先駆者様と絶対被っていると思いますが、許してつかぁさい(土下座)
黒い瘴気が、沸き上がる……。
時刻は深夜帯。多くの人が眠りにつくか職場で精を出して働いているころ、この何でもない世界に招かれざる客が現れる。
『オ、オォ……!!』
何処からともなく噴き上がった瘴気は絶えず、それどころか噴き出す勢いが強くなる一方だ。
やがて噴出が治まっていくと、浮き上がっていた瘴気は人の形を作り始める。
『異世界ヘノ到着ニ成功……コノ世界ノ言語機能及ビ文化ノ接続、同調ヲ実行』
まるで機械のように、当たり前の作業を行う瘴気は人型になりながらも『この世界』への情報を全て集めていく。
同時に脳裏へ流れ込んでくるのは到着した世界が辿った歴史や物語、そして専門用語の羅列だ。
宛ら早送りで再生されるビデオ映像のように情報を解析し終えた瘴気は段々とその姿をはっきりとさせていった。
『アァ。アッ、あーあー……同調を完了。くっ、くく。くははははっ!!素晴らしい、素晴らしいかなっ!こんにちわ、哀れで可愛い世界!そしてさようならっ、穢れを知らぬ無垢なる世界っ!!』
喝采を込めて、異形へと自身の姿を確立させた瘴気は叫ぶ。
目的に到着した旅人のように、繁栄のお告げを聴いた預言者のように、両手を上げて喜びの声で叫ぶ。
背中には黒いマントの如き羽根を持ち、全身を黒いスーツの如き造形はまるで人型になった蝙蝠を思わせるようだ。
それは狂気の侵略者であり犯罪者。
あるいは、悪意を持って世界を塗り潰す混沌。
脅威を知らぬ世界に与えられた祝福であり
ただ一つ分かることは……。
この異形、否怪人にとってこの世界は単なる獲物であり、単なる財宝やコレクション対象でしかないということだ。
欲しい物は奪う。それを邪魔する奴は潰す。
人を襲うことなど蝿や蟻を潰すことと同義だと信じて疑わない。
この世界を塗り潰し、完全に支配すべく一歩踏み出した瞬間……。
一発の銃声が鳴り響いた。
『うぐおっ!?』
こめかみに衝撃が走る。
異形の身を手に入れた今の状態では微々たるものだが、それでもダメージには違いない。
それはつまり、この世界には『自分たち』と戦える存在がいるということだ。
しかしそれはあり得ない。
接続した情報では、自分たちと戦うことはおろか技術すらも存在していないのだ。
『一体どういう……!』
「こういうことさ」
『誰…がぁっ!!』
不敵な青年の声、そして再び鳴る銃声。
再び銃弾を浴びた怪人は呻きながらも、銃撃があった方を……自らに攻撃を与えた敵対者を睨む。
そこに現れたのは端正な顔立ちにモデルを思わせるような長身の青年。
青い髪を短くし、その顔には不敵な笑みが張り付けられている。
白いシャツの上に紺色のコートを羽織っており、黒い手袋やズボンも相まって小説や漫画に登場する賞金稼ぎを思わせるようだ。
『き、貴様かっ!貴様が俺を撃ったのかっ!?人間がっ、たかが下等生物風情が俺に…ぎゃあっ!?』
動揺し指を突きつける怪人を無視して青年は右手に構えた拳銃を発砲する。
強引に黙らせた青年は弾丸を発射するが、やがて弾数がゼロになったことが分かると灰色のオーロラを出現させてそこに投げ捨てる。
丸腰になってしまった彼に対し、怪人は怒りを目に宿しながら混乱した様子で叫ぶ。
『何故、何故だっ!どうして俺にダメージを与えられるっ!?』
「言うと思うか?……て言いたいんだが、心優しい俺は特別に教えてやるのだった」
不敵な態度を崩さずに言いながら取り出したのは、一つの弾丸。
形状としてはリボルバーマグナムの弾丸を思わせるが、通常よりやや大きめのそれは右側が緑のラインが入った黒、左側が黄色のカラーリングになっており飛蝗を思わせる二人の戦士の横顔が彫られた印象に残るような弾丸で小さなスイッチがある。
「『ライドバレット』……幾多の世界に存在する異なる世界の戦士たちの力を疑似再現した弾丸さ。こいつを持っていれば怪物や幽霊はおろか、『本来ならこの世界に存在しないはずの怪人』すらも倒せるようになる。詳しい原理は知らん、専門家を見つけて聞いてくれ」
『さっきから苛正しいぞ貴様っ、何者だっ!?』
「元通りすがりの仮面ライダーの『門矢礼司』……今は、お前たち『ギフター』を破壊する仮面ライダーさ。覚えておけ」
叫ぶ異形『バット・ギフター』に対して、不敵にそう名乗った礼司はコートの懐からリボルバーマグナムを模したバックルを取り出す。
右側には銀色のガングリップとシリンダーになっており左側には風車を象った黒いディスプレイある。
それ『ディソウルドライバー』を腹部に当てると、そこから伸びた銀色のベルトが自動で腰に巻きつく。
ディクロスドライバーのバックル部のシリンダーを動かした後、ライドバレットのスイッチを押し込む。
【RISING GUARDIAN!!】
起動して電子音声を鳴らした愛用のライドバレット『ライジングガーディアン』を装填し、シリンダーを再びバックルにセット。
【ZERO-ONE!×W! RIDE FORMATION!】
バックルから鳴り響き、ライドバレットに装填された黄色と緑の混じった紫のエネルギーが二つの姿を象る。
現れたのは黒いスーツに黄色い装甲を纏った飛蝗の戦士『仮面ライダーゼロワン』と、左半身は黒に右半身が緑でカラーリングされた風と切り札の戦士『仮面ライダーW』……。
赤い複眼を輝かせた二人の戦士はすぐに元のエネルギーに戻るとバックルの風車型ディスプレイへ収束されていく。
そして、ディソウルドライバーに手を掛けた礼司はグリップの引き金を弾いた。
「変身」
【SOUL RIDE!】
電子音声が、鳴り響く。
薬莢型のエネルギーが排出されると黄色と紫、そして緑の光を発しながら風車が高速回転する。
眩いほどの光が、礼司の身体を包み込んでいく。
【夢へ跳ぶ情熱のジャンプ!街を護る正義の守護者!変身せよ・RISING GUARDIAN!!】
強烈な光と、暴風にも相応しいエネルギーの余波が起こり、ギフターが顔を覆う。
やがてそれが治まると、そこにいたのは一人の戦士だった。
黒いスーツの上に装着されるのは緑色の装甲……両腕と両脚、そして胴体に装着されていて何処か身軽な印象を与える。
緑のマスクと触覚のようなアンテナには赤く丸い複眼が輝いており、宛ら飛蝗のようだ。黒いスーツには黄色い電子回路のような三つのラインが張り巡らせている。
紫のマフラーを靡かせた二つの戦士を合わせた一人の戦士……この世界で生まれた新たな仮面ライダー。
「
『仮面ライダーディソウル モデルライジングガーディアン』へと変身した彼の宣言を挑発と受け取ったのか、頭に血を上らせたバットが一気に襲いかかってきた。
「よっ!」
『ぐっ、こいつ……!』
焦ることなく、迎え打ったディソウルがバットと組み合うが、しばらく力比べをしていく内にテコや重心などの力の入れ方によって徐々にギフターが押され始める。
『このっ、離せ……!』
「隙だらけだぜっ!」
その組み合いを嫌い、バットが手を離したのを見計らったディソウルは右手を掴み上げると、捻って投げ飛ばした。
『ぐおっ!?』
投げられた勢いで、そのまま地面へと腰を落とす。
その反動を利用し、少し距離を取るとディソウルはグリップトリガーを弾く。
【BULLET LOAD! W!】
「そらっ!」
電子音声と共に、薬莢がバックルから排出される。
風を纏い、紫色のエネルギーを右脚に纏わせるとその場飛びの延髄蹴りを繰り出した。
『な、ぐはっ!~~っ!~~~~~~~っ!?』
えげつない角度からの首に衝撃が走ったバットは蹴られた箇所を押さえるも、容赦なく放たれた追撃のキックによって吹っ飛ばされる。
地面を転がる様子とは対照的に、ディソウルは涼しい様子だ。
「まっ。挨拶代わりはこんなもんか」
『ぐっ、こんなことでやられてたまるか!』
明らかに余裕のある声で近づく彼とは対照的に、いきなり一撃を貰ったバットは頭を振って自身に襲い来る衝撃を誤魔化してから両の羽根を用いて飛翔する。
そのまま先ほどの余裕すらも消えて再びディソウルへと強襲を図る。
「あーあー、なってないなってない全っ然なってない!決めた、見世物レベルにまで上げてやるよ」
明らかに余裕綽々になったディソウルは突撃してきたバットに合わせるように走っていく。
まずは顔面に向かって飛び膝蹴りを叩き込んで勢いを削ぎ、地面に倒れるよりも先に無理やり起き上がらせると、容赦なく両腰へ二発ミドルキックを叩き込み、回し蹴りを行う。
そして逆回転での後ろ蹴りをお見舞いすると、更にバットの顎に向かって右足の踵で蹴り上げる。
最後に放たれたヤクザキックによって再びバットの身体が吹き飛ばされた。
『あぐ……く、くそっ。くそくそくそっ!くそったれがあああああああああああっ!!!』
勢いよく起き上がったバットが地団太を踏み、目の前にいるディソウルを睨みつける。
その眼は憎悪に染まりきっており、たかが人間風情に追い詰められているという汚名を濯ぐべく攻撃を開始する。
『ミンチになれっ、仮面ライダーアアアアアアアアアッ!!!』
「おおっと!?」
口に当たる部分と掌から放たれた破壊音波にディソウルは慌てた様子で避ける。
先ほどまで彼がいた場所は地面が抉れているのを光景を見て、口笛を吹く。
「まだそんな隠し玉があったんだ。でもちゃーんと狙えよ?的当てじゃないんだ、当たってやるほど俺は優しくないんだぜ?」
『さっきからうざってぇんだよおおおおおおおおおおっ!!』
未だ叩かれる軽口に怒りを滾らせたバットは一心不乱に音波を放つが、標的であるディソウルは涼しい顔でその攻撃を躱し続ける。
しばらく避けていたが、やがて飽きてきたのか再びグリップを握り始める。
【BULLET LOAD! ZERO-ONE!】
「よっと!」
トリガーを二回弾くと、今度は黄色い薬莢型のエネルギーが排出される。
そして、その場で軽く跳ねた途端、彼の姿が消えた。
『なっ!?何処に……!』
「お前っ、テンパりすぎ」
動揺したことで思わず攻撃を止めたバットの背後から聞こえた声と共に鈍い衝撃が走る。
後ろに回り込んだディソウルの膝蹴りが背中へと直撃したのだ。
『ごっ!が、なっ!?』
「さぁて、空中遊泳の時間だ。しっかり堪能しろ、よっ!!」
更に蹴り上げて上空へと高く飛ばすと、電子回路を思わせる黄色い残像を描きながらバットの後を追うように跳躍し蹴り飛ばす。
蹴り飛ばした方へ先回りして蹴るという繰り返しをしばらく続けてから、強烈な踵落としがバットを地面へと叩き落とした。
次々と繰り出される足技は、バットの戦意を削り取っていた。
『……ぐ、ぐっ!くそっ、くそぉっ!!』
確実にダメージを積み重ねる蹴りを喰らい続けたギフターは、立ち上がるのでようやくだ。
『人間風情が…ぐべっ!?』
憎々し気に拳で地面を殴りつけ罵詈雑言をぶつけようとするも、気にすることなくディソウルは距離を詰めてその顔面に蹴りを叩き込んで黙らせる。
再度、蹴り飛ばされて身悶えするバットに視線を逸らすことなく両腕を広げて宣言する。
「こいつで終いだっ……最後の一発、きちんと受け取りなっ!」
ディソウルドライバーのグリップ部分にある撃鉄を起こし、トリガーを弾く。
二回、薬莢が排出されると同時に音声が鳴り響いた。
【FINAL BULLET LOAD! ZERO-ONE×W!!】
「はぁぁぁ……!」
低く腰を下ろし、発生させた風を身に纏ったディソウルが地面を蹴る。
その際に黄色く輝いたラインの残影が走り、紫のマフラーが靡く。
「そらっ!」
『うぐえっ!?』
一瞬で距離を詰めてからの、強烈なムーンサルトがバットの顎に直撃する。
まともに受けたその一撃は脳を揺らし、異形の身体を容易く空へと打ち上げる。
無論、それで終わらない。
既に標的を定めたディソウルは、上空にいる敵に向かって跳躍する。
高く、そして速く、宛ら弾丸の如き速度でディソウルは両脚を突き出した。
「これで決まりだ、マキシマムインパクトッ!!」
技名を叫び、必殺の両脚蹴りが更に加速する。
バットは必死になって破壊音波を放つするが、ディソウルが纏ったエネルギーの余波によって弾かれ全て無駄に終わってしまう。
やがて、その無駄な抵抗への終わりが近づいた。
「はあああああああああああっ!!」
『ひっ!?ぎぃやああああああああっっ!!』
直撃を受けたバット・ギフターの身体は完全に砕かれ、情けない悲鳴と共に爆散。
地面へと着地したディソウルは上空の爆発を背後に、勝利を刻むのだった。
とある世界。
ここでもギフターによる侵略が行われようとしていたが、その悪意はたった今消えようとしていた。
「はぁっ!」
『ぐはっ!?』
戦士の一撃が、ギフターの異形に打ち付けられる。
バイクヘルメット型の紫のマスクに菱形の複眼を橙色に輝かせたその戦士のバックルにはディソウルと似たドライバーが巻き付かれている。
しかし、リボルバーマグナムをモチーフとしているディソウルと違い、こちらは中折れ式のショットガンをイメージしているようだ。
紫のボディスーツには紫の骸骨をあしらった白銀の装甲を身に纏っており、黒いケーブルで締め付けるように装着されている。
そして左腕に装着された毒針のようなガントレットはまるで滅びへ誘う革命家にも、悪を刈り取る死神にも見えた。
怯んだギフターを見て勝機を得た戦士はバックルのボタンを押し、トリガーを弾く。
【FINAL BULLET LOAD……! HOROBI×CHASER……!!】
「スティングエグゼキューション」
紫と白銀のショットガンタイプの薬莢を排出した瞬間、擦れたような低い電子音声が鳴り響く。
処刑宣告に相応しいその名を短く呟いた瞬間、左腕のガントレッドが鞭や蛇腹剣のように伸びると狙いを定めた獲物に向かって放たれるとギフターの鳩尾に刺す。
そのまま巻き付いて拘束すると強引に戦士の方へと手繰り寄せ、同時に戦士の右脚に装着された黒いタイヤが紫色のエネルギーを纏って高速回転を始める。
そして生成した猛毒のエネルギーを右脚に充填させた戦士は、無抵抗な状態になっているギフターに向かって強烈な上段蹴りを浴びせた。
『いぎゃああああああああああっっ!!』
煉獄滅殲……容赦も慈悲の欠片もない必殺の蹴りから伝わる凄まじいほどの衝撃はギフターの身体を貫き、同時に流し込んだ猛毒とエネルギーが内側を粉砕した。
当然、それに耐えきれるはずもなくギフターは悲鳴と共に爆散、戦闘が終了する。
「……」
ショットガンタイプのライドバレット『デスコーピオンバレット』を弾倉から抜き取ったその戦士は変身を解除し、その姿を露にする。
新たな戦士の足跡も、刻一刻と近づいていた。