オリジナルライダー設定集   作:名もなきA・弐

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 『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』×オリジナルライダーのクロスオーバー小説です。今回は戯曲と舞台をテーマにしている作品から『小説・物語』をテーマに書いてみました。
 本をテーマにしたセイバーとはまた違う『本モチーフの仮面ライダー』を楽しんでいただければ幸いです。





昔々……とあるクリスマスの夜、一人の少女がいました。
小さな手にかけてある籠には大量のキャンドルが入っています。
寒さで小さな身体を震わせながら、少女は懸命に言います。

「キャンドルはいりませんか?綺麗な火を灯すキャンドルはいりませんか?」

赤いフードを被り、か細い声でキャンドル売りの少女は必死に言います。
キャンドルが全部売れなければ、怖いお父さんに殴られてしまうので全てを売り切るまでは家に帰れません。
しかし、少女には多くの不運が起こります。
気づかれずに馬車に轢かれそうになったり、悪戯っ子に靴を奪われ、その拍子に商品のキャンドルを雪で濡れた地面に落とし、駄目にしてしまいます。
街の人たちはそれに目を向けません。みんな忙しくてそれどころではないからです。
夜も更け、満足な食事や睡眠も出来ていない少女は懐に入れていたマッチを使って暖を取ろうとしました。
その時です。
曇った窓に等身大のキャンドルが映っていたのです。

「まぁ、とっても大きなキャンドル。これなら身体もすぐに暖まるわ!」

少女はすぐにマッチで火を着けると、窓に反射したそのキャンドルに灯しました。
予想した通りに少女の身体はすぐに暖かくなります。
すると驚く光景が目の前に現れます。
温かいスープや七面鳥などのごちそう、飾られたクリスマスツリーなどの幻影が現れたのです。
幸せな幻影に目を輝かせた少女は、必死にキャンドルの火を消さないようにマッチを使い続けました。
最後のマッチを使って現れた幻影は、自分を可愛がってくれた祖母です。
祖母の幻影は涙を流します。大切な人に出会えた少女の目にも涙が溢れるのでした。
少女が幻影を見て喜んでいるころ、街は大きな火に包まれています。
大きなキャンドルは、少女自身でした。彼女は自分に火を着けてしまったのです。
燃え盛る火はまるで少女の不幸と悲しみを吸い取ったかのように大きくなり、街を巻き込んでいるのです。
大嫌いなお父さんも悪戯っ子も、自分を無視した住民たちをも火に包まれます。
後に残っているのは燃え盛る街と、幻影に嗤うキャンドル売りの少女だけなのでした。


仮面ライダーエクリヴァ ~幻想を記す者~

レヴュー……それは歌とダンスが魅惑の舞台。

煌びやかなステージの上で、可憐で華麗な衣装に身を包んだ少女たちは武器を手に躍る。

栄光・再興・成功……それぞれを胸に秘めたキラめきを持って『オーディション』で情熱と絆を歌う。

そして、最もキラめいたレヴューを魅せた舞台少女には運命の舞台に立つ者……『トップスタァ』へと至る。

故に彼女たちは魅せる。

歌って、踊って、奪い合う。それがこの舞台の物語だった。

 

『寒い、寒いよ……』

『っ!?』

 

少女たちの動きが止まる。

似つかわしくないほどのか細い声。何処か浮世離れしたような聞き覚えのない声が彼女たちを止めたのだ。

声のする方へ視線を向ければ、そこにいるのは予想した通り一人の少女。

赤いフードを被り、お世辞にも裕福でない身なりの小さな女の子が立っていたのだ。

細い身体を震わせながら呟く見知らぬ少女に全員が呆気に取られるが、そんな空気を気にすることなく駆け出した少女がいた。

 

「どうしたの、大丈夫!?」

 

底抜けに明るい、けれども抑えきれぬ情熱を秘めた少女は活動的な茶髪のツインテールを靡かせながら女の子の手を握る。

彼女もこのオーディションには迷い込んでしまったことがあるため、自分と同じ迷子なのだろうと直感的に考えたのだ。

しかし、ツインテールの少女の声に赤いフードの少女は答えない。

ひたすらに身体を震わせ「寒い寒い」とうわ言のように繰り返している。

 

『ここは寒いの、だから暖かくならなきゃいけないのっ。だからキャンドルに火を着けるの……』

「んんっ?ねぇ、それってどういう…」

『私が幸せな幻影を見るために、キャンドルに火を着けなきゃいけないってことだよおおおおおおおおおおおおおっっ!!!』

【キャンドル売りの少女……!!】

 

絶叫と共に、少女の姿が変貌する。

赤い炎にその身体が包まれ、やがて炎が消えると同時にその姿を現した。

インクボトルのような黒いエンブレムが埋め込まれた赤いフードに白いシャツ、少女のような出で立ちはそのままだがその身体と頭部は白い蝋燭のようになっており、溶けた箇所がデスマスクのように浮かび上がっている。

頭頂部には赤い火が動きに合わせて揺れているのが見えた。

少女が変貌したことに驚きを隠せない舞台少女たちに向かって、蝋燭の怪人は炎をステージ全体に撒き散らすと、周囲の景色が燃えて変わる。

そして、燃え盛る古い街並みのような景色へと切り替わると怪人は笑い嗤う。

 

『そうだっ、もっと寄越せっ!人間たちの不幸を、恐怖をっ、絶望をっ!私という物語を終わらせるために、幸せな幻影を永遠に見るためにっ、この寒さを消すために!全て燃えろおおおおおっ!!』

 

蝋燭の怪人に動揺し戸惑いながらも、舞台少女たちは互いの身を護るべく武器を手に取るのだった。

 

 

 

 

 

先ほどとは違う薄暗いステージに、紫色の緞帳。そして何百何千人の観客を迎えるのを前提としたような無数の観客席。

そこはまるで劇場のようだった。

しかし劇場と呼ぶには些か不気味であり、廃れていると斬り捨てるには妙な存在感を放っている。

しばらくの無音が続くと、やがて緑のスポットライトがステージの一か所を照らす。

 

『いよいよだね。ようやく美しい僕たちの舞台が上がる……準備は出来ているかな?「兵器の兵隊」君』

 

そこにいたのは、緑色のローブと全身を包んだ異形。

その出で立ちはまるで暗殺者のようだが、その身体は黒い斑点と黄色であり宛ら肉食動物のサーバルキャットを思わせる。

流暢な言葉で、まるで誰かに見せつけるように暗闇へとその手を差し出す。

瞬間、赤いスポットライトがその箇所を照らし出す。

 

真名(タイトル)で呼ぶな!吾輩には「ウェポン」という確固たる名前があるのだっ!タイトルで呼ぶのは貴様の悪い癖だぞ「サーバル」ッ!!』

 

兵器の兵隊と呼ばれたことに憤慨した赤い異形が重い足音と共に暗殺者の猫……「サーバル」と呼んだ異形に近づいてくる。

その姿はまるで兵士と兵器を混ぜ合わせたような異形であり、イギリスの近衛兵のような赤い制服で屈強な身体を包み込んでおり、頭部には戦車の砲台と何かの勲章を胸元にいくつも身に着けている。

しかし、猫の怪人は気にするどころか「ごめんごめん」と軽く笑いながら謝罪する。

 

『だって、君のタイトルは無骨でカッコ良いじゃないか。確かに僕は美しい顔と身体を持った誰よりも美しい存在さ。けど「アサシンになったサーバル」だよ?変なタイトルを持った身としては羨ましいのさ』

『馬鹿者っ!それは貴様が不真面目だからだっ!我らは物語の深淵に潜みし者、人間を支配するに相応しい存在……誇りを持つこそあれ、恥じることなどないっ!!』

『その通りだ』

 

赤い異形の言葉に同意するような声が響く。

冷たく凛とした女性の声と共に青いスポットライトが二階席を照らす。

 

『タイトルの名で価値が決まるわけではないだろうに……そんなことは一先ずどうでも良い』

 

話を無理やり止めた女性の怪人……全身が雪と氷柱で構成されており、まるでドレスを纏った姫を思わせるようだ。

女性の怪人が猫の怪人に問う。

 

『物語の一片がここから出ていくのを見たが、貴様の仕業か?』

『そうだよ』

 

あっさりと、あっけらかんと認める猫の怪人に詰め寄るのはやはり赤い兵器の怪人だ。

「どういうことだ」と鼻息を荒くする彼に手で制しながら猫の怪人は続ける。

 

『人間界では面白い催しが行われているみたいでね。せっかくだから見てみたいと思ったのさ……美しい僕たち「悲劇と狂気の物語」が、人間たちから全てを奪っていく様をねぇ!』

 

猫の怪人の声が愉悦に染まる。

その言葉に赤い兵器も青い氷の姫は何も言わない。

しかし、猫の怪人が言ったことに否定している様子もなかった。

 

『さぁっ!始めようか、僕たち「ストーリオ」が人間界を支配する最高の舞台をっ!』

 

暗殺者の猫『サーバル・ストーリオ』が観客席に向かって両腕を上げて叫ぶ。

その声に合わせるように赤い兵器『ウェポン・ストーリオ』も各箇所に備わった砲塔から砲撃を放ち、ステージにおりたった青い氷の姫『スノウプリンセス・ストーリオ』が氷の結晶をステージに降らせる。

悍ましくも幻想的な光景、悲劇を巻き起こさんとする狂気の物語にいつの間にか観客席に存在していた顔のない白い異形が拍手を行う。

その喝采にサーバルたちが恭しく頭を下げると、緞帳はゆっくり垂れてくる。

 

『ふん、精々踊っているんだな……俺の目的のために』

 

ただ一人、その派手なパフォーマンスを茶番だと言いたげに鑑賞していた黒い戦士が、観客席で脚を組みながらくぐもった声でそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

「えっと、資料資料と……」

 

自分の部屋で、少年は一人必要な書類を探している。

顔立ちは整った美少女であり、黒のショートヘアが似合う中世的な少年だ。

身長も一般男子よりは小さく本人の若干だがコンプレックスに思っている。そんな青空を思わせるような瞳を持つ彼『軌跡昴(きせきスバル)』は今、必要な資料を探していた。

新聞部に所属している彼は翌日、『凛明館女学校』へ同じ部活の友人と共に取材に行くことになっており、事前調査として受け取った書類を探しているのだ。

 

「うーん……あっ!あった」

 

眼を通してはいたが、念のためもう一度と読み始めた時だった。

突如として聞いたことのない電子音が鳴り始めた。

 

「うわっとと!な、何っ?」

 

慌てて発生源を探し、室内を見渡すとそれが自分のスマホから鳴っていることに気付く。

首を傾げながら、スマホを手に取って画面を見ると、そこには横向きのキリンを象ったような白黒の丸いマークがゆっくりと回転しているのが映っている。

見覚えのないそれを不気味に思った彼は、スマホの画面をタップしてアンインストールを実行するが、タップしても反応はない。

最終手段として電源を切ろうとするも、あろうことか電源が切れる気配や様子が一切ないのだ。

 

「一体、何が……!?」

 

訳も分からず、混乱する今度は突然、何の予兆もなく目の前が漆黒に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

一瞬の浮遊感の後、何処かに足を乗せた。

しかし、急なことで上手くバランスが取れなかった昴は何やら固い物体に腰を打ち付けてしまう。その痛さで少し怯んでいたが、次第に腰の痛みも引き、段々と視界もはっきりしてくる。

 

「これは……!?」

 

視界全体に広がっていたのは、見たこともない何処かのステージ。

その舞台で彼は一人腰を下ろしていたのだ。

しかし、そこに観客はおらず、何処か寂しさを感じる。

少し離れたところに、何かがいることに気づき視線をそちらに向ける。

 

「……キリン?」

 

キリンがいた。

比喩とかそういうのではなく、動物園とかで見る首の長いあのキリンである。

何故キリンがいるのか、そしてここは何処なのか、様々な疑問が浮かんでは消えていく。

混乱する彼にキリンが首を向けた。

 

『初めまして、秘めたるキラめきを持つ少年よ』

「声渋っぶ!?」

 

キリンが人語を喋ったことも驚くことだが、その見た目からアンバランスなほどの渋い男声で喋ったのだ。

思わずツッコミを入れてしまった昴に罪はないだろう。

頭の中は大混乱だが顔や態度にそれを出さぬようにしつつ、立ち上がり軽くズボンを払いながら辺りを見回してみる。

無人の客席が山のように広がり、崩れ落ちそうな複数の塔が奥に見える奇妙な世界が広がっている背景。

ベニヤなどではなく大理石みたいなもので作られた本格的な代物だ。そして彼らが立つステージには素人でも分かる大掛かりな仕掛けが数多く見える。

そして何よりも気になるのが、ここには昴とキリンしかいないということだ。

先ほどまで誰かがいた痕跡はあるが、今は一人と一匹だけであり、大きなステージであるにも関わらず世界から切り離されたかのような、何処か空虚な感覚がするのだ。

一度咳払いして、何とか思考と心を落ち着かせてから目の前のキリンに視線を向ける。

 

「えっと……君、いやあなた?もうどっちでも良いや。一体何なんですか?」

 

気を取り直した彼は問う。

敬語を使っているのは彼なりの配慮だろう……困惑する彼とは反対に、キリンはただ渋い男の声で答える。

 

『私は「キリン」。舞台少女たちの感動的な舞台を見るためにここにいます』

「『舞台少女』……?」

 

彼は語る。

舞台に魅了され、舞台で生きる少女たち……それが舞台少女なのだと言う。

 

「それなら、どうして俺を?確かに女の子に間違われることは非常に不本意ながらありますけど、これでも立派な男子ですよ?」

『至極当然な疑問……分かります。ですが、あなたにはこの舞台に入る「資格」があるのです』

「資格?」

 

疑問符を浮かべる昴。

すると、キリンの隣に薄く水色がかったショートヘアーの少女がいつの間にか佇んでいた。

不思議な色彩を持つ青の瞳を薄く開け、黒いタイを着けた袖のない白いブラウスに白のフリルをあしらった紺色のスカートに身を包んだ少女が口を開く。

 

「初めまして、軌跡昴さん。私は『える』」

 

静かな声で自らを名乗った少女……えるは一礼した後、凛とした静かな瞳を彼に向ける。

黒いストッキングに覆われた脚を動かし、彼の元まで近づく。

 

「ここは『オーディション』……秘めたる情熱、眩いキラめきを持つ少女たちがトップスタァを目指して競う場…」

「まどろっこしい話は後で聞きます。何で俺がここに呼ばれたのか……それを教えてくださいっ」

 

彼女の説明を遮り、単刀直入に尋ねる。

少なくともこの場所は本来ならば少女たちが踊るステージ。ならば自分が呼ばれるにはそれ相応の理由があると判断したからだ。

昴の真剣な視線に「分かりました」と頷くと、説明すべく口を開いた。

 

「最初に、この世界には様々な物語があることはご存知でしょうか?」

 

えるの問いに昴は頷く。

桃太郎や金太郎などの日本昔話、グリム童話やイソップ物語など古今東西、数多くの物語が存在している。

それらは小説や絵本、漫画やアニメ、そして戯曲などの様々な媒体で語り継がれている。

 

「その物語には、様々な解釈が生まれることもあります」

「まぁ、そうですよね」

 

その通りだ。

物語の中には当然、当時の情勢や残酷な描写など現代では意にそぐわない描写や結末があり、その部分を読みやすく改編することはありえない話ではない。

えるの説明が続く。

 

「その中には、多くの観衆や読者の認知によって在り方を捻じ曲げられた物語があるのです」

 

そう言って、黒い手袋に覆われた手を軽く上げた彼女はスクリーンに映像を再生する。

そこには煌びやかな衣装に身を包んだ少女たちが、蝋燭の怪人と交戦している様子が映っていた。

 

「何だ、あれっ?」

 

恐らく少女たちは話に出た舞台少女なのだろう。しかし、頭に火を灯している怪人に自然と身体が震えてしまう。

 

『ストーリオです。観衆の歪んだ認識から産み出された狂気の物語……彼らは自らの物語に結末を記すべく、人を襲いキラめきを奪い尽くす』

「そして、あれはハンス・クリスチャン・アンデルセンのマッチ売りの少女に対する悲劇を象ったモノ……タイトルを付けるとするのなら『キャンドル売りの少女』でしょう」

 

キリンとえるの説明に、昴は漠然とだが理解してきた。

つまり、あの怪人は物語に対する負のイメージによって誕生したのだろう。

ストーリオには結末は存在しない。何故なら、本来なら存在しない物語だからだ。

そして彼らは、人を襲うことで自身に物語が記されていく。

結末が存在するということは、自らが存在することを証明することだ。

その映像を観た昴が、無意識の内に拳を握り締める。

 

「物語は、誰かを苦しめるためにあるんじゃない……!」

 

昴は、物語が好きだ。

小さい頃、母が童話を読み聞かせてくれたことが切っ掛けとなり、二人の少女と観た舞台で憧れるようになった。

自分も、多くの人を感動させるような物語を書いてみたいと……。

苦しそうに握り拳を固める彼に、キリンとえるは説明を続ける。

 

『ストーリオが結末へと至ればオーディションと現実、何れはキラめきを奪われ続ける舞台へと変貌してしまうでしょう』

「しかし、今の舞台少女たちではストーリオを倒すことなど不可能です。それこそ、奇跡でも起きない限りは」

「……その口ぶりだと、何とかする方法があるんですね?」

「はい。物語の改訂者『仮面ライダー』になることです」

 

頷いた彼女は指を鳴らすと、その手には分厚い赤の本型のバックルのような道具が現れる。

そして、小さなペンのようなアイテムを差し出す。

 

「舞台少女はあくまでも役者でしかない。作品の新たな可能性を作り出せても、群衆の感情を揺さぶることは出来ても、世界に影響を与えるストーリオの物語には抗えないのです。それが喜劇であれ悲劇であれ……」

『仮面ライダーは、舞台少女たちの代わりに物語を修正し護る役割があります』

 

えるとキリンの言葉を耳に、昴は二つのアイテムを手に取る。

重い……小さなペンには確かな重さがあった。

物語が込められているからだろう。確かな力を感じ取った彼は、手渡した彼女の顔をしっかりと見る。

 

「……覚悟は、言うまでもありませんね。ストーリオのいる場所まで、ご案内します」

「お願いします」

 

了承を得たえるは、再び指を鳴らすと彼女たちはステージから姿を消した。

 

 

 

 

 

視界がはっきりすると、昴たちは一際高い屋根の上へと立っていた。

見下ろせば街のほとんどが炎で燃えており、辛うじて彼らのいる場所は原型を保てている。

そして、中央の広場では舞台少女たちを炎で襲う怪人『キャンドル・ストーリオ』の暴れている姿が見える。

 

「さぁ。ここからはあなたのデビューです」

『華麗なダンスを、期待しています』

 

えるとキリンの言葉に応える代わりに、昴はバックル『ストーリードライバー』を腰に当てる。

伸びたベルトが完全に固定したのを確認した彼は、ノベルペンのキャップ部分にあるスイッチを押し込んだ。

 

【CHARLEMAGNE STORY!!】

 

荘厳なメロディが響く。

そのペンが宿す物語は、フランスに伝わる大帝シャルルマーニュと、彼に仕えた十二勇士の冒険譚……起動したそれをストーリードライバー横にあるインクボトル型のスロットに装填。

 

【執筆開始!】

 

待機音声が鳴り響く中、昴は屋根から飛び降りながらドライバーの横にあるグリップを握り締める。

そして、それを引っ張りながら叫んだ。

 

「変身!」

【OPEN THE BOOK!】

 

瞬間、本型のバックルが開くと同時に空白のページにシャルルマーニュストーリーの物語が文章として浮かび上がっていく。

そしてそこから水色の文字がドライバーから出てくると、昴の身体を覆い隠し戦士の姿へと変える。

怪我なく着地するころには、変身を完了していた。

中央は黒で左右は白銀で彩られたスーツに覆われると、その上に白銀の甲冑が胴体と両手足に装着される。

そしてベルトから下まで垂らした青い裏地のあるローブが変身の余波で靡いた。

 

【幻想と現実の狭間に存在せし聖騎士たちの冒険譚!舞台で踊れCHARLEMAGNE STORY!!】

「後悔・失敗・現実逃避……あの日の軌跡は我が烙印」

 

変身完了を告げる電子音声が響かせながら水色の複眼を輝かせ、白銀のマスクで表情を隠した彼は言葉を紡ぐ。

突然現れた戦士の登場に舞台少女たちは戸惑うも、気にせず彼は台詞を喋る。

まるで戯曲の人物たちのように、自らの想いを伝えるように自然と口から出てくる。

 

「この身一つで救われる命があるならば、今一度輝かせてみせよう昴星!『仮面ライダーエクリヴァ』……悲劇の物語を覆す!」

『何を、しゃらくせえええええええええええっっ!!!』

 

物語の改訂者……エクリヴァの口上を挑発行為と受け取ったキャンドルは苛立ちを露わにしながら、直進する。

真っ直ぐに、舞台少女たちに目もくれずに走る彼女は両手に炎を纏わせると握り締めた拳で目の前の戦士を殴り飛ばそうとする。

しかし、その攻撃が届くことはなかった。

 

「ふっ!」

 

殴り返して逆に弾いたからだ。

舞台少女たちとは違い、対ストーリオ専用に開発されたエクリヴァの力はキャンドルの炎を完全に上回っている。

更に距離を詰めると、キャンドルの身体を殴って徐々にダメージを与えていく。

身体の勢いを利用した左右の手から繰り出される拳がストーリオを怯ませた。

 

『こ、こいつうううううううっ!!』

「女の子を殴る趣味はないけどそれはそれだ……これは君に傷つけられた子たちの分だっ!!」

『ぎゃああああああああっ!?』

 

今度は顎に向かって強烈なトルネードキックを叩き込んだ。

蹴り飛ばされたキャンドルが地面に叩きつけられるも、すぐに起き上がって怒りを燃やすように頭頂部に灯した火を昂らせながら彼を睨みつける。

 

『……ああああああっっ!!!』

 

そして今度は火球を飛ばし始めた。

絶叫と共に放たれた炎はエクリヴァに迫るが、彼に焦りの色は見られない。

 

「ふっ!」

【CHARLEMAGNE STORY!】

 

スロットに装填されたノベルペンを押し込み、電子音声電子音声が響くとバックルから文字の羅列を模した水色のエネルギーが再び出現しエクリヴァの手に収束されていく。

やがて、それは一振りの剣へと形作られた。

 

「はぁっ!」

『何っ!?』

 

その剣を振り、火球を斬り裂く。

西洋剣の形をした水色の刀身を持つ白銀の武器『ジュワユーズセイバー』を構え、そのまま前進すると距離を詰めたエクリヴァがキャンドルの胴体を袈裟斬りにする。

 

『ぐぅっ!!この…』

「でやっ!」

 

青い光が躍る。

輝きが美しい軌跡を描くと同時にキャンドルの身体に耐え切れないほどのダメージと傷が刻まれていく。

ローブを靡かせ、時折放たれた敵のカウンターを華麗なジャンプで回避するとその場で一回転してから、その勢いで相手を斬る。

それはキャンドルが語る悲劇ではない、もはやこの場においてストーリオは単なる引き立て役に過ぎない。

エクリヴァの織り成す物語と舞踏の独壇場だった。

 

「はぁっ!」

『ぐえっ!?』

 

片足で踏切り、そこから捻りを加えた一回転半の回し蹴り……トリッキングの一つであるチートセブントゥエンティキックで吹き飛ばされ、キャンドルが地面を転がった。

もはや起き上がることしか出来ないストーリオを見て勝機を感じ取ったエクリヴァは、グリップを押し込みバックルの本を閉じる。

そして、再びグリップを引っ張って本を開いた。

 

【SHOW TIME! CHARLEMAGNE STORY!】

 

水色の文字型エネルギーを右脚に収束し、地面を蹴る。

跳び上がったエクリヴァはキャンドルに向かって足を突き出し、渾身のキックを炸裂した。

凄まじい勢いで、急降下するその姿はまるで水色の流星。

 

「はああああああああああっっ!!!」

『ぎぃやああああああああああああっ!?』

 

躱すことも出来ず、必殺のキックを叩き込まれたキャンドル・ストーリオは悲鳴と共に爆散。

その爆発を背後に余波でローブを靡かせながら、華麗なポーズでその勝利を収めるのだった。

 

「すごい……!」

 

思わず声が漏れた。

舞台少女とも違う仮面の戦士……周りを引き付ける立ち回りが全てを魅了して離さない。

キリンは何も言わず、えるも予想以上の素質に笑みを見せる。

しかし、それはすぐに終わる。

 

『ぐっ、うう……!』

 

呻き声に視線を向ければ、怪人態が解けたキャンドル売りの少女が両膝と両手を地面につけていた。

その姿は先ほどまでの悪辣さはなく、泣きじゃくる姿は年相応の少女そのものだ。

 

『寒いっ、寒いよ……どうして誰も私を助けてくれないのっ?』

 

少女は必死に口を開く。

苦し気に、張り裂けんばかりの悲哀を胸に秘めた叫びが続く。

 

『私は頑張った!「全部売れ」って言うから頑張って売ったよ!!だって売らなきゃお父さんが怒るからっ、ご飯が食べられないから!クリスマスの寒い日だって必死に頑張った!』

 

「だけど」と小さな手を強く握る。

 

『誰も買ってくれなかった!それどころか、私をまるで邪魔者みたいにっ!!私にだって幸せになる権利はあるのにっ!どいつもこいつも私の邪魔をする!!』

 

自業自得、私は悪くない、悪いのは奴らのせい……。

そう言って彼女は自分の非を認めない。いや、認める訳にはいかないのだろう。

 

『幻影に縋って何が悪いのっ、私には幸せな幻影を見る資格すらないって言うのっ!この寒さに耐え続けろって言うのっ!?誰でも良い、誰でも良いからぁ……!』

 

私を助けてよ……。

キャンドル売りの少女は涙を零す。抑えてきたものが一気に溢れ出したように、再び泣き出す。

その姿に、誰も言うことが出来なかった。

何と言葉を掛ければ良いのか、どうすれば彼女の心が晴れるのか、その術を知らないからだ。

しかし、沈黙していたエクリヴァはバックルのスロットに装填していたノベルペンを取り外し、宙に向かって文字を書きながら少女へと近づく。

泣いているキャンドルの売りの少女と視線を合わせるように膝をつき、語り掛ける。

 

「ごめんね、遅くなった」

『えっ?』

 

その言葉に少女は顔を上げる。

泣き顔の彼女に、エクリヴァは言葉を続ける。

 

「君のお婆さんに頼まれたんだ。『可愛い孫娘が苦しんでいる。助けてほしい』って……」

 

空間に文字が、物語が記されていく。

まるで続きを書いていくように、ノベルペンが独りでに走る。

 

『私を、助けてくれるのっ?』

「ああ。でも、君はこれから天使様とお話をしなくちゃならない……」

 

辛い声で、彼は話す。

『キャンドル売りの少女』の物語を知った彼だから分かることだが、火災の原因は事故の側面が強いのだが、事実はどうあれ結果だけを見れば彼女が犯人だ。

だから、無罪放免とする訳にはいかない。

 

『そう、だよね。私、たくさんの人を苦しめた……!』

「だけど、君が苦しんでいたのは天使様も分かっている。お話が終わったら、お婆さんにも会わせてくれる」

 

それは嘘ではない。

何故なら、キャンドル売りの少女の続きを現在進行形でエクリヴァが書いているからだ。

ノベルペンを走らせ、暗い世界が徐々に明るく、寒い空気が暖かくなっていく。

 

「幸せになれるか分からない。でも、これからはお婆さんとずっと一緒だよ」

『本当?本当にお祖母様と一緒にいられるのっ』

「そうだよ。街のことは牧師様と残った人たちに任せて、今はゆっくりお休みなさい……」

『うん。ありがとう……!』

 

その言葉を最後に、ノベルペンが最後の一節を書き終えた。

途端に少女の身体が優しい光に包まれる。

ゆっくりと瞳を閉じた彼女の身体を、地上へと降り立った天使が優しく抱え上げて天へと昇っていくのだった。

 

【執筆終了!】

 

これこそがエクリヴァの……仮面ライダーが持つ能力。

歪んだ物語を、改訂し修正することだ。

 

「せめて、幸せな結末を……」

 

役目を終えて戻ってきたノベルペンを取った彼の手には、一冊の赤い本があるのだった。

 

 

 

 

 

ストーリオの戦闘を終え、変身を解除したところで昴は自分の部屋にいた。

どうやら、役目を終えると今まで自分がいた場所に戻るようになっているらしい。

一先ずバックルとノベルペンが手元に残っていることを確認し、手に持っていた赤い本を見る……恐らくはキャンドル売りの少女の物語なのだろうがこのまま置きっ放しという訳にもいかない。

どうしたものかと頭を悩ませていた時だった。

 

「お困りのようですね」

「うわっ!?」

 

突然の声に驚いて振り向けば、えるがベッドに座っていた。

変わらぬ表情のまま、手に持った本に視線を向ける。

 

「そちらの物語に関しましては、また後日説明をさせて頂きます。まずは労いの言葉を……デビューおめでとうございます」

「えっと、ありがとうございます」

 

一方的に話題を変える彼女に、どう返すべきか戸惑いながらも昴は軽く頭を下げる。

そこでふと彼女の服が汚れていることに気づく。恐らくストーリオとの戦闘の時、いつの間にか汚れていたのだろう。

 

「っ?ああ、申し訳ありません。お話をする装いではありませんでしたね」

 

視線に気づいたえるは、謝罪するとその衣服に手をかけて……。

 

「……てっ!何やってるのかなぁっ!?///」

 

敬語を忘れて思わず叫んでしまった。

視界にはタイを解き、ブラウスのボタンを外した彼女に顔を真っ赤にする。

意外と着やせするタイプかという雑念を必死に振り払う彼に、えるは小首を傾げながら答える。

 

「見て分からないのですか?汚れたので着替えようかと」

「なるほど納得!でも待って!?俺の性別覚えてるかな!男っ、トイレだと青い紳士マークに行く性別なのっ!分かる!?」

「存じてますよ。ですが、それと私が服を着替えるのは関係ないのでは?」

 

そうしている間にも彼女はボタンを全て外し、今度はストッキングを脱ぎ始める。

何処か艶めかしいような、妙な背徳感に増々顔を真っ赤にした昴は更に慌てる。

 

「あーあー!ちょっと待って!?スカートまで脱ごうとしないでえええええええっっ!!!///」

「きゃっ!?」

 

瞬く間に脱ぎ、今度はスカートまで脱ごうとしたところで昴が動いた……が勢い余って躓いてしまい、えるに覆い被さる形になってしまう。

丁度、その時だった。

 

「やっほー昴ちゃんっ!みんなで食べたスウィートポテトが余ったからお裾分けに来たよ!小母さんにはもう渡してあるからね!」

「お邪魔します」

「ごめんね昴君。華恋ちゃんたちがどうしてもって……えっ?」

「へっ?」

「……あら?」

 

ドアを開けて前触れもなく部屋に入ってきたのは、幼馴染である少女……先ほどまで舞台にいた華恋とひかり。そして申し訳なさそうに謝るのは彼女たちの友人である露崎まひるだ。

手作りのお菓子を持って華恋が満面の笑みで入ってきたのだが、彼女を先頭に残りの二人も固まった。

何故ならドアを開けて入った室内では、昴が衣装を半分脱いだえるを押し倒していたからだ。

 

「華恋……それにひかりと露崎さんまでっ!?い、いいっ、いつの間に……?」

「「「……」」」

 

滝のような汗を流しながら顔を真っ青にしているが、三人は衣服の乱れた彼女を押し倒している姿をしばらく見つめる。

数分後、華恋が慌てて部屋から出た。

そしてよく響く声。

 

「小母さん大変ー!昴ちゃんが女の子を部屋に連れ込んで押し倒しているーーーーーー!!」

「華恋んんんんんんん!待って違う誤解っ!お願いだから俺の話を聞いてえええええええええええええええええっ!?」

 

まずは三人の誤解を解くのが先だと、昴は涙ながらに決意するのだった。




 多分、みんながツッコミたいであろう疑問点。

Q.何でオリ主はまひるとも顔見知りなの?
A.幼馴染の華恋とひかりが昴の家にアポなしで突撃してくるからです。その縁で知り合い二人の話をしていたら何やかんや仲良くなりました。

Q.まひるって華恋の好きだよね?オリ主に嫉妬とかしないの?
A.アニメ後のスタリラ時間軸なので落ち着いています。オリ主は女の子顔なのと手のかかるルームメイトのおかげで姉パワーとおかんパワーがカンストしています。ぶっちゃけオリ主にお世話したいオーラを必死に抑えている状態です。

Q.何でまた女の子風男の子なの?
A.暗殺教室のアニメ見ていたらこんなキャラになりました。俺は悪くねぇ。

Q.スタリラでクロスする意味は?
A.書きたくなったから書いた。今回のオリジナルライダーはスタァライトありきだったからです。
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