光次元ゲイムネプテューヌ~聖なる祈りと極光の守護神~ 作:EDENCROSS
《前回までのあらすじ》
エルク精神世界ダイブしたネプテューヌ達は、
さらに奥へと進むのであった。
━ エルクの精神世界 第二層 ━
眼前に現れたゲートを潜り、二層目とやって来たネプテューヌ一行。
ネプテューヌ
「な、なに、ここ・・・。 これもエルくんの記憶なの・・・?」
開口一番にネプテューヌがそう言い、一行は周囲を見渡すと、
そこは空が血のように赤く染まり、炎の海が広がり、
叫び声とうめき声が響くまさに地獄のような場所だった。
「い、嫌だ! 死にたくない! 助けて! 助け───ぐぇっ!」
ビーシャ
「ひいっ!?」
ブラン
「ロム、ラム、見ちゃだめ!」
一体の黒いモンスターから逃れるように向かってそれから逃げるように走ってきた男が、
そのモンスターに背後から刃物で貫かれて鮮血が飛び散った。
そんな残酷な光景にビーシャは恐怖し、それを見せないようにブランはロムとラムの
二人を抱き寄せて視界を塞いだ。
誰もが目を背け、その場を離れようとしたその時、
どこからともなく子供の泣き声が聞こえてきた。
ロティ
「あっ、男の子がいるよ、みんな!」
ネプギア
「本当だ、なんでこんな所に男の子が?」
ネプテューヌ
「待って、あれってもしかして・・・エルくん!?」
モンスターに殺され、それが死屍累々の死体の山中を、
一人の小さな少年が泣き声を上げながら歩いていた。
その少年の服を見ると、血と泥で赤黒くひどく汚れていた。
だがどこか見覚えのある翡翠の髪の色と幼いながらも面影のある顔でエルクだと分かった。
ノワール
「ええ、今は小さい子供みたいだけど・・・」
ベール
「これもエルちゃんの記憶なのでしょうが、これはあまりに・・・!」
ケーシャ
「はい、こんなの・・・酷すぎます!」
ネプテューヌ
「ねえユーくん、あの男の子ってエルくんなの?」
ユリウス
「・・・ああ、そうだ。 この時のエルクはまだ心身共に幼く、
ロムとラムと変わらない子供で、それまで共に過ごしていた親をモンスターに殺され、
そんな現実を否定するかのように泣くことしか出来なかったのだ」
ロム
「おにいちゃん、かわいそう・・・(うるうる)」
ラム
「こんなの・・・あんまりじゃないっ!」
その少年、エルクのいる場所、そこは黒いモンスターが支配し人間達の殺戮の場と化し、
今のゲイムギョウ界では考えられない現実だった。
ユリウス
「一万年前のゲイムギョウ界は、ゲームや娯楽とは無縁の戦の時代だった。
加えて今は聖魔戦役による戦時中もあり、物資を巡って人と人が争い奪い合い、
時には殺し合うもはやモラルなど存在しなかった」
一同
「「「「「・・・っ」」」」」
当時のゲイムギョウ界は聖魔戦役の真っ只中で、凶悪なモンスターも徘徊していて
心休まる場所も少なく、誰もが死と隣り合わせな生活を余儀なくされていた。
自分達との生活とは真逆の現実という光景を見せつけられたネプテューヌ達は、
言葉を失う。
「お父さーん・・・お母さーん・・・!」
泣きながら死体の山をさまよい歩くエルクの声にモンスターが反応し、
串刺しにしようと襲い掛かる!
「危ないっ!」
「ギャアー!」
モンスターの凶刃がエルクを貫こうとしたその時、
一人の男の声と共にモンスターを両断した。
ロティ
「だ、誰!?」
シーシャ
「格好からして、ハンターみたいだね。
一万年前のこの時代にもハンターなんていたのかな」
ユリウス
「正確には彼はプラネテューヌの認可傭兵だ」
ケーシャ
「認可傭兵ってなんですか?」
ユリウス
「聖魔戦役で国を留守にしている女神達に代わり、国を守るために選ばれた傭兵達だ。
留守にしている間にモンスターが攻めて来ることを加味し、
女神は自ら素質のある者を選ぶのだ。
故に彼等は女神の加護により、常人以上の力を発揮できるようになる」
イーシャ
「女神自身が選ぶ・・・だから認可傭兵なんですね」
ケーシャ
「この時代からすでに傭兵は居たんですね」
「君、大丈夫か? 立てるか?」
「・・・おじさん、だれ? ぼくのお父さんとお母さんはどこなの?」
「それは・・・」
自分の父と母の行方をその傭兵に聞くエルク。
しかし何かを知っているかのように、彼はエルクの問いに言葉を濁す。
「とにかく、ここは危険だ! 君は俺と来るんだ!」
「い、いやだ! まだお父さんとお母さんがいるんだ!
はなせ、はなせよ!」
両親を探し、その場を離れたくないエルクにとって、それは当然の抵抗だった。
「っ! すまない!」
「うっ・・・」
小さな子供に手を上げる事に負い目を感じながらも、
彼はエルクのうなじに手刀を入れて力なく倒れたエルクをそのまま肩に担ぎ、
急いで駆け出してその場を後にした。
他に助けを求める声、言葉の通じないモンスターに必死に命乞いする声、
そして無惨にも殺される者達の悲鳴の声を聞きながも彼はエルクを担いだまま駆け抜け、
モンスターの襲撃を受けて今では見る影もない両親と共に過ごした村と、
それらに殺されて行く村人達の姿と苦痛と恐怖の聞きながら彼に担がれている中、
エルクは朦朧とした意識を手放した。
───────────────
それからしばらく走り続け、周囲を見渡し安全を確認して近くにあった小屋に入り、
彼はエルクを下ろして寝かせる。
ここまでの道中当たり前のように人がモンスターに殺され、
以前平和だった日常などもはやどこにもなかった。
幸い周囲にモンスターの気配はない。
小さな子供を担いだ状態でモンスターと遭遇せずここまでの来れたのはまさに幸運だった。
自分達の身の安全を確保した小屋の中でそう思っていると、
気を失い眠っていたエルクが目を覚ました。
「う、う~ん・・・」
「起きたか。 さっきは手荒なことをして悪かったな」
「・・・おじさん、だれ? そうだ、お父さんとお母さんは!」
目覚めたばかりで意識がはっきりしていない中、
エルクは目の前の傭兵に聞きつつ飛び掛かった。
「そ、それは・・・」
しかし、彼はエルクの両親がどうなったのかを知っており、再び言葉を濁す。
「おじさんは知ってるの? ぼくのお父さんとお母さんがどこにいるのを!」
それでもエルクは彼に詰め寄る。
ほんの少し前まで一緒に暮らしていた父と母という自分にとって
唯一の肉親であると同時に、それ以外に頼れる者がいない存在の行方を聞く
エルクにとって、彼の心情を考える余裕などなかった。
そして彼は、エルクのそんな気持ちを理解したように、その重い口を開いた。
「・・・落ち着いて聞いてくれ。
君のお父さんとお母さんは───死んだ」
「え・・・なに言ってるの、おじさん? そんなのうそ・・・だよね?」
「嘘じゃない。 俺が村に着いた時にはもう・・・」
「う、うそだ! うそだうそだうそだっ!」
落ち着いて聞け。
こんな10にも満たない小さな少年が、両親が死んだという酷な話を突然聞かされて
落ち着けるわけもなく、それを嘘だと否定するのは当然の反応である。
しかし彼はあえて誤魔化さず、エルクに残酷な現実を話す。
「よく聞きなさい。 君の両親は死んだ、もういない」
「うるさいっ! そんなのうそだっ!」
「嘘じゃないっ! 俺は頼まれたんだ、君の両親に!
駆け付けた時には致命傷を負ってて、その時に君を頼むって亡くなった。
このロケットに写ってるのは君だろう?」
「ぁ・・・」
自分の両親の死を告げられ、エルクは彼の胸を何度も拳を打ち付けるように叩いた。
身に付けている胸甲によって自分の手が傷つくことも省みず、感情のままに。
そして彼が懐から取り出した銀のロケットに写っている自分を抱いて微笑んでいる
父と母を見て、目に涙を浮かべながら話す彼の顔を見て、
エルクは幼いながらもそれが事実だと理解した。
もう、この世のどこにも父と母は居らず、
そして二度とあの幸せな時間は帰ってこないということを・・・。
それは7歳という少年が受け入れられるには余りにも残酷な現実だった。
「ねえ、なんで・・・? なんでぼくのお父さんとお母さんを助けてくれなかったの!」
「すまない・・・すまない・・・!」
彼は涙を流しながらエルクを抱き寄せ、謝罪する彼に対して泣きながら責めるように
泣きわめくように言いながら、エルクは彼を責めた。
自分が来たときには父と母は手の施しようのないほどの致命傷を負っていて手遅れだった。
しかし、たとえそうだっとしてもそれでも自分にできることがあったのかもしれないと、
そして血に染まった手で渡されたエルクの両親の自分達の最後を悟りながらも
我が子を心配する顔と想いを思い浮かべ、
彼はエルクの悲しみと絶望の声を真正面から受け止め、
エルクの叫び声と泣き声が、小さな小屋を埋め尽くすのであった・・・。
───────────────
「・・・」
「泣き疲れて眠ったか・・・。 無理もない。
こんなに幼い子供が受け止めるには酷すぎる・・・」
彼は泣き疲れて眠ったエルクを見ながら、そう言う。
「しかし、これからどうしたものか・・・。
このままプラネテューヌに戻って事情を話して孤児院に預けることも出来なくはない。
だが、それでは駄目だな。
両親を亡くしたこの子は孤独なままになってしまう。
それだけこの子の受けた心の傷は深い」
エルクの叫び声と泣き声から一変して、再び静寂に包まれた小屋の中、
彼はエルクの身を案じていた。
彼の言った通りこのままプラネテューヌの孤児院に預けても、
受けた心の傷により誰にも心を開かず孤立してしまうだろうと。
「・・・そろそろこの傭兵稼業も潮時かもしれんな。
目の前の誰かを守るために剣を取り、傭兵になったが、
結局何も誰も守れなかったな。
一人の小さな少年の親でさえな・・・」
と、彼は自分を責めた。
もっと早く駆け付けていればこの子の両親だけでなく
他の村人達も助けられたのではないかと。
しかしその中で、両親に託されエルクという小さな命を守ることができた彼は決意する。
「・・・それでも、この子の命だけは守れた。
よし、この子を俺の養子にしよう。
両親を守れなかった償いとして。
そしてなにより、この子の未来のために」
「・・・うん?」
「おっと、起こしちまったか?」
「おじさん・・・?」
「そういえば、名乗ってなかったな。 俺はバーンズ。
プラネテューヌで傭兵をやってる。 君は?」
「・・・エルク・・・」
「そうか、エルクか。
なあエルク、君さえよければ俺と一緒に暮らさないか?」
「おじさんと一緒に・・・?」
「ああ、そうだ。 俺と家族になるんだ」
「で、でも、お父さんお母さんは・・・」
「お父さんとお母さんを亡くした君がこんなことを言われて混乱するのは分かってる。
俺は君の両親と約束したんだ、君を頼むって。
それに俺は両親も守れなかった。
だから俺は君を養子に迎えて、君を守りたい」
「・・・」
幼くして両親と死別し、自分一人の力で生きて行くことなど出来ず、
選択の余地のないエルクに言うのも酷なことなど、バーンズ自身も十分理解している。
しかしそれでも彼は絶命する直前までエルクの両親の「あの子のことを頼む」
と言う言葉を今でも鮮明に覚えている。
最後まで我が子を想う両親の気持ちと、それらを失ったエルクに対する同情もある。
だがそれ以上に、彼は使命に似た何かを感じ、
エルクを養子に迎えようという考えに至ったのだ。
「さっきも言ったが、俺はプラネテューヌで傭兵をやっている。
だが俺の故郷には君と同い年の娘や、色んな人達や子供達もいる。
皆いい奴らばっかできっと君も気に入るだろうし、
あいつらも、君のことを気に入るだろう。
どうだ、一緒に来るか?」
「・・・」
「(やはり、両親を亡くしたばかりの子供にこんな話は酷か・・・)
とりあえず、君をプラネテューヌの孤児院に連れて行こう。
大丈夫、あそこには怖いものは何もないからな」
「・・・うん」
バーンズは、エルクの手を取って小屋を後にし、
二人でプラネテューヌを目指して歩き出す。
「日が暮れそうだな・・・。
だが、ここからプラネテューヌは目と鼻の先だ。
そう遠くないから大丈夫だ、エルク」
「・・・」
バーンズの言葉に返事をすることなくうつ向くエルク。
しかしその手はバーンズの手を強く握り、震えていた。
「・・・大丈夫、君のことは俺が必ず守る。
だから安心してついてきてくれ」
そんなエルクを安心させるように、バーンズはエルクの目線に合わせるようにしゃがみ、
笑みを浮かべながらそう言った。
そして二人は改めてプラネテューヌを目指すのであった。
━ プラネテューヌ ━
旅路の末、プラネテューヌに到着したバーンズとエルク。
聖魔戦役という戦時中の混沌としたこの世界で、
これまで野盗やモンスターと遭遇しなかったのは奇跡である。
「さてと、早速孤児院に行くか。 エルクはプラネテューヌは初めてか?
ここは女神ゴールドハート様が治められる国だ」
一万年前のプラネテューヌ。
そこは女神ゴールドハートが治める国で、
現代のゲイムギョウ界のプラネテューヌのような近未来的なものとは違い、
モノレールやエスカレーターやといった機械的な乗り物は存在せず、
おもに馬車や人力車による移動手段が主流だった。
そして建物も石造りで無骨なものが多く、一国というよりもひとつの街という感じだった。
そんな中一際目立つレンガ造りの女神ゴールドハートを模した装飾が施された孤児院に、
バーンズはエルクを連れてそこへ向かった。
━ プラネテューヌ孤児院 ━
「クレア。 シスタークレアは居るか?」
「お帰りなさい、バーンズさん───っ! その子は!?」
「話は後だ、とにかく風呂を貸してくれ。 まずこの子を綺麗にしたい」
「わ、分かりました!」
シスタークレアと呼ばれた銀髪の女性は、言われるがままに風呂を提供し、
バーンズはそこでエルクを洗い、新しい服でエルクの身なりを整えた。
───────────────
「それで、バーンズさん、あの子は?」
「ああ、あの子・・・エルクは任務で赴いた村の生き残りだ」
「生き残りということは、あの子は・・・」
「ああ、モンスターを親に殺された孤児だ。
そしてエルクの両親も含めた他の村人達も・・・」
「そうですか・・・。
今まで色んな子供達を見てきたけど、
まるで全てを諦め絶望に染まったかのような目をした子を見るのは初めてだわ・・・。
なんて悲しい目をしていたの・・・)」
と、この時クレアは、孤児院に連れてこられたエルクの目を見てそう思った。
目だけではなく、顔からも生気が感じられず、まるで感情を持たない人形のようだった。
「俺はこれからギルドへ行って、今回の件を報告してくる。
シスタークレア、すまないがしばらくエルクをここに置いてやってくれないか?」
「ええ、もちろんそれは構いませんが、しばらくとは?」
「・・・明日の防衛任務が終わったら、俺は傭兵をやめてエルクを連れて
故郷へ帰ろうと思う」
「故郷と言いますと、アルトスの集落の事ですか?」
「ああ、集落の連中とならきっとうまくやれる。
それに俺の家族とも一緒に暮らして行けるはずだ」
「そうですか・・・。 分かりました。
ですがここからですとかなりの距離がありますが、どうするおつもりですか?」
「そのことなら問題ない。
ギルドにある転移魔法を使わせてもらうさ。
向こうにはここと繋ぐ魔法も道具もないから、帰りは片道になるけどな」
「さみしくなりますね。 子供達も貴方に懐いてますから」
「そんな顔しないでくれ、シスタークレア。
ここの子達は皆強い子だ。 俺が居なくとも十分やっていけるはずだ」
「・・・はい、そうですね。
あの子達もここに来た時と比べると明るくなり、身も心も元気になりましたから。
本当によかったです」
「・・・」
「それに私、知ってるんですよ?
毎月この孤児院に送られてくる多額の寄付金を。
バーンズさんなんでしょ?」
「な、なんのことだ?
ただの傭兵の俺にそんな稼ぎがあるわけないだろう」
「そうでしょうか?
でも、それに書かれている手紙とバーンズさんの字が全く同じなんですよね」
「あ・・・」
足長おじさん。
孤児院のシスターと子供達の間で話題になっている人物。
毎月多額の寄付金が送られており、孤児院の関係者も知らない何者かを
いつからかそう呼ぶようになった。
この聖魔戦役によって家族を失い、身寄りのない孤児達を引き取って我が子同然のように
育て共に暮らしているクレアをはじめとする多くのシスター達。
しかし戦時中ということもあり、金や食料と言った経済的に苦しく、
育ち盛りの子供達に満足な食事も与えられない事に悩んでいたが、
彼の援助によってそれが出来るようになった彼女達にとって、
まさに救世主のような存在だった。
だが、以前からバーンズとの個人的な手紙のやり取りをしていたクレアは、
その寄付金と共に送られていた手紙の文字から彼のものだと知り、
足長おじさんの正体がバーンズだと見抜いた。
「この事は皆には秘密にしています。
こういうのってそうしておいた方がいいですからね」
「・・・敵わないな、シスタークレアには」
「そんなことありませんよ。
貴方のお陰で貧しい思いさせてしまっていた子供達も元気に暮らしてるんです。
頭が上がらないのはこちらの方ですよ」
「そう言ってくれるとありがたい。
それじゃあ俺はもう寝るよ、明日は早いからな」
「バーンズさん、食事の方は?」
「いや、いい。
今日は色んなことがあり過ぎて食欲がないんだ」
「そうですか・・・」
「今日は急に悪かった。
子供達にはよろしく伝えといてくれ」
「はい、お休みなさい、バーンズさん」
「ああ、お休み、クレア」
バーンズはクレアにそう言い、孤児院を出てギルドへ向かった。
「・・・明日はいよいよプラネテューヌ防衛ラインを守る最終防衛戦。
バーンズさん曰くこれが最後の戦いになるらしいわ。
教会からもモンスターの勢いが弱まっている事から終戦も間近だという通達もあった。
なら明日の戦いでプラネテューヌの未来が決まると言っても過言じゃない。
きっと多くの死傷者が出る。 もしかしたらバーンズさんも・・・。
女神様、極光の守護神様、どうか彼等に貴方様方のご加護を・・・!」
そして、クレアはプラネテューヌの未来とバーンズの身を心配し女神と守護神に
祈りを捧げて、ベッドに眠っているエルクの頬を撫で、
机にあるロウソクの火を消し、自分も眠りにつくのであった。
───────────────
翌日、バーンズにとって傭兵としての最後の戦いであるプラネテューヌ防衛戦の日が来た。
天候は曇り、そしてその下に広がるは岩山など障害となるものが何もない
プラネテューヌの平原に、自国の名のあるハンター及び自分と同じ傭兵と、
中にはルウィーから派遣されて参戦した魔法兵兵団と魔法兵器が導入され、
戦力としては申し分なかった。
これから戦場になるであろうこの場所は平原ではあるが、プラネテューヌの入り口に
巨大なバリケードが張られており、その近くには前線基地もある。
不覚にも前回の戦いでモンスターに防衛ラインを突発された彼等にとって、
プラネテューヌが目と鼻の先にあるここはまさに最終防衛ラインである。
「「「「「・・・」」」」」
皆の沈黙で静まり返るそこはまるで嵐の前の静けさの如く、静寂に包まれていた。
ある者は今まで以上のモンスターの大群が押し寄せ、これまでにない激戦になるという
恐怖と緊張感を、ある者はここを落とされたら女神の不在のプラネテューヌが滅び
家族や恋人も失うという不安をその場にいる全員がそれらを持っていた。
しかしそんな中、バーンズだけは違っていた。
彼はもうじき来るであろうモンスターの大群に備えて精神統一していた。
「き、来たぞ! モンスター共だ!」
それらが肉眼で確認できる距離までモンスターが来たのを見た一人の若いハンターが、
そう大声を上げる。
「お、おいおい、なんだよあれ!
ある程度予想はしてたが、あんな数今まで見たことねえぞ!」
「ひ、ひいい・・・!」
大地を埋め尽くす程の大群に息を飲む者、恐怖する者も現れる。
こちらの数は数万に対し、モンスターはその倍以上というまさに数の暴力のような
圧倒的な数の違いを見せつけられれば、そうなるのも無理はない。
モンスターとの実戦経験こそあるものの、これほどの大群を相手にしたことのない
若手のハンターや傭兵達は、激しく動揺していた。
しかしそれでもバーンズは動じず、長年共にしてきた大剣を構えて、
一人静かにモンスターの大群を見据える。
そしてそれが迫り来ると、モンスターの大群に単身突撃する!
「なっ! あいつ、一人で!?」
「死ぬ気か、あのおっさん! いくらなんでも無謀過ぎだろ!」
傭兵の言う通り、バーンズの行動はまさに無謀そのものだった。
しかし、それには理由があった。 それは───
「おい! 俺達もバーンズさんに続くぞっ!」
「「「「「おおーーーーっ!!」」」」」
そう、あえて一人単身迫り来るモンスターの大群に突っ込み、
それらを蹴散らす姿を見せれば、及び腰になっていた者達の心を奮い立たせるための
行動だった。
案の定それを見た傭兵が剣を掲げて皆にそう言うと、
一人また一人とバーンズに続いてモンスターを倒して行く。
それと同時に後方に控えていたルウィーの魔法兵団は、
自国の魔法兵器を作動させて空中にいるモンスターを薙ぎ払い、
仕留め損ね地面に落ちたモンスターに傭兵とハンター達が追撃するように
トドメを刺すといった連携の取れた戦いを展開する。
「(あれがルウィーから派遣されてきたっていうルウィーの魔法兵団とその兵器か・・・。
なるほど、これは心強い!)」
自分はルウィーに行ったことがなく、そこがどんな国なのかも分からなければ、
魔法も使ったことのないバーンズにとって、それは未知なものだった。
それ故に戦力になるだろうが、戦闘時にこちらと連携が取れるのかという心配もあったが、
彼等の力と戦い方を見てそれは杞憂だったとバーンズは安堵する。
「魔力100%充填完了!」
「魔導砲イクシオン! ってえぇぇぇっ!」
魔法兵団率いる隊長の号令と共に発射されたそれは、
空中にいる前方に広がるモンスターを轟雷によって薙ぎ払い、
跡形もなく殲滅させながら天を割るように雲を切り裂き、
その轟音が戦場に響き渡った!
「すげえ・・・! あれがルウィーの魔法兵器か!」
「なんつーでたらめな威力だよ!」
「おい、勝てるぞ、この戦い!」
魔法兵器イクシオンの威力を見て、傭兵達の士気がさらに高まり、
それを見たモンスター達は撤退するかのように前線を離れて行く。
「へっ、逃がすかよ!」
「追え! 逃がすなっ!」
ここぞとばかりに逃げて行くモンスターに追撃を加えるべく、追いかける傭兵達。
本来ならこれは一気にそれらを叩く絶好の機会。
しかしこの時彼等と共に追跡しているバーンズは言い様のない胸騒ぎがした。
「(なんだ、この違和感・・・。
確かにあの兵器は強力だが、次に撃つまでに時間が掛かるはずだ。
対人ならともかく、モンスターだからそれに気付いていないだけか?)」
傭兵達と追いかけながらそう思ったバーンズは、
モンスターが逃げる先に砂丘があることが分かった。
「皆、止まれ! 何か変だ!」
「変? 変なもんかよ。 奴らあの兵器にびびって逃げてるだけだろ?」
「そうだぜ! たとえ変だったとしても俺たちにはあれがあるんだ!
どんなに強い奴が出てきても負けるはずねえよ!」
バーンズの警告に耳を貸さず、そのままモンスターを追い続ける傭兵達。
こちらにはルウィーの強力な魔法兵器がある。
戦いに勝つには兵の数や戦略の他に強い武器や兵器が必要だ。
だが時としてそれは人の勘や思考を鈍らせ、盲目になってしまう。
モンスターが砂丘に逃げ込み、それを追う彼等が足を踏み入れたその時───!
「な、なんだ!? 地震か!?」
「っ!? まずい! お前ら、早くそこから離れろ!」
「は・・・?」
「なんだっt」
彼等の足元から、巨大なワームのような巨大な昆虫モンスターが地面から現れ、
それと同時にそこにいた傭兵達とモンスターを飲み込んだ!
どうやらここは奴等の巣のようだ。
それから何体かそれらが地面から現れ、残りの傭兵達も次々に捕らわれてしまった。
「な、なんだ、コイツら!」
「くそっ! 離せ、この!」
「あ・・・あいつら・・・人を喰いやがった・・・!」
「こいつらは・・・サンドワーム!? なぜこんなところに!」
サンドワーム。
主に砂漠や砂地に生息し、地中深く潜って姿を消し、
獲物が通るとすり鉢状にして、それが落ちて来たのを補食するという
所謂アリジゴクのようなモンスターである。
「おい、しっかりしろ、来るぞ!」
仲間が目の前で喰われた光景を見たその傭兵は、その場に尻餅をつく。
そして一度に数人を捕食したサンドワームは、
触手を伸ばして尻餅をついてる傭兵を捕らえて飲み込もうとした!
「う、うわあぁぁぁっ! やめろ! 離せ!」
「ちぃっ!」
バーンズは大剣で伸ばした触手と本体のサンドワームを斬り裂き、傭兵を解放した。
「はあ、はあ・・・た、助かった・・・!」
「安心するのはまだ早い。 俺達も元いた前線まで戻るぞ」
「戻るって、まだ仲間があれに捕まってる奴がいるんだぞ!
それを見捨てるってのかよ!」
「俺もできることならそんなことはしたくない!
でも俺達二人だけで何ができる? 戦っても無駄死にするだけだ!」
「そ、そうかもだけどよぉ・・・」
「ここに残ってあいつらを助けたいんならそうしろ!
だが俺達は前線から離れすぎた。 早く戻らねえと前線の奴らが危ねえ!
どうするかはてめぇで決めろ!」
「くそっ・・・!」
バーンズは半泣き状態の傭兵に現実を突き付け、選択を迫る。
自分と前線へ戻って戦うか、この場に残って仲間を助けるために一人で戦うかを。
しかし後者の場合、たった一人で数体の巨大なサンドワームと戦うなど、
バーンズの言う通りまさに無駄死にするだけの行為である。
捕らわれた仲間を助けたい、中には見知った顔のいる者もいたが
死にたくないという気持ちと彼等との命とが天秤となって彼の心を揺らし、
結果死にたくないという気持ちが勝ってバーンズと共に前線へ戻ることを選んだ。
「よし、行くぞ! 絶対に後ろを振り向くなよ!」
「おい、ふざけんな! オレたちを見殺しのする気かよ!」
「ひ、人殺しー!」
「い、いやだ、助けてくれ! 俺達も一緒に───」
「・・・っ!」
バーンズは傭兵の腕を掴んで、前線へ向かって走り出す。
後方から聞こえてくる助けを求める声を黙殺しながら・・・。
───────────────
━ プラネテューヌ最終防衛ライン 前線 ━
砂丘とサンドワームの巣を抜け、前線を見渡せる高台へ辿り着いた二人は、
先程まで優勢だった戦況から一変どこからともなくモンスターが現れ、
苦戦を強いられていた。
「・・・おい、なんだよこれ! さっきまでモンスター共を押してたじゃねえか!
なのになんで今度はこっちが押されてんだよ!」
「やっぱり、あいつらは囮だったか・・・」
「ど、どういう意味だよ、おっさん」
「さっきも言ったように、俺達が追い掛けてたのは囮、
つまりモンスター共の狙いは俺達を前線から引き離して
そこを手薄にすることだったんだ」
「狙いって・・・。 モンスターがそんなに頭が回るわけねえだろ!
どうすんだよこの状況!」
「どうするもなにも俺達も加勢するぞ!
幸いまだ防衛ラインを突破されたわけじゃない!
急げばまだ間に合うはずだ!」
「はあっ!? 行くってまさかあのモンスターの群れの中にか!?
お、俺は行かねえぞ! それこそ命がいくつあっても足りねえよ!」
「何言ってる! あそこを突破されたらもう後がないんだぞ!
女神不在の今、それがどういう意味かわからないのか!
プラネテューヌが滅ぶかもしれないんだぞ!」
「うるせえっ! プラネテューヌの生まれじゃない俺にとって
そこがどうなろうと知ったこっちゃねえよ!」
「・・・じゃあ、お前はなんでこの戦いに参加した?
プラネテューヌを守るために一緒に戦うためじゃないのか」
「は? そんなわけねえだろ。 金のために決まってんだろ!
モンスターを倒すだけの仕事だから引き受けたが、
自国ならともかくどうでもいい他国のために命まで懸ける義理はねえよ。
さっきはモンスターに喰われそうになるし、
挙げ句モンスターだらけのところに突撃して戦えなんて言うし最悪だぜ!」
「お前、それ本気で言ってんのか・・・?」
「本気も本気だ! こんな時に冗談なんて言うわけねえだろ!
ってかあんただってそうだろ! 命や金より国を優先するなんてどうかしてるぜ!
あそこで戦ってる奴らだってそうだ、バカばかりだ!」
「てめぇっ!」
他国から派遣された傭兵の心無い言葉にバーンズは憤り、その男の胸ぐらを掴む。
「離せ! 触んじゃねえ!」
「ぐっ!」
しかし、傭兵の膝蹴りを腹部に受け、その場に踞る。
「へ、何がプラネテューヌ認可傭兵だ! ただの冴えねえ中年のおっさんじゃねえか!
若い俺はあんたと違って先長いんだよ!
このままあんたをおとりにして俺は逃げるぜ! じゃあな!」
踞るバーンズを小馬鹿にするように、その傭兵は彼を置き去りににして一人逃げ出した。
「ま、待て! そっちは───」
しかし、その方向が悪かった。
「うわっ! なんだ!?」
傭兵が走って逃げているその時、地面がすり鉢状に陥没してそれが流砂となり、
その中央から巨大な何かが顔を覗かせていた。
「あれは・・・アースイーター! なぜこんなところに・・・」
そのモンスターの名はアースイーター。
主に砂漠や荒野などに生息しており、その生態はサンドワームとにているが、
大きさはもちろん獰猛さはその比ではなく、捕らわれたが最後脱出の術はなく、
捕食されるのを待つのみとなる。
それ故傭兵やハンター達の中でも特に危険視されているモンスターである。
「ひいっ! い、いやだ! 俺はまだ死にたくねえ!
おい助けろ! 助けてくれ! 助けてください!」
流砂に飲まれて必死にもがくもその抵抗も無意味になり、
その流砂が彼を待ち構えるアースイーターの元まで運んで行く。
「い、いやだーーーーっ!!」
そして、アースイーターの強靭な顎に捕らわれた彼は、
血まみれになりながら奴と一緒に地中へと消えていった。
「・・・人の忠告は最後まで聞くもんだぜ、バカ野郎が・・・!」
そこに残された血塗られたメットと食い荒らされた肉片を見て、
バーンズはそう言葉をこぼした。
「こうしちゃいられん、早く戻らなくちゃな!」
蹴られた腹を押さえながら立ち上がったバーンズは、
駆け足で元いた場所まで戻るのであった。
──────────────
一度モンスターの策略に嵌まり、全滅しかけたがなんとか戻ったバーンズが目にしたのは、
そこで戦っていた他国から派遣された傭兵達の変わり果てた姿と、
わずかに生き残ったプラネテューヌの傭兵達によって辛うじて守られているが、
開戦時に絶大な威力を持っていたルウィーの魔法兵器が全て破壊されており、
それを扱う魔法部隊がモンスターに襲われ重傷を負い、中には死者も出ており、
自国の傭兵以外にまともにうごける者がおらず、
防衛ラインを突破されるのも時間の問題となっていた。
「・・・やっぱり俺達がいなくなったから、その分守備が手薄になっちまったか・・・!
くそっ、我ながら情けねえ! モンスターにいいようにやられるとはな!」
バーンズはそう言いながら、迫り来るモンスターを大剣で斬り裂き、
一体一体確実にその数を減らして行く。
「(ちぃ、流石に数が多すぎる!) ぐあっ!」
だが、それでも多勢に無勢。
いくら個の力が強く優れていても大勢のモンスター相手では分が悪い。
しかしそれでもバーンズは退くわけにはいかなかった。
なぜなら自分の後ろにはプラネテューヌが、孤児院が、
そしてそこに自分が守ると決めたエルクがいるからだ。
「くそっ! なんなのだこれは!
おいそこのお前、プラネテューヌの傭兵か?」
モンスターと交戦中に、一人の男が声を掛けてきた。
「っ! そういうあんたはルウィーの魔法部隊の隊員か? 仲間はどうした」
「私の部下は皆モンスターにやられてしまった・・・!
なぜこんな事に・・・!」
ルウィーの魔法部隊の男の容姿からしてバーンズと比べて一回り年下だろうか、
帰り血を浴びて赤く染まっているがわずかに残っているルウィー特有の
青と白を基調とした隊服と、被っている白の士官帽でそうだと判別できた。
「そうだ、こうなったのも全て貴様等傭兵共のせいだ!
のこのこモンスター共にしてやられおって!
そのせいで前線が崩され、モンスター共が押し寄せてきた!」
その男を庇うようにして戦うバーンズの後ろから、彼を罵倒する声が聞こえてくる。
確かにそれについては弁明の余地はなく、責められても仕方のないことかもしれない。
しかし今は生き残った自国の傭兵とモンスターが入り乱れる乱戦状態故に、
言い返す余裕がない。
それを知ってか知らずか、その男はさらに言葉を続ける。
「だから私は野蛮な傭兵なんぞとてを組むのは反対だったのだ!
そのお陰で私の部隊は全滅し、部下も死んでしまった!
全ては貴様等傭兵の・・・プラネテューヌのせいだ!」
と、その部隊長はうるさく吠え、バーンズを容赦なく責め立てる。
部下を失った怒りか、はたまたこの現状に混乱しているのか分からないが、
バーンズはそんな彼に言葉を返す。
「おい、確かにこうなっちまったのは俺達のせいかもしれねえ。
だからそのことについては言い訳するつもりもねえ。
でも今は見ての通り戦闘中だ!
言いたいことがあるんならこの戦いが終わってからにしろ!
いい加減耳障りだ! 部下や仲間が死んでどうこうなのはお前だけじゃねえんだよ!」
「な、なんだと・・・! 傭兵の分際で!」
「お前が俺達傭兵をどう思ってるかなんてどうでもいいけどな、
生き残りたかったら口じゃなくて手ぇ動かせ!
仮にも部隊長なんだろうが!」
「っ! いいだろう、そこまで言うなら私の魔法を見せてやろう!
そのかわり───」
「ああ、時間を稼いでやるからさっさと詠唱でもなんでもしろ」
「貴様に言われんでも分かっている!」
あらかた周囲のモンスターを倒したバーンズは、
彼をそのまま自分の後ろに立たせて守るように襲い掛かるモンスターを斬り伏せて行く。
「━落ちるは天の怒号、迸るは雷の舞い。 降り注げ、雷神の裁き━
ジャッジメントボルテックス!」
詠唱が終わるのを合図に、バーンズは退避する。
そして魔法が発動するのと同時に、空中に展開された魔方陣から激しい雷が降り注ぎ、
範囲内にいたモンスターを殲滅した。
「あの数のモンスターを一瞬で・・・!
伊達に魔法部隊の隊長を名乗ってるわけじゃないってことか」
「ふふん、どうだ、私の魔法は?」
「ああ、大したもんだ。
それじゃあ一端防衛ラインの前線基地まで退くぞ」
「退くだと? 何故だ! このままモンスター共を殲滅すればいいだろう!」
「お前、部隊長のくせに分からないのか?
周りを見てみな、今まともに戦えるのは俺達だけだ。
自分の残りの魔力量を省みずに戦いたいんなら勝手にしろ。
俺は生き残った仲間を連れて基地に戻って体制を立て直す」
「・・・っ! 仕方ない」
長年ルウィーの魔法部隊長を務めている訳ではないので、
バーンズの言う通り今の魔力量で一人で戦っても無駄死にするのは分かってる。
殺された部下の仇は取る。
そう言った憎しみもあったが、ここはバーンズの言葉に従い
憎しみを押さえながら共に前線基地まで退くことにした。
ネプテューヌシリーズの最新作の忍ネプ楽しい!
閃乱カグラシリーズも好きなので自分にとっては嬉しい限りです!
今後DLCでキャラ増えないかなぁ。