今回はアサルトリリィが原作のオリジナルライダーです!ただ、作者はアニメを一気に見て勢いで書いたので原作設定とかがかなり危ういです。
それでは、どうぞ。
2024/11/24
アイテムを歯車からカードキーに変更しました。
世界は、一つの脅威に晒されている。
『HUGE』……それはとある巨大化細胞の暴走が生んだ生命体。捕食と寄生、成長を繰り返すことで多様な形状を獲得し、人類に牙を剥いた。
進化と増殖を続けるヒュージに対抗するのは決戦兵器たるCounter Huge ARMSこと通称『CHARM』と、それを扱うことの出来る少女たち『リリィ』……。
これは、一つの節目を終えた彼女たちと少年の物語。
誰よりも死に近かった彼は、胸の鼓動を刻み続ける……。
赤が、立ち上る。
轟々と音を立て、全てを呑み込みながら大きくなっていく。
それはただの赤ではない。
火だ。
何処にでもある一般住宅を火元に、小さかった火は大きな炎となっていく。
周囲の人が恐れ、消防士が懸命な消火活動を続けるのを後目に『彼』は……。
『……くくっ』
笑った。
他の連中には見えないようにしてある……この光景を理解出来ない連中のくだらない野次などで気分を害されたくなかったからだ。
視線を少し下げれば、住んでいた家族が困惑し恐怖の表情を浮かべている。
何と素晴らしい、何て美しい、炎という存在は自分の求める感情を一早く生み出してくれる。
それだけではない。
何度か火を放つ内に、彼は炎に対して異常なまでの執着を持つようになっていた。
暗闇を照らす灯りが、悲鳴や絶望を生み出す火が、全てを包み込み灰塵とかすあの炎が……。
彼にはとても扇情的で、愛らしく思えるようになった。
ああ、燃やしたい……!
艶めいたあの赤を、もっと間近で、もっと大きな炎で見たい。
この感情を、何と言えば良いのだったか?世間ではこの強い感情を端的に分かりやすい言葉として使っていたはずだ。
そうだ、確か……。
『燃える……!』
私立百合ヶ丘女学院……鎌倉府にあるお嬢様学校を母体とした、リリィ教育の世界的な
ここの学生はCHARMを用いた対ヒュージ戦闘を基本に、軍事教育や訓練をハイレベルに施されている。中でも九人一組のレギオンと呼ばれるチームを構成して戦うノインヴェルト戦術においては世界的に有数な名門でもある。
そんな学園の、土曜日の午後に差し掛かった時刻だった。
「ふぇー……疲れた~」
清潔感のある白いテーブルに突っ伏すように椅子に腰を下ろしたのは、桜色の髪と紅色の瞳を持った少女で、左側のサイドテールにはシロツメクサを模した髪飾りを身に着けている。
白いフリルのある黒い学生服に身を包んだ彼女は、あどけなさが残る幼い顔立ちには疲れの色が出ており、心なしかサイドテールも元気なさげに動いているようだ。
「午後の授業、なくて良かった……」
少女『一柳梨璃』は顔を上げる体力もないまま、テーブルに上半身を預ける。
かつて自分を助けてくれたリリィに憧れ、彼女のいる学園に入学し、絆の証でもある
しかし、それはそれとしてだ。
憧れのリリィであるお姉様の訓練は今まで以上に厳しくなっており、今もこうして追いつくので必死なのである。
それだけ自分に期待し、大切に思っていることは分かるのだが、今回の訓練はいつも以上に厳しかった。
幸い、今日は授業も午前中だけのため、午後からは自由になっている。
このまま部屋に戻って寝てしまおうかと思っていた時だ。
「お嬢様」
聞こえてくるのは、中性的な『少年』の声。
女子校であるここでは、絶対に聞かないであろう声だ。
反射的に思わず上半身を起こした彼女のテーブルに置かれたのは、白いティーカップ。
音もなく置かれた器には、紅茶が注がれており、そこから湯気が上っている。
未熟とはいえ、リリィとしての戦闘経験のある彼女に気付かれることなく、紅茶を用意したのは穏やかな笑みを絶やさない執事服の少年……。
「あ、ありがとうございます。瑠依さん」
慌てて手櫛で髪を整えてお礼を言う梨璃に少年『三笠瑠依』は一礼する。
瑠依は数か月前に百合ヶ丘女学院へ来た専属執事だ。
理由は分からないが、理事長代行曰く『異性に慣れるための措置』として迎えたらしく、それ以外の詳細は分からない。
肩書通り、黒いタキシードに白い手袋という出で立ちの彼はやや女性的な幼い顔立ちと透き通るような黄色い瞳が特徴的だ。
赤みがかった茶髪の右側には、桜色の大きなリボンが着けられており、知らない人が見れば『男装をしている少女』に見えたかもしれない。
ひ弱なのかと問われればそうではない。
華奢ながらも力は一般的な男子よりはあるし、私闘を始めようとした生徒二人を無傷で取り押さえていたことからも、腕に覚えはあるのだろう。
仕事がない時は常にぼんやりとしている姿を見ることもあるのと、中性的な外見のため他の生徒たちからも話しかけられたりしている。
「先ほどお見かけした時、いつもよりも疲れているご様子でしたので……お口に合うか分かりませんが」
「いえいえそんな!頂きます!」
一口飲む。
そうして口の中に広がるのは、紅茶の香りと……丁度良い暖かさと共に伝わるほんのり感じる甘さ。
砂糖やミルクとは違う優しい甘味に梨璃は二口目を含む。
そして一言。
「美味しいっ!」
目を輝かせた。
昼休みなどで紅茶は飲んでいたが、今まで飲んだ物とは違う味に思わず大きな声で賞賛する。
「勿体ないお言葉です」と瑠依は頭を下げ、紅茶の入れた隠し味を教える。
「実は砂糖の代わりに、蜂蜜を入れてあります」
「へー、それでっ」
「気分を落ち着かせてくれる成分もあるので、お嬢様がもし大切なお方に紅茶をお淹れになるようでしたら、是非ご参考に」
立てた人差し指を口元に当てて、ウィンクする。
こういったポーズが妙に可愛らしく見えるのも、女顔の彼だからこそだ。
女子よりも似合う女子らしい仕草に思わず笑みが零れた。
しばらく、二人は他愛もない話をする。
そうしている内に、いつの間にか疲れも取れてきた……その時だ。
校舎全体に響くほどの鐘の音が聞こえる。
それは人類の脅威……ヒュージの出現を告げる警報だ。
「っ!紅茶、ありがとうございました!」
「行ってらっしゃいませ、梨璃お嬢様」
普段は多くを語らない彼だが、料理や紅茶に関しては少しだけ饒舌になるのかと思いながら、改めてお礼を口にした梨璃はその場を後にした。
だからこそ気付かなかった。
恭しく頭を下げていた瑠依の眼が鋭くなったことに気付かずに……。
嫌な予感がする……。
湧き上がる考えを振り払うように、少女『白井夢結』は長く伸ばした黒髪を払った。
警報を受け、彼女が所属する部隊『一柳隊』は出動することになったのだが、問題はその現場だ。
ヒュージと思わしき反応があった場所は自然公園なのだが、地形に変化がない。
彼らの殆どは巨体であり、動くだけでも地形を変える恐れがある生命体だ。スモール級という小型種は確かに存在するが、それでも疑問が残る。
それは、周囲にある物体と人間にしか被害が出ていないことだ。
電灯や自販機は全て焼き尽くされ、原型すら留めていない。
その周囲には腕や脚を斬り裂かれ、呻き声と共に倒れている人たちが複数いる。
他のメンバーが救護活動や周囲の索敵に準じる中で、夢結は梨璃と共に周囲を見渡しながら歩く。
仮に、今回のヒュージが知性を持つ個体なのだとしたら、今の状況そのものが自分たちの釣るための餌である可能性が高い。
思考を巡らせながら、警戒を更に強めた時だった。
「っ!?」
不意に、強い悪寒が走った。
冷たく暗い、それでいて強い殺意に怖気が走る。
すぐさま梨璃の方に視線を向ける。
彼女も分かったのだろう……自分たちに向けられている殺気に気付いた梨璃は夢結と共にバックステップする。
同時にすぐ後ろにあったベンチが真っ二つにされて崩れ落ちる大きな音がした。
驚く間もなくベンチは発火し瞬く間に燃え上がり、両断された地面からは焦げた臭いと共に黒煙が上がる。
地面すらも抉り斬り裂くその切れ味に、思わず背筋が凍る。
住民の避難と救護を終えたメンバーたちも合流し、攻撃された方向を見据えてそれぞれのCHARMを構える。
『ふん、躱したか。人間にしては大した素早さだな』
掠れたような、不気味な声が響いた。
そこにいたのは、あまりにも異様な存在……全身を黒いローブと手袋で覆い隠しており、顔には白い髑髏のような仮面が縫い付けられている。
何より、その人物から発せられる禍々しい気配は明らかに普通ではない。
それ以前に、本来なら女性にしか発現しないはずのマギが流れているのだ。
禍々しい力を隠そうともしないフードの人物……否、異形に対して緊張が走る。
しかし、それをものともしない少女もいる。
「リリィやヒュージでもないのにマギを操るだなんて……お話が出来るようでしたら、痛い目に合うだけで済みますわよ?」
ウェーブのかかったレッドブラウンのセミロングに蒼い瞳の彼女『楓・J・ヌーベル』は得意げな笑みと共に自身のCHARM『ジュワユーズ』の切っ先を突きつける。
しかし、その目に油断も慢心もない。
得体のしれない存在というのもあるが、本来ならば多くの人が利用している公園を滅茶苦茶にしたことへの怒りを静かに燃やしている。
そんな強い闘志を前にしても、異形はつまらなそうに鼻を鳴らすだけだ。
『図に乗るなよ下等生物。我ら「ガーディオス」が、貴様ら人間に憐憫の感情を抱くと思うか?』
波打つ刀身が特徴のフランベルジュを手に持ったまま、淡々と言葉を交わす。
慈悲すらも感じない、冷酷な言葉に全員が嫌悪感を露にする。
それどころか、自らの生み出した惨劇に人々の苦しむ声に喜びを様子を隠そうとしない。
「……どうして、こんなことをっ」
人間のように言葉を話せるのに、まるで雑草か蟻と大差なく見ているのような傲慢さが、梨璃の視線を鋭くさせる。
何故ここまで人を苦しめることが出来るのか……その答えを異形の怪人はあっさりと答えた。
『燃えるからだ』
「……は?」
あまりにも単純で、常人には理解出来ない価値観。
呆気に取られる梨璃たちの様子に呆れた様子で怪人は溜息と共に頭を振ると……。
『分かっていないっ、貴様らは何も分かっていないっ!!』
不意に大声をあげた。
フランベルジュを地面に突き立て、両腕を広げながら怪人『ガーディオス』は叫ぶ。
『メラメラを燃え上がる灯り、状況に応じて変わる規模っ!そしてそれによって湧き上がる人間どもの悲鳴っ!!これほどまでに愛おしく、エロ可愛い存在はいないだろうっ!火こそ至高っ、炎こそが最強の燃えキャラっ!我は燃えの伝道者、故に我は燃やすのだ!』
一息で、早口で淀みなく言葉を羅列する。
その声色に嘘はなく、興奮した様子で炎への異常な執着を語り続ける。
意味が分からない……そんな理由で人を傷つけ、放火したというのか。
興奮した面持ちのまま、ガーディオスはリリィたちを睨む。
『特別に見せてやろう、雌の人間ども……!エロ可愛く照らし続ける炎によって、我は自身を成長させるほどの「悪意」をこの身に取り込んだ!!』
そう、再び両腕を広げた瞬間だった。
素体の胸元から一輪の花が咲いた……毒々しい、赤い不気味な花だ。
まるで内側から食い破ったかのように咲いたのと同時に、今度は身体のあちこちから芽が出始めた。
それは早送りされた映像の如く、凄まじいほどのスピードで成長を遂げていく。
「何、あれ……!?」
禍々しく、緑と黒の入り雑じった不気味な植物が素体ガーディオスの全身を覆い隠していく。
これは『成長』だ。
植物は栄養を取り込み、そこに準じた環境に適応することで花や木として成長を遂げる……それは彼らとて同じなのだ。
『我の中に眠るマギよ、さあ育て!咲き誇れっ!極上の悪意を貪り、今こそ我らの春を招き給ええええええっ!!』
自身が望んで蓄えた悪意がその姿形を変異させていき、やがて呪いの植物が全身の侵食を終えたことで、その姿を露にした。
縫い付けられた髑髏の仮面と胸元に咲いた一輪の花はそのままに、赤を基調とした極彩色のストールと外套のような翅を全身に纏い、両肩には蝶のような特徴的な頭部と触角が生えている。
右手には素体時にも所持していたフランベルジュのような剣を構えていた。
まるで植物が動物を象ったような、あるいは動物に植物が寄生しているような外見をしたの炎の蝶『バタフライ・ガーディオス』は胸元の花から『ある物』を撒き散らす。
「ぐっ!?」
「何っ、苦しい……!」
黒い瘴気が自然公園全体を侵食し、リリィたる彼女たちの膝を着かせる。
強烈な吐き気と眩暈、頭の中が掻き回されるような不快感が襲い掛かる。
これは完全体となったガーディオスが持つ固有能力『精神汚染』……身体に咲いた花には文字通り生物の精神を混濁させる毒性があり、獲物を逃がさないための瘴気として放つことが出来る。
その瘴気によって苦しむ人々にバタフライは気にも止めない。それどころか、恵みの雨を浴びるかのように悦に浸っている。
彼らは
混沌を招き、生きとし生ける全ての生命を蹂躙する毒の花。
『さて、と……最初はお前に決めたぞ、人間』
「うっ、あぁっ」
フランベルジュを構え、必死に立ち上がろうとする梨璃を見下ろすバタフライ。
彼女を助けようと右足を掴んできた楓を蹴り飛ばし、剣を上げる。
「この、おやめなさい……がっ!?」
「逃げて、梨璃っ」
必死に彼女を守るべく、混濁する精神で身体を動かそうとする夢結たちの姿に嗤いを零す。
まるで、苦しみのたうち回る虫の姿を見て喜ぶ子どもののようだ。
『ああっ、素晴らしい光景っ。素晴らしい混沌っ!素晴らしい悲劇っ!!そうだ、もっと怯え震えろ。その絶望が、恐怖が!俺たちの養分となる!』
神託を受けた預言者の如き、大袈裟な振舞いで剣を掲げたバタフライは大空へ向けて声を張り上げる。
そして、上機嫌のまま目の前にいる少女の首を切り落とそうと振り下ろした。
『ぐおああああああああああっっ!!?』
だが、それよりも早く悪性植物の身体は思い切り吹き飛ばされていた。
情けない悲鳴と共に、数メートル先まで地面を転がるバタフライを見て梨璃たちは混乱を隠せない。
だが、夢結だけは何が起こったのかすぐに理解出来た。
「……バイク?」
先ほどまでバタフライがいた場所に、一台のバイクがあった。
赤いフロントにエメラルドグリーンの車体が特徴的で、白いラインで茨の意匠が施されたドゥカティであり妙な存在感を放っている。
そして、それに跨っているのはヘルメットを被った黒いタキシードの人物……。
ガーディオスの放つ瘴気が未だ残っているにも関わらず、その人物はマシン『マギスパイカー』から降りるとヘルメットを外す。
その顔は、彼女たちが全員知っている少年。
「瑠依さんっ!?」
そう、三笠瑠依その人だ。
しかしその表情に笑みはなく、目の前にいるガーディオスの鋭い視線を向けるばかりだ。
あまりの違いに一瞬別人かとも思ったが、左側にあるリボンが彼が本物であることを証明している。
『ぐっ、ううっ、おのれぇっ!!』
衝撃から、ようやく起き上がったバタフライがコートをはためかせながら、憎悪の視線をぶつける。
下等生物である人間に掻かされた恥を拭い去ろうと、事の元凶である瑠依に標的を定めるとフランベルジュを上段に構える。
『人間風情が……燃えキャラにしてやるっ!!』
人間では決して出せないスピードで距離を詰め、炎を纏った波打つ刃が迫る。
だが、不敵な笑いを浮かべた難なく回避するとバックステップで軽くその場から離れた。
「手を出すのが早いな……短気は損気って言葉、知らないのか?」
余裕綽々と言ったばかりに手に持ったままのヘルメットを投げ捨てる。
それは寸分の狂いもなく、バタフライの顔へと命中した。
『ぐっ!?この……!』
ダメージこそないが、良いように弄ばれている事実がガーディオスの怒りに触れる。
そんな事情など気にすることなく、彼は右手に持った大きめなバックルを見せつけた。
『さあさあっ、紳士淑女の皆様方!これより先は奇怪な化け花の剪定でございますっ!!』
「えっ、声っ!?」
戦場となった公園に響き渡るは、ガーディオスとも違う青年の声。
甘い声のようなハスキーボイスだが、おどけたようなその言葉は好戦的で些かチンピラのようだ。
「一体何処から」と、周囲を見渡すもすぐに分かった。
『彼の持っているバックル』から声が聞こえていたのだ。
「行こうか、ローゼン」
『ひゃっはは!さっさと間引いて茶の続きでもしようや!』
バックル型デバイス『フィオーレドライバー』を腹部に当てると、左右に伸びたベルトが腰に巻き付き固定される。
右側にあるバイクハンドル型グリップと中央には何かを嵌め込む装填用スロット。
左側にスイッチがある赤いボディ……それがフィオーレドライバーの特徴だ。
『その声、そのベルト……そうか貴様がっ!』
バタフライは完全に確信した。
そう、彼らには憎き怨敵がいる。
愉悦の蹂躙を邪魔し、自らの開花を妨げる反逆者……『ローゼン』に選ばれた戦士。
その名は。
「そのまさかだ、虫野郎っ。冥土の土産だ……特別に見せてやるよ」
『涙流して感激しろよなぁっ!!』
【ROSE GARM!】
懐から取り出し、側面のボタンを押して起動させたのは赤と緑の長方形のようなカードキー型のアイテム……掌サイズのプレートの上半分には雄叫びをあげる猟犬と、下半分には赤い薔薇と鋭い茨に覆われた庭園が描かれている。
それ『マギライドプレート』をバックルのスロットに装填。
【UNLOCK ABILITY……FIGHT!】
まるでエンジンの掛かったバイクのように、ベルトの中にあるプレートが赤と緑に発光すると同時にテンポの速い待機曲が流れ、薔薇の花と茨で構成された猟犬が出現する。
それに合わせて、宣戦布告するように指を突き付けながら、ゆっくりと息を吐く。
そして。
「変身」
掛け声と同時に右側のグリップを思い切り捻った。
瞬間、フィオーレドライバーから流れるエネルギーが身体を包み、緑色のスーツとなる。
冥界と現世の境目を護る薔薇の猟犬はアーマーとなって分離すると同時に身体へと装着された。
【LET'S GO AVENGER! 逆襲の赤き薔薇、咲き誇れSPIKE BEAST!!】
高らかに響くは変身を遂げる電子音声。
マスクの中心には赤い薔薇が咲き開いた形状となっており、赤い複眼と重なっている。
しかし、右手と両脚には猟犬をイメージさせる手甲が装備され、何処となく獰猛な獣のよう……。
膝部のプロテクターには口を開いた獣をイメージしており、首元には深紅のマフラーが風に靡いた。
「仮面ライダーフィオーレ!覚悟しな、こっからは僕の……オレの叛逆だっ!!」
ここに現界するは、悪しき者に虐げられし者への逆襲にして叛逆者……『仮面ライダーフィオーレ』がその名を咲かせた。
『図に乗るなよ……人間んんんんんんっっ!!!』
バタフライが怒りと共に再び迫る。
炎を纏ったフランベルジュを振り回しながら、フィオーレへと迫る。
しかし、結果は明白だった。
「あんまり……人間、嘗めるなよ虫ケラアアアアアアアアッ!!」
『ぶっごばあああああああああああっ!?』
荒々しく振り抜かれた右拳によるストレートパンチが、バタフライに命中した。
カウンター気味に炸裂した一撃は火花を散らしたバタフライの身体を大きく吹き飛ばした。
その光景に梨璃はおろか、普段は冷静でいる夢結ですらも目を見開かせる。
立っているだけでもやっとの瘴気に満ちた空間で難なく動けるだけでなく、妙な道具で変身した知り合いの少年が普段とは違う荒々しい言動で怪人を殴り飛ばしたのだ。
それだけではない。
先ほどの攻撃には、バタフライと同様にマギが込められている。
「どうして、マギを……!?」
左側にシュシュを着けた黒髪のストレートヘアの少女『王雨嘉』が驚く。
男性であるはずの彼がマギを自在に操る姿に動揺を隠せないでいたが、その疑問に答えたのはフィオーレ……ではなくドライバーに内蔵されているAIのローゼンだ。
『そりゃあ、そうだろうよ。悪意という負のマギから生まれた化け物に叛逆するための力……仮面ライダーフィオーレが同じ力を持っていなきゃおかしいだろ』
あっけらかんと言い放ったローゼンに、フィオーレが苦い声で窘める。
「ローゼン。あんまりお嬢たちに変なこと吹き込むな」
『ひゃっはは!悪い悪いっ、あんまりにも驚いた顔が面白れぇからよ!』
「たく……」
呆れたように溜息を吐く。その姿はまるで、性格が反対な友人同士のよう……。
そんなやり取りをしていた時だ。
『調子に乗るなああああ!』
「おっと?」
木々の奥から飛んできた斬撃を象った炎がフィオーレの肩を掠めた。
視線を向ければ、態勢を立て直したバタフライがおり、右手に持ったフランベルジュの刀身を燃やしながら鋭利な三日月型の衝撃波を放ったのだ。
『もう許さんぞっ!貴様を燃えキャラにするのは止めだっ、ズタズタにした後で火だるまにしてやるううううううううううううううっ!!』
「だったら、きちんと当ててみな!」
木や岩を切り裂き、焼き尽くす無数の炎に対してフィオーレは余裕を崩すことなくグリップを捻ってパワーを上げる。
猟犬の持つ脚力を底上げすると、軽快な動きで翻弄・回避しながらフィオーレはバタフライに接近する。
そして、更にグリップを捻って薔薇のエネルギーを上昇させた。
「そらぁっ!!」
『なっ、ごっはああああああああああっ!?』
その顔面に綺麗な弧を描きながら強力なボレーキックを叩き込む。
しかもただの蹴りではない。先ほどのグリップを捻った際、茨の如き無数の棘を両足に生やしており、バタフライの髑髏の仮面ごと貫いたのだ。
大きく仰け反ったガーディオスはあまりの激痛に、武器を落としてしまう。
それを逃すフィオーレではない。
「まだまだ行くぜえええええええええっ!!」
『がっ!ぐえっ、がぁっ!?』
拳と蹴りのラッシュが容赦なく迫り、バタフライの身体にダメージを蓄積されていく。
サンドバッグのように殴り蹴られながらも、斬撃を浴びせようとするが、それらは全て捌かれてしまう。
『がはっ!く、くそっ!ふざけるなっ!我らガーディオスが貴様のような、下等生物に……!』
「やかましいっ!!」
『ごはっ!?』
憎悪に満ちた罵声を浴びせようとするガーディオスの口を、顎ごとフィオーレは止めとばかりに蹴り上げた。
しかし、宙へと飛ばされたバタフライは落下することなく静止する。
一瞬、何事かと思ったがフィオーレはすぐに理解した。
耳を澄ませば、耳障りな音と同時に外套やストール状の翅が忙しなく、小刻みに動いているのが見える。
「へぇっ。本物の蝶みたいに飛べるのか」
『けど品がねーなー。あれじゃ灯りに群がる蛾ってところだな』
『このっ、ゴミカス風情がああああああっ!』
自らの尊厳と身体に大きな傷を負わされたバタフライは更に憎悪を膨らませると、両手に野球ボールサイズの火炎を生み出す。
多くの物体を燃やし続けた炎で周囲ごと焼き尽くすつもりなのだろう。
しかし、それを許すほどフィオーレは甘くはない。
「そうはさせねぇ……よっ!!」
『なっ、あああああああああああっ!?』
グリップを捻り、両脚に生やした茨をスプリング状にして高く跳躍すると顔面に強烈な膝蹴りを炸裂させた。
予想外の方法で制空権を奪われたバタフライは、再びフィオーレのサンドバッグと化してしまう。
逃走しようにも、それよりも速く蹴りと拳が飛んでくるため躱すことも防ぐことも出来ない。
赤い軌跡を描いたオーバーヘッドキックが、苦悶の声を漏らしていたガーディオスを蹴り落とした。
『そろそろ決めちまえっ!とっておきだっ!!』
「しゃあっ!」
一方的な空中戦を観戦していたドライバー内のローゼンが叫ぶ。
勝機を確信したその言葉に従い、ベルトに備わった左側のスイッチを押し込み、サイドグリップを何度も捻る。
【FINAL BREAK! RIDER KICK!!】
瞬間、赤と緑の光を放ちながら電子音が高らかに鳴り響いた。
宛ら風車のように激しく回転する度にフィオーレの身体が赤く輝き始め、奥底から溢れるほどのエネルギーが駆け巡る。
滾る感情のまま、身体を回転させると右脚に茨が巻き付き、その硬度と威力を補強する。
地面へと落ちるしかないバタフライに狙いを定め、急降下からの蹴りを繰り出した。
「スパイク・スマッシャーァアアアアアアアアアアアッッ!!」
『ひっ!?み、認められるかっ!こんなっ、こんな馬鹿なことが……うぎぃあああああああああああああっ!!』
恐怖も絶望も、暗く淀んだ悪意すらもぶち破らんばかりの、強烈な一撃が恐怖で声を引きつらせたガーディオスの身体を蹴り抜いた。
赤い毒花ごと胴体に大きな風穴を空けられ、自らの運命を受け入れられぬまま、バタフライ・ガーディオスは青い大空で爆発四散した。
マギライドプレートを外し、バックルのボタンを押して変身を解除した瑠依は落ちていたヘルメットを拾うと梨璃たちに何も言わずにマギスパイカーへと向かう。
そのまま、マシンに乗ってエンジンを蒸かして走り去ろうとした時だ。
「あ、あのっ!瑠依さん……」
「お嬢様方……お話は必ずします。まずは、一度学舎の方に戻って傷を癒してください」
呼び止めようとする梨璃にそれだけを言うと、今度こそマシンを走らせてその場から去っていった。
学園へと戻り、これから戻ってくるであろう彼女たちのために紅茶の準備を進める。
手際良く作業を終えた瑠依は一息を吐くと、右側に着けたリボンへゆっくり触れた。
まるで感謝の意を伝えるように、優しくそれを撫でる。
「……」
ふと、彼は吸い寄せられるように、近くにある姿見の方へと歩いた。
そこに映るのは当然、自分の姿……それは第三者から見ても明らかだろう。
しかし、彼には『見えている』。
『……』
本来映るべき自分の姿とは違う『少女』の姿。
百合ヶ丘女学院の黒い制服に身を包んだ彼女は優しく微笑む。
鏡にいる少女に瑠依は触れようと手を伸ばす。
しかし、彼女は同じように手を伸ばすだけだ。
手と手を重ね合わせても、そこにある温もりなど感じるはずがない。
不意に、少女の顔が曇る……申し訳なく思っているのかもしれないと思った。
「……あなたは」
しばらくして、瑠依は口を開く。
いつものように、帰ってくるはずのない答えを求めて、彼は問い掛けた。
「あなたは、『誰』なのですか?」
鏡像は応えない。
代わりに、寂しそうな微笑みを浮かべた少女はそこから消える。
時間切れか……思考を切り替えた瑠依はティーセットを運び始めた。
取り合えず簡単な設定解説
ガーディオス:
本作の怪人。環境や個体ごとに抱いた悪意によって成長する性質を持ち、自身に宿った負のマギを花として咲かせることで完全体へと変異する。
髑髏の仮面と胸元に咲いた花が共通点で、人間の精神を混濁させる『精神汚染』と個体ごとに得た能力と姿によって苦しめる。
イメージコンセプトは『人間と動物を真似する植物』・『寄生して養分を吸い取る植物』
オリキャラ
三笠 瑠依 / 仮面ライダーフィオーレ ICV現在考え中
私立百合ヶ丘女学院で専属執事となった少年。生徒のことは「お嬢様」と呼び、常に柔和な笑みを崩さない紳士的な人物だが、ぼーっとしていたり突拍子もないことを言い出すなど全体的に浮世離れした雰囲気がある。
鏡に映る『少女』の正体を探している。
ローゼン ICV谷山紀章
仮面ライダーフィオーレのサポートAI。ハスキーボイスだがチンピラみたいな口調が特徴だが、瑠依の良き兄貴分であり悪友でもある。
音楽好きでもあり、最近の好きなバンドは巷で噂の仏教系ユニット『BoZ』
二川二水ちゃんのとっておき情報
御機嫌よう。実は本編に登場していたけど、セリフも名前も出なかった私『二川二水』がちょっとしたプチ知識をお披露目します!
〇実は幼いころ、瑠依さんは重い心臓の病気で病院にずっと入院していたみたいです!本当なら亡くなっていてもおかしくなかったみたいで……今は手術で完治しているようで安心しました!
〇瑠依さんの着けているピンクの大きなリボンは大切な物なんです。詳しくは教えてくれませんでした……(汗)