オリジナルライダー設定集   作:名もなきA・弐

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 最近執筆を休んでいたので短いですがリハビリ感覚で投稿。
 登場キャラは当然の如くオリキャラですが、原作キャラと一方的に繋がっているキャラとなります。


仮面ライダーフィオーレ 毒花の竜ヴェノムレイダー

暗く深い、小さな世界に『彼』はまだ眠っていた。

大義を掲げた人間たちの都合によって、倫理の外れた知的好奇心によって、ただ世界の災厄と戦うためだけに生み出された。

それを知らないまま、彼はただ眠り続ける。

正確に言えば、彼はまだ『生まれていない』のだ。

白い繭に包まれ、存在しない母親の温もりを知らぬままその時が来るまで……ただずっと待っている。

そうして、その時がやって来た。

微睡みから意識が徐々に覚醒していく。音を立てて皹が入っていく繭とリンクするかのように、目覚めの時が近づいてくる。

やがて、繭は完全に破られた。

彼の姿は、本当に普通の少年だった。浅紫のショートヘアーに、まだあどけない幼子のような柔らかい顔立ち。

生まれたままの一糸纏わぬ姿の少年は、ゆっくりと目を開いた。赤みの強い桃色の瞳はまだ焦点が定まっておらず、ぼんやりとした表情をしている。

 

『目覚めたかい?』

 

そんな彼に、異形が声を掛けた。

ゆっくりと顔を向けるも、意識のはっきりとしていない少年には異形がどんな姿をしているのかは分からない。

だが、優しい声色の彼は自分にとって友好的な存在であることだけは本能的に理解出来た。

 

『おはよう、そして初めましてだね。「アイボリー」』

「あい、ぼりー……?」

『君の名前だ。外国の言葉で「白」を意味する、君だけの名前……君という存在を証明する名前だよ、アイボリー』

「アイボリー。ボクの名前……」

 

そう何度も復唱する。

彼は今、本当の意味でこの世界に生まれた。

身体を与えられ、祝福を与えられ、名前を与えられた。

そうして。

 

『アイボリー。君の力を貸してくれないか』

 

戦う理由を怪人……怪人ガーディオスから与えられた。

 

 

 

 

 

大きめのバッグを両手で抱えながら、素体ガーディオスは走っていた。

呼吸を荒くし、必死な様子でアジトにしていた廃工場へと逃げ込み、辺りを必死に見る。

人知を超えた脚力は普通の人間では到底追い付かず、難なく追跡を振り切ることが出来るだろう。

では、何故彼は必死になって走っているのか。

 

「見つ、けた」

『ひっ!?』

 

その追跡者が、自分と同じガーディオスから差し向けられた刺客だったからだ。

灰色のストールを首に巻いたコート姿の少年は鋭い視線を向けたまま近づいてくる。

本来なら子どもに怯えるなど情けない話だが、ガーディオスは知っている。この少年が、多くの同胞を葬ってきたことを……。

 

『う、うるせぇっ!何が悪いんだよっ、ちょっと暴れただけじゃねぇかっ!!』

 

バッグを投げ捨て、そこから顔を覗かせたのは札束。このガーディオスは金銭を奪うことで成長を遂げようと暴れていたのだ。

しかし、完全体に進化してもなお素行の悪さは変わらず、挙句の果てには銀行強盗を何度も起こして騒ぎを大きくしていた。

それが、幹部の目に留まった。

 

「君は、成長しない。だから、一度壊して、種に戻ってもらう。それが、みんなのお願い」

『う、うるせぇっ!うるせぇうるせえええええええええええええっ!!』

 

目の前の理不尽に怒りを露にした素体ガーディオスは胸元から花を咲かせると、その姿を完全体へと成長させる。

獣を思わせる黒い身体と至るところから無数に生えた牙……『ハイエナ・ガーディオス』は雄叫びをあげながら、鋭く光った鉤爪を構える。

それを少年……アイボリーは表情を変えることなく、懐から一丁の拳銃を取り出した。

リボルバーマグナムを思わせるアメジストカラーの銃身が特徴的な『トランスギアレイダー』の弾倉部分をずらし、スロットを露出させる。

そして、逆の手で持っていたカードキー型アイテム『マギライドプレート』を起動させた。

 

【TORIKABUTO DRAKE!】

【UNLOCK ABILITY……POISON!】

 

上半分にはガラス玉のような瞳を持つ翼のない邪竜、下半分には紫色の液体を垂らすトリカブトか描かれたプレートを装填した瞬間、エレキギターを思わせる待機音声が廃工場内に響き渡る。

耐え切れなくなったハイエナが地面を蹴って爪を振り下ろそうとした瞬間だった。

 

満怪(まんかい)

【OPERATION UP】

 

短く紡がれた言葉と共に、トリガーが弾かれた。

銃口から現れたトリカブトを頭上に咲かせた竜がハイエナを弾き飛ばし、周囲の物体を溶かしながらアイボリーの元まで迫る。

やがて一人と一体の身体が重なった瞬間、変化が始まった。

 

【LET'S GO NOT RIDER……YES VENOM RAIDER!】

 

低く掠れた音声が鳴り、トリカブトの竜はスーツや装甲となってアイボリーの身体へと同化する。

白いスーツの上には紫色のプロテクターとコートが装着されるように出現し、頭部にはトリカブトの花弁を思わせるバイザーが下ろされている。

そして口元には、緑色の蔓を咥えた竜の如き鋭い牙があった。

 

『毒花の竜「ヴェノムレイダー」……!』

『っ。な、嘗めるなああああああああああっっ!!』

 

起き上がったハイエナは再び身軽な身体を活かして接近戦に持ち込もうとするが、ヴェノムレイダーはトランスギアレイダーの銃口からマギを圧縮した銃弾を放つ。

その精度はかなり高く、ハイエナが攻撃を避けようと動いたタイミングを狙っての射撃だ。防ぐことすら出来ずに命中したガーディオスは身体から煙を上げながらも、恐怖で心を折らないよう立ち上がる。

そして、ヴェノムレイダーの次の攻撃が始まった。

 

『……』

【IKKAITEN TORIKABUTO!】

『っ!?』

 

装填してあるマギライドギアごと弾倉部分を回してトリガーを弾くと同時に、右脚にアメジストカラーのエネルギーが収束される。

本能による危機感を抱いたのか、ハイエナが距離を取ろうとした瞬間だ。

 

『遅い』

『ぎぎゃあああああああっ!!?』

 

一瞬で距離を詰めたヴェノムレイダーのハイキックが鳩尾に叩き込まれた。

悲鳴と共に吹き飛び、ドラム缶などを巻き込みながら地面を転がるハイエナだが、変化が起こる。

 

『がっ、あっ!何だ、身体が……!?』

 

思うように動かくなった自分の身体に動揺するも、すぐに異変の正体が判明する。

先ほど蹴られた個所が毒々しい紫色によって変色していたのだ。

致死性の高いものではないらしいが、麻痺毒の一種なのか完全に動きが阻害されてしまっている。

こうなったらハイエナには何も出来ない。ただ、目の前の毒竜に食われるだけの獲物に過ぎない。

 

『この野郎がああああああああああああっっ!!!』

 

それでもガーディオスは諦めない。

生への執念を燃やしながら、身体中に生やした牙を凄まじい勢いで射出する。

倒すことは出来なくとも、意識さえ反らせればいくらでも逃げ通せる……そんな思惑があっての手段。

その攻撃にヴェノムレイダーは驚くことなく、スロットを二回転させる。

 

【NIKAITEN DRAKE!】

 

再びトリガーを弾いて能力を発動させると、竜の息吹を思わせる猛毒の蒸気が弾丸となった無数の牙を溶かし腐食させた。

牙は一つ残らず消滅し、最後に残ったのは攻撃手段と逃走手段を完全に失ってしまったハイエナのみ。

唖然とするガーディオスに視線を向けたまま、スロットを今度は三回転。

 

【SANKAITEN EXECUTION!!】

 

アップテンポの音楽が鳴り響き、トランスギアレイダーの銃口に膨大なエネルギーが充填されていく。

空気が震えるほどの威圧感にハイエナが動かない身体を必死に動かそうとするも、既に手遅れだった。

 

『……はっ!』

 

放たれた一発の銃弾はトリカブトを寄生させた竜の頭部を象り、大きく口を開きながら対象へと凄まじい勢いで迫る。

やがて、必殺の銃弾が命中した瞬間。

 

『ぐぎゃあああああああああああっ!!?』

 

トリカブトの毒を纏わせたドラゴンの牙が嚙み砕き、ハイエナ・ガーディオスを爆発せしめた。

爆発の余波で揺らめく炎の中を、ヴェノムレイダーはゆっくりと歩く。

変異を解除し、ガーディオスがいた場所から黒い歯車を拾った。

 

「……お仕事、完了」

 

これがヴェノムレイダー……アイボリーの日常なのだ。

生命のルールから外れた形で生まれた彼は、人間の味方をする理由などない。ガーディオスに拾われたからこそ彼らの味方をし、人間がいる世界に疑問を抱く。

そして彼が戦いに身を置いた一番の理由。

 

「ボク、絶対に蘇らせるから。絶対に助けるから」

 

それは『家族』を復活させること。

顔も知らない、思い出もない、それでも自分には同じ遺伝子で製造された『家族』がいたのだ。

だから会いたい、話をしたい、一緒に遊びたい。

細やかな願いを叶えるために彼は戦う。

 

「結梨お姉ちゃん」

 

当たり前の願い、当たり前の感情、純粋であるが故に今は亡き姉を求める。

猛毒の花が宿す欲望の果ては、希望か絶望か。




 疑似ライダーって考えるのは楽しいですけど、武器単体で変身する仮面ライダーもいるので結構差別化するのが難しいですよね。
 てなわけで今回の疑似ライダーはトリカブトとドレイク(翼のない竜)をモチーフにした戦士『ヴェノムレイダー』です。
 変身デバイスは銃型で弾倉部分を回転させる回数によって能力や必殺技が発動します。キョウリュウジャーのガブリボルバーみたいに回す感じです。

 変異者であるアイボリーは所謂人造人間。本来なら家族という概念すらない彼ですが、実は製造過程で同じ遺伝子と血液を使われている子がいたため互いに面識はないけど血縁者という不思議な姉弟となっています。名前をググれば誰のことかはすぐに分かります。
 アイボリーの名前は劇中でも触れていましたが「白」を意味する言葉です。純粋な目的で作られ、純粋な理由で戦う。見た目も精神年齢も幼い少年です。

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