光次元ゲイムネプテューヌ~聖なる祈りと極光の守護神~   作:EDENCROSS

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光ネプ第55話

《前回までのあらすじ》
ユニにラステイションでのデートに誘われたエルクは、
昼食を済ませた後とっておきの場所へと向かうのであった。


♯ 55 ユニとの思い出②

ユニ

「着いたわよ、お兄ちゃん」

 

 

ユニに連れられてやって来たのは、

赤いリボンがあしらわれた小さな白い鐘のある広場だった。

 

 

エルク

「ねえ、ユニ。 ここは?」

 

ユニ

「ここは憩いの場っていって、ラステイションで結構有名な場所なのよ」

 

 

憩いの場か・・・。

確かに僕達の他に若い男女が手を繋いで歩いていたり、

ベンチに座って話しているという、どこか甘い雰囲気を醸し出している。

 

 

ユニ

「ねえ、お兄ちゃん・・・」

 

エルク

「・・・うん」

 

 

甘えた声と上目遣いでそう言って手を出すユニに、

僕も自然とその手を取って、再び恋人繋ぎをする。

 

 

ユニ

「お兄ちゃんはここは初めて?」

 

エルク

「うん。 前に体験入国で来た時は例の事件で見回れなかったからね」

 

ユニ

「そういえばそうだったわね。

 でもあの時のお兄ちゃん、とってもかっこよかったわよ」

 

エルク

「ありがとう、ユニ。

 そういうユニも、あの時助けに来てくれて助かったよ」

 

ユニ

「ふふ、どういたしまして」

 

エルク

「それと、ケーシャが組織から抜け出せて本当によかったよ。

 これで普通の女の子として生きていけることができるね、ユニ。

 ・・・ユニ?」

 

 

名前を読んでも返事がなかったのでユニを見ると、なにやらジト目で僕を見ていた。

繋いだ手に力が入っていて少し痛い・・・。

 

 

エルク

「いたた・・・ど、どうしたの?」

 

ユニ

「今はアタシと一緒にいるのに、そのデート中にほかの女の子の名前を出すなんて

 マナー違反よ」

 

エルク

「マ、マナー違反?

 ご、ごめん、僕、そういのまったく知らなくて!

 って、これってデートだったの?」

 

ユニ

「アタシは最初からそのつもりだったんだけど・・・。

 それとも・・・嫌だった?」

 

エルク

「いやいやいや、そうじゃなくて!

 僕今まで女の子と出掛けたことはあるけど、

 デートなんて初めてだから、そういうの分からなくて・・・」

 

ユニ

「そうなの?

 けど、この前うずめとプラネテューヌの街に出かけたってネプギアから聞いたけど?」

 

エルク

「エっ? それじゃああれもデートだったてこと?」

 

ユニ

「お兄ちゃん、どんだけ鈍いのよ・・・」

 

エルク

「ご、ごめんなさい・・・」

 

ユニ

「お兄ちゃんが気づいてなかってことは、

 改めてこれがお兄ちゃんにとっての初めてのデートってことになるわね!」

 

エルク

「そ、そうなのかな?

 なんかちょっと強引な気がするけど・・・」

 

ユニ

「強引でもいいの!

 それでもアタシにとっては、初めてのデートだから///」

 

エルク

「ユニ・・・」

 

ユニ

「実はね、お兄ちゃんと行きたい所があるの! 行こっ!」

 

エルク

「わわっ! ちょっと、ユニ!」

 

 

ユニは繋いだ僕の手を引っ張るように走り出す。

最近こういうのが多い気がするが、不思議と悪い気はしない。

 

 

若者A

「おい、見ろよ。 あの子女神候補生様のユニ様じゃね?

 カワイイよなぁ・・・」

 

若者B

「だよな。 てかそのユニ様と手ぇ繋いでるあの男・・・男だよな?

 あいつは一体誰なんだ!?」

 

若者C

「しかもあれって、恋人繋ぎじゃねえか!

 ってことは・・・!」

 

若者A·B·C

「「「ちくしょー! うらやましいぜぇぇぇっ!」」」

 

 

という若い男達の嫉妬の声や視線などなんのそのと言わんばかりに突っ切る僕とユニ。

黒髪ツーサイドアップの髪を靡かせ、笑顔で走るその姿は女神というより

どこにでもいるごく普通の女の子で可愛い。

けれど今の僕達は周囲から注目されやすく、それと同時に恥ずかしい。

そしてそのまま憩いの場を抜けてさらに進むと、

そこには美しい夕日が輝く海を見渡せる丘だった。

 

 

エルク

「ここが、ユニの言ってた僕と行きたい所ってここのこと?」

 

ユニ

「ううん、それはあれのことよ」

 

 

ユニが指をさした先にあったのは、矢の先端がハートの形をした弓矢を持った

天使像だった。

 

 

エルク

「あれは・・・天使の像?

 なんであんな所にあるんだろ?」

 

ユニ

「あれは恋のキューピッド像っていって、若いカップルに人気のスポットなのよ」

 

エルク

「恋のキューピッド像?」

 

ユニ

「ええ、そうよ。

 そしてここは別名恋ヶ丘っていって、

 必ず男女が永遠に結ばれるっていう言い伝えもあるのよ」

 

エルク

「男女が永遠に結ばれる?

 それってどういう・・・」

 

 

この時、僕はユニの言葉の意味が分からなかった。

永遠に結ばれるってどういうことなんだろう?

いつまでも仲良くいられるって意味だろうか?

なら別に必ず男女である必要はないと思うけど・・・。

そう思いつつ、僕はユニと一緒にその像の元まで行く。

 

 

ユニ

「お兄ちゃん!」

 

エルク

「は、はいっ!」

 

 

突然のユニの真剣な顔と声に、思わず敬語になり声が裏返る。

 

 

ユニ

「(言え! 言うのよ、ユニ!

 ここまで来たからにはアタシの想いをお兄ちゃんに伝えるのよ!)

 お兄ちゃん、アタシね・・・アタシ、お兄ちゃんのことが・・・」

 

エルク

「・・・(ゴクリ)」

 

 

燃え上がるような赤い夕日と、それによって照らされたキューピッド像をバックに、

何かを決意したかのように胸の前で手を握るユニの真剣な表情に生唾を飲み込み、

僕はそのまま次の言葉を待つ。

 

 

ステマックス

「ふう、やっと追い付いたで御座る。

 突然走り出したから驚いたで御座る。

 ・・・ん? あれは恋ヶ丘で御座るな。

 ユニ殿はあそこであそこで一体何を・・・ま、まさか、告白で御座るか!?」

 

 

二人に追い付き、身を隠して様子をうかがうステマックス。

しかしそんな彼にとって信じがたい光景があった。

自分が好意を寄せているユニが、

どこの馬の骨とも知らない男に今まさに告白しようとしているのだからだ。

ちなみにステマックスも、この恋ヶ丘とそこにある恋のキューピッド像の事を知っており、

いつか自分もユニに告白しようと、密かに思っていた。

それ故に彼は、ひょっとしてユニはあの男に何か弱味でも握られて命令されて

そうさせられているのではないか? そうだ! そうに違いない! 絶対にそうだ!

たとえ違っていても、自分が想いを寄せている人から告白されるなど

うらやまけしからんという、羨ましい恨めしいという色んな感情が混ざって

わけの分からないテンションになっており、加えて弱味を握られているユニを助けたい

という勝手な思い込みも相まって、もはや自分でも衝動を押さえられずにいた。

 

 

ユニ

「アタシ、お兄ちゃんのことが・・・す・・・す・・・」

 

 

ユニはなかなか好きという言葉が出てこず、そう言えずにいた。

友達や仲間としてならともかく、異性として好きだと伝えることがこんなにも

覚悟がいるものなのかと、胸の前で握った両手に力が入ったまま、時間だけが過ぎて行く。

 

 

エルク

「・・・ユニ、言いづらいことならまた今度d「ううん。 聞いてお兄ちゃん!」

 ・・・わかった」

 

 

エルクのその言葉に「ありがとう」と返すユニ。

そして覚悟を決めたユニは、改めてエルクに告白の言葉を口にする。

 

 

ユニ

「お兄ちゃん! アタシ、あなたのことが───s「ユニ殿ーーーっ!!」えっ!?」

 

エルク

「な、なにっ!?」

 

 

突然聞こえたユニの名を呼ぶ声に驚きながらも、エルク達はその声がした方に向くと、

一人の忍者風の男が近付き、ユニを庇うように前に立ち、二人の間に割って入った。

 

 

ステマックス

「ユニ殿! ご無事で御座るか!」

 

ユニ

「ス、ステマックス!? なんであんたがここに!?」

 

 

その忍者風のロボットの彼は、ステマックスというらしい。

二人の口ぶりからして知り合いのようだが・・・。

 

 

エルク

「えっと・・・ユニ、この人は?」

 

ユニ

「彼はステマックス。 一応アタシの友達よ。

 っていうかなんであんたがここにいるのよ!」

 

ステマックス

「そ、それは、その・・・ユニ殿が心配だったっていうか・・・」

 

ユニ

「はあ? アタシのことが心配って、どうしてよ?」

 

ステマックス

「と、とにかく! ユニ殿をたぶらかす不埒な者よ、覚悟するで御座る!」

 

ユニ

「あんた、何か勘違いしてるわよ?」

 

エルク

「た、たぶらかす!? ちょっと待って、一体何の話!?」

 

ステマックス

「問答無用! 拙者のこの刃にて成敗するで御座る!」

 

ユニ

「アタシの話を聞けーっ!」

 

エルク

「ユニ、離れて! どうやらこっちの話を聞いてくれそうにないみたいだ!」

 

ユニ

「う、うん!」

 

 

エルクはユニにそう言い、ユニは近くの茂みまで移動した。

 

 

ステマックス

「はあっ!」

 

エルク

「くっ!」

 

 

それと同時に、ステマックスがエルクに斬りかかり、

エルクの神威とステマックスの刀が肉薄する!

 

 

ステマックス

「拙者の一撃を受け止めるとは、なかなかやるで御座るな。

 しかし所詮は女子をたぶらかす不埒者。

 拙者の敵ではないで御座る!」

 

エルク

「ユニも言ったけど、少しはこっちの話を聞いてくれませんか?

 絶対に何か勘違いをしてるよ」

 

ステマックス

「問答無用と言ったはずで御座る! カマイタチの術!」

 

 

ステマックスが印のようなものを結ぶと、

竜巻が発生し、エルクに襲い掛かる!

 

 

エルク

「疾風剣·噛風ッ!」

 

 

それに対してエルクは、噛風をぶつけて打ち消す。

 

 

ステマックス

「っ! 拙者の術を破るとは、敵ながら見事で御座るな!」

 

エルク

「そう思うんなら、刀を納めて話を聞いてよ」

 

ステマックス

「笑止! ユニ殿をたぶらかす男の話など、聞く耳などないで御座る!」

 

エルク

「だからそのたぶらかすってどういう意味!?」

 

ステマックス

「そのままの意味で御座る!

 拙者の風魔手裏剣を受けてみよ!」

 

 

ステマックスは、左腕につけた大きな手裏剣をエルクに投げる!

 

 

エルク

「くっ!」

 

 

しかし、エルクはそれを神威で防ぐ。

 

 

ステマックス

「ふふ、拙者の手裏剣に触れたで御座るな?」

 

エルク

「なに? っ!?」

 

 

ステマックスにそう言われた瞬間、足に違和感を感じたエルクは自分の足元を見た。

するとなにやら黒い影のようなものが、足に絡むようにまとわりついていた。

 

 

エルク

「な、なんだこれ・・・!

 足が・・・動かない!?」

 

ステマックス

「ふ、これぞ我が忍法影縫いの術で御座る!

 これでお主はそこから一歩も動くことも出来ないで御座る!」

 

 

影縫い・・・確かにまるで自分の体ごと影が地面に縫い付けられている感じである。

さすが汚い忍者汚いとはこの事である。

 

 

ステマックス

「では・・・御覚悟!」

 

エルク

「っ!」

 

 

影縫いの術で動けないエルクに、ステマックスは容赦なく追い討ちをかける!

なんとか防御をして身を固めるが、それでもうまく防御できず

次第に追い込まれていく。

 

 

ユニ

「お兄ちゃん・・・!

 ちょっとステマックス! なにしてんのよ、あんた!」

 

ステマックス

「ユニ殿、もうしばし御待ちを!

 もう少しでこの男を・・・!」

 

ユニ

「あんた、いい加減に・・・!」

 

 

人の思い込みほど激しく、そして恐ろしいものはない。

現実における事実などどうでもよく、ただ自分がこう思ったイコールそれが現実なんだと

本気でそう思ってしまうからだ。

そして時にそれは暴走し、相手の話など聞こえなくなってしまう。

今に彼がまさにそれだ。

 

 

ステマックス

「我が術の前になす術もあるまい! これでトドメで御座る!」

 

 

素早い動きで翻弄しながら斬りつけていたステマックスは、

姿を消して刀を逆手に持ち変えてエルクに迫る!

 

 

エルク

「(仕方ない、手荒な真似はしたくなかったけど・・・!)」

 

 

エルクは目をつむり、神威を鞘に納める。

 

 

ステマックス

「(剣を鞘に納めた・・・? 勝負を捨てたで御座るか!)

 もらったで御座る───覚悟ッ!」

 

 

姿を消し、背後から斬り掛かろうとその刃がエルクに触れようとしたその時───!

 

 

エルク

「輝剣秘技·九ノ型───無心ッ!」

 

ステマックス

「な、何っ!? ぐあぁぁっ!」

 

 

その瞬間、目を見開き素早く抜刀してステマックスの刀を弾いた!

 

 

ユニ

「今、何が起きたの・・・?」

 

ステマックス

「くっ、拙者の動きに合わせてカウンターとは・・・!

 しかしどうやって・・・。

 姿は完全に消していて見えていなかったはず・・・!」

 

エルク

「確かに、貴方の姿は見えなかった。

 でも精神を研ぎ澄ませて貴方の気配を察知して、

 仕掛けてくる瞬間を狙って攻撃を合わせただけだよ」

 

 

九ノ型·無心は、高めた魔力で全神経を研ぎ澄ませて、

相手の攻撃に合わせてカウンターを放つ技で、

今回のステマックスのような素早く姿を消す相手には有効である。

 

 

ステマックス

「これが、心眼というもので御座るか・・・。

 む、無念で御座る・・・」

 

エルク

「ふう・・・。 で、話を聞いてくれる気になった?」

 

 

僕の一撃を受けて膝をついているステマックスにそう言う。

 

 

ステマックス

「・・・お主の先程の一撃からは、全く邪念を感じなかったで御座る。

 では本当に・・・?」

 

エルク

「何を勘違いをしてるか知らないけど、

 僕とユニは貴方が思っているような関係じゃないよ」

 

ステマックス

「で、では、どういう関係で御座るか?」

 

エルク

「それは───「きゃあっ! 何よ、あんた!」 な、なんだっ!?」

 

ステマックス

「エルク殿、あれを!」

 

エルク

「なっ! ユニっ!」

 

 

ステマックスとの誤解が解け、ユニとの関係を聞かれた時、

ユニの悲鳴が聞こえ、ステマックスが指をさした先には、

汚れたシャツに破れてボロボロになった身なりが汚く、

小太りの気味の悪い清潔感の欠片もない中年の男が、ユニに背後から抱き着いていた!

 

 

中年の男

「ユニたーん! デュフフ、やっと一緒になれたねぇ!」

 

 

その男はそれだけではなく、ツーサイドアップの黒髪を触って、匂いを嗅ぐ。

 

 

ユニ

「ひいぃぃっ! は、離しなさいよ! 汗臭くて気持ち悪いのよ!」

 

中年の男

「ひどいなぁ、それだけボクが風呂に入る時間を惜しんで毎日毎日君のことを

 想っていたのにさぁ」

 

ステマックス

「ユニ殿に不埒な真似を働くとは! 断じて許さんで御座る!」

 

 

ステマックスは、刀を手に取りユニの元まで駆ける。

 

 

ユニ

「気安くアタシに触らないでよ! この変態!」

 

ステマックス

「ユニ殿ーっ!」

 

ユニ

「ステマックス!」

 

中年の男

「ん~? なんだ、お前は~?」

 

ステマックス

「お主のような者に名乗る名はないで御座る!

 ユニ殿は拙者の友人で御座る」

 

中年の男

「友人だと~?

 ユニたんはボクだけのものなんだ!

 お前なんか認めないぞぉぉっ!」

 

 

男は懐からナイフを取り出して、それをユニの首に当てる。

 

 

ユニ

「ひっ!」

 

ステマックス

「ユニ殿!」

 

中年の男

「近付くな! ユニたんはボクだけのものなんだ!

 そう、ボクだけの・・・デュフフフフ」

 

ステマックス

「おのれ、卑怯な・・・!」

 

 

ユニの首にナイフを当てながら身勝手なことを言う男に、

ステマックスは怒りを露にする。

 

 

エルク

「ユニっ!」

 

ユニ

「お兄ちゃん! 助けてッ!」

 

ステマックス

「お、お兄ちゃん!? エルク殿、ユニ殿とは本当に一体どんな関係で御座るか!?」

 

エルク

「今はそんなことはどうでもいい!

 とにかく今はユニをどう助けるかだ!」

 

ステマックス

「そ、そうで御座ったな!

 ユニ殿を解放して投降するで御座る!」

 

中年の男

「エルク? それがお前の名前だな?

 ボクのユニたんをたぶらかす男は!」

 

ユニ

「だからたぶらかすって何よ!

 それに、アタシはあんたなんかのものじゃないわよ!」

 

中年の男

「そういうつれないユニたんも、ボクは好きだよぉ。

 デュフ、デュフフフフ・・・!」

 

ユニ

「うぅ、気持ち悪い・・・!」

 

ステマックス

「くっ、ユニ殿・・・!」

 

 

男はユニに頬ずりしながら、気味の悪い笑い声を上げる。

こういった相手には最早話は通じない。

そう思った僕は───

 

 

エルク

ステマックス、こういう相手にはこっちの話なんて耳を持たない。

 何を言っても無駄だよ

 

ステマックス

では、どうすれば・・・

 

エルク

・・・少しあいつに気をそらしてくれない?

 その隙になんとかしてみる

 

ステマックス

・・・分かったで御座る

 

 

そうステマックスと、男に聞こえないように小声で話終えると、早速行動に移す。

 

 

ステマックス

「もしかして、お主も独り身で御座るか?」

 

中年の男

「お、お前には関係ないだろっ!

 ボクにはユニたんがいればそれでいいんだっ!」

 

ユニ

「ちょっと! 人の耳元で大きな声出さないでよ!

 うるさいわね!」

 

中年の男

「ああ、ごめんよ、ボクのユニたん」

 

ユニ

「だからあんたのじゃ・・・うう、臭い・・・」

 

 

抱き着かれた男の体臭に、顔を歪ませるユニ。

しかしステマックスは、一刻も早くユニを助けるため、言葉を続ける。

 

 

ステマックス

「実は拙者にも想い人がいるで御座る。

 名は伏せるで御座るが、女性としてとても魅力的な方で御座る。

 この想いを伝えようと思っているので御座るが、

 なかなか打ち明けられずにいるので御座る・・・」

 

中年の男

「お前、さっきから何を言って・・・」

 

 

自分の身の上話をしながら、男はそんなステマックスから離れようと、

後ろに退る。

 

 

中年の男

「く、来るな! 近付くな!」

 

 

そう叫びながら、手にしたナイフをステマックスに向ける。

 

 

エルク

「(奴の意識がステマックスに集中してる。 今がチャンスだ・・・!)」

 

 

二人のやり取りの間に、男に気付かれないようにナイフを持っている手が見える右側の

真横に移動した僕は、自分の足元にあった小石を蹴って、男の右手に当てる。

 

 

中年の男

「痛いっ!」

 

 

痛みに怯んで手が弛み、一瞬ユニから手が離れた。

 

 

ステマックス

「ユニ殿、今で御座る!」

 

ユニ

「う、うん!」

 

 

その一瞬を見逃さず、ユニはステマックスの掛け声で男から離れる。

 

 

エルク

「ユニ、大丈夫!? 怪我はない!?」

 

ユニ

「うん、大丈夫。 ありがとう、二人とも」

 

 

僕達に礼を言うと、ユニは振り返って男を睨み付ける。

 

 

中年の男

「デュ、デュフフ・・・! ユ、ユニた~ん・・・!」

 

 

小石を当てられ、腫れた手を押さえながら真っ直ぐユニを見つめる。

気味の悪い笑い声を上げているその様は、鳥肌が立ほどのものだった。

 

 

ユニ

「さっきはよくもやってくれたわね!

 これでも食らいなさい! えいっ!」

 

中年の男

「おぼあぁぁっ!」

 

エルク

「うわぁ・・・!」

 

ステマックス

「オ、オーバーキルで御座るな・・・!」

 

 

ユニが放った蹴りは、男の急所に無慈悲に容赦なくクリティカルヒットし、

今度はそこを押さえて内股になって痛みに悶えながら小刻みに震えている。

自業自得とはいえ、同じ男としてこれだけは同情する。

 

 

中年の男

「おお・・・おおお・・・!」

 

ステマックス

「エルク殿、ユニ殿、この男は拙者が責任を持って警察まで送り届けるで御座る」

 

エルク

「ありがとう、ステマックスさん。 けど、いいの?」

 

ステマックス

「・・・どうやら拙者のは大きな勘違いをしていたようで御座る。

 不埒者と決め付け、刃を向けてしまった事へのせめてものの詫びで御座る。

 だからこの男は拙者に任せて欲しいで御座る」

 

エルク

「うん、分かった。

 それじゃあ頼むよ、ステマックスさん」

 

ステマックス

「承知したで御座る。

 さあ、立つで御座る!」

 

中年の男

「うう・・・」

 

 

ステマックスは、踞っている男の手を自分の肩に回して立たせる。

 

 

ステマックス

「うっ、確かに臭うで御座るな・・・」

 

ユニ

「ステマックス!」

 

ステマックス

「ユニ殿?」

 

ユニ

「さっきは助けてくれて、ありがとう。

 あの時のあんた、かっこよかったわよ」

 

ステマックス

「そ、そうで御座るか?

 拙者もユニ殿が御無事でなによりで御座る。

 では、拙者はこれにて」

 

 

ステマックスは、男を抱えたまま煙幕に紛れて姿を消した。

 

 

ユニ

「はあ・・・もう本ッ当に最悪!

 せっかくお兄ちゃんとの楽しいデートだったのに!」

 

 

安心したのか、ユニはそう言ってその場に座り込む。

 

 

ユニ

「ごめんね、お兄ちゃん、迷惑かけて・・・」

 

エルク

「迷惑だなんてそんな・・・。

 僕の方こそ、目を離した隙にあんな事に・・・」

 

エルク·ユニ

「「・・・」」

 

 

互いに気負いしているのか、僕達はそのままの黙り込んでしまう。

 

 

エルク

「僕の事よりも、ユニは大丈夫なの?」

 

ユニ

「ア、アタシは大丈夫よ。 だって女神だもん。

 これくらいの危険は慣れてるわ」

 

エルク

「ユニ・・・」

 

 

そう言って強がるユニだが、声が涙ぐんでいて足も少し震えていたので、そうだと分かる。

それまでゲームをしたり、食事をしたりと楽しい時間を過ごしていたのに、

突然見知らぬ男に捕まり、自分の首に刃物を突きつけられたのなら無理もない。

よほど怖かったんだろう・・・。

なぜならユニだって、女神様である前に一人の女の子なのだから

 

 

エルク

「ねえ、ユニ」

 

ユニ

「なに、お兄ちゃn「ごめん、怖かったよね・・・」ちょ、お、お兄ちゃん!?///」

 

 

声を掛けられ、立って振り向いたユニを、僕は優しく抱き寄せる。

 

 

ユニ

「や、やめてよ、こんなに優しくされたら、アタシ・・・」

 

エルク

「・・・泣いたっていいんだ。

 僕もあの時君から目を離さなかったらあんな事にならなかったのに・・・ごめん」

 

ユニ

「お兄ちゃんは何も悪くないわよ。

 だってアタシを助けてくれてくれたじゃない。

 それに泣き顔なんて見せたくないよ・・・。

 カッコ悪いじゃない・・・!」

 

エルク

「そんなことないよ。

 それに僕がこうしていて見えないから大丈夫だよ」

 

ユニ

「お兄ちゃん・・・!

 うわあぁぁぁぁぁああんっ!!」

 

 

ユニはエルクの服の袖を掴んで、顔を胸に沈めるように大粒の涙を流し、

声を上げて泣いた。

我慢していた恐怖が一気に解き放たれたかのように、その涙はしばらく止まることはなく、

僕はそのままユニが泣き止むまで、頭を優しく撫でてそれまで待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルク

「もう大丈夫、ユニ?」

 

ユニ

「う、うん、ありがとう」

 

 

しばらくして泣き止んだユニは、僕から離れる。

 

 

エルク

「そういえば、さっきユニが僕に言いかけたのって、なんだったの?」

 

ユニ

「えっ!?///

 あ、あれはほら・・・なんでもないの!

 ただこれからもアタシと仲良くしてねって言いたかっただけで、

 特に深い意味はないから!」

 

エルク

「そ、そう・・・。

 でも、なんか凄く真剣そうだったけど?」

 

ユニ

「ホ、ホントにそれだけだからっ!」

 

 

と、再び顔を赤くしながらそう言うユニ。

あの時のなにかしらの覚悟を決めたような真剣な眼を、

僕は今もはっきりと覚えている。

個人的にはそれがどういう意味なのかとても気になるが、

本人がそう言う以上無理に聞き出すのはやめておこう。

 

 

ユニ

「ほ、ほらっ! もう暗くなるから早く帰ろう、お兄ちゃん!」

 

エルク

「うん、そうだね。 今日はもう帰ろっか」

 

 

僕とユニは、恋ヶ丘とそこにあるキューピット像を後にし、

二人でラステイション教会へと帰ることにした。

この時のユニ顔が赤かかったのは夕日によるものなのか、

それとも別のなにかによるものなのかは分からなかったが、

なにはともあれユニが無事で本当によかったと思った。

確かに最後はあんな事があって台無しになったかもしれないが、

こうしてユニの眩しくも可愛らしい笑顔が見れて、

それだけで今日は一緒に出掛けられてよかったと、心の中で満足する僕だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニside

 

 

はあ・・・勇気を出してせっかくお兄ちゃんをデートに誘って途中まで楽しかったのに、

最後の告白の時にハプニングが起きてチャンスを逃しちゃうし、

今日はついてないなぁ・・・。

でも、お兄ちゃんがアタシを抱き寄せてくれたあの時、とても温かかった。

今なら言えるわ。 アタシ、お兄ちゃんのことを好きになって本当によかったって。

今日は予想外のことが起きて告白は失敗にしちゃったけど、

今度こそ自分の気持ちをぶつけて告白したいな。

それ待っててね、お兄ちゃん♪

 

 

ユニsideend

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、教会でノワール達と夕食を済ませて皆と別れを惜しみつつ、

僕はプラネテューヌ行きの列車に乗って帰るのであった。

 

 

ノワール

「エルクったら、せっかく教会まで来たんだからもっとゆっくりしていけばいいのに・・・」

 

ケイ

「まあ、彼もプラネテューヌでは忙しい身だからね。 仕方ないさ」

 

ユニ

「~♪」

 

ノワール

「どうしたの、ユニ?

 なんだからとても機嫌がよさそうだけど」

 

ユニ

「え? そ、そうかな?」

 

ケイ

「それは簡単さ、ノワール。

 なぜなら今日、ユニはエルクと・・・」

 

ユニ

「ちょ、ちょっと、ケイ!

 その話は秘密にしてっいて言ったでしょ!?」

 

ケイ

「おっと、僕としたことがもう少しで個人情報を漏らすところだったよ。

 ふふっ、僕もまだまだだね」

 

ノワール

「秘密ってどういうことよ、ケイ?

 そういえば今日、ユニは1日出掛けてたけど、まさかそういうことなの!?」

 

ケイ

「さあ、どうだろうね?」

 

 

自分の顎に手を当てて、わざと含みのある言い方をするケイにノワールがそう聞くが、

軽くあしらわれる。

 

 

ユニ

「(今日はありがとう、お兄ちゃん。 また一緒に行こうね!)」

 

 

心の中でそう思いながら、再びデートに行くことに期待を持ち、

エルクを強く想うユニだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ポケモン剣盾【鎧の孤島】がついに出ましたね!
始めたばかりでまだまだ序盤ですが、皆さんはもうクリアしましたか?
図鑑完成を目指してがんばります!



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