光次元ゲイムネプテューヌ~聖なる祈りと極光の守護神~   作:EDENCROSS

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光ネプ第74話

《前回までのあらすじ》
エルクの精神世界にやって来たネプテューヌ達。
彼女達が観ている次なる記憶は、幼少のエルクの過去と、
一万年前に起こった聖魔戦役の記憶だった。


♯ 74 エルクの精神世界③

         ━ プラネテューヌ最終防衛ライン 前線基地 ━

 

 

多くの仲間達を失ったが、

生き残った傭兵達と共に後退し、途中に遭遇したモンスターを蹴散らしながら

なんとか前線基地へと帰還したバーンズと、まだ名も知らぬルウィーの魔法部隊長の男は、

そこの司令である長く赤い髪が特徴的で

バーンズと同年代のヴィクトルに現状を報告した。

 

 

「・・・そうか、その報告によると大勢の若い者達が死んでしまったようだな」

 

「ああ、俺の力不足だ。 あの時俺が皆を止めていればきっと・・・」

 

「そう自分を責めるな、バーンズ。 お前の責任じゃない。

 その件については残念ではあるが、どうやら我々はモンスターを侮っていたらしい。

 前回防衛ラインを突破されたと言うのに、なんてザマだ・・・」

 

 

多くの若者の命が戦場に散り、それに対して悲しみと悔しさを顕にするバーンズとヴィクトル。

しかしある一人の男が、怒りに任せて声を荒げた。

 

 

「モンスターを侮っていた、だと? ふざけるなっ!

 全ては前線を離れてのこのこモンスター共の策に嵌まった貴様等のせいだっ!

 所詮はプラネテューヌ、貴様等のような低能な猿共が

 頭を使った作戦など立てられなかったという事だ!」

 

「てめぇ・・・!」

 

「・・・」

 

 

自分だけならまだしも、目の前で多くの仲間が死に、

プラネテューヌの事まで侮辱した部隊長の男に、

バーンズだけでなくその場にいた彼の仲間達も憤りを感じていた。

しかし司令官のヴィクトルは、冷静に彼に言葉を返す。

 

 

「貴方はルウィーから派遣された魔法部隊の隊長殿ですか?」

 

「ああ、そうだ! それがどうした!」

 

「確かに今回の件、全責任は司令である私にある。

 ご自分の部下が亡くなられたお気持ちはお察しする」

 

「貴様・・・どの口が言っt「しかし!」っ!?」

 

「それと戦死した我らが同胞、そしてプラネテューヌとは全く関係のないこと!

 私を責めるのは結構だが、それ以上彼等を侮辱するのはやめて頂きたい!」

 

 

部隊長の男の言葉を遮り、目を大きく開いて国や亡くなった仲間達を侮辱する彼に

一喝するヴィクトル。

ヴィクトルとバーンズの二人はもちろんその場にいるプラネテューヌの傭兵達も

皆同じ気持ちである。

 

 

「くっ・・・」

 

 

そんな彼等の圧に気圧され、黙り込む。

 

 

「伝令、伝令! 12時の方向に闇人(シェイド)が出現!」

 

「何、闇人(シェイド)だとっ!? こんな時に・・・!」

 

「・・・? シェイド?  おい、なんだそれは」

 

「お前本当に部隊長か? 本当に何にも知らないんだな。

 仮にも軍人ならモンスターの情報くらい頭に入れとけよ」

 

「だ、黙れ! シェイドとはなんなのだ、いいから教えろ!」

 

闇人(シェイド)とは、闇の女王(オプスキュリア)邪力(タナトス)で作り出されたモンスターです」

 

「モンスターだと言うなら、何をそんなに狼狽えているのだ。

 そんなものさっさと倒してしまえばいいだけの話ではないか」

 

「それができるんなら苦労しないし、お前に言われるまでもなくとっくにやってるよ。

 あいつ等の場合はそう単純な話じゃねえんだよ」

 

「どういうことだ?」

 

「モンスターと言っても、ただのモンスターではなく、

 奴等にはあらゆる攻撃を無効にする特性を持ってるんだ」

 

「なんだと!? そのような奴等相手にどうしろと言うのだ!

 大体そんなモンスター聞いたことがないぞ!」 

 

「本来なら極光の守護神のユリウス様の光の力で浄化していたのだが、

 今は四女神様と共に闇の女王(オプスキュリア)との戦いに出られておられて不在なのです」

 

「ならばこのまま闇人(シェイド)共に攻め込まれて全滅するのを待つだけか!」

 

「そうではないが、しかし・・・!」

 

「・・・」

 

 

ヴィクトルの言う通り、邪力(タナトス)によって作られた闇人(シェイド)にもその特性がある。

それ故に極光の守護神(ユリウス)の光の力によって浄化し消滅させていたのだが、

彼が不在でそれが使えない今、この基地を放棄して撤退するしかない。

しかしその場合、最終防衛ラインであるここが突破され、

プラネテューヌに甚大な被害が出ることになる。

最悪プラネテューヌが滅ぼされるかもしれない。

その場に居る者全員が狼狽え動揺している中、

バーンズは大剣を背負い入り口へと向かった。

 

 

「待て、バーンズ、どこへ行く!」

 

「どこって、決まってるだろ? あいつ等のとこだよ」

 

「何を言っているのだ貴様は! こちらの攻撃が効かない奴等とどう戦うと言うのだ!」

 

「そんなもんは百も承知だよ。 それでもいくらでもやりようはあるだろ」

 

「無茶だバーンズ、戻れ!」

 

「そ、そうですよ、バーンズさん! 司令の言う通り無茶ですよ!」

 

「あんたはオレたちの中で一番の腕利きだ。

 そんなあんたを死なせるわけにはいかねえ!」

 

 

ヴィクトルの言葉を皮切りに、一人また一人と傭兵達がバーンズの行く手を阻むように

扉の前に立ち塞がる。

 

 

「・・・別に死にに行くわけじゃねえさ。 守りに行くんだよ、俺は。

 そう約束したからな、エルクと」

 

「エルク? 誰の事だ、それは」

 

「お前には関係ねえよ。

 とにかくそういうことだから、そこ退いてくれ」

 

「バーンズ・・・」

 

 

付き合いの長い友人であるバーンズの事だ、その言葉に嘘はないだろう。

しかし基地の前方には大勢の闇人(シェイド)が押し寄せて来ているこの状況で、

ヴィクトルはどうしても彼の死を思い浮かべてしまう。

もちろんそれは彼の強さを疑っているのではなく、

これまでの無謀と思える程の無茶ばかりする行動故だった。

 

 

「全く、馬鹿ばかりだな。 これだからプラネテューヌ国民は・・・」

 

「お前まだそんなこと言って───」

 

「だから、私も同行してやる」

 

「・・・なんだと?」

 

「私も貴様と共に行くと行ったのだ!

 もちろん貴様のためではない、殺された部下達の仇を取るためだ!」

 

「そっか・・・。 まあそんなわけだからヴィクトル、後は任せたぜ」

 

 

そう皆に言い残し、バーンズと部隊長の男は基地を後にした。

 

 

「いいんですか、司令? あの人たちだけで行かせて」

 

「・・・私とて本当は行かせたくはない。 自ら死にに行くような所へなど」

 

「ではなぜ!」

 

「一度こうと決めた事は何があっても絶対に曲げず、私の言うことなど聞かない男だ。

 止めようとしても無駄だ。

 しかし何故だろうな、バーンズならきっとなんとかしてくれる。

 そう思ってしまうのだ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基地に迫り来る闇人(シェイド)の群れを迎え撃ち、

時間を稼ぐため基地を出て最終防衛ラインへ戻ったきたバーンズと部隊長の男の二人は

その数を見て思わず生唾を飲み込んだ。

数だけで言えば開戦時のモンスターのそれ程ではないが、

相手はこちらの攻撃を無効化する邪力(タナトス)と同じ特性を持つ天敵。

本来なら撤退するところだが、後がない今となってはそうはいかない。

 

 

「奴等もやる気みたいだな。 ってかお前、本当に俺と一緒に来てもよかったのか?

 てっきり自分だけ逃げるかと思ったんだがな」

 

「ふん、部下の仇である敵を目の前にして敵前逃亡などあり得るか!

 私は聡明なる蒼の女神コバルトハート様が治める、栄えあるルウィーの軍人だ!

 それに私とて死につもりは毛頭ない!」

 

「はは、そりゃあ頼もしい限りで。

 まあ頼りにしてるぜ。 えっと・・・?」

 

「ロイドだ。 私の名を覚えておけ、プラネテューヌ認可傭兵バーンズ」

 

「軍人ってのは頭に固いなぁ。

 たぶんお前とは一生気が合わないな」

 

「それはこちらの台詞だ。 プラネテューヌの女神ゴールドハートが認めたその力、

 見せてみろ」

 

「言われるまでもねえよ。 行くぜロイド!」

 

「私に命令するな! 貴様こそ足を引っ張るなよ!」

 

「「うおおおぉぉぉぉぉっ!!」」

 

 

二人は武器を構えて突撃する!

 

 

「おらあっ!」

 

 

バーンズは高く跳躍し、力任せに金色に光る大剣を叩き付けて地面を抉り、大きな穴を作った。

そして闇人(シェイド)達はそれに流れ込むように次々にその中へと入って行く。

 

 

「(なんだ? 奴の大剣が黄金に輝いてる・・・?)」

 

「こっちの攻撃が効かないなら、こうやるまでだ」

 

「おい、なんだその光は。 なぜ剣が光ってる?」

 

「それはだな────っておい、危ねえ!」

 

「っ!」

 

 

一体の闇人(シェイド)がロイドに襲い掛かる!

 

 

「私が魔法だけだと思うなっ! はあっ!」

 

 

腰に下げたサーベルを抜き、その奇襲をかわして反撃し、一太刀浴びせる。

 

 

「・・・まるでダメージが無い。 そして手応えも無い。

 確かに貴様達の言った通り、攻撃は効かんようだな」

 

「冷静に分析してる暇があるんなら、少しはこっちも手伝ってくれないか!

 魔法でもなんでも使って地面に穴空けたりできるだろ!」

 

「そんなことは分かっている! 貴様こそ早々に倒れて足を引っ張るなよ!」

 

「もちろん、だっ!」

 

 

バーンズは、大剣を振るって基地に近付けないように迫り来る闇人(シェイド)達を吹き飛ばす。

 

 

「なんと力任せな戦法か。 それではすぐに体力が底をつくぞ」

 

「生憎体力には自信があってな。 ご心配には及ばねえよ。

 俺にはこういう戦い方が性にあってるんでね!」

 

「そうか。 ならば私も私のやり方で戦わせてもらおうか」

 

 

ロイドは剣を縦に構えて、それに魔力を集中させる。

 

 

「はあっ!」

 

 

そしてそれを地面に立てると前方に稲妻が走り、範囲内の闇人(シェイド)を拘束する。

 

 

「へえ、やるじゃねえか。 それもルウィーの魔法か?」

 

「いや、これは私が即興で編み出した技だ。

 雷魔法の特性を利用して麻痺させたが、どうやらこういう間接的な攻撃は効くようだな」

 

「そりゃあすげえな! だが、勢い余って基地まで攻撃するなよ?」

 

「誰に物を言っている! 私がそんなことはヘマをするものか!」

 

 

防衛ラインを守るように前に立ち、闇人(シェイド)を退かせるバーンズとロイド。

迫ってきては後退させ迫ってきては後退させの繰り返しで、

相手の数が一行に減らないこの状況は正直絶望的である。

加えていくら強いといっても生身の人間、力も体力も無尽蔵ではない。

 

 

「おいバーンズ! いつまでこんな戦い方を続ける気だ!」

 

「なんだよ、もうへばったのか?」

 

「そうではない! このままでは我々が追い詰められるだけだぞ!」

 

「ああ、確かにその通りだな。 ・・・あいつ等が来るまではな」

 

「あいつ等? それは一体───」

 

「・・・へへっ、噂をすればなんとやら、だな」

 

「何? っ!」

 

 

大勢の男達の声と人影が、彼等の元へ所狭しとやって来た援軍は───

 

 

「なっ、彼等は基地にいたプラネテューヌの傭兵共ではないか!

 ここから撤退するために準備をしていたのではないのか」

 

 

そう、ロイドの言う通り基地を放棄し離脱する準備をしているはずの彼等だった。

本来なら早々に撤退すべきはずなのに、なぜそうせずこちらに加勢しに来たのだろうかと、

この時ロイドはそう思っていた。

 

 

「もちろん、我々も初めはそう思っていました。

 だが貴方達の戦っている姿を見て、我も我もと志願する者が増え、

 こうして皆で馳せ参じた次第です」

 

「・・・私が言うのもなんだが、全く命知らずな連中だ。

 勝ち目の無いに等しい戦いだというのに」

 

「ええ、そうですね。

 プラネテューヌ軍だけでなく傭兵達は皆彼に・・・バーンズに憧れているのです。

 彼のように女神様に認められるくらいに強くなりたいと。

 それに比べて彼等を止めることが出来なかった私は、司令失格ですね」

 

 

「・・・」

 

 

と、苦笑いしながらそう言うヴィクトル。

実際こうして彼等と共に駆け付けた自分も、バーンズに憧れている一人なのだと

ヴィクトルはそう思った。

 

 

「ひとつ、司令に聞きたいことがある。

 バーンズの持つ大剣が黄金に光っているあれは一体なんだ」

 

「あれは、我々プラネテューヌ国民が信仰している女神ゴールドハート様のお力です」

 

「人間の身でありながら、女神様のお力を行使できるのか!?」

 

「正確にはその一部、ですがね。

 認可傭兵とは女神様に選ばれたというだけではなく、

 その力の一部を使えるようになるのです。

 そして彼が使っている力はゴールドハート様の黄金の力。

 それによって常人を凌ぐ強大な力を振るえるのです」

 

「・・・つまり、あの男は女神様に選ばれその恩恵を受けているということか?」

 

「はい、その通りです」

 

「・・・」

 

「ヴィクトル!」

 

「バーンズ! やはり無事だったようだな」

 

「まあな。 お前達のこと、信じてたぜ!」

 

「全く、お前という奴は毎度毎度無茶ばかりしおって・・・。

 色々言いたいことは山ほどあるが、今はそれよりも・・・!」

 

「ああ、目の前の闇人(シェイド)共をなんとかするのが先だな!」

 

「そうは言うが、具体的にはどうするのだ?

 私とバーンズはともかく、この司令と他の傭兵達は闇人(シェイド)共と戦えるのか?」

 

「それなら心配ありませんよ、部隊長殿。

 そして彼等なら大丈夫です。 何故なら・・・」

 

「オレたちもバーンズさんとヴィクトルさんに続くぞー!」

 

「よし、ありったけの爆弾を持ってこい!

 こいつで奴等を吹っ飛ばしてやらあ!」

 

「「「「「おおーーっ!!」」」」」

 

 

傭兵達は、持ってきた爆弾を投擲して爆発を起こして闇人(シェイド)達を吹き飛ばしながら

大きな穴を空け、そこに奴等を追い込んで叩き落とした。

 

 

「バーンズと同じことを・・・!

 我々の戦闘をどこかで見ていたのか」

 

「たぶん全線基地のモニターで観てたんだろう。

 あいつ等腕は立つが、頭を使った戦い方をあまり知らねえからな。

 だからああやって時々見よう見マネで戦ってんだよ。

 あいつ等や俺もヴィクトルも、プラネテューヌを守るために必死なんだよ」

 

「それにしも目茶苦茶だな・・・」

 

「ロイド殿、貴方からすれば勝ち目の無い戦いにそれこそ、

 何の作戦も何も無しに挑むなど、まさに愚かしい行為かもしれません。

 ですが先程バーンズも言ったように、プラネテューヌを・・・我々が生まれ育った国を

 守るために戦っているのです。

 その為なら作戦を立てる頭よりも、体が動く。

 そんな人間の集まりなのです」

 

「まあ、我等が栄光なる黄金の女神ゴールドハート様も、似たようなお方だしな」

 

「お、おい、言葉が過ぎるぞ! バーンズ!」

 

「とにかく、自国を守るっていう気持ちに、

 それやプラネテューヌ国民もルウィー国民もないってことだ」

 

「・・・ふん、おかしな奴等だ。

 それに貴様に言われずともそのくらい理解している!

 私とて自国のルウィーをお守りしたい一心で軍に入った。

 我等がコバルトハート様は誰よりも、

 そして他国の女神様方よりもプラネテューヌを心配しておられた。

 今回の戦いに志願したのもコバルトハート様のお気持ちにお応えし、

 あのお方の分までプラネテューヌを守ると決めたからだ!」

 

「ロイド殿・・・」

 

「じゃあなんで、さっき全線基地であんな言い方したんだよ?

 素直にそう言えばよかったろうに」

 

「う、うるさい! わ、私とて色々あるのだ!」

 

「色々、ねえ・・・」

 

「ふふっ」

 

 

彼はまだ若い、感情に任せて心にもないことを言ってしまっただけなのかもしれない。

ヴィクトルは自分の若い頃を思い出し、当時の自分とロイドを重ねて自分もそうだったと

思い、自然と笑みがこぼれた。

自分達と比べて一回り若い年齢にして20代前半くらいの若者が、

魔法師団のひとつの隊を率いているのは凄いと素直にそう思っている。

それと同時に性格が正反対であるバーンズと衝突し、

余計にあんなこと言ってしまったんだと、きっとバーンズもそう思っているだろう。

だからこそ、バーンズも自分と同じくニヤついた笑みがこぼれいていた。

そしてそんな会話をしながら、彼等も戦いに再び参戦する。

 

 

「だから私も言い過ぎたと思っている。

 貴様・・・バーンズ殿の言う通り今までの非礼と暴言と侮辱を撤回し謝罪したい。

 そして司令のヴィクトル殿、今まで済まなかった・・・」

 

「・・・そのお気持ちだけで十分です、ロイド殿。

 しかし今は眼前の敵に集中しましょう。

 ここを突破されたら、女神様と極光の守護神様が御不在の今、

 プラネテューヌは文字通り滅ぼされてしまう」

 

「だな。 今の所他国にはモンスターや闇人(シェイド)の出現した情報はねえみたいだが、

 それもいつここみたいになるか分からねえ今、

 これ以上ラステイションとリーンボックスからの援軍は期待できそうにねえしな。 

 ルウィーもそんな感じだろ?」

 

「・・・ああ、今回ルウィーからの援軍として参戦したのは私の部隊だけだ。

 自国の守備を固めるという軍上層部反対を押しきってな。

 だが、そのせいで大切な部下を死なせてしまった。

 この戦いで殉ずる覚悟ができていたとしてもな・・・」

 

「そっか・・・。 でもお前のことだ、無理矢理連れてきたわけじゃねえんだろ?」

 

「当然だ」

 

「ならばそれは貴方のせいではない。

 彼等もまたルウィーを、そしてプラネテューヌを想う軍人だったのでしょう」

 

「・・・ああ、私もそう思いたい。 彼等は私の誇りだ」

 

「そうだな、俺もそう思うぜ。

 ならこの戦い、負けるわけにはいかねえな!」

 

「もちろんだ、そして生きて帰ろう! 

 我々三人だけでなく、この場にいる全ての同胞達とな!」

 

「ならばこれ以上の会話は不要だな。

 バーンズ、ヴィクトル殿、頼りにしているぞ!

 うおおぉぉぉっ!」

 

「頼りにしてるってよ。 基地にいた時とはえらい違いだな」

 

「彼には彼の心情というものがあったんだろう。

 目に前で部下を亡くし、自分の知らない未知の敵が迫っているというのなら尚更だ。

 あまり彼を責めてやるな、バーンズ」

 

「別に責めてるわけじゃねえよ。

 ただ、あいつは若いなって思っただけだよ、とっ!」

 

「そうか。 では我々も行くとするか!」

 

「おうっ! 奴等にプラネテューヌ魂ってやつを見せてやろうぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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先行したロイドを追うようにバーンズとヴィクトルも闇人(シェイド)の蠢く

戦場へと更に足を踏み入れ突撃した。

それから彼等は円陣を組むように隊列を組み、互いの背中を守るように戦い、

防衛ラインを越えられないように立ち回りながら戦い続け、それを死守した。

そうした戦闘を続けてどれくらいの時間が経っただろうか、

気が付けば日が昇って夜が明けて朝になっており、

その場にいた全員が疲弊し、限界などとうに越えてもはや気力だけで戦っていた。

もちろんそれはバーンズ、ヴィクトル、ロイドの三人も例外ではなかった。

 

 

「はあ、はあ・・・クソッタレ! キリがねえな・・・!」

 

「どうした、バーンズ。 息が・・・上がっているではないか・・・」

 

「そういうお前だって息が上がってるぜ、ロイド・・・」

 

「う、うるさい・・・。 体力バカの貴殿に会わせている私の身にもなってみろ」

 

「しかし、飲まず食わずで一日戦い続けんのは流石に堪えるな・・・。

 士官学校時代の24時間耐久戦闘を訓練を思い出すぜ」

 

「ああ、あの卒業試験か・・・。

 確かにあれは訓練というより、ただの地獄だったな」

 

「貴殿等、呑気に昔話をしている場合か・・・。

 この程度の修羅場を潜れんでどうする!」

 

「・・・そうだな。 飲まず食わずがどうした・・・。

 そんなもん国の存亡に比べたら屁でもねえな!」

 

「そしてそれは、我々だけの問題ではない。

 プラネテューヌの為、他国の為、そしてゲイムギョウ界の為に

 なんとしてもここを死守するぞっ!」

 

「「「「「おおーーっ!!」」」」」

 

 

バーンズとロイドだけでなく、その場にいる全員がヴィクトルの激によって士気を上げる。

そして日が昇り、太陽の眩しい光が照り付けるの同時に、

天空から更に眩しい一筋の神聖な光が現れた。

 

 

「なんだ、あの光は・・・?」

 

「おいヴィクトル、あれって・・・!」

 

「ああ間違いない、我等が極光の守護神───ユリウス様だ!」

 

「あれが極光の守護神・・・。 なんと美しい・・・!」

 

 

その光から現れたのは、白く美しい純白の衣と光の翼を持った、

極光の守護神のユリウスだった。

その神々しい姿に、ロイドの口からそう言葉がこぼれた。

 

 

「皆、なんて傷・・・。 ユリウス」

 

「ああ、分かっている」

 

 

共に舞い降りたゴールドハートことエリスが、ユリウスにそう言葉を掛けると

ユリウスは詠唱を唱えてそれが終わると、光の翼から七色に輝く光が放たれ、

それが皆を包み込むと一瞬にして傷が塞がり全快した。

 

 

「す、すげえ! 痛くないし体が軽いぞ!」

 

「それに、血も止まってる・・・!」

 

「・・・今のは回復魔法か?

 これだけの大人数を一度に、それも一瞬に回復するなど

 一体どれ程の力を持っているというのだ・・・!」

 

 

その場にいる全員を一瞬にして一度に回復させたユリウスの魔力に、

驚きを隠せずそういうロイド。

自国のルウィーでは、慈愛の白銀の女神シルバーハートが治めるラステイションと協力して

主に回復魔法の研究が進んでおり、自分はルウィーの魔法部隊の隊長を任されている程の

周囲の者達よりも高い魔力を持っている。

もちろんそんな自分にも回復魔法の心得を持っており、

ルウィーでも高度なそれを今まで何度も見てきた。

しかし今回のような個人の魔力だけでこれ程の回復魔法を見たことのないロイドにとって、

それはまさに衝撃的な光景だった。

それと同時にロイドはなぜ彼が極光の守護神と呼ばれるようになったのか理解した。

ホーリィクリスタルに選ばれ、何者よりも高い魔力と戦闘力を持っているだけではなく、

皆を守り導くその姿に圧倒的なまでのカリスマ性があるということを。

 

 

「光纏うその姿は、まさに極光の守護神の名に相応しいということか・・・」

 

「我々が戻るまでよく持ちこたえた。

 後は全て任せろ! 行くぞ、エリス!」

 

「ええ!」

 

 

白と黄金の軌跡が天を駆け抜け、女神と守護神の圧倒的な力により、

光の力の浄化によって闇人(シェイド)達は瞬く間の消滅し、そこには姿形もなかった。

 

 

「ゴールドハート様もそうだが、守護神様のお力も凄まじいな・・・。

 あの光があのお方の闇を払う浄化の光というやつか」

 

「ああ、ユリウス様の光で、今までああやって闇人(シェイド)を倒してたんだ」

 

「そのようだな。 貴殿は計算していたのか?

 あの方々がここへ来ることを」

 

「いえ、計算していた訳ではありませんよ、ロイド殿。

 ただバーンズは信頼していたのですよ。 あの方々が来るのを」

 

「計算や算段ではなく、ただ信頼・・・信じていたということか・・・。

 私もコバルトハート様を、そして貴殿等を信じず、

 独りよがりな行動をしなければ、部下達も死なずに済んだのかもな・・・」

 

「ロイド殿・・・」

 

「でもよ、結果的に闇人(シェイド)やモンスターを殲滅した今、

 その部下達の仇を討ったってことになるんじゃねえか?

 それにお前はこうして五体満足に生きてる。

 お前を信じて共に戦って死んで、仇を討ってくれたんなら浮かばれるだろう。

 俺が部下の立場だったらそう思うけどな。

 まあでも、死んだのは残念だけどな・・・」

 

「・・・そうだな、私もそう思いたい。 彼等がそう思っているのを・・・」

 

「・・・っ」

 

 

ロイドは被っている士官帽を顔に当ててうつ向き、

バーンズ達に背中を向けて部下の冥福を祈るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「勇敢な傭兵、及び兵士の皆様、私達の不在の中プラネテューヌを守ってくれ感謝します。

 本当にありがとう」

 

「私からも礼を言わせてもらおう。

 我等が不在の中よく戦ってくれた。

 そなた達のプラネテューヌに対する想いと勇敢な強き心に深く感謝する。

 そしてそれと同時にこの戦で散っていった者達の冥福を祈らせて欲しい。

 私の不甲斐ないばかりに、本当に済まなかった・・・!」

 

 

と、謝罪の言葉の後、ユリウスとゴールドハートの二人はバーンズ達に頭を深く下げた。

 

 

「お、おいおい、女神様と守護神様がオレたちに頭を下げたぞ!?」

 

「そりゃあ苦しい戦いだったが、二人のせいじゃないだろ」

 

「アタシ、女神様と守護神様が頭を下げたとこ見たのはじめて・・・」

 

 

ゲイムギョウ界において、女神とは人々から信仰を集める絶対的な存在。

そして極光の守護神はプラネテューヌだけでなく、

この世界を護り女神達と共に平和へと導く存在。

人間と比べるとまさに別次元の存在である二人が自分達に頭を下げるなど

本来ならあり得ない事が起きているので、その場にいる者全てがざわつくのも

無理もなかった。

 

 

「頭を上げてください、ゴールドハート様、守護神様。

 我々はただ自分達の住む国を守っただけです。

 あなた方を責める気などありませんよ」

 

「・・・ありがとう、そう言ってくれると助かるわ、バーンズ」

 

「そなたがバーンズか、エリスから聞いている。

 皆の奮闘ももちろんそうだが、今回の戦いにおいてそなたの活躍によるものが大きい。

 そなたが先頭に立ち皆を引っ張り、それによって勝利することが出来た。

 改めて礼を言う、ありがとう、バーンズ」

 

「女神様だけでなく、守護神様からも直々に感謝の言葉を頂くとはな」

 

「そして貴方がヴィクトルね?

 バーンズと旧知の仲ということは彼から聞いています。

 貴方にもお礼を言わせてください。 本当にありがとう」

 

「い、いえ、滅相もございません!

 私はただプラネテューヌを守る軍人として、国民として責務を全うしただけです!

 なのでどうか頭をお上げください、ゴールドハート様!」

 

「いいじゃねえかヴィクトル、ここは素直に感謝されとこうぜ。

 ですよね、ゴールドハート様?」

 

「バ、バーンズ! お前は女神様に対して馴れ馴れしいぞ!

 少しは礼儀を弁えてだな・・・!」

 

「全く貴殿等は・・・女神様の御前だぞ!」

 

 

女神と守護神を前にしても、いつも通りのバーンズとヴィクトルのやり取りに

呆れながらも叱咤するロイド。

 

 

「ふふ、構いません。

 貴方がルウィーから派遣されたという魔法部隊長のロイドさんですね?」

 

「はっ! 黄金の女神ゴールドハート様、極光の守護神様、

 貴方様方がこうしてご帰還なされたということは・・・」

 

「ああ、我々人類を長きに渡り猛威を振るっていた邪力(タナトス)を生み出していた全ての元凶である

 闇の女王(オプスキュリア)は倒れ、邪力(タナトス)も消え、我々を脅かすものはこの世から消え去った。

 これからは───我等人間の時代だ!」

 

「「「「「うおおおおーーーっ!!!」」」」」

 

 

バーンズ達の生まれる遥か昔から続く聖魔戦役は、

プラネテューヌ防衛戦の終わりと共に終戦した。

今回の戦いによって多くの命は失われ悲しみの声も上がり、

女神ゴールドハート、守護神のユリウス、そしてラステイションのシルバーハート、

ルウィーのコバルトハート、リーンボックスのエメラルドハートの三女神も駆け付け、

その場にいる全員と死者への冥福を祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、ゴールドハートとユリウスの帰還の凱旋パレード、

そして聖魔戦役終戦を祝う宴が催しされた。

それは三日間続き、邪力(タナトス)によって苦しめられてきた日々と比べるまでもなく

幸せな時間を過ごし、人々はそれぞれ自分の家族、友人、恋人と共にそれを噛み締めた。

もちろんそれはユリウスも例外ではなく、エリス、ソニア、ロッタ、ヒルダの四女神と

共にその時間を過ごした。

これからは人間の時代。

人類が邪力(タナトス)に脅かされることなく生を全う出来るこの時代を、

これから何代と続く女神の使命と人々をユリウスと共に守って行くと、

四女神と極光の守護神は心からそう誓うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その子がお前の言っていた少年か」

 

「ああ、ある小さな集落がモンスターに襲われているところを助けて保護したんだ」

 

「前に言っていた救助要請があった集落の事だな。

 では、その子の両親と他の方々は・・・」

 

「・・・」

 

 

ヴィクトルの問いに、バーンズはうつ向き無言で首を横に振る。

場所はプラネテューヌ孤児院の入り口前。

あの宴から一週間経った今でもプラネテューヌは活気に溢れ、

今でも肩を組んで騒いでいる若者もいた。

そんな中そこに孤児達の母親代わりのシスタークレアと

プラネテューヌ軍総司令のヴィクトルと認可傭兵のバーンズ、

そしてルウィー魔法部隊長のロイドの四人の姿があった。

 

 

「俺は守れなかった、この子の両親を。

 あの時もっと早く駆け付けていればエルクを孤児にすることなく、

 今頃は家族三人で終戦し平和になったこの世界で幸せに暮らしていたはずだと思うと、

 やるきれなくてな・・・」

 

「バーンズさん・・・」

 

「しかし、それでも貴殿はその少年を引き取って育てて行くと決めたのだろう?」

 

「ああ、アルトスに帰ればマーブルが、集落の奴等もいるからな。

 きっとエルクも元気になるはずだ」

 

 

そう言ってバーンズは、足元にいるエルクの頭を優しく撫でる。

 

 

「それで、もう行くのですか?

 確かにアルトスの集落は、ここからかなりの距離だと聞きましたが」

 

「それなら心配ない。

 いつか帰る日のために取っておいた片道用の転移魔石があるから、これを使って帰る。

 もう当分プラネテューヌに来ることもないだろうな」

 

「そう、ですか・・・」

 

「そんな悲しそうな目をしないでくれ、シスタークレア。

 なにも今生の別れってわけじゃないんだ。

 また用事でここに来ることもあるかもしれないしな」

 

「本当ですか・・・?」

 

「約束は出来ないが、その・・・たぶん」

 

「ははは、プラネテューヌの認可傭兵のお前も、クレアの前では形無しだな」

 

「うるせえよ、ヴィクトル。

 そういうお前こそしっかりやれよ」

 

「ああ、言われるまでもない。

 それはさておきバーンズ、私、いや俺はお前にはこの国に残ってこれからも共に

 戦い守って欲しかったよ」

 

「悪い、だが俺は・・・」

 

「分かっている。お前にはお前の行く道がある。 それがその子なんだろう?」

 

「ああ、両親を守れなかった罪悪感だけじゃねえ。

 それ以上に俺がそうするべきだと思ったからな」

 

「・・・そうだな、お前は昔から一度のこうだと決めた事は決して曲げない男だったな。

 ならせめて手紙くらいは寄越せ。

 それくらいなら出来きるだろう?」

 

「分かった分かった。 最初はドタバタして忙しくてそんな余裕はないと思うけどな」

 

「ありがとう、ならお前とこうして直接話をするのはこれで最後かもしれんな・・・」

 

 

バーンズとの別れに名残さを感じつつ、ヴィクトルは手を出す。

 

 

「バーンズ、今までお前と共に戦えたことを誇りに思う!」

 

「ヴィクトル・・・」

 

「もし何かあったらいつでも連絡してくれ。

 その時は全プラネテューヌ軍を率いてでもお前の元まで駆け付けるぞ!」

 

「はは、そりゃあ頼もしいな。

 でもお前は軍の総司令だ、俺のことなんかよりこの国を第一に考えろよ。

 でなきゃゴールドハート様とユリウス様に怒られるぜ?」

 

 

バーンズはヴィクトルの手を取って、握手を交わす。

 

 

 

「怒られるくらいなんてことないさ。 大切に育てろよ、その子を」

 

「おう、言われるまでもねえ。 エルクはもう俺の息子だからな」

 

「おじさん・・・?」

 

「エルク、今日から俺はお前の父親だ。

 集落に来ればそこには俺の家族が、集落の皆もいる。

 皆いい奴等だから、きっとお前も気に入るさ。

 もうお前を二度と悲しい思いにはさせない」

 

「・・・うん」

 

 

ヴィクトルとの握手の後、バーンズはエルクと目線を合わせるようにしゃがみ、

安心させるようにそう言った。

そんなバーンズの気持ちを理解したのか、エルクも静かに頷いた。

 

 

「・・・っ」

 

「ロイドさん、泣いているんですか?」

 

「な、何を仰るクレア殿! 軍人たる私が涙を流すなど・・・」

 

「たとえ軍人であっても、貴方も私や民間人と同じ一人の人間です。

 泣いても何もおかしいことなどありませんよ、ロイドさん」

 

「し、しかし・・・」

 

「なんだよ、以外に涙もろいんだな、ロイド」

 

「わ、悪いか」

 

「別に悪いだなんて思ってねえよ。

 ただそんだけ情に厚いんだなって思っただけだ。

 あの戦場であったときは根っからの軍人気質のめんどくせえ奴って思ってたけど、

 誤解してたみたいだ。 悪かった」

 

「わ、私も最初は貴殿の事を考えなしの大馬鹿者の傭兵と見下してた。

 だから今更貴殿が謝る必要はない。 むしろそれは私の方だ。

 状況が状況がだったはいえ、貴殿等プラネテューヌ軍とその国民達に心無いことを

 言ってしまった。 本当に申し訳なかった・・・!」

 

「ロイド殿・・・」

 

「別にいいさ、そんなに深く頭を下げなくても、もうすんだことだしな。

 それにあいつ等だって笑ってお前を許してくれただろ?」

 

「・・・ああ、バーンズの言っていた言葉の意味が分かった気がしたよ。

 もし部下達が生きていたら、きっと今頃は共に酒を飲んで友好な関係を

 築いていただろうな」

 

「俺はお前の部下がどんな奴等だったのか知らねえけど、

 そいつ等をよく知ってるお前が言うならそうなんだろうな。

 なあヴィクトル?」

 

「そうだな。 ロイド殿、貴方の勇敢な部下達は貴方が忘れない限り、

 彼等は永遠に貴方の心の中で生き続けることでしょう」

 

「ありがとう、二人共。 そう言ってくれると私も楽になれる」

 

「部下達の遺族にはもうあったのか?」

 

「ああ、終戦後直ぐに帰国してその方々に会ってきた。

 自分のせいで・・・自分の未熟さと傲りのせいで家族を死なせてしまったとな・・・」

 

「しかし、先程ヴィクトルさんも言ったように、

 貴方の部下の方々は危険を承知で共に戦場へ赴き亡くなってしまいました。

 ですが彼等の魂は貴方の心と共に在るはずですよ」

 

「・・・ありがとう、シスタークレア。

 私が訪れた遺族の方々も同じことを言っていたよ。

 だから私は彼等に恥じぬよう軍人としての人生を全うするつもりだ。

 それが・・・自らを囮にしてでも私を生かしてくれた部下達の想いに

 報いることが出来ると信じて、な」

 

 

ロイドは士官帽を脱いで空を見上げる。

その瞳には強い意志が宿っていた。

 

 

「それと、バーンズ」

 

「ん? なんだ?」

 

「部下達だけではなく、あの戦場で貴殿に生かされたのも事実。

 つまり貴殿には借りがあるということだ」

 

「えっと、つまり・・・?」

 

「鈍い男だな、何かあったらヴィクトル殿と同じく力を貸してやるということだ。

 これが私の連絡先だ」

 

「お、おう。 ありがとな、ロイド。 その時は遠慮なく頼らせてもらうぜ」

 

「ふん、それまでせいぜい死なないことだ。 その子のためにもな」

 

「おうよ。 何があってもエルクと家族は守るさ」

 

「出来るさ、お前なら」

 

「ええ、必ず!」

 

「ありがとう、皆。 それじゃあもう行くわ」

 

「元気でな、バーンズ。 手紙、忘れるなよ?」

 

「今まで本当にありがとうございました。

 貴方達に女神の加護と祝福があらんことを」

 

「これからは平和な時代だ。

 もうその子に二度と血生臭いものを見せるなよ」

 

 

皆からそれぞれ別れの言葉を貰い、バーンズは懐から転移魔石を取り出し

それを握って念じると、足元に現れた魔方陣の光がバーンズとエルクを包み込み、

天を駆ける光となって飛んで行った。

 

 

「・・・行ってしまったな」

 

「はい、自分の守るべきものを見つけたのか、とても幸せそうでしたね、バーンズさん」

 

「そうですな。 私もいつかあんな顔をしながら生けていけるだろうか・・・」

 

「できますよ、ロイドさんなら。

 貴方にはその魂に宿る仲間いるじゃないですか」

 

「ロイド殿、昨日の凱旋で四女神様方が友好同盟を結んだのは知っていますね?

 バーンズと同じく、何かあればいつでも声を掛けてください。

 その時は全身全霊を以てお力になりますよ」

 

「ありがとう、ヴィクトル殿。

 ならばその時はそちらも遠慮なく声を掛けられよ。 必ず力になろう」

 

「ふふ、それは心強いですな」

 

「ああ、お互いな」

 

 

ヴィクトルとロイドの二人はバーンズと同様に有事の際には互いに助け合うことを誓い、

握手を交わした。

 

 

「ふふ、男性の友情というのはいいものですね。

 なんだか少し羨ましいです」

 

 

「そうでしょうか? ではクレアさんも」

 

「ええ、喜んで」

 

 

そして、クレアも二人と握手を交わす。

 

 

「さて、そろそろ私も戻るとしよう。

 平和な時代になって、我々軍人にはやるべき事が山積みですからな」

 

「そうですね。 ではルウィーまで送りましょう」

 

「ありがとう、お言葉に甘えるとしよう」

 

「では、こちらへ。 それではクレアさん、我々はこれで」

 

「はい。 お気を付けて」

 

 

ヴィクトルはロイドをルウィーへ送るため、その場を後にした。

 

 

「私達が生まれる遥か昔から続いていた聖魔戦役はようやく終わり、

 これからは人々が平和を築いて行く時代。

 バーンズさん、貴方は言っていましたよね?

 女神様に認められる程の強い認可傭兵になって、

 この国を守って戦いを終わらせると。

 あれからもう20年・・・時が経つのは本当に早いです。

 ・・・ですが結局、私の胸の中にあるこの気持ちを貴方に伝えてられないままでした。

 どうかエルク君とマーブルちゃんと共にお幸せに・・・」

 

 

一人そこに残ったクレアは、入り口に建てられたゴールドハートを模した女神像に

祈りを捧げたのであった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              ━ アルトスの集落 ━

 

 

プラネテューヌから転移魔石を使って、故郷のアルトスの集落に戻ったバーンズは、

エルクを連れて家へと向かった。

アルトスの集落、そこは川や森、山といった自然に溢れており、

鳥の囀ずりが響くモンスターも寄り付かない争いとは無縁の平和な集落である。

バーンズの家へと向かう道中太陽が眩しく照り付ける快晴の下に広がる集落を見たエルク

にとって、それはまるで天国のようだった。

大袈裟かもしれないが、元々自分が住んでいた村も平和だったが、

それでもモンスターの影に怯えながらの生活で、凶悪なその群れに襲われ、

一夜にして村と住民はもちろん両親を目の前で殺されたという地獄を見たエルクにとって

そう見えた。

 

 

「ここが、おじさんのすんでる集落・・・?」

 

「ああ、そうだ。

 そしてエルク、今日からお前は俺の息子で、俺はお前の親父だ。

 俺だけじゃない、さっきも言ったが俺には娘がいるんだ。

 ちょうどお前くらいの娘がな。

 マーブルはいい子だ、きっとお前とも仲良くなれるはずだ」

 

「・・・」

 

 

自分の知らない他人の養子、つまり義理の息子になる。

まだ小さな子供であるエルクに理解できるわけもない。

ただ自分を助けてくれたバーンズが嘘を言っていないということは分かった。

そしてそれから色んな住民と会い、そこで話をしていると、

ここは本当に長閑な場所なんだなと改めてエルクはそう思った。

 

 

「ただいまー!」

 

「あっ、お父さん! おかえりなさい!」

 

「おっとっと! いい子にしてたか、マーブル!」

 

「えへへ、うんっ!」

 

 

扉を開いて久し振りに我が家へ入ると、

青い髪のロングに琥珀色の瞳の少女が勢いよくバーンズに抱き着いて出迎えた。

 

 

「実は今日、お前にとってもいいことがあるんだ」

 

「いいこと? なにそれ?」

 

「それはな───入っておいで」

 

 

バーンズにそう言われ、エルクは恐る恐る家へ入った。

 

 

「お父さん、その子だれ?」

 

「この子はエルク、今日から俺達の家族になる子だ」

 

「ど、どういうことなの?」

 

「ああ、それはな───」

 

 

バーンズはエルクと出会ってからこれまでの出来事をマーブルに説明した。

 

 

「そんなことがあったなんて・・・。

 その子が・・・エルクがかわいそうだよ・・・!」

 

「ああ。 それに俺はこの子は親を助けられなかった」

 

「お父さん・・・」

 

「改めて言うがマーブル、俺はこの子を養子にしたい。 どうだろうか?」

 

「・・・そんなの決まってるよ。 わたしは大賛成だよ、お父さん!

 まだその子のことよく知らないけど、仲良くなれると思うんだ!」

 

 

マーブルはエルクに近寄る。

 

 

「はじめまして、わたしはマーブル! お父さんの一人娘だよ!

 つらい思いをしたみたいだけど、アルトスに住んでる人たちはみんないい人ばかりだから

 大丈夫だよ!」

 

 

溢れんばかりの眩しい笑顔でそう言うマーブルにたじろいながらも、

マーブルの温かい言葉に感謝する。

 

 

「それに、ここにはモンスターし、わたしもお父さんもついてるから。

 つらかったね、怖かったね・・・!」

 

「・・・う、うう・・・うわあぁぁぁぁん!」

 

 

そんなマーブルの言葉に、エルクは泣き崩れた。

まるで自分の不安と恐怖を払拭し、安心させてくれたように。

そしてバーンズも、そんな二人を優しく抱き寄せるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「・・・」」」」」

 

ユリウス

「以上が、エルクがアルトスの集落で暮らすようになるまでの記憶だ。

 そしてこの日を境に、エルクは二人とも本当の家族のように幸せな日々を送った」

 

 

と、ユリウスは皆にそう言う。

しかしこれまでのエルクの記憶を観て、自分達が想像していた以上の出来事に言葉を失う。

彼の精神世界に来る前、ユリウスから覚悟するよう言われたので、

悲しいことがあったのではと思っていたがまさかこれ程とは、と。

 

 

アイエフ

「・・・何て言うか、壮絶過ぎるわね・・・」

 

シーシャ

「ああ、まさかエルク君にこんな過去があったなんてね・・・」

 

イーシャ

「あんな幼少の頃からモンスターに襲われて住んでいた村は滅ぼされ、

 そして両親を殺された。 残酷すぎます・・・!」

 

エスーシャ

「そして、バーンズと言う傭兵の男に引き取られ、

 マーブルと言う少女の三人で暮らすようになった、か・・・」

 

ブラン

「歳で言うならロムとラムと変わらないわね。

 それにこの時代から邪力(タナトス)闇人(シェイド)は存在していたのね」

 

ネプテューヌ

「そういえば、エルくんはアルトスの集落で起こった出来事を

 忘れたって言ってたけど・・・」

 

ノワール

「その集落で何かが起きたんでしょう。 それを忘れるくらいの何かが・・・」

 

ユリウス

「・・・それはこの先の階層で分かる。

 ただしこれより先は今までとは比べ物にならないほどの残酷な記憶が待っている。

 そなた達にとってもかなりショックを受けることになるが・・・」

 

ネプテューヌ

「それでもわたしたちは進むよ。 ねえみんな」

 

ベール

「ええ、どんな辛い過去や残酷な真実が待ち構えていようと、

 それら全てを受け入れると決めましたから」

 

ロティ

「それに、これから先に何があっても、師匠を見捨てないし師匠の変わりないしね!」

 

 

ネプテューヌ、ノワール、ロティの三人の言葉に、皆は強く頷く。

 

 

ユリウス

「・・・そうか、そうだったな。 それでは行くとしよう。

 次で最終層だ」

 

 

皆のエルクに対する強い意思と想いを改めて感じたユリウスは、

ネプテューヌ達を次の階層へと導く。

全てはエルクを目覚めさせるために・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ついにスマブラSPにキンハのソラが参戦しましたね!
今までそう言う強い希望はあったけど、大人の事情で参戦は無理だと言われていましたが、
今思えばあれはソラ参戦の伏線だったのかもしれませんね。
そして使ってみて思った。
これ使い方次第じゃ疑似ベヨじゃね?w おじさん詰んだんじゃね?w
んでもって遅くなってすみませんでした・・・。



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