オリジナルライダー設定集   作:名もなきA・弐

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仮面ライダーリベジャス

時計の針が夜の十時を指した頃、一人の男がビルの屋上から街を見下ろしていた。

雑踏の中を光が漂い、暗闇の中で動く人々の様子を観察している。

 

「社会、不満、崩壊、革命……」

 

それは人間観察を趣味とする者の視線ではなく、虚ろで焦点が定まっていない。

にも関わらず、だ。

ブツブツと呟く様子はある種の執着を感じさせ、何処か追い詰められているようにも見える。

 

「破壊、毒して、変えるっ」

【DRAW……TOADSTALL!!】

 

毒々しい赤いキノコのラベルイラストが描かれたグラフィティポットを起動し、中に詰まっていたラジカルレッドのインクが放出。

男性の全身が塗り潰されると、その姿がグラフィティへと変異する。

灰色に染まった身体の上半身に毒々しい斑点を持つ赤いキノコを生やし、インクポットのラベルと同じイラストが胴体の額縁に収まった『トードストール・グラフィティ』は手すりに異形となった手を置く。

そうして、このまま地上へ飛び降りようとした時だ。

 

「やめろ」

『……うっ?』

 

大きくはない、だがトードストールに響くほどの冷たい声だった。

動きを止めて思わず声の方向に振り向けばそこにいたのは白銀の髪色を持つ美丈夫の青年……ジャケットとズボンを着こなした白峰義正は鋭い視線で目の前のグラフィティを睨む。

 

「指名手配犯、紅崎毅……かつて学生運動で多くの負傷者を出しながらも自らの正義を遂げようとした革命家。手段はどうあれ、お前の正義を否定するつもりはない」

 

淡々と、自らの集めた情報を語る彼にトードストールは唸り声をあげる。

毒キノコの能力を宿したインクは変異者の脳を汚染し、ただ毒の胞子を撒き散らすだけの災害そのものと化している。

 

『う、あー……革命、革命革命革命かくめいカクメイ……俺の毒で、全部塗りたくる』

 

正気でないトードストールは身体を左右に揺らしながら、目の前にいる標的へと優先順位を変える。

体内で胞子を生成するグラフィティから視線を逸らすことなく、義正はアルカナドライバーを装着する。

形状自体はバーサルドが使用するのと同型だがアルカナライドポットを装填するスロット部分も外されており、両側とも接続部分が露出している。

 

「その正義が無関係な人を巻き込むのなら……俺の正義でお前ごと撃ち抜く」

 

懐から取り出したのは二つの装置。

右手にはマグナムのような奇妙な形状をしたホワイトシルバーでカラーリングされた装置には撃鉄と青いガングリップがあり、銃身に当たる部分には横向きにした筒状のスロットがある。

左の手に持つのは長方形のカードを模したユニット……その下には「No.Ⅺ THE JUSTICE」と記されており、剣と一体化した王冠を被った白い法服の案山子が描かれている。

一対の装置『ジャスティスグリップ』をアルカナドライバーの両側に接続する。

 

【THE JUSTICE DRIVER!】

 

義正専用のドライバー『ザ・ジャステイスドライバー』へと姿を変えたことを伝える音声を耳にしながら、今度はアイスブルーのアルカナライドポット……杖と冠が刻印された『エンペラーライドポット』を起動させた。

 

【FOUR EMPEROR!!】

 

銃身に存在するスロットへ装填した瞬間、義正の周囲に白い冷気が発生。

動揺するグラフィティに意を介することなく、グリップを握る手に力を込めて『あの言葉』を短く呟いた。

 

「変身」

【COLLAR SHOT!】

 

トリガーを弾いた瞬間、ディスプレイに描かれたのは右手に金の杖を持った鎧の戦士。

椅子に腰を掛けた戦士は左手に拳銃を持ち、頭には金色の冠を被った気高さを感じさせるイラストと同時に音声が鳴り響く。

 

【氷の皇帝が悪を撃ち抜く!】

 

ホワイトシルバーのインクが義正の全身を包み、同時にジャスティスグリップの銃口から発射された壺を象ったアイスルブルーのエネルギーが彼の真上で静止する。

 

【正義の銃弾・EMPEROR JUSTICE招来!!】

 

インク壺を象ったエネルギーは意思を持つかのように回転するとアイスブルーのインク型エネルギーがその身体を重ね塗りするように装甲を形作っていく。

白銀のスーツにアイスブルーの鋭利な装甲と左肩から生やしたマント……白銀の王冠を象った装飾を持つマスクの複眼が赤く輝いた。

 

『き、貴様はっ!?』

「Revenge of Justice……『仮面ライダーリベジャス』」

 

短くそう名乗った戦士はドライバーからジャスティスグリップを抜き取ると、真っ赤な双眼と共に銃口を突きつける。

 

「氷の弾丸に葬られな」

 

その言葉と同時にトリガーが弾かれた。

放たれた銃弾は宛ら小型の氷柱であり、対象を射抜くほどの威力を持ってトードストールに命中する。

 

『ぐっ、あ……ヴアアアアアアアアアアアアアッ』

 

ダメージでよろめく身体から火花を散らしながらも、明確な『敵』と判断したグラフィティが理性のない獣の如き悲鳴をあげた。

上半身に生やした毒キノコから胞子を放射し、リベジャスの息の根を止めようとする。

常人なら意識が昏倒するほどの猛毒胞子は仮面ライダーですらも意識を混濁させ、倒れ伏すほどの脅威を持っていた。

しかし。

 

「ふっ!」

『ガッ!?』

 

胞子が撒き散らされた空間に物ともせずに走るリベジャスはトードストールの顔面に鋭い掌底を叩き込み、ジャスティスグリップの銃口から発射された銃弾を至近距離で浴びせる。

自分の能力が通じない異常事態にトードストールは混乱する。このグラフィティは気づいていないが、自分の撒いた胞子がビルの屋上だけに止められているのだ。

その疑問は、すぐに氷解する。

 

「俺が凍らせた」

 

短く、その事実だけをリベジャスが伝える。

見れば彼の撒いた骸骨の胞子は彼の全身から放つ白い冷気によって全て凍結されており、小さな結晶となって次々と砕けていく。

エンペラーライドポットは『氷を操る能力』だが、変身者である義正の抱く絵図によって凍らせた対象の性質や概念を停止させることが出来る。

 

「絶対零度は静止の世界だ」

 

冷たく、それでいて熱い闘志を秘めた想いが冷気となって放たれる。

それはまるで、全てを凍てつかせるゼロ度の炎。

 

「だからこそ俺の正義は揺るがない……この力で全てのグラフィティを倒すことが、今の俺が望む『正義』だっ!」

【LAST COLORS! JUSTICE BURST!!】

 

ジャスティスグリップをバックルに再び装着してから撃鉄を起こしてトリガーを弾いた瞬間、氷の銃弾が吸い込まれるように右脚へとチャージされると、周囲に冷気を纏ったアイスブルーの暴風が吹き荒れる。

その力で宙に浮き、余波で身体を鈍らせたトードストール目掛けて冷気の力を得た強力な蹴りを放った。

 

「はぁっ!」

『グギャッ!?』

 

必殺技として繰り出したキックはグラフィティの腹部へと命中し、凄まじい勢いで吹き飛んでいく。

そして、攻撃を受けた場所から次第に凍結する。

段々とアイスブルーの氷に覆われていく毒キノコに、フィンガースナップを鳴らしたリベジャスが冷たく言い放つ。

 

「これで決まりだ」

『ギギャアアアアアアアアアアッッ!!?』

 

絶叫と共に、トードストール・グラフィティの全身が粉々に砕け散った。

変異が解除されて気絶した男……紅崎の近くには白い煙を立てて粉砕されたグラフィティポットが転がっていた。

 

 

 

 

 

XXX(トライクス) DRIVER!】

 

とある廃工場、誰もいないはずの寂れた空間に奇妙な音声が響く。

音源となるショッキングピンクで塗り分けた奇妙なバックルを腰に装着した人物は光の当たらない暗闇で詳細な容姿は分からないが、その様子を興味深そうに観察している異形……グラフィティがいた。

アッシュグレーの細身と白衣のような丈の長い上着を纏い、身体中からフラスコのような形状をしたガラスとボトルグリーンのコードを生やした異形は「Ⅴ」のローマ数字を刻んだ緑のバイザーが装備されていた。

 

「……」

 

そのバックルは右側が空洞となっており、左側にある長方形型のディスプレイと上部にアルカナライドポット用のスロットがある奇妙な形状をしている。

それ『XXX(トライクス)ドライバー』を巻いたその人物は左手に持ったアメジストカラーのアルカナライドポットを起動させる。

 

【FIFTEEN DEVIL!!】

 

様々な動物のイラストが描かれた『デビルアルカナライドポット』をスロットに装填し、エレキギターのような待機音声が響く中、彼の背後に女性らしきドレスを纏った影が出現する。

そして、右手に持った道具……翼を生やした男女のような仮面の機械天使が描かれたナックルダスターを右側の接続部分に押し込んだ。

 

「『変身』」

【SIX LOVERS! ENGAGE!】

 

まるで割れたハートが元に戻るように二つの装置が口づけを交わし、男女の声が重なると同時に変化が起こる。

バックルのディスプレイに山羊や羊のような角を生やし、蝙蝠の羽を持った鉄仮面の悪魔が互いに向き合ったイラストが浮かび上がり、ショッキングピンクとアメジストのインクが全身を覆い隠す。

混ざり合った二色のインクは、やがて『二つ』に分離して戦士としての姿を現した。

 

【DEVIL × LOVERS……HIGH PASSION!!】

 

一人はショッキングピンクのスーツにアメジストとアイボリーブラックの刺々しい悪魔のような装甲を右半身に纏った戦士、隣に立つもう一人は女性的なラインを同じスーツで纏い、左側にアメジストとパールホワイトのシャープな柔らかい雰囲気を放つ装甲を装備している。

ライトグリーンの複眼を光らせて変身を完了させた戦士二人に、『隠者』の大アルカナを秘めたグラフィティは満足したように拍手を贈る。

 

『素晴らしい、これで「君たち」は私たちの同胞となった……共に世界を塗り潰す側へと回ろうじゃないか。仮面ライダートライクス』

 

天使が描かれた『恋人』の大アルカナを纏った悪魔的な二人『仮面ライダートライクスD(デビル)/A(エンジェル)』はゆっくりと頷いた。




 色とアルカナをモチーフにしたオリジナルライダー・バーサルドの続きです。今回は二号ライダーのリベジャスと敵ライダーとなるトライクスの顔見せ。
 リベジャスはサイバーチックな銃戦士。今回は屋上だったのであまりアクションはありませんでしたが、広い空間だとガンカタみたいな戦闘をしてくれます。裏モチーフはグリスブリザード。
 最後にちらっと登場したトライクスは恋人と悪魔のアルカナで変身する。変身方法に関してはイクサナックルでの変身を参考にしています。リバイとバイスのように一人で二人の戦士に変身します。名前の由来は三つのXでトライクス、コナンで
「XXX」はキスを意味するみたいなことを言っていたので「恋人」モチーフの仮面ライダーにぴったりだと思ったので、ちょっとお洒落な感じにしました。
 今回はこんな感じで。 ではでは。ノシ

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