それではどうぞ。
満月の光だけが照らす夜の公園。
人気もなく、木々の騒めきだけしか聞こえないこの場所で、招かれざる客が一人……。
『フーッ、フーッ!フーッ!!』
荒い息と共に、獣を彷彿させるような前屈みの姿勢で周囲を忙しなく見渡す。
やがて月明りがその姿を照らす。
人型になったカマキリ……と例えた方が正しいだろうか?
ライトグリーンの生物的な姿と頭部にある巨大な複眼は正しくカマキリだが、全身にはナイフのような鋭利な刃物が生えており、左右には巨大になったナイフが両腕を一体化している。
怪人の名は『エヴォルガ』……。
800年前、かつて敵国の王から祖国を守るために製造された動物とスキルの姿を併せ持った怪人。
この個体は現代の人間にエヴォルガの力を捻じ込ませることで素体になった人間のマイナス感情を読み取り、強引に進化・誕生させた一体なのだ。
この手法で生まれたエヴォルガは、最初こそ素体になった人間の人格だが……。
『キ、キキキ!斬ルッ!切ルッ!キルルルルルウウウウウウウウッッ!!!』
怪人としての人格へと変貌してしまうのだ。
手当たり次第に近くの置物や木々を両腕のナイフで切り裂き、破壊するエヴォルガは『何かを切りたい』という歪んだマイナス感情だけで動いている。
理性もなく、ただただ本能に任せて暴れ回るカマキリのエヴォルガは物を切る度に悦に浸っている。
やがて一しきり暴れた後、住宅街のある方向に目を向けて不気味な笑い声と荒い息を漏らす。
一歩、また一歩と足を進めようとした時だった。
「何だよ。少しは成長してるかと思ったら全然じゃねぇか」
『キリッ?』
そこに現れたのはフードを被った人物。
声からして青年だろうか?やや粗い口調ながらも落ち着いた声音で、彼が『誕生させた個体』と対峙する。
しかし、目の前のエヴォルガにとっては関係ない。
『切ルッ!キキキキッ、斬ルルウウウウウッ!!』
切りたいから切る……自らを生み出した人物への忠誠よりも本能がそれを上回っているのだ。
敵対行動を取るエヴォルガに対し、深いため息を吐いた彼は右手首に巻き付けた赤いブレスレットを軽くかざす。
すると、赤い光と共に彼の右手に現れたのは一振りの剣……。
鍔は銀の兜を被った紺色の恐竜のような独特な形状をしており、赤黒い刀身からは禍々しいオーラがほんの少しだけ漏れている。
『変身魔剣ディノスレイブ』を構える彼に、怪人『
それに気にすることなく青年は懐からサイコロ程度の大きさを持った紺色の箱を取り出し、そこにあるスイッチを押し込んだ。
【MEGARODON×KNIGHT!】
太古の巨大サメと騎士の力を宿した箱『モンスボックス』を起動し、鍔の後部に備わっている黒いレバーを手動で卸して装填するためのスロットを露出させる。
そこに『メガロナイトボックス』を装填した。
【GABU…!】
掠れたような、低い電子音声が響くと同時に待機音声が鳴り響く。
やがて痺れを切らしたKマンティスが叫び声を共に走り出し、その凶刃が青年の元に届きそうになった途端…。
「
『ッ!?ギイイイイイイイイイイッッ!!!』
短い掛け声と共にレバーを上げて竜の口を閉じた。
同時に爆風にも等しいエネルギーが青年を包み、その余波でKマンティスが吹き飛ばされる。
【SCANNING…! B・B・B・BITE……!!】
起き上がり、土煙の向こう側から『剣士』が姿を見せる……。
深海を思わせるような紺色の西洋甲冑に身を包んだ姿。しかし、身体の各部分には肉体と鎧を無理やり繋ぎ合わせるように血管を思わせるようなチューブのような太いコードが露出している。
頭部はメガロドンを模した兜になっており、その隙間から充血したような複眼が獲物を求めるよう不気味に光っている。
ヒーローというよりは怪物、それこそKマンティスのような怪人と呼ぶに相応しい歪な鎧…そんな害ある装備を纏った剣士は名乗りを上げる。
『俺の名は「魔剣士ダインファング」……精々足掻いて見せろよ?』
『ギイイイイイッ!切ルッ、斬ルッ!キルウウウウウウウウウウッッ!!!』
本能でダインファングの挑発を理解したKマンティスは接近し鋭い刀身で相手を切り刻もうとする。
しかし、その一撃は届くことはなかった。
『……こんなものか?』
ディノスレイブでそれを防いだ彼は、呆れた様子で振り上げてから相手を大きく仰け反らせる。
そしてがら空きになった胴体に鋭い斬撃を浴びせた。
『キリイイイイイイイイイイイッッ!!?』
『…たくっ。戦闘力はねぇし、知性も獣以下……とんだ外れを引いちまったな』
自身の不始末とはいえ、改めて自分の作り出したエヴォルガの弱さに嘆きながらもダインファングは追撃の手を止めない。
さながら、血の味を覚えた獰猛なサメの如く魔剣を振って相手を斬り。時には拳と蹴りを織り交ぜながら確実にダメージを蓄積させる。
蹴り飛ばして、無理やり距離を開けたダインファングは鍔のレバーを操作して恐竜の頭部を咀嚼させる。
【GABURI…! DINO ARMER……!!】
電子音声と共に右肩に肉食恐竜の頭部を思わせる装甲が出現すると、そのまま倒れるように『地面へと潜り込んだ』……。
『キ、キリッ?』
『はぁっ!!』
動揺するKマンティスだが、自身にぶつけられている殺気に慌てて周囲を見渡し始めたのと同時に地面から出てきたダインファングの斬撃によって再び身体から火花が散る。
しかし、彼の攻撃はまだ終わらない。
【GABUGABURI…! WEATHER SLASH……!!】
今度は刀身に暴風と雨を纏わせ、圧縮させた高圧の渦巻きを斬撃の衝撃波として飛ばす。
『ギイイイイイイイイイイイイイイッッ!!!』
渦巻きに攫われ、身体を切り裂かれて地面へと叩きつけられたKマンティスを見下ろしながら、ダインファングは冷たい声で宣言する。
『止めだ』
【GABUGABUGABURI…!】
レバー操作で竜の頭部を三回咀嚼させ、全てのエネルギーを刀身に集める。
逃走しようとKマンティスが動かない身体で起き上がった時には、既に手遅れだった。
【FULL SCANNING…! ANCIENT END……!!】
『……ふんっ!!』
『キリリイイイイイイイイイイイイイイイイイッッ!!!』
ディノスレイブから放たれた禍々しい必殺の斬撃『エンシェントエンド』の直撃を受けたKマンティス・エヴォルガは爆散、そこから素体となった人間が気絶した状態で地面へと倒れる。
『……』
ダインファングはゆっくりと近づき、首元に刀身を突き立てる。
こんな奴でエヴォルガを作ったのは紛れもなく自分。なら、こいつを一人消すのは当然のこと……そんな考えが頭をよぎる。
しかし……。
『……ちっ』
しばらく逡巡すると彼は変身を解除し、そしてディノスレイブのエネルギーで作った紐で手足を拘束してその場を立ち去った。
魔剣士ダインファング……彼の目的は仮面ライダーエクトゥスでさえも、エヴォルガでさえも知らない。
魔剣士ダインファング。モチーフは言わずもがなリュウソウジャーに登場する彷徨う鎧『ガイソーグ』です。
世界観:
『恐竜(古代生物)×動物』の力を持った仮面ライダーエクトゥスと、世界を救った五人の魔法少女『グリム・テラー』が戦っている。
ダインファングもこの世界で活躍する疑似ライダーである。
魔法少女:
世界を混沌へと陥れようとした悪意の童話『カオス・テラー』魔の手から守るべく、戦った魔法少女たち。魔法のステッキ『グリムバトン』を手に取ることで心に残った思い出の童話を己の戦闘衣装や武器として具現化することが出来る。
彼女たちは「グリム・テラー」と呼んでいたが、後に魔法少女と自らを呼ぶようになる。
そんな彼女たちも今では高校生……魔法少、女?
エヴォルガ:
平和を取り戻した世界に突如出現した怪人で目星をつけた人間に力の根源であるエヴォルボックスを埋め込むことで同胞たちを誕生させる。動植物を基本モチーフとするが、素体になった人間のスキルを能力とする。エヴォルガになった人間は好戦的な気質を押し付けられ、やがて怪人の人格へと変貌してしまう。
800年前、巨大な力を持った敵国の王の侵攻を止めるべく改造手術されたのが現代でエヴォルガを生み出している幹部たちである。
ダインファング ICV??? / 小西克幸
何者かが『メガロドンナイトボックス』にセットした『変身魔剣ダイノスレイブ』で変身した姿。
深海を思わせるような紺色の西洋甲冑に身を包んでおり、各部には鎧を無理やり繋ぎ合わせるような血管のような赤いコードが露出している。
ディノスレイブによる荒々しい獣を彷彿させる剣術と体術で相手を圧倒する。
エクトゥスや魔法少女たち戦い、時にエヴォルガを倒すのに協力するなどその行動は謎に包まれている。
必殺技はメガロドンの頭部を模したエネルギーの斬撃を飛ばす『エンシェントエンド』
〇メガロドンナイトボックス……幹部の一人だったK(ナイト)メガロドン・エヴォルガの力を宿したモンスボックス。
〇変身魔剣ディノスレイブ……エクトゥスドライバーよりも初期に開発された800年前の呪われた剣。鍔は恐竜の頭部を模しており、口を開けることでボックスをセットするスロットが出現する。
闘争心を絶やさぬよう変身者の怒りを増幅させる機能があり、数多の所有者が非業の死を遂げた。