今回は、完全オリジナルで書いてみました。
苦手な方はバックをお願いします!
宮沢高等学校。
偏差値はそれほど高くはないが、世界の文学や歴史などに力を入れているため、作家や編集関係の仕事を目指す生徒が多い。ちなみに土曜日は午前授業だけである。
穏やかな校風もあってか人気学校の一つとなっている。
そんな休み時間、自販機の前で立ち往生している生徒が一人……。
「んー?おっかしいなー」
目当ての商品があるボタンを何度も押しているにも関わらず、一向に目当ての飲み物が出て来ないことに首を傾げる少年。
指定の青いブレザーに身を包み、顔立ちはカッコ良いというよりは可愛い系。
茶髪の天然パーマが特徴のゆるふわ系男子といったところだろうか。
時折、自分が入れた硬貨が戻っていないか釣銭口を確認するがない。
腕を組み、しばらく思案して一言。
「もしかして……実は自販機に擬態するハイテクバイクだった可能性が微粒子レベルで…」
「多分、違うよ」
宛ら某探偵が謎を解いたと言わんばかりに目を見開く彼に一人の少女が声をかける。
振り向けば、赤みがかった茶髪のセミショートヘアの可愛らしい顔立ちの少女……華奢でスレンダーな身体が彼女を可憐にさせている。
声のかけた少女『姫雪眞白』は困ったような表情を見せる。
「シロちゃん」
「シ、シロちゃんはやめてよ嶺君っ」
「何で?」
「何でって、それは……///」
無自覚に小首を傾げる少年『政宗嶺』に対して眞白は顔を赤くする。
幼馴染の縁でそう呼ばれているが、高校生にもなってその名前は恥ずかしい。
嫌という訳ではないしむしろ嬉しい。でもそれは何だか恋人同士みたいで……。
「わ、私の口からは…」
「あー!出てきたー!!」
口にするよりも先に、嶺が自販機からお目当ての飲み物を取り出す。
頬を染めて恥ずかしそうにしているのをそっちの気で喜ぶ彼をしばらく見て、毒気を抜かれたのか眞白は溜息を吐く。
「っ?どうしたのシロちゃん」
「ううん、何でもないよ……ほらっ!休み時間終わるから早くっ!」
「うえっ!?」
お返しとばかりに、眞白は嶺の手を握る。
普段はマイペースな彼だが、女の子への耐性があまりないのも知っている。
知っているから握った手に軽く力を込めて教室まで向かう。
幼馴染とはいえ、女の子特有の柔らかさと自分に向けてくる笑みに顔を真っ赤にするのを見て、眞白はまた笑うのだった。
……クラスメイトの友達にからかわれたのは言うまでもないが。
昼間の午後……この街に数ある公園の一つはあまり人が来ない。
外で遊ぶ子どもたちが少なくなっているのも理由だが、この公園を活用している人間がいるからだ。
「あ~、やっぱ美味ぇなー」
上機嫌に右手に持った酒瓶に口を着けて飲むのは公園を根城にしている男性。
煤のある汚れたコートを羽織り、ニット帽を被っているその身なりはボロボロで、赤ら顔の中年……所謂ホームレスである彼は酒瓶を逆さに振る。
まだ底の方に残っていると思っているのだろうか、何度も振っては手に入れた酒を飲み切ろうとする。
「……たくっ、もちっと酒入れてくれても良いのによぉ」
そんなことをぼやきながら、酒瓶を放り捨てた彼はシートの上に寝転がる。
このホームレスは所謂「公園の主」と呼ばれる人物だ。
最初こそ名のある暴力団に所属していたのだが、組織の金に目が眩み強奪。
無事に逃げ出せたのだが盗んだ金は底をつき、途方に暮れて公園へと転がり込んだのだ。培った暴力で他の先駆者を追い出し、こうして自分の城を手に入れた彼は暴力を持ってその日暮らしの金と酒を手に入れることは出来ている。
しかし、一度膨らんだ欲望は収まらない。
「くそっ、組織の屑どもめ。もっと金を入れてりゃあ、こんな暮らししないで済んだんだっ。畜生め!」
今の自分に嫌悪感を抱いたホームレスは、その苛立ちを紛らわせようとストックされているカップ酒の蓋を開けて飲む。
すると、苛立ちはすぐさま晴れて上等な機嫌へと変わる。
唯一の娯楽と言えば、酒ぐらいのものだ。
正直な話、酒さえ飲めれば後はどうだって良いとさえ思っている。
幸いありつけるほどの地位を確立しているので、別にそんな運命でも問題ないか……そんな短絡的なことさえ思っていた。
しかし、それは突然に変わる。
「……随分と酷い臭いだ」
突然、声が響いた。
自分以外、誰もいない自分の住処で聞き覚えのない低い男の声が聞こえたのだ。
「誰だっ」と慌てて周囲を見渡し、声の主は彼のすぐ後ろにいた。
そこにいたのは長身の男……黒いジャケットに黒いシャツ、黒いズボンと手袋を身に着けている黒ずくめの男だ。
強面の顔にはサングラスをかけており、服の上からでも屈強な肉体が分かる。
肌の色以外は全て黒で統一された男がホームレスを見下ろしていたのだ。
「時代も変わったな。かつて貴族の娯楽だった物が、貧民でも手が届く代物になっていたとはな」
混乱する住処の主に気にすることなく、男は転がっていた酒瓶を手に取り興味深そうに観察する。
そして、ようやく我に返ったホームレスが威勢を取り戻した。
「おいっ!てめぇ『新入り』かっ?あー別にどうだって良い。とりあえず酒だっ、酒を献上すりゃあさっきの無礼は許してやるぜぇ?」
品のない笑みを見せるホームレス。
摂取したアルコールのせいか、それとも浮浪者生活のせいか定かではないが、人が持つ危機回避などの感覚が麻痺をしてしまっている。
この男の本質は結局それだ。目先の欲望に飛びつき、破滅しているのにも関わらず、それを反省することもなければ暴力も辞さない。
自堕落な運命を進む愚者……それが、黒ずくめの男の目に適った。
「そんなに酒が飲みたいか?」
「あぁっ?まぁ、そうだな。酒さえ飲めれば後は何もいらねぇなっ!!」
上機嫌に笑うホームレス。
酔いが回っている彼は気づかないだろう。
この男が、口角をほんの少しだけ吊り上げたことに……。
「そうか、なら」
「あっ?……がっ!?」
黒ずくめの男がホームレスの胸倉を掴んで無理矢理立ち上がらせた。
苦し気に呻く彼に気にすることなく、男は掌に収まっていたサイコロのようなアイテムを取り出す。
群がる昆虫のシンボルが刻まれた青い六面ダイスは虫害や蝗害を連想させ、一の目に当たる部分は赤い複眼にも見える。
本物よりも少し大きめのそれを、男は起動させた。
「その運命で遊ばせてやる」
【INSECT…!!】
見せつけるように彼の眼前で一の目型のスイッチを押したダイス『エヴォルガダイス』を躊躇なく、ホームレスの身体へと捩じ込む。
すると、変化はすぐに起こった。
「ぎっ!?ああああああああああああああっっっ!!!!」
体力や欲望、そして自我が奪われるような脱力感と不快感が彼の身体を襲い、禍々しい光が内側から放たれている。
やがて、埋め込まれたダイスはまるで意思を持つかのように絶叫するホームレスの身体から排出され、独りでに宙へと浮く。
【Let's Play……!!】
擦れたような音声が響いた瞬間、エヴォルガダイスから光が放出される。
ホームレスから奪い取った全てのエネルギーを解き放ち、人の形へと変わった。
『うぃ~……ひっく』
それは、一言で表すならば蜘蛛を模した怪人……。
右半分は青く、蜘蛛の脚が背中から三本生えているが、左半身はまるで違う。
酒瓶のような装飾が左肩に埋め込まれ、そこから血のような赤いワインが左側を汚すように染まっている。
まるで、ワインの酒気で泥酔している蜘蛛のようだ。
それを証明するかのように蜘蛛を模した瞳には焦点が定まっておらず、何処か覚束ない足取りを蜘蛛を模した棍棒で支えている。
「酒狂いの蜘蛛……か」
誕生した怪人の特徴を冷静に分析した男は、意識をなくしているホームレスを雑に捨てる。
そして蜘蛛の怪人へと向き直り、その口を開いた。
「好きに行動しても構わない……派手に暴れてこい」
『うぃ~。分かりました~よっ』
酔いが回っている怪人……人間の感情から生まれた怪人は千鳥足ながらも、しっかりとした足取りで街の方へと向かった。
午前の授業が終わり、眞白が待ち合わせの場所へと急いで走っていた。
まさか忘れ物をしているとは思わず、取りに戻ってみれば時間が過ぎており、こうして全力疾走しているのだ。
目的地に着いた彼女は、息を整えてからファミレスのドアを開ける。
友達からは店内にいると連絡があったため、あちこち見ていると自分に向かって手を挙げているのが見えた。
すれ違った店員に軽く頭を下げながら、目的の席へと向かう。
「もう、姉さん。忘れ物をしちゃ駄目ってあれほど……」
「まーまー『日向』ちゃん。眞白がどっか抜けてるのはいつものことだろ?」
「ちょっと。酷いよ『真琴』ちゃん」
少し抜けた姉に注意するのはふわりとした髪型の少女……眞白の妹である『雪姫日向』と、そんな二人の様子に茶髪の髪を一本にまとめた活発的な印象の少女『赤井真琴』が笑う。
他にも白く輝く髪を短くした癖っ毛のある豊満な少女はストローでジュースを飲み、黒く長い髪を後ろに垂らした大和撫子という言葉がぴったりの豊満な年長者らしき少女が上品に笑う。
服装から同じ学校なのだが、どうしてこの五人が集まっているのか……第三者からすれば理解出来ないだろう。
しかし、彼女たちは強い繋がりがある。
時にぶつかり合い、時に励まし合った、強い絆が彼女たちにはあるのだ。
談笑する少女たち。
それは正しく平和の象徴であり、変わらぬ日常……。
そのはずだった。
『うわああああああっ!!』
悲鳴が響く。
普通の日常では、決して聞かないであろう恐怖の叫びだ。
瞬間、窓ガラスが音を立てて割れる。
「な、何っ!?」
困惑よりも先に、身体が動いた。
眞白たちは店にいる人たちを避難誘導した後、急いで出る。
「っ!これって……」
「何て、酷いっ」
「……!」
そこに広がっていたのは、怪物たちの蹂躙だった。
左右を白と黒で塗り分けた鎧を身に纏い、槍を装備している怪物が、群れを為して店という店に襲いかかっている。
その光景に日向は顔を青くし、黒髪の少女と白銀の少女が怒りを露にする。
本来なら、日常を送る彼女たち……しかし、その表情は恐怖ではなく、戦うことを決めた顔だ。
『みんなーーーーーーっ!!』
そして、ここに『六人目の仲間』が現れる。
高い、少年の声と共に空から現れたのは、リボンを首に巻き付けた白い兎のようなぬいぐるみ。
悪意を感じて飛んできた彼の名は『ヴィルコプ』
優しい童話の想い出から生まれた魔物であり、彼女たちを繋いだ大事な存在である。
ちなみに普段は眞白の家に居候している。
「ヴィルコプさん、この怪物は一体……」
『僕も分からないっす。ただ、こいつらからは悪意を感じても、グリムエナジーは感じないっす』
「……じゃあ、あいつらとは、違う?」
「何だって良いだろ」
日向の問いに、答えながらもヴィルコプは新たな敵を睨む。
白銀の少女が眠そうな眼を向けながらも、真琴の言葉に全員が頷いた。
目の前の人を助ける。考えるのはその後だ。
「ヴィル君。グリムフォンは……」
『ふっふーん。じ・つ・は』
思わせ振りな態度をする彼に首を傾げるも、すぐに答えが分かった。
彼女たちのスマホが軽く振動し、取り出して起動すると見たことないアプリがインストールされていた。
『あの戦いで破損したグリムフォンは完全には直せなかったっす……けど!力だけを抜き取って今風にバージョンアップしたっす!ついでにみんなの情報もアップデートしたからドレスのサイズもぴったりのはずっす!』
「え、ヴィルちゃん。その話詳しく…」
『さぁ、チェンジっす!』
無理矢理会話を遮断したヴィルコプに急かされるように、眞白たちは敵を見据えて並び立つ。
そして、スマホにダウンロードされたグリムアプリを軽くタッチした。
瞬間、それぞれのスマホに白や赤などの優しい灯りが宿る。
「目覚めて想い出の物語!グリムリード!」
『セットアーーーーーーップ!!』
五人の声が揃った瞬間、彼女たちの装いが変わる。
眞白は白を基調としたフリフリの衣装とミニスカート、紫の装飾が施されておりヴェールのあるその姿はまるで白雪姫を連想させる。
日向は白とピンクを基調とした、まるで海賊を思わせるような帽子を被っており、左右の腰にはカットラスとラッパ銃を備えている。
真琴は赤いフードを被り、何処か猟師を思わせるような赤を基調としたドレスで腰にはバスケットを下げている。
白銀の跳ねた髪を持つ少女は、茨の意匠を象ったストールを首に巻いており緑の刺繍が入った黒いドレスに、頭に帽子を被る。
長く黒い髪の少女は一見すると巫女を思わせるような白い小袖と緋袴……しかし細部には月の装飾がある手甲や鉢巻を身に着けている。
彼女たちは『グリムテラー』……世界を混沌へと陥れようとした悪意の童話『カオス・テラー』の魔の手から守るべく、戦った魔法少女たち。
「みんなっ、まずは逃げ遅れている人たちの避難をっ!」
「分かってるって!」
「ホワイトもお気をつけてっ」
赤いフードの魔法少女と巫女服の魔法少女『グリムレッド』と『グリムムーン』の言葉を耳にしながら、変身した眞白『グリムホワイト』はステッキを雑兵に向かって振るう。
ステッキの先端から白い魔力弾が飛び出し、一網打尽にすると襲われていた店員の元まで駆け寄る。
「大丈夫ですかっ!早く逃げてっ」
店員はお礼を言ってから慌てて逃げ出す。
その間にも襲い掛かる兵士の怪物を、茨姫の魔法少女『グリムスリープ』の蛇腹剣が迫り、楽しそうに笑う『グリムパイレーツ』がラッパ銃を乱射する。
「……それ」
「あっはははははっ!バーン!♪」
数を減らしたことで余裕が出てきたのか、グリムホワイトは背後から迫る兵士の頭をステッキで殴り飛ばしながらも、敵の正体を考え始める。
カオス・テラーとも違う存在には疑問を覚えるが、それでも足と手を止めることは出来ない。
人々の想い出を護る……それが自分たちの使命であり、やりたいことだからだ。
気を取り直し、ステッキを握り締めた時にヴィルコプの声が飛ぶ。
『ホワイト!危ないっす!』
「えっ……きゃあっ!?」
慌てた様子のパートナーに振り向いた瞬間、白い糸のような束がホワイト目掛けて迫ってきていたのだ。
慌ててバックステップして回避し、攻撃してきた方向を睨む。
そこにいたのは……。
『んくっ、んくっ……ぷはぁっ!良い酒だなぁ……安い店で売ってる奴とは大違いだぜぇっ』
上機嫌な千鳥足で現れるのは、蜘蛛とワインを混ぜ合わせたような怪人。
青く染まった蜘蛛の右半身に、左半身は赤いワインと瓶のシンボルがある歪な姿……童話に出てくる動物や植物をモチーフとしたカオス・テラーの尖兵『テラーデビル』とは明らかに違う異形。
言語能力を持つ怪人は、店内から強奪して来たであろう酒瓶をラッパ飲みすると中身を飲んで満足そうに笑う。
謎の怪人に、グリムホワイトが抱いた感情は恐れよりも純粋な怒りだった。
「やめてくださいっ!」
『何だ、そこのコスプレ嬢ちゃん?何だってこんなところにいんだー、ひっく』
(っ!やっぱり、テラーデビルじゃないっ?)
声を荒げる彼女に気にすることなく、グリムテラーの独特な衣装を見て首を傾げながらも酒を飲み続ける怪人……。
ヴィルコプも、あの怪人がカオス・テラーとは違う存在であることに確信する。
日本刀で兵士の怪人を斬り捨てるグリムムーンが鋭い視線をぶつける。
「どうして、このようなことをっ!」
『んあっ?あー……派手に暴れろって言われて、それ以外はなーんも言われてねーし?だったら酒を飲みながら暴れようと思ったからだなぁっ!!』
ゲラゲラ笑う怪人目掛けて、既にグリムホワイトは攻撃していた。
威力を込めた一撃を放つが蜘蛛の怪人はふらついたような動きでそれを躱すと、にやついた様子で注意深く観察する。
『ちったぁ戦えるみてぇだが、俺様には勝てねぇよっ。この「エヴォルガ」にはなぁっ!!』
嘲笑うように吐き捨てた怪人『
まるで意志を持つかのように動く糸を躱し続けるも……。
「うわっ!」
「みゃー!離せーーっ!!」
直線的な攻撃を得意とするグリムレッドとグリムパイレーツが糸に絡まれてしまう。
必死に拘束から逃れようとするも、千切れる様子がない。
その間にも糸は範囲を広げていき、やがて周囲が巨大な蜘蛛の巣へと変わっていく。
見れば逃げ遅れた人々が捕まっており、人質としている。
『お前らは、俺様の最高の餌だぁ。抵抗しないよう徹底的に潰してやるよぉっ!!』
防戦一方となった魔法少女たちを見て、勝ち誇ったようにほくそ笑むAスパイダー。
決定打を与えられない状況に彼女たちが歯噛みしている、その時だった。
……何かの音が聞こえる。
幻聴かとも思ったが、グリムホワイトが周囲を見渡せばグリムレッドたちも音の原因を探ろうと視線を向けている。
そして、段々と音が大きくなる。
それがバイクのエンジン音だと分かったのは、Aスパイダーだ。
『何だってバイクの音が……』
疑問を覚えた瞬間だった。
青いラインの入った黒のバイクが現れたのだ。
太陽光に浴びて輝くボディは、まるで武装した騎馬を模している。
操縦者は赤いストールを巻いており、ヘルメットで顔は見えない。
後ろには小柄の少年らしき白いローブの人物もいる。
それは蜘蛛の巣のバリケードを容易く飛び越えて侵入すると、速度を緩めることなく前進する。
……というよりも、むしろ上がっているようだ。
「……ああああああああああっ!どいてどいてどいてーーーっ!!」
『はっ、ちょっ!ブルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!?』
突如乱入してきた黒いバイクにAスパイダーが驚きで動きを止めた瞬間、バイクの持ち主は慌てた様子ながらも、アクセル全開で突撃する。
すると当然、機体に吹き飛ばされたエヴォルガの攻撃は阻止される。
呆然とする魔法少女たちに対して、黒いバイクの操縦者は安堵の息を吐く。
「あー止まったー」
「いや止まったじゃないですよっ!?思っくそアクセル全開にした人のセリフじゃないですよねっ!てか、わざとでしょっ!?」
「あっはは。まさかまさかソンナコトナイヨー」
「絶対嘘だっ!?」
棒読みで言い訳する操縦者に後ろに座っていた少年がヘルメットを外して叫ぶ。
聞き覚えのある声、そしてその顔を見た瞬間ホワイトが確信した。
「嶺君っ!?」
「えっ?」
自分の名前を呼んだフリフリ衣装の少女に思わず操縦者……嶺が首を向ける。
思わず口に手を当てて視線を逸らすも、まじまじと見つめてから彼が口を開く。
「シロちゃん、何してるの?」
「ぶっふ!?ちち、違うよー。わ、わわ私は雪姫眞白なんて人じゃありませんよー」
本来、魔法少女に変身している間は認識阻害の魔法を使っており、目の前で変身したりしなければ正体がばれることはない。
しかし、嶺のマイペースさの前では通じないのか。はたまた幼馴染テレパシーの恩恵なのか定かではないがグリムホワイト=眞白と認識出来ている。
必死に隠そうとする彼女を見て「ま、良いか」と嶺が向き直る。
見ればAスパイダーが既に起き上がっており、自分の狩りを邪魔されたことで憤慨していたが少年の顔を見たことで様子が変わる。
『お前ぇっ、錬金術師だなっ!!錬金術師の「ヴァン」ッ!まさかこんなところで、見つけるとはなぁっ!!』
「ヴァン、もしかしてあいつが?」
「はい……人間の欲望と動物の力を混ぜ合わせた怪人。封印から目覚めてしまった人造生命体エヴォルガです」
「わー。話には聞いていたけど想像以上にやばい外見」
呑気に笑う嶺に、グリムムーンは慌てて逃げるように促す。
「お、お二人とも!この怪物のことは私たちに任せて、早く逃げてくださいっ!!」
そう、嶺とヴァンは普通の人間。
ヴァンを錬金術師と呼んだことには気になるが、今はそれを考えている暇はない。
立ち上がろうとする彼女の肩に、嶺が優しく手を置く。
「大丈夫。僕に任せて」
彼女のそう微笑むと、嶺は懐から奇妙な物体を取り出した。
それはバックル部分が肉食恐竜の頭部となっている奇妙な物体。
頭部には羽毛をモチーフにした赤い撃鉄が備わっており、上顎に該当するパーツにはナイトヘルムが覆い被さっているような造形になっている。
一見して奇妙な物体……ベルトを見たAスパイダーの態度が一変した。
『そ、それはっ!まさかっ!?』
「ふふんっ♪」
何処か得意気に笑うと、嶺はそれを軽く腰に当てる。
すると、そこから黄色のベルトが伸びて一瞬にして巻き付く。
『て、てめぇ頭がおかしいのかっ!?このガキの戯言に従って、正義のヒーロー気取りかっ!そいつは、その鎧は…』
「知ってるよ?ぶっちゃけすっごく怖い」
Aスパイダーを黙らせるように、嶺が口を開く。
しかしその声は低く、普段の明るい彼からとは思えない。
「それでも、僕は放っておけない。それで誰かが傷ついたら、僕は僕を許せないっ!!それに……」
そこでようやく、嶺が笑った。
「楽して助かる命がないのは、何処も一緒ってね!」
サイコロ『モンスダイス』を上空に放り投げる。
まるで運命を委ねるように、己の幸運をこの手で掴み取るかのように……。
落下して来たモンスダイスをキャッチし、一の目を模した赤いスイッチを押し込む。
【TYRANNO×WOLF!】
音声と肉食恐竜と獣の鳴き声が響くと、ドライバーにある恐竜の横顔を模した口のスロットへと装填する。
【GABURI! LET'S CALL!】
モンスダイス『ティラノウルフダイス』をセットした瞬間、エクトゥスドライバーは待機音声を周囲に響かせる。
まるでカジノを彷彿させるようなノリの良い待機音を背後に、バックルの上顎『ダイナヘルム』を押し込むようにその口を閉じた。
「変身っ!」
そして、自らを変える言葉を叫ぶ。
【SCANNING! TYRANNO×WOLF!】
【赤くてFANGなKNIGHT!その名は……TYRANNOLF!!】
赤い光が彼の身体を覆い、現れた赤い甲冑が戦うに相応しい身体構造へと変えていく。
黒いスーツと赤い甲冑、それを繋ぐように青いラインが刻まれた騎士……。
頭部にはティラノサウルスを思わせるような赤いマスクと鋭く青い複眼、そして牙を思わせるようなフェイスガードで覆われている。
右肩には獰猛な狼の頭を象ったシンボルがあり、そこから黒い裏地のマントが変身の余波で靡く。
「んっ?おおっ、本当に変身してる」
「嶺君、が変身しちゃった」
『なな、何すかあれっ!?』
「あれはエクトゥス……力なき民を守る騎士『エクトゥス』ですっ!!」
呆然とするグリムホワイト、怒涛の展開にパニックになったヴィルコプに答えたのはヴァン。
そう、嶺が変身した騎士の名はエクトゥス。
『仮面ライダーエクトゥス ティラノルフメイル』!!
魔法少女が戦いを終えたこの物語に、新たな仮面ライダーが登場したのだ。
『こ、こいつうううううううううっっ!!!』
「えっ、うわわっ!?」
まるで激情するかのように、こんな展開を認めないかのように棍棒を振りかざしながら、飛び掛かったAスパイダーに驚いたエクトゥスは、両腕を突き出して防御しようとする。
『何ぃっ!?』
予想した通り、エヴォルガの攻撃は受け止められていた。
ただし、両腕ではなく一振の剣で……。
恐竜や獣の頭部を象った赤い鍔を持つ西洋剣『
ティラノルフメイルから生成された専用武器を握り締めたエクトゥスは、Aスパイダーの攻撃を大きく弾き、その剣を斜め下から一気に振り上げる。
『うおああああああああっ!?』
悲鳴と共にエヴォルガが仰け反り、がら空きになったその胴体に蹴りを叩き込んで吹き飛ばす。
そこを追撃すべく、肩のマントを靡かせながら鋭い斬撃で追い詰めていく。
その間にもエクトゥスの青いラインが輝き、エネルギーが両脚へと伝達される。
「わっ!?何だか力が漲って来る!」
沸き上がる力に困惑しながらも、その場で軽く跳ねて調子を確認する。
エクトゥスはそこから一気に助走をつけてから低くジャンプすると、Aスパイダー目掛けて連続でキックを浴びせた。
「はぁっ!!」
『ぐおああああああああああっっ!!!』
一撃、また一撃と叩き込まれるその蹴りは、ティラノサウルスの如き力強さと狼の如き鋭さを併せ持っており、エヴォルガへと着実にダメージを与えながらその身体を吹き飛ばす。
『ぐぅぅぅ……余裕かましてんじゃねぇっ!!』
地面を転がるも起き上がったAスパイダーは苛立ちと共に左半身からワインのような赤いアルコールを撒き散らし、地面に叩きつけた棍棒を擦り付けた。
すると付着したアルコールが発火、炎が纏わり付く。
それだけではない。
『ブルァッ!!』
「うわっ!」
口から白い糸を吐き出したのだ。
不意を打ったその行動にエクトゥスは躱すことが出来ず、無数の糸をその身に浴びてしまう。
雁字搦めにされて身動きの取れなくなった彼の身体を、火に覆われた棍棒が打つ。
「ぐあっ!くっ」
『ブラララララッ!!これで消えろぉっ!』
滅茶苦茶に振り回すAスパイダーの連続攻撃を満足に防ぐことも出来ず、地面を転がるエクトゥス。
その姿を見て完全に余裕を取り戻したエヴォルガが、止めの一撃を繰り出そうと動いた時だった。
「リード!『慈悲深き小人の戦士たち』!」
詠唱と共にエクトゥスを守るように現れたのは七人の小人。
赤や青などの甲冑で身を固めた小人たちは一斉に槍や剣、弓矢を構えてAスパイダーの攻撃を妨害する。
『ちぃっ!こんな人形で…ブラァッ!?』
「あたしたちを忘れんなっ!リード!『獣裂く正義の一撃』!」
「リード『永遠なる茨の城』」
「リード!『大砲ドッカーン』!」
『ちょっと、待ちなさ…ブルァァァアアアアアアアアッッ!!?』
まとめて蹴散らそうとするエヴォルガ。
しかし、いつの間にか糸の拘束から解放されたグリムレッドの鉄拳が炸裂し、吹き飛んだところをグリムスリープが茨の魔法で拘束。
更に追い打ちでグリムキャプテンが召喚した大砲による砲撃がAスパイダーへと見事命中。
黒い煙を上げながら地面へと落ちるのを確認すると、小人を召喚した魔法少女……グリムホワイトがエクトゥスへと駆け寄る。
「嶺君っ!」
「やっぱり、シロちゃんだよね?その姿って…」
「うぅぅぅっ///と、とにかくそれは後っ!!ムーン!」
拘束されているにも関わらず、呑気に尋ねる彼に少しだけ顔を赤くしたグリムホワイトが無理矢理話題を断ち切ると、グリムムーンを呼ぶ。
「少しだけ我慢してくださいね?リード。『火鼠の選別』」
短く詠唱した後、ムーンの持つ剣先からライター程度の火が灯る。
するとその火はエクトゥスに絡みついていた糸だけを容易く燃やし断ち切る。
「おおっ!?やった動けるっ!」
「お怪我もありませんか?さっ、早くこちらに……きゃっ!?」
「ありがとうございます!じゃ、行ってきます!」
グリムムーンの手を握り、お礼の言葉を口にしたエクトゥスはそのまま地面を蹴るとグリムレッドたちと交戦しているAスパイダーにドロップキックを浴びせ、着地と同時にそのまま一閃。
またしても吹き飛ばされたエヴォルガを見たヴァンが大声をあげる。
「トリガーを弾いてもう一度バックルの口を閉じてっ!でっかい一撃を繰り出せますっ!!」
「よしっ!」
ヴァンの指示通り、エクトゥスは撃鉄のようなトリガーを一度弾いてからバックルの口を開けて再度閉じる。
すると、ダイナヘルムに覆われたバックルの眼が輝き始める。
【FULL SCANNING! ANCIENT BURST!!】
「はぁぁぁぁ……!!」
スーツにある青いラインが輝くと先ほど以上のエネルギーが両脚に送り込まれる。
そして、極限まで高まったのを確認したエクトゥスは助走して跳躍した。
ビルすらも容易く超えてしまうのではないかと錯覚してしまうほどのジャンプ……起き上がったAスパイダーに照準を合わせると、そのまま跳び蹴りの姿勢へと入る。
赤いティラノサウルスの頭部を象ったエネルギーを纏ったエクトゥスは、そのまま凄まじい速度で右脚を突き出した。
「はああああああああああああっっ!!!」
『ブルァアアアアアアアアアアッッ!!!』
高所からの急降下キック『ファングストライク』をまともに受けたAスパイダー・エヴォルガは悲鳴と共に爆散。
「きゃあっ!?」
「うわっ!」
テラーデビルを撃破した時には決して起こらない、叩き込まれたエネルギーによる爆発の余波に魔法少女たちが顔を覆う。
爆風が収まり、そこに立っていたのは赤い甲冑を纏いし合成生物の騎士……。
それを、魔法少女たちとヴィルコプはじっと見つめていた。
「……」
エクトゥスも、そしてヴァンも彼女たちの方へ向く。
想い出を守る戦いを終えた魔法少女『グリムテラー』・そして封印から目覚めた騎士『エクトゥス』。
それは、新たな物語の始まりを告げるのだろうか……。
「エクトゥス……」
そして、その様子を遠くから黒ずくめの男が眺めていた。
自分たちを封印した騎士の復活に感情を変えることなく、ただサングラスの奥にある瞳を鋭く光らせる。
そして、徐に口を開く。
「『ムエン』」
『はっ』
響く声……同時に黒い無数のムカデが男の背後に群がり、形作っていく。
やがて、首を垂れるような姿勢の異形が現れる。
鋭い棘のような装飾とマフラーを生やした右半身は黒く光り、見る者に生理的嫌悪感を与えるであろうその身体はまるでムカデのようだ。
しかし、左半身は日本の僧を思わせる黒い袈裟のようなローブとなっており、その肩からは錫杖の先端を思わせる金属の輪を十二本通している。
「この時代の情報を集めろ。文化、年代、とにかく何でも良い」
『了解でござる。「ウォンセクト」殿』
彼からの指示に短く了承したムエンは、再びその身体を無数のムカデへと分解してその場から姿を消す。
「今度こそ、この世界は俺たちの物になるっ」
全てを望むかのように、ウォンセクトと呼ばれた男はその拳を強く握り締めた。
コンセプトしてはオリジナル魔法少女とオリジナルライダーとのクロス。
魔法少女サイドはラスボスを倒した後の時間軸であり、所謂続編みたいな感じです。
以下、簡単な設定
魔法少女:
世界を混沌へと陥れようとした悪意の童話『カオス・テラー』魔の手から守るべく、戦った魔法少女たち。魔法の携帯『グリムフォン』を手に取ることで心に残った思い出の童話を己の戦闘衣装や武器として具現化することが出来る。
彼女たちは「グリムテラー」と呼んでいたが、後に魔法少女と自らを呼ぶようになる。
そんな彼女たちも今では高校生……魔法少、女?
エヴォルガ:
平和を取り戻した世界に突如出現した怪人で目星をつけた人間に力の根源であるエヴォルダイスを埋め込むことで同胞たちを誕生させる。