それは小さくも確実に、ある都市を蝕んでいった。
これは、己の目的のために全てを裏切った『一角獣』の物語。
某都市・地下……。
非合法と超常的な手段を使って作られたそこは極めて奇妙な風景だった。
都市の最深部にあるにも関わらず、青空が広がっておりコロッセオをモチーフにした闘技場には三体の異形が戦っていた。
『ぎゃあああああああ!!』
情けない声を上げて吹き飛ばされた異形…『ドーパント』は絵の具とキャンパスと言った画家をモチーフにしており、殴られた箇所である頭部を抑えながら地面をのたうちまわっている。
もう一体の…黄緑を基本カラーに若々しい葉っぱを身体中に生やしたドーパントは仲間なのか、倒れている彼に並び立つようにファイティングポーズを取り、目の前の敵を警戒する。
そして、画家のドーパントを殴り飛ばした最後の一体が姿を現した。
それは、二体のドーパントとは明らかに姿が異なり、さながら戦士の出で立ちをしていた。
バッタやイナゴを彷彿させるような真っ赤に染まった複眼、中央には漆黒のライン、右側は白いファーがあしらわれた緑色の装甲と左側は頑強な紫色の装甲、左側が根本から折れている額のアンテナは一角獣を連想させる。
最も目を引くのは腰に巻かれた黒いドライバーだ、緑と漆黒のメモリ…『T3ガイアメモリ』がセットされている二つのスロットは「W」に展開されていた。
左右非対称の戦士は、黄緑のドーパントとの距離を詰めると鳩尾に拳を一発叩き込み、蹴り飛ばす。
「……」
『ひっ!?』
無言のまま振り返った彼に画家のドーパントは恐怖しながらも自身の武器である巨大な絵筆を振るい、身を守るための黒い壁を生成する。
しかし、それに焦ることなくドライバーのスロットから紫色のメモリ…『黒騎士の記憶』を宿したT3ブラックナイトメモリを抜き取ると、右腕に召喚されたチェーンソー型ガントレットのスロットに装填する。
【BLACK KNIGHT! MAXIMAM DRIVE!!】
電子音声が辺りに鳴り響き、両足にエネルギーを溜めると助走を付け跳び上がるとユニコーンの幻影と共に両足蹴りを繰り出した。
「ブラックナイトクラッシャー…!!」
『な、そんなっ!?…アアアアアアアアアアッッ!!』
自身の作り出した壁を砕きながら進んで行く必殺技を避けることが出来なかった画家のドーパントは爆発した。
爆発地にはスーツを着たやせ形の男が気絶しており、手元には絵筆とパレットで「P」のイニシャルを模ったマゼンタカラーのT3ガイアメモリが転がっていた。
「下らない金集めの割には覚醒していたか」
そう一人ごちると、緑色の端子をしたマゼンタのメモリ…『画家の記憶』を宿したT3ペイントメモリを拾い上げた途端、景色がぐにゃり、と歪んでいき辺りは薄汚れたカジノ場、つまり本来の姿へ戻る……おそらく、画家のドーパント『ペイント・ドーパント』の能力でカジノ場の壁や天井にコロッセオと風景を描いて具現化し、地下格闘として金を稼いでいたのだろう。
「なるほど、用済みになった奴はお前の能力で消していた訳か。『ヤング・ドーパント』」
『っ!?』
未だ能力を見せていないにも関わらず、目の前の戦士は自分の使用しているメモリを言い当てたことに驚く。
『だ、だったらなんだ!!この場でお前を消せば万事解決だろうがよぉっ!!?』
大声で叫ぶと、ヤングは両手を地面に当て黄緑色の粘液のような波…精神干渉波の『ヤング・クリーク』を発生させる。
ヤング・ドーパントの能力は『任意の年月設定で相手を若返らせる』…今ヤングが設定したのはマイナス二十年、戦士の存在を抹消させることも可能な威力だ。
「……バカが」
浅はかとも言えるヤングの行動に嘲笑すると、戦士はドライバーを閉じてブラックナイトメモリを抜き取ると、先ほど拾ったペイントメモリを取り出し起動させる。
【PAINT!】
電子音声…ガイアウィスパーが流れると、ペイントメモリをセットされていない左側のスロットに挿入し、再びドライバーを展開させる。
【UNICORN! / PAINT!】
『一角獣の記憶』を宿した『ユニコーンメモリ』の馬の嘶くような音声とペイントメモリのポップな電子音声が流れると共に左側がマゼンタ・シアン・イエローの絵具に包まれる、右側の一角獣のような装甲はそのままに、左側はマゼンタを基本カラーに、シアンと黄色の絵具チューブの装飾をあしらった装甲へと姿を変えた。
「…ふっ!」
『ガアアアアアアアアッッ!!?』
変身が完了するや否や、絵筆を模した槍銃『ペイントスピアガン』を生成すると、ヤング目掛けてトリガーを弾いた。
銃口から発射された弾丸は七色の軌跡を描きながらヤングの顔面へと見事命中し、不意を突かれたのもあってヤングは激痛で能力を解除してしまう。
その隙を見逃すほど、戦士は甘くなかった。
「さあ、無様な悲鳴をあげろ…」
処刑宣告とも取れる発言の後、戦士はペイントスピアガンをヤングへと突き立てた……。
「はっ、オラッ!!」
『がっ、ぐあ!!』
そこからは戦い…いや、一方的な蹂躙だった。
近距離戦へと持ち込むと、ペイントスピアガンを巧みに操りヤングを追い詰めいき、頭を掴みカジノテーブルに何度も何度も叩きつけると、銃口を顔面に押し付け銃弾を零距離で浴びせる。
『ぎ、があああああああああっっ!!!』
「……」
激痛で悲鳴をあげるヤングを無視するように腹部をボディブローで殴ると、戦士はヤングを投げ飛ばし、薄汚れた地面に叩きつける。
『ア、アアァ、ゲエ…も、もう…』
「止めだ」
呻きながら満身創痍で立ち上がるヤングを見据えながら、戦士はペイントメモリを抜き取り、己の武器にあるスロットへと差し込んだ。
【PAINT! MAXIMAM DRIVE!!】
「ペイントトリッキー!!」
トリガーを弾き、発射された球体のエネルギーに向けてペイントスピアガンを振るうと、七色の奔流がヤング目掛けて飛んでいき、そして……。
『ギュギャアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!』
ヤングを飲み込み爆散した。
人体に取り込まれていたT3ヤングメモリが排出され、砕け散るのと同時に怪人だった姿は、眼鏡をかけた男性へと姿が戻る。
戦闘が終わったことを確認すると、戦士は携帯を取り出し連絡を取る。
「…ああ、終わった。収穫は『P』のメモリだけだ……分かった、しばらくは僕が使う」
連絡を終えると戦士は倒れた二人に目もくれず、ゆっくりと出口へ向かっていった。
彼に、正義や人を守る覚悟などない……あるのはただ一つ、たった一つの怒りだけ。
「……『ガイアゼロ』は、必ず成功させる。AtoZのメモリを覚醒させて…!!」
薄暗い感情を燃やしながら、戦士『仮面ライダーアインホルン』は街を彷徨う……。
第二弾、仮面ライダーアインホルンです。
イメージとしては、ゲンムのような「怪人サイドの仮面ライダー」。そして落ちるところまで落ちた照井さん。ですが、彼が復讐したいのは……うふふ。
アインホルンはドイツ語で「一角獣」を意味します。ユニコーンメモリにしたのは彼が落ちた原因である「愛」と七つの大罪「憤怒」から。振られたからではありませんよ?念のため。
コンセプトは「一人で二つのメモリを使う」です。劇中では触れませんでしたが彼が使用したベルト『ユニゾンドライバー』は使用者の負担を無視した設計だったため封印されていたのですが、ユニコーンメモリのもう一つの能力「毒素の浄化」によって無理な変身を可能にしました。マキシマムスロットが存在しないため、ユニコーンメモリで生成した武器で必殺技を発動させます。
語るところは語れたので詳しくは感想の方で。ではでは。