エルク

「ガーン!?」

 

ユニ

「ふふ、ほらほら、そうやってショック受けてないで早く行こ、お兄ちゃん!」

 

エルク

「ちょ、ちょっと、ユニ!?

 そんなに引っ張らなくても自分で歩けるから!」

 

 

肩をすくめた僕の腕に抱き着き、自分のお気に入りのシューティングゲームがある方に

指をさして、ユニはそのまま引っ張るようにそこに連れていく。

 

 

ステマックス

「ユ、ユニ殿に抱き着かれるなど・・・!

 なんてうらやま・・・けしからん!

 あの男は本当に何者なので御座るか!?」

 

 

そんなエルクとユニのやり取りを見て、ステマックスは一層エルクに対して嫉妬が強まる。

 

 

ステマックス

「と、こんなこと言ってる場合ではないで御座る。

 二人の後を追わねば・・・」

 

 

ステマックスは再び尾行する。

 

 

???

「な、なんなんだ、アイツは!

 ボクのユニたんにあんなことさせるなんて・・・!

 許さない・・・許さないないぞぉ!」

 

 

そして、ステマックスとは別にユニを狙う男も、二人の後を追うのであった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルク

「ねえ、ユニ。 これはなんて言うゲームなの?」

 

ユニ

「これは今、ラスティションで話題になっているシューティングゲーム。

 その名もフェイタルガンよ!」

 

エルク

「フェイタルガン?」

 

ユニ

「ええ、そうよ。 

 このVRゴーグルをつけてあの部屋に入って、

 そこから出てくるモンスターを銃を使って倒してステージをクリアしながら、

 そのスコアを競うゲームなの」

 

エルク

「へえ、面白そうだね。

 やってみようよ、ユニ」

 

ユニ

「もちろん! お兄ちゃんならそう言ってくれると思ったわ!」

 

エルク

「それじゃあとりあえず、係員さんに受付しよう」

 

 

僕とユニは、係員に受付をしてVRゴーグルと専用のモデルガンを貸してもらった。

 

 

係員

「エルク様とユニ様ですね。

 ようこそ、VR空間へ!

 それではお互いの絆を深めてきてください!」

 

エルク

「あ、ありがとうございます。 行こう、ユニ」

 

ユニ

「うんっ!」

 

 

この時、なぜか係員の人が僕とユニを見て微笑んでいたが、

僕達はそのまま専用の空間に入って、

係員に貸し出された銃を持ってVRゴーグルを装着して準備する。

 

 

エルク

「ねえ、ユニ。

 さっきの係員の人、僕達を見て微笑んでたけど、どうしてだろう?

 それになんで男女のコンビ限定なんだろうね?」

 

ユニ

「さ、さあ、なんでかしらね・・・?

 (本当はこのゲーム、カップル限定なのよね・・・///)」

 

 

そして、しばらくするとプラネテューヌのバーチャフィレストに似た森の背景に変わり、

お馴染みのスライヌやリザードマン等の多くのモンスターが現れた!

 

 

ユニ

「さっそくお出ましね!」

 

エルク

「そうだね。 一緒にがんばろう、ユニ!」

 

ユニ

「任せて、お兄ちゃん!」

 

 

ゲーム開始と共に銃を構え、迫り来るモンスターに照準を合わせてトリガーを引く。

 

 

ユニ

「狙い撃つわ!」

 

 

ユニは持ち前の射撃センスで、次々にモンスターを撃ち抜いて、

確実にスコアを獲得して行く。

やはり普段から銃を使っているだけあって、シューティングゲームはお手の物のようだ。

それに比べて僕はというと・・・。

 

 

エルク

「くっ、なかなか当たらないな・・・」

 

 

リアルではもちろん、今までシューティングゲームをプレイした事などなく、

加えて銃を使った事もない僕にとって難しく、その様はまさに素人の動きそのものだった。

当たり前だが、剣と銃ではまったく使い勝手が違う。

 

 

ユニ

「大丈夫、お兄ちゃん?

 もう残りライフが少ないけど・・・」

 

エルク

「っ、まだまだ!」

 

そのせいで無駄な動きが多く、撃ち漏らしたモンスターの攻撃を受けてしまい、

表示されているハートマークの5だったライフが残り2になっていた。

 

 

ユニ

「これで最後よ!」

 

 

最初のステージのボスであるビッグスライヌを倒すと、再び背景が真っ暗になった。

 

 

ユニ

「とりあえず、最初のステージはクリアね」

 

エルク

「なんていか、結構難しいんだね、このゲーム。

 体を動かしてプレイするから体力も必要になるね」

 

ユニ

「まあ、お兄ちゃんは初めてだし、誰だって初めはこんなものよ」

 

エルク

「でも、このゲームって実戦での鍛練にもなるよね。

 VRって言っても、モンスターの動きなんて本物と大差ないし」

 

ユニ

「でしょ? アタシも時々ここに来て射撃の練習してるの。

 その時プレイしたステージとは違うみたいだけど」

 

エルク

「そうなんだ。

 それにしてもさっきのユニの動きも凄かったよ!

 やっぱり普段から銃を使ってるから、その分慣れてるのかな?」

 

ユニ

「そ、そんなことないわよ!

 アタシなんていかまだまだ・・・」

 

エルク

「そんなことあるさ! 流石ユニ、頼りになるね! 本当に凄いよ!」

 

ユニ

「う、うん、ありがとう、お兄ちゃん!

 (お兄ちゃんの期待に応えられようにがんばらなくちゃ!)」

 

 

そう二人で話していると、次のステージである背景が写し出された。

 

 

エルク

「今度は工場のステージみたいだね」

 

ユニ

「うん。 ここは遮蔽物が多くて物陰からモンスターが飛び出してくるから気を付けて」

 

エルク

「了解っ!」

 

最初の森のステージではあまりモンスターを倒せず、

結果的にユニの足を引っ張ってしまった。

今度はそうならないようにがんばって挽回しよう!

 

 

ユニ

「右から来たわ!」

 

エルク

「任せて! それっ!」

 

 

ユニの指示で、右から来たモンスターを倒す。

 

 

エルク

「よしっ!」

 

ユニ

「やったね、お兄ちゃん!」

 

 

僕の方を見てそう言うユニ。

しかし、ちょうどユニ背後にあるコンテナから機械モンスターが現れた!

 

 

エルク

「ユニ、危ない!」

 

ユニ

「えっ? きゃあっ!」

 

 

僕は咄嗟に、ユニを抱き寄せて襲い掛かる機械モンスターを撃ち抜いて倒す。

 

 

エルク

「ふう、危なかった・・・。 ユニ、大丈夫?」

 

ユニ

「う、うん。

 アタシならもう平気だから、その・・・///」

 

エルク

「エっ? ああ、ごめん!

 咄嗟の事で、つい・・・。 その・・・嫌だった?」

 

ユニ

「別に嫌だったてわけじゃないわ!

 その・・・助けてくれてありがとう」

 

エルク

「う、うん。 どういたしまして・・・」

 

 

助けるためとはいえ、急に女の子を抱き寄せるなんてさすがに不味かったかな・・・。

 

 

ユニ

「って、今はそれどころじゃないわ!

 気を取り直してがんばろう、お兄ちゃん!」

 

エルク

「そ、そうだね! がんばろう!」

 

 

と、互いに顔を赤くしながら改めてゲームを再開する。

先程モンスターからユニを庇った時に攻撃を受けたため、

残りのライフが1に減ってしまい、もう後がない。

仮にこれが0になったとしても、通常なら100クレジット入れればコンテニュー出来るが

このゲームではそれが出来ず、その場でゲームオーバーになってしまうという

なかなか厳しい仕様になっているようだ。

つまり僕が一度でもモンスターの攻撃を受けてしまうと、そこで即ゲームオーバーとなり、

ゲームが終了してしまう。

 

 

エルク

「(せっかくユニが誘ってくれたんだ。

 なにがなんでも、一緒にクリアしなくちゃ!)」

 

ユニ

「お兄ちゃん、来たわよ!」

 

 

心の中でそう意気込んでいると、また新たにモンスターが現れた。

 

 

エルク

「来たな! 全部倒して返り討ちだ!」

 

 

最初の時に比べてゲームの操作に慣れたため、

それによって立ち回りを理解し、四方八方から迫り来るモンスターを

一体一体倒してスコアを稼いでいく。

ユニは・・・うん、僕以上にモンスターを倒しているから心配なさそうだ。

とにかくやられないようにコンテナといったオブジェクトに身を隠して

モンスターの攻撃をやり過ごしたりしてうまく立ち回り、

ボスも倒して無事このステージもクリアする事が出来た。

 

 

エルク

「な、なんとかなったか・・・」

 

ユニ

「お兄ちゃん、最初のステージをクリアした時よりも疲れてるみたいだけど、大丈夫?」

 

エルク

「後1回攻撃を受けたらゲームオーバーっていうと崖っ淵な状態だからね。

 緊張しちゃうからそれで、ね・・・」

 

ユニ

「あの時アタシを庇ったばかりに、ごめんね」

 

エルク

「ユニのせいじゃないよ。

 それに僕が勝手にしたことなんだから、君が負い目を感じることなんてないよ」

 

ユニ

「で、でも・・・」

 

 

僕のこのギリギリの状態を作ってしまったのは自分せいだと思い込むユニ。

たかがゲームだと端から見ればそうかもしれないが、

それだけユニが真剣でそれだけ僕とこのゲームをプレイすることが

楽しみにしていたとなると、そうなるかもしれない。

 

 

エルク

「ねえ、ユニ。

 確かにこんな状態になっちゃったけど、仮にゲームオーバーになったとしても

 また二人でここに来てリベンジすればいいんだから、

 そんなに気負わなくてもいいんだよ。

 要は当たって砕けろさ!」

 

ユニ

「ふふ、なによそれ。

 当たって砕けちゃ駄目なんじゃない?」

 

エルク

「ま、まあそれは言葉のアヤってやつさ・・・」

 

 

苦笑いしながらそう言うと、暗転した画面にファイナルステージという文字が

大きく表示され、今まで受けていたダメージが回復し、ライフが最大値の5になった。

 

 

エルク

「ライフが回復してる・・・。

 どうやら次がラストみたいだね。

 最後まで力を合わせてがんばろう、ユニ!」

 

ユニ

「うんっ! 任せて!」

 

 

最後のステージは、どうやら暗い城を模したステージのようだ。

眼前に大きな城門があり、そこまで渡る大きな橋の上でゲームが開始された。

それと同時に次々に今まで出てきたモンスターが群れをなし、

橋の下にある溶岩がまるで生き物のように飛び出し、

それがモンスターと波状攻撃のようになって、休みなく容赦なく僕達に襲い掛かる!

 

 

ユニ

「最後のステージっていうだけあって、かなりの難易度ね・・・」

 

エルク

「うん、そうだね・・・。

 前にプレイした時もこんなに激しかったの?」

 

ユニ

「ううん、前は最後に出てきたエンシェントドラゴンを倒してクリアしただけだったから、

 こんなに難しくなかったし、こんなステージもはじめてだわ。

 やっぱりあのイベントが関係してるのかも・・・」

 

エルク

「ユニも初めてのステージなのか・・・。

 イベントってあの時言ってたやつの事だよね?

 って、今は目の前の事に集中っと!」

 

 

自分に向かってくるリザードマンを倒し、

ユニと背中合わせに立ってさらに向かってくるモンスターを、

互いの背中を守りながら戦う戦法で蹴散らす。

 

 

エルク

「(そういえば、さっきのステージクリアの報酬でスペシャルボムってやつを貰ったけど、

 どんなものか分からないけどここが使い所だな!)」

 

 

今が使い時。 そう思った僕は物を投げるモーションで手を振ってそれを使う。

すると大きな音と共に派手な爆発のエフェクトで、画面上のモンスターを殲滅した。

 

 

ユニ

「す、すごい・・・あれだけのモンスターを一度に・・・。

 何、今の?」

 

エルク

「スペシャルボムっていうのを使ったんだ。

 実はさっきのステージクリアの報酬で貰ったみたいで、

 僕も今気づいたんだけどユニにもあるんじゃない?」

 

ユニ

「えっ? あ、本当だ、アタシにもあるわ。

 状況が状況だったから全然気が付かなかった・・・」

 

エルク

「どうやら一回しか使えないみたいだね。

 僕のはさっき使っちゃったから、ユニので最後だね」

 

ユニ

「そうみたいね。 またさっきみたいなのがあるかもしれないから、

 それまでと取っとかなくちゃ」

 

 

僕のスペシャルボムでモンスターの群れを倒すと。

閉じていた城門が開いて中へ入るように画面がスクロールし、

さも自分達が進んでいるような現実感を感じながら進む。

そしてそれからモンスターが現れ、ユニと力を合わせてそれらを倒しながら進み、

ユニのフォローのお陰でなんとかノーダメージに抑えて、

大きな玉座のある間へと辿り着いた。

 

 

エルク

「ここは・・・玉座の間かな?

 それじゃあここが終点なのかな?」

 

ユニ

「そうみたいね。

 それにしてもあの玉座、なんだか嫌な予感がするわ・・・」

 

 

その間の奥に鎮座した玉座を見て、ユニはそう言う。

すると黒い霧のようなものが現れ、それが玉座へ集結すると、

漆黒の全身鎧と大剣を持った黒騎士を思わせるようなモンスターが現れた!

そしてそれが玉座から立ってその大剣を振るって地面に突き立てるのと同時に

ボス戦が始まった!

 

 

エルク

「先手必勝だ! それっ!」

 

 

僕はそう言って黒騎士を狙い撃つ。

しかしそれは大剣によって弾かれてしまった!

 

 

エルク

「攻撃を防いだ!?」

 

 

僕の弾を弾くようにそれを防ぐと、

黒騎士は僕を狙うかのように、大剣を構えて突撃してきた!

 

 

エルク

「くっ・・・!」

 

ユニ

「お兄ちゃん!」

 

 

あんな大きな大剣を持っているにもかかわらず、

その素早い身のこなしで避け損ない、ダメージを受けてライフが減り、残り4になった。

 

 

エルク

「うっ、喰らっちゃった・・・!」

 

ユニ

「この・・・よくも! お兄ちゃんの仇ッ!」

 

エルク

「ユニ、無闇に撃ったらさっきみたいに反撃される!

 って、僕まだ生きてるけど!?」

 

 

僕のツッコミも無視するかのように、ユニは黒騎士を狙い撃つ。

その時ユニは、ある事に気付く。

 

 

ユニ

「お兄ちゃん、見て! あいつの持ってるあの大剣、何か変じゃない?」

 

 

ユニにそう言われて大剣を見ると、紫に光る宝石のようなものが怪しく光っていた。

あれがボスの弱点だろうか?

そう思った僕はそれを狙い撃つ。

 

 

エルク

「当たれ!」

 

 

それを狙い撃つも、的は小さく大剣を振り回すので、中々当てる事が出来ない。

 

 

ユニ

「アタシに任せて! えい!」

 

 

次に、ユニがそれを狙い撃つ。

するとそれが命中し、ボスはダウン状態になり、

今度は漆黒の鎧の中から赤く光るコアのようなものが出てきた。

どうやら大剣の宝石を撃つと、本体の鎧がダウンして弱点が剥き出しになるようだ。

 

 

エルク

「あれがボスの本当の弱点がみたいだね・・・!」

 

ユニ

「うん、そうみたい。

 とにかくあれに攻撃を集中させましょ!」

 

エルク

「了解っ!」

 

 

弱点であるコアに集中攻撃し、ボスのHPを減らして行く。

そしてそれが半分を切ったその時──!

 

 

ウオオォォォォォォッ!!

 

 

ユニ

「きゃあっ!」

 

エルク

「うわっ! な、なんだ!?」

 

 

黒騎士が雄叫びを上げると、高揚したかのように赤いオーラを纏い、

手にした大剣から無数の火球が僕達に襲い掛かった!

僕とユニは二手に別れてそれぞれ左右にあった柱に身を隠した。

 

 

エルク

「ボスの攻撃が急に激しくなった!

 ユニ、そっちは大丈夫!?」

 

ユニ

「アタシなら大丈夫!

 それよりお兄ちゃんが・・・!」

 

 

一度全回復したが、先程の激しい攻撃によって一気にライフを削られ、

残りライフを1という再び崖っ淵な展開になってしまい、

正直人の心配をしている余裕はない。

ユニの残りライフは3。

僕もユニも迫り来る火球を撃ち落として身を守っているが、かなりキツい。

 

 

エルク

「このままじゃジリ貧だね・・・!

 なんとかしないと───うわっ!」

 

ユニ

「お兄ちゃんっ!」

 

 

足がもつれてバランスを崩して尻餅をついてしまう僕。

そんな僕に一行に止まることのない攻撃が迫る!

 

 

エルク

「くっ、しまった!」

 

ユニ

「させないわ!」

 

 

その時、ユニが僕を庇うように前に立ち、

持っていたスペシャルボムを使って弾幕を一掃するも、

飛び出してきた時に攻撃を食らったためダメージを受け、

その後体制を整える間もなく、再び弾幕が襲い掛かる!

流石のユニでもこの弾幕はキツく、それから攻撃を受け続け、

残りが僕と同じ1になってしまった。

 

 

エルク

「ユニ、僕の事はいいから逃げて!」

 

ユニ

「イヤよ! たとえこれがゲームでも、お兄ちゃんを見捨てることなんてできないわ!

 お兄ちゃんは───アタシが守る!」

 

エルク

「ユニ・・・」

 

 

もう駄目だ、ここまでか・・・。

そう思っていたその時、画面の右上の方にピンク色に光る何かが漂っていた。

 

 

エルク

「(あれはなんだろう・・・?ハートの形をしてるってことは、もしかして!)

 ユニ、しゃがんで!」

 

ユニ

「えっ!? う、うんっ!」

 

 

ユニが僕の言う通り身を屈めると、僕はそれに照準を合わせて狙いを定める。

 

 

エルク

「今だ、当たれーっ!」

 

 

そして放たれた弾がそれに命中して砕け散ると、

僕達の1だったライフが最大値の5まで全回復し、

僕とユニの体が黄金色に輝き出した!

 

 

ユニ

「な、なにこれ!?

 なんかキラキラ光ってるんだけど!?」

 

エルク

「分からないけど、画面に無敵って表示が出てるから、

 きっとそうなんだと思うよ」

 

ユニ

「なら、今が攻め時ってことね!

 今までやられた分、倍にして返してやるわ!」

 

エルク

「よしっ! それじゃあ行くよ!」

 

 

この無敵時間を使って怒濤の攻めで一気に巻き返し、弾幕を全て撃ち落とす。

長かった弾幕が止み、大剣にある宝石を撃ち抜くと、再びダウン状態になってコアが現れ、

それに攻撃を集中させる。

そして後一撃で倒せるという所で、弱点であるコアに【チャージ弾で一緒に撃て!】という

文字が画面に大きく表示された。

 

 

エルク

「ユニ!」

 

ユニ

「うんっ!」

 

エルク·ユニ

「これでトドメだ!「これでトドメよ」」

 

 

それに従って、二人の照準を合わせてチャージ弾で撃つと、

それが虹色の弾となってコアを貫き、ボスのライフゲージがゼロになり、

大きな断末魔を上げて消滅した。

画面には僕達のゲームをクリアのを祝福するかのように、

ド派手なエフェクトによる演出と共に、オールクリアの文字が表示された。

 

 

ユニ

「やったね、お兄ちゃんを!」

 

エルク

「うんっ!」

 

 

そう言って僕とユニはハイタッチする。

 

 

エルク

「さっきは助かったよ。 ありがとう、ユニ」

 

ユニ

「え? アタシ、お兄ちゃんに何かしたっけ?」

 

エルク

「ほら、僕が倒れた時に庇ってくれたでしょ?」

 

ユニ

「ああ、あの時ね。

 気にしないで、アタシだってお兄ちゃんの事、守りたいと思ったから」

 

エルク

「ユニ・・・」

 

ユニ

「あ! スコアが出てるわ。 見てみようよ」

 

 

僕達は、画面に表示されたスタートからクリアまでのスコアを見てみた。

僕のスコアは36000P。

そしてユニのスコアは、102000Pという倍以上スコアを叩き出していた。

ちなみにこれは、スコアランキングでいうと他の追随を許さない

圧倒的なまでの1位のようだ。

6位に【一陣の風】というどこかで聞いたことあるような名前があったけど

まさか、ね・・・。

 

 

エルク

「じゅ、102000Pって・・・。 凄いね、ユニ。

 流石っていうかなんていうか」

 

ユニ

「えへへ、そうかな?」

 

エルク

「それに比べて、僕はたったの36000P・・・。

 なんか足引っ張っちゃったみたいで、ごめんね・・・」

 

ユニ

「そ、そんなことないよ!

 途中で色々助けてくれたし、それにお兄ちゃんははじめてプレイしたんだから

 仕方ないわよ!」

 

エルク

「なら、これはリベンジしなきゃだね!

 一回クリアしたけど、今度は高得点を狙うぞ!」

 

ユニ

「その時は、アタシも一緒にいいかな?」

 

エルク

「もちろん! その時は頼りにさせてもらいます!」

 

ユニ

「ふふっ、任せて、お兄ちゃん!」

 

 

ゲームが終わり、部屋を出て係員に渡されたVRゴーグルと、専用のモデルガンを返す。

すると係員がピンクの箱に入った何かをユニに渡す。

 

 

エルク

「ユニ、それは何?」

 

ユニ

「これ? これはね・・・ほら!」

 

 

ユニがその箱から取り出したのは、ピンク色のガラス細工のネックレスだった。

 

 

エルク

「それって、ネックレスだよね? 景品で貰ったの?」

 

ユニ

「うん。 最初に言ってたイベントってうのは、

 今回のゲームでのもっとも高いスコアを出したプレイヤーに、

 このネックレスが貰えるイベントなの!」

 

エルク

「そうなんだ。 貰えてよかったね、ユニ。

 きっと似合うと思うよ」

 

ユニ

「うんっ!」

 

 

ユニはさっそくそれを首にかける。

黒のワンピースが、ピンク色に光るネックレスの美しさをより一層引き立たせている。

そして僕達のプレイを見ていた人達から拍手が送られ、照れながらその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルク

「まさか、僕達のプレイを他の皆に見られてたなんてね・・・」

 

ユニ

「まあ、そのお陰で皆から称賛されたんだからいいじゃない」

 

エルク

「でもそれは、主にユニにだと思うよ」

 

ユニ

「あはは・・・」

 

 

ミッドガルを出た僕とユニは今、ラステイションの街の大通りにいる。

そこには先程のゲームセンターと同じくらい人で溢れており、

ミリタリーショップやアパレルショップ等、色んな店が並んでいた。

 

 

エルク

「それにしても、さっきのフェイタルガンっていうゲーム、面白かったね!

 銃の扱いだけじゃなく、実践での立ち回りの勉強にもなるし、

 あのリVR映像もそうだけど、あの緊張感もリアルだったよね。

 こんなにもゲームで白熱したのなんて、本当に久し振りだよ!」

 

ユニ

「・・・」

 

エルク

「あれ? どうしたの、ユニ?」

 

ユニ

「いや、お兄ちゃんがこんなにゲームを熱く語るなんて以外だなって」

 

エルク

「そ、そうかな? でも、確かに興奮はしてたかも・・・」

 

ユニ

「ふふ、アタシのおすすめのゲームを気に入ってくれてよかったわ。

 それはそうと、もうお昼だしどこか食べに行かない?

 アタシの行きつけのお店があるんだけど、どうかな?」

 

エルク

「そういえば、もうそういう時間かも。

 実は僕もお腹が減ってたんだ」

 

ユニ

「決まりね! それじゃあ行きましょ、お兄ちゃん」

 

 

僕はユニの行きつけのである飲食店へ行くため、人混みの中を歩いて行く。

 

 

ステマックス

「むっ、出てきたで御座るな。 尾行再開で御座る。

 ・・・しかし、ユニ殿とあの男がより親密になっているように見えるのは

 気のせいで御座ろうか・・・?」

 

???

「許さない、許さないぞっ!

 ボ、ボクののユニたんを独り占めにしやがってぇ・・・!」

 

 

ステマックスと男は、二人に気付かれないように再び後を付ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニ

「・・・」(チラ

 

エルク

「(な、なんだろう、さっきからユニの視線を感じる・・・)」

 

 

僕はユニと一緒に、彼女の行きつけの店へと向かうその道中、

なにやらユニから熱い視線を感じる。

 

 

ユニ

「ね、ねえ、お兄ちゃん。

 その・・・手、繋ごう?」

 

エルク

「エ・・・!?」

 

 

僕と肩を並べて歩くユニのその言葉に照れと驚きつつも、

僕はそれに応えるように右手を出す。

女の子が手を繋ごうと言われてそれを断れないし、そもそも断る理由なんてない。

むしろ自分も心の中でそうしたいと思ったのかもしれない。

 

 

ユニ

「えへへ、ありがと!///」

 

 

ユニは僕の手を取る。

手を繋ぐといっても、ただそのままの意味ではなく、

手の指と指の間に入れて繋ぐ、所謂恋人繋ぎである。

 

 

ユニ

「お兄ちゃんの手、大きくて温かいね・・・///」

 

エルク

「そ、そうかな・・・///」

 

ユニ

「そうだよ。 男の人って感じで、心強いわ」

 

エルク

「ありがとう、ユニ。

 でも、感じっていうか実際僕は男なんだけどなぁ」

 

ユニ

「細かいことは気にしないで行こ、お兄ちゃん」

 

 

僕達は恋人繋ぎのまま歩き出す。

 

 

ユニ

「(お兄ちゃんと手を繋いじゃった! しかも恋人繋ぎで!

 なんだかとても緊張してきちゃった! アタシ、手汗大丈夫かな・・・?)」

 

エルク

「(ユニの手って、こんなに小さかったっけ。

 やっぱり女神様といっても女の子なんだな。

 さっきゲームに白熱してたから、手汗大丈夫かな?)」

 

 

この時、二人は互いにそう思いながら顔を赤くしていた事に気付かなかった。

 

 

ステマックス

「ユ、ユニ殿がまたあの男と手を!

 しかもあれは伝説のこ、こここ恋人繋ぎ!

 な、なんとうらやましい・・・!」

 

???

「ボ、ボクのユニたんがあ、あんな男と・・・!

 キイィィィィィィッ!」

 

 

ステマックスからは羨望の目を、そしてもう一人の男は憎しみに似た嫉妬の目を向けられる

エルクだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニ

「着いたわ。 ここがアタシの行きつけのお店よ!」

 

 

ユニに連れられやって来たのは、白と黒を基調とした

オシャレな飲食店だった。

店内に入ると若者はもちろん、大人や子供、

そして高齢の人達という年齢層問わず色んな年代の人達でとても賑やかになっていた。

 

 

エルク

「ここがユニの言ってたお店? とてもいい所だね。

 それに、とてもいい匂いがする・・・。 これはカレーかな?」

 

ユニ

「ええ、そうよ。

 ここはブラックビュッフェバイキングっていうお店で、

 その名の通りビュッフェ形式のお店よ」

 

エルク

「ビュッフェ? それってどういう意味なの?」

 

ユニ

「つまり、向こうにある好きなものを好きなだけ取って食べるっていうスタイルよ」

 

エルク

「なるほど。 ユニはいつもここに来てるの?」

 

ユニ

「いつもってほどじゃないけど、ネプギアやロムとラムが遊びに来た時は

 大体来てるわね」

 

エルク

「そうなんだ。

 よく見るとスイーツコーナーもあるし、あの子達が好きそうな所だね」

 

ユニ

「そうなのよ。

 ネプギアったらそっちばかり食べるのよ」

 

エルク

「それってやっぱり、プリン?」

 

ユニ

「ええ。 ここに来たら必ず取りに行くの。

 しかも器がいっぱいになるくらいに・・・」

 

エルク

「ははは、ネプテューヌからしたら夢みたいだね」

 

ユニ

「ふふ、そうね。

 それじゃあアタシたちも取りに行こ、お兄ちゃん」

 

エルク

「うん、そうだね」

 

 

僕達はそれぞれ器を持ち、食べ物を取りに行くため他の客と同じように列に並ぶ。

そこには色んな料理が並んでおり、山積みにされた唐揚げとハンバーグ、

目の前で調理されているナポリタンやカルボナーラといったパスタ類や、

その場でシェフが捌いて出してくれるローストビーフ等が数多くあり、

サラダバーやドリンクバーもあった。

しかし、その中で気になるものがあった。

それは・・・。

 

 

エルク

「ねえ、ユニ。

 あの【ラステイションの女神候補生ユニ様監修カレー】っていうのがあるけど、

 あれって何?」

 

ユニ

「実はこのお店に出されているカレーは全部アタシが作ったカレーなのよ!」

 

エルク

「全部!? 凄いね!

 あのハヤシライスやシーフードカレーやドライカレーも全部ユニが作ったの?」

 

ユニ

「正確には、アタシの作るカレーのレシピ通りに作ってもらってるってだけなんだけどね」

 

エルク

「そうだとしても十分凄いよ!

 だって自分のレシピで作った料理がお店に商品として出てるんだから」

 

ユニ

「そ、そうかな?

 確かにネプギアたちも美味しいって食べてくれるけど・・・」

 

エルク

「よし、僕もユニカレーを食べてみようかな」

 

ユニ

「ユ、ユニカレーって・・・。

 でも、せっかく並んでるんだし、後からでもいいんじゃない?」

 

エルク

「話を聞いてるうちに食べたくなってね。

 それに、妹の作るカレーを食べてみたいしさ。

 それじゃあ行ってくるね!」

 

 

そう言って僕は、列から離れてユニカレーが出されているカレーコーナーへ向かった。

 

 

ユニ

「ありがとう、お兄ちゃん・・・///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルク

「うわ、凄い列だな・・・」

 

 

カレーコーナーに着いてその列を見ると、まさに長蛇の列だった。

それだけユニのカレーが美味いということなんだろう。

寸胴に入ったスパイスの効いたカレーの匂いがここまで漂ってくる。

そう思っていると余計に食べたくなってきた。

そして列に並ぶこと約10分、僕は持ってきた大盛り用の器いっぱいにご飯をつぎ

そこにカレールーをたっぷりかけ、ユニのいる席に戻る。

 

 

ユニ

「うわっ! お兄ちゃん、すごいね・・・。

 そんなに食べれるの?」

 

エルク

「うん。 さっき遊んだゲームで体を動かして体力使ってお腹が空いたから

 これくらいはね」

 

ユニ

「そ、そうなんだ・・・。

 なんていうか、男の人ってすごいんだね・・・」

 

エルク

「誰でもお腹が空けばこれくらいは食べれると思うけどなぁ」

 

 

そう言って僕はスプーンを手に取り、カレーをすくってほおばる。

ちなみに僕が今食べているのはビーフカレー。

他にも色んな種類のカレーがあったが、シンプルにこのカレーにした。

カレーに凝っているユニらしく、ほどよくスパイスが効いていて

肉の旨味も出ており、それが食欲をそそる。

 

 

ユニ

「どう、アタシのカレーは? おいしい?」

 

エルク

「うん、美味しいよ。

 辛さは中辛で、ジャガイモとニンジンと玉ねぎ、

 それに肉まで一口サイズに切られてて食べやすいし、

 ルーもドロッとしててご飯とよく絡んで、僕好みの味だよ」

 

 

自分のカレーの感想を聞いてきたユニに、僕はそう答える。

 

 

ユニ

「ホ、ホント? そう言ってくれると嬉しいわ」

 

 

と、満面の笑みで喜ぶユニ。

もちろんお世辞などではなく、本当に美味しいと思ったからだ。

これは行列ができるわけだ。

 

 

エルク

「どういたしまして。 ユニはそれで足りるの?

 野菜がメインって感じだけど」

 

 

ユニの器に乗っているのは、一口サイズの小さなハンバーグやロールキャベツといった

おかずに、少し盛られたナポリタン。

そして大盛り用の皿には、サラダが大盛りに乗せられていた。

ちなみにドレッシングはシーザードレッシングだ。

 

 

ユニ

「アタシはこれでいいの。

 今、ダイエット中だから・・・」

 

エルク

「ダイエット?

 ユニは太ってないんだからそんな事する必要ないと思うよ?」

 

ユニ

「そんなことないわよ。

 美人でスタイルのいいお姉ちゃんに比べたら、アタシなんて・・・」

 

エルク

「そういえば、ユニはノワールに憧れてるんだっけ?」

 

ユニ

「うん。 強くて美人で仕事もできて髪の毛もサラサラでいい匂いのするお姉ちゃんは

 アタシが目指す目標なの!」

 

エルク

「・・・最後のふたつはともかくとして、確かにノワールは凄いよね。

 頭もよくて女神様の威厳もあって」

 

ユニ

「でしょ? 前の猛争事件の時、タゼステーションに猛争モンスターが出て

 逃げ遅れた市民と、その人たちを助けに行った兵士たちを救出するために

 行ったことがあったんだけど、その時そこにいた皆がアタシとお姉ちゃんが

 そのモンスターを呼んだんじゃないかって疑ったの。

 でもお姉ちゃんは、何を言われても自分が守るべき国民だって言って

 戦ってたその時のお姉ちゃんの背中がとても大きくて、

 とてもかっこよくて、そしてとても遠いなって思ったの・・・」

 

エルク

「・・・そんなことがあったんだ」

 

ユニ

「うん。 やっぱり、お姉ちゃんに追いつくのはまだまだだなって・・・」

 

エルク

「ユニのその憧れるって気持ち、僕にも分かるよ。

 普段もそうだけど、戦闘での頼もしさやその強さ、

 そして僕も強くなって皆を守りたいって、今も思ってるから」

 

ユニ

「お兄ちゃん・・・」

 

エルク

「でも、誰かを目標にするのはいいけど、その人と比べる必要はないんじゃないかな?

 だって、人は皆それぞれ性格や個性も考え方だって違うし、

 それにユニにはユニのいい所があるしね」

 

ユニ

「アタシのいい所?」

 

エルク

「うん。 たとえばユニは、銃の扱いや特性について詳しいよね?

 これって、銃をカスタマイズするのはもちろん、

 それを中心とした戦闘の戦略を組み立てることだってできるでしょ?

 遠距離戦になったら、僕じゃ歯が立たないと思う」

 

ユニ

「そ、そうかな?」

 

エルク

「そうだよ。

 それに実際ユニの射撃に助けられたこともあったからね」

 

 

ユニと一緒に過ごした時間は短いけど、それでも助けられた事もあった。

例えば傭兵組織の件で、アレックスの古代魔道具(アーティファクト)を撃ち抜く

あの精密な射撃がなかったら本当に危なかった。

 

 

エルク

「それに、ユニだってノワールに負けないくらい可愛いと思うよ。

 二人並ぶと、美人姉妹って感じがしてさ」

 

ユニ

「い、いきなり何言ってるのよ、お兄ちゃん!///」

 

エルク

「何って・・・思ったことを言っただけなんだけど・・・」

 

ユニ

「~っ! もうこの話はおしまい!

 早く食べよう、お兄ちゃん!」

 

エルク

「う、うん・・・」

 

 

ユニは顔を赤くしながら、自分がついできたものをまるでがっつくように食べる。

そんなに急いで食べたら喉に詰めるんじゃないのか?

そう思いながら僕もカレーを一口、また一口と食べる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニ

「ふう。 美味しかったね、お兄ちゃん」

 

エルク

「うん。 ユニのカレー、とても美味しかったよ」

 

 

ユニのカレーは、カレー専門店のお店を出せば人気が出ると思うほど美味しかった。

そういえば僕は今まで剣の鍛練や戦いばかりで料理をしたことなんてなかったな。

一度レシピ本を見ながら作ってみようかな。

 

 

ユニ

「ねえ、次の予定なんだけど、ちょっと休憩しない?」

 

エルク

「そうだね。 でも、ここら辺に休める場所なんてあったっけ?」

 

ユニ

「ふふ、それならいい場所知ってるわよ」

 

エルク

「それって、どこにあるの?」

 

ユニ

「それは行ってからのお楽しみよ!

 行きましょ、お兄ちゃん!」

 

 

そう言ってユニは再び僕の手を取り、駆け足でその場所へと向かう。

 

 

ステマックス

「むっ? また動きがあったで御座るな。

 ではこちらも行動再開で御座る!

 ・・・しかし、何か忘れているような気がするのは気のせいで御座ろうか?」

 

???

「どうやらユニたんはあの場所へ行くみたいだな。

 そんなこと、このボクが許さないぞ!

 ユニたんは・・・ユニたんはボクだけのものなんだ!

 誰にも渡さないぞ!」

 

 

と、ステマックスと怪しい男達も身を隠しながら、

エルクとユニの後をつけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




スプラトゥーン2のフェス参加するの忘れてたあぁぁぁぁぁぁっ!!!(一生の不覚)





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