オリジナルライダー設定集   作:名もなきA・弐

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 予告もなく投稿です。
 ※名前を変更しました。


仮面ライダーデモウス

罪とは罰せられるべきものだ。

だが、罪とは時に人間が生きる上で必要なものも秘められている。

 

もし色欲がなければ、互いを愛し子孫を残すことも出来ず。

強欲でなければ、何も手に入れることが出来ず。

時に怠惰でなければ、身体を壊し。

時に暴食でなければ、生きていけない。

嫉妬し憧れなければ、向上心を生まず。

傲慢でなければ、自らの可能性に気づくことが出来ず。

憤怒しなければ、己や隣人のために戦うことも出来ない。

 

最も深き罪であり、これを戒めなければ人間は虚飾と憂鬱に塗れたただの畜生へと落ちてしまう。

これは、その内の一つを埋め込まれ、罪と戦う戦士の物語……。

 

 

 

 

 

 

何処かの街の信号機の上で、そこに一人の人物が座っていた。

これは比喩でも何でもなく、本来座るべき場所ではないそこに人物が腰を掛けて眼前に広がる景色を眺め楽しんでいる。

付近には薄いピンク色の紙袋が置いてあり、中身を取り出してシュガーをまぶしてあるドーナツを口元に運んで食べる。

 

「んっ♪美味しっ♪」

 

口の中に広がる甘味に、満面の笑みを零す。

その恰好は些か奇妙だった。

ミニスカート状になっているピンク色の着物に白いフリルとハイソックスを履いてあるその衣装はコスプレみたいだが、柔和な可愛らしい顔立ちと華奢な体躯とマッチしており、これまたお洒落なブラウンのブーツからまるで和洋折衷を思わせる。

髪型の艶やかな黒い髪を花の髪飾りで二つに結んでおり、小さいツインテールが風に揺られて少しだけ靡く。

しかし騙されてはいけない。

女子らしい恰好だが、()()()()()()()()()()()()()()()()

しかし、その笑みと容姿は男女問わず見る者全てを魅了し、場合によっては瞬く間に虜にしてしまうだろう。

それぐらいの危うさがこの少年にはある。

プレーンシュガーを食べ終え、紙袋にあるイチゴミルクがたっぷりかかったドーナツにかぶりつくと、スマホに入れてある可愛らしいアニメキャラクターのイラストを見て更に口元が笑顔になる。

この女装少年……可愛い女の子が好きなのだが、如何せん初対面にセクハラをしでかすという限りなくアウトな蛮行をしでかすため、時々アニメの女性キャラ(しかもセクシーシーン)を見て心を癒しているのだ。

まぁ彼の性癖は置いといて……ドーナツを食べてマイペースな一日を過ごしていてが、ふと自分の太ももをつつく存在に気付く。

視界を移せば、そこにはデフォルメされたサソリ…のようなガジェットがあり何かを伝えるように鋏と尾を動かしている。

 

「んっ、そっか。ありがとスコルピオ」

 

ドーナツを食べ終えて目を細めて笑った少年はガジェットを優しく撫で、瞬時にその表情を変える。

そして白い手袋を嵌めるのと同時にガジェットは淡い光と共にサソリの意匠が残ったバイクへと変形すると信号機から飛び降りた少年がそこに着地する。

 

「……よしっ!」

 

軽く気合を入れた少年は、ヘルメットを着用するとガジェットが提示した場所へとバイクを最大速度で走らせた。

 

 

 

 

 

誰も使われなくなった廃工場……そこに一体の異形が生まれようとしていた。

 

【BLOODY LOADING……】

 

か細く低い音声が鳴り響いた瞬間、鮮血のような赤い結晶が巨大化しやがて音を立てて砕ける。

そこに現れたのは獣の顔を思わせるを持ったクモの怪人……長い筋足は鋭く尖り、ドクロのような頭部を持ちシルバーのカラーリングが特徴の異形だ。

まるで鉄で人型のクモを作ったような怪人の名は『ペイン』……かつて天使と悪魔、吸血鬼伝説の原形になったとされる歪な存在。

未知のエネルギー『ブラッドエナジー』が結晶化し念が込められた無機物を吸収することで誕生する存在だ。

 

『俺の使命、俺が生まれた意味、そうだっ。俺の使命はこの工場を潰した奴らを痛めつけることっ!』

 

自らの誕生の理由と使命で自我を得た怪人『スパイダー・ペイン』は衝動のままに廃工場から出ようとした時だった。

足音が、聞こえる。

大きくはないが、しっかりと響き渡る足音に動きを止めてその方向を睨む。

そこにいたのは一人の少年……先ほどのピンクの着物を着た少年だ。

 

『……何だ貴様はっ?』

 

あまりにも場違いな存在に、スパイダーが苛立たし気に睨むのも気にせず少年は懐から『あるもの』を取り出した。

それはルーペ型のサイドレバーにメカニカルなデザインが特徴の銀のドライバーで中央にはクリアカバーがある独特なデザインのバックルだ。

それを軽く腰に当てると、ピンク色のベルトが伸びて完全に固定される。

 

『……?』

 

何をしているのか理解出来ていないスパイダーに気にすることなく、少年は次にアイテムを取り出した。

それはマゼンタの宝石のようなアイテム……動物の横顔が刻まれている『シンスタル』のスイッチを押した。

 

【LUST!】

 

起動したシンスタルをドライバーにセットし、中央のスロットにセットする。

エレキギターの軽快な待機音声が鳴り響く中で少年は虫眼鏡型のグリップ『ルーペグリップ』を握り、下に降ろしながら叫んだ。

 

「変身!」

【POSSESSION LINK!】

 

グリップを降ろした瞬間、中央にセットされたシンスタルがマゼンタ煌めき始める。

そして、電子音声と共にドライバーから『あるもの』が召喚された。

それは垂れた耳を持ったマゼンタカラーの巨大なエフェクト……兎だ。

 

『なっ、兎だって……!?』

 

驚いたのは誰でもない、スパイダーだ。

一般的に『兎』という生物は多くの人が知っているだろう……寂しいと死んでしまう動物だったり飛び跳ねる可愛い動物だったりと色々想像するだろうが、もう一つの顔がある。

それは『ある大罪』を象徴する動物であること。

とりわけ兎とは大罪の一つである『色欲』の象徴として選ばれているのだ。

気にすることなく、ブラッドエナジーで構成されたエフェクト『ブラッドモデル』は帯のような形状へと変化して縛り付けるように少年の身体へと注入していく。

まるで己の罪を罰するように身を捧げたその身体は明るい色調のマゼンタカラーのアンダースーツへと姿を変える。

 

【情熱のJUMPPING FIGHTER! LUST RABBIT!!】

【WAKE UP SIN!!】

 

そしてそのまま、兎型のブラッドモデルが完全に身体を覆い隠した瞬間、電子音声が鳴り響いた。

ブラッドモデルが弾けると、そこには鮮やかな紫色のアーマーとマスクを装着した戦士が立っており、頭部にある赤い複眼が輝く。

『色欲の罪』の象徴とされたその生物の力を宿した戦士『仮面ライダーデモウス ラストラビット』!

 

「星心大輪拳月の型門弟『操真夕姫(そうまゆうひ)』……参ります!」

 

拳を握り、スパイダーに狙いを定めたデモウスは踏み込み、瞬時に相手との距離を詰めると勢いを殺すことなく強烈な一撃を叩き込む。

 

『なっ、げぼっ!?』

 

鳩尾を殴られたスパイダーが呻くも、その隙を逃すことなく追撃の蹴りが更なるダメージを与える。

星心大輪拳には二つの型が存在する。

一つは強さを研磨すべく編み出された中国武術とジークンドーを元に手数で相手を圧倒する『太陽の型』と、夜盗や外敵との戦いを前提に古武術をベースに編み出された護身術『月の型』だ。

デモウスは月の型を学び、こうして歪な怪人から人々を守るべく鍛え上げた拳を振るっている。

縮地による移動をベースに確実な連撃で相手を追い詰めていく。

だが、スパイダーも雑魚ではない。

最初こそ驚いたが、次第に攻撃パターンを把握して来たのか攻撃を防ぎ回避する頻度が徐々にだが増えている。

やがて動きを見切り始めたスパイダーが反撃に転じた。

腕を振るい、デモウスの身体に一撃を与えようとするが当の本人に焦りの色は見えない。

それもそのはず、月の型は何も拳だけの武術ではないからだ。

 

【COMEN! ASMODEUS DAGGER!】

 

ドライバーの左側にあるボタンを押し込み、武器を召喚するための電子音声と共に両手には短剣『アスモデウスダガー』が握られる。

そして、二つの刃による剣舞がスパイダーの身体に火花を散らした。

 

『ぐああああああああああっ!!』

 

星心大輪拳は時代と共に進化を遂げている。

剣が生まれ槍が生まれ、弓矢が生まれ銃が生まれ、多くの武器が産み落とされると同時にそれらと対峙し、時には手に取って研磨し続けた。それは月の型も例外ではない。

二刀流から繰り出される無数の斬撃によって煙を上げて後退するスパイダーの胸倉を突如掴み、距離を詰めたデモウスが問い詰める。

 

「……知っているなら教えてほしい」

『な、何を言って…』

「俺に『罪』を埋め込んだのは誰だっ!お前たちの言う『天使』は、何処にいるっ!!」

 

その問いは、彼が仮面ライダーとして戦うための理由の一つ。

あの日、十二枚の白い翼を生やした人物に「色欲」という罪を埋め込まれてから、彼の生活は一変した。

発作のように起こる愛と情欲が火照りを引き起こし、非生産的な快楽への欲求が思考を蕩かし、日常生活すらもままならない。

身体の成長にも変化があった……サッカーや護身術をやっていたにも関わらず、十三になってから成長が止まったように華奢なままだし、元々中性的だった顔立ち少女のように可愛らしく、声も高いまま成長した。

性転換したわけではない、身体はきちんと男性のままだ。ただ、身体が『そうあるべきだ』と認識するように成長を遂げたのだ。

だからこそ、この終わることのない衝動を抑え込み、少しでも欲求を満たすべく『女装』をし可愛い女の子がいたら率先して声をかけるようになった。

……まぁ、前者はともかく後者に至っては割と楽しんでいるのは完全な余談だが。

閑話休題、デモウスの言葉に先ほどからぼこぼこにされていたスパイダーが身体を震わせる。

そして。

 

『そんなの、俺が知るわけないだろうがよおおおおおおおおおっっ!!!』

 

逆上したように叫ぶと身体から糸を放出しそれを両腕へと巻き付けていく。

その糸は鋼のように硬質化させ、さながらメリケンサックやガントレットのように装備するとデモウス目掛けて殴りつけた。

 

「うわっ!?」

 

スパイダーのブラッドエナジーを込めた一撃は軽いデモウスを吹き飛ばし工場の壁へと叩きつける。

それを見逃すことなく、一瞬で距離を詰めると二撃目を叩き込もうと拳を振り上げる。

 

「くっ!」

 

辛うじてそれを交差させた両腕で防ぐも、体勢や力の関係から徐々に追い詰められていく。

火事場のバカ力とでも言うべきだろうか。怒りで全身を震わせるスパイダーの力は先ほどよりも上がっており、このままデモウスを押し潰さんばかりの勢いだ。

 

「面倒だなぁ……でも、それならっ」

 

防御を解き、スパイダーの攻撃に首を傾けて回避するとその腕を捉えて動きを一時的に封じる。

そして、今度は青いシンスタルを取り出し起動した。

 

【SLOWTH!】

 

器用にグリップを戻し、猛牛の横顔が刻まれた青いシンスタルをラストシンスタルと入れ替えるようにセットする。

その瞬間。

 

「っ!!」

『ぐべっ!?』

 

不意打ち気味に放たれた頭突きがスパイダーの顔面に命中、怯んだその鳩尾に蹴って無理やり距離を開けるとゆっくりと首を傾けて音を鳴らす。

 

「……はぁー……」

【POSSESSION LINK!】

 

先ほどとは違う気怠い様子で雑にルーペグリップを握り、音声を響かせた。

青く染まったドライバーから現れたのは雄々しい角を生やした巨大な牛型の青いブラッドモデル……しかしその体躯とは裏腹にその威容を誇ることもせずすぐさま重厚なパーツへと変化しデモウスへと装着していく。

 

【不動のSTRONG CHAMPION! SLOWTH BUFFALO!!】

【WAKE UP SIN!!】

 

現れたのは色も何もない深く青い装甲に身を包んだ重厚な戦士『スロウスバッファロー』である。

そして、ボタンを押して召喚されたのは猛牛の角を思わせるような巨大な槌『ベルフェゴールメイス』……それの柄を片手で持ち、引きずりながら迫る。

正面から、何か策を弄するでもなく歩くだけだったがスパイダーはその姿にある種の恐怖を覚える。

しかし。

 

『だ、だからどうしたあああああああああああああっっ!!!』

 

恐怖を振り払うように、硬質化した糸を巻き付けた両腕による人間離れした一撃でデモウスを力の限り殴った。

 

「ふん」

 

しかし、デモウスはその一撃を正面から受け止め、軽く力を入れただけで弾き返す。

スロウスバッファローは『怠惰』……超鉄壁の鎧は防御という面倒な動作をせずとも全てを防ぎ、如何なる攻撃をも許さない。

 

『こっ、こいつっ!!』

 

スパイダーは何度もデモウスを殴りつける。

しかし、それでもダメージどころか一切怯むことなく怠惰の戦士は歩き続ける。

やがて無言の威圧に気圧されたスパイダーの足が、後ろに下がり始めた。

だが……。

 

『おおおおおおおおおおおおおっっ!!!』

 

デモウスの発する重圧を跳ね除けるように、半ばやけになったスパイダーは大きく上げた拳を頭部目掛けて振り下ろした。

 

「ふんっ!」

『なっ!……っ!!』

 

その渾身の一撃は届くことはなかった。

デモウスは難なく片手で受け止めてから払いのけると、掌底を相手の胴体に叩き込む。

ラストラビットの通常攻撃よりも何十倍にまで強化された腕力は、スパイダーの身体を軽く仰け反らせる。

 

『こ、この…!』

「ぬんっ!!」

 

パワーを自慢にしていたスパイダーは、プライドを傷つけられた屈辱的な感情が湧き上がる。

だが「ガキがっ」と叫ぶよりも先に、デモウスがベルフェゴールメイスでスパイダーの顔面を殴りつけた。

静かな一撃は歪んだ思考回路を持つスパイダーなぞに叫ぶ暇も猶予も与えない。

ベルフェゴールメイスの一撃一撃が確実に怪人の身体を壊していく。

 

『がっ!ぐえっ、げぼっ!!があああああああああっっ!!!』

 

身体のあらゆる箇所をベルフェゴールメイスで殴られたスパイダーが地面に倒れると、そこを追撃するように何度もメイスを振り下ろす。

躊躇も容赦もない強烈な打撃が反抗心と思考を停止させていく。

やがてゴルフスイングによる攻撃で地面を削りながら吹き飛ばされたスパイダーは、起き上がって満身創痍になった己の身体を必死に動かして逃走を図ろうとする。

だが、そんな面倒ごとを怠惰の戦士は決して許しはしない。

デモウスはベルフェゴールメイスを肩に担ぐと、ドライバーにセットしていたスロウスシンスタルを取り出してメイスのスロットに装填する。

 

【EXECUTION!】

【SLOWTH INPACT!!】

 

デモウスはブラッドエナジーが充填されたベルフェゴールメイスを思い切り地面に叩きつける。

すると、青い衝撃波が発生しスパイダーへと迫り命中した。

 

『あっ、なっ!?』

 

身体が動かない……。

怠惰の力で身体の支配権を完全に停止させられたスパイダーを見据え、両手で持ち上げたメイスを思い切り振り回す。

その度にベルフェゴールメイスからは溢れんばかりの青いブラッドエナジーがチャージされ、許容量を容易く超えていく。

巨大な怠惰の竜巻は周囲の物体を砕き破壊し、そして……。

 

「ぬああああああああああああああっっ!!!」

『いぎゃあああああああああああああああああっっ!!!』

 

「消え失せろっ」と言わんばかりの雄叫びと共に振り下ろされた『スロウスインパクト』により、スパイダー・ペインは断末魔をあげて肉体を粉々に破砕され消滅した。

 

 

 

 

 

その様子を一人の人物が眺めていた。

『色欲』をその身に宿しながらも、それに抗いながら他の罪を使いこなす戦士にその瞳には期待の色が宿っている。

全身こそ黒いフードと手袋で完全に覆い隠しているその人物はこれ以上の収穫はないと判断したのか、踵を返してその場を去っていった。

その人物が去った後には、汚れのない、白い羽根が一枚だけ落ちていた。




簡単な解説
操真夕姫 :
仮面ライダーデモウスに変身する少年。和洋折衷のミニスカート状になっているピンクの着物を纏った可愛らしい少女のような少年。
ペインたちから『天使』と呼ばれる人物に『色欲』という罪を埋め込まれた。

星心大輪拳 :
仮面ライダーフォーゼに登場する人物『朔田流星 / 仮面ライダーメテオ』が使用する拳法の名前。
本作独自の設定として中国拳法とジークンドーベースの『太陽の型』、古武術と実践剣術をベースにした『月の型』の二つの型があるという設定にした。
元ネタの赤心少林拳にも異なる流派がそれぞれあったのでそのオマージュ。

ブラッドエナジー :
未知のエネルギーであり、鮮血のように赤いことから名前が付けられた。仮面ライダーやペインのエネルギー源にもなっている。

ペイン :
結晶化したブラッドエナジーが自我と感情を手に入れ、それに見合った無機物を吸収し自らの血肉とすることで誕生する怪人。基本的にスパイダーなどの通常枠は幹部たちから量産・コピーされた存在である。
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