オリジナルライダー設定集   作:名もなきA・弐

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 アルカナライダーのテスト版です。設定は変更される場合がありますのでご注意を。


アルカナライダーテスト版 仮面ライダーウルーガル

月のない闇夜に、それは起こっていた。

助けの来ない廃墟の中で、一人の男性が逃げ惑う。

その顔は恐怖の表情に染まっており、ただひたすらに足を動かすか息を殺して隠れ潜むかしか手段が残されていない。

この人間は『獲物』だ。

トラブルになるようなことも炎上するようなこともしていない、SNSでほんの少しだけ有名になっただけの人間に過ぎない。

「何で自分が」と問い掛けたが、彼を拉致した『狩猟者』は事もなく理由はないと言い放った。

 

────「そういう奴を狩るのが、楽しいから」────

 

そうして制限時間内に逃げ回ることを強要された。

廃墟から外に出る暇さえもない。相手が普通の不審者ならば知恵を巡らせることも出来ただろう。

しかし、相手は己の理解や常識を軽々と超える怪物だった。

 

 

『あっれー?追い詰められちゃったねぇ』

 

軽薄な男の声が聞こえる。

肩を震わせ、慌てて振り返れば、自分の命を狙う『狩猟者』がゆっくりと近づいてくるのが見えた。

それは見紛うことなき『怪人』だった。

灰色の簡素な身体の上半身は熊のような屈強な肉体で両肩に拳銃のような巨大な銃口が生えており、頭部はフクロウの頭部と翼を思わせる。一見するとアンバランスだが、それを白い糸で強引に縫合したような痛ましい姿が印象的だった。

宛ら敗れた縫いぐるみを補強したかのような怪人『ディスピール』こそ男性の命を奪う狩猟者であり、人間狩りを『楽しい』と思っている歪な存在だ。

 

「何でっ、何でこんな……!」

『楽しいからだよ、良い気になっている奴が逃げ惑って泣き喚く姿を見るとすっきりするんだ……犬や猫を撃つよりもずっと爽快で!リアルな反応が最高に楽しいんだよっ!!』

 

狂喜するように嗤うディスピール『オウルベア・ディスピール』は鬱屈とした感情と悪辣な持論を意気揚々と語り、男性は直感する。

この怪物は何度も同じことを繰り返し、今回はたまたま自分が選ばれたのだと……。

それは自分がどれだけ逃げても隠れても絶対に助からない事実であり、希望の道が断たれた決定的なものとなった。

顔を青ざめる彼にオウルベアは楽しそうに嗤い、ゆっくりと確実に歩いてくる。

体力はもうない、逃げ場もない、自分に出来るのは悲鳴をあげて恐怖の表情で人生を終えることだけだ。

 

『見せてくれよ有名人、無様に泣き叫んで助けを乞う姿を、俺にっ!!』

 

距離を詰めたディスピールが巨大な爪を持つ腕を振り上げた。

瞬間、異常な悪寒が廃墟内に広がる。

 

『っ!?』

 

背後から刃物を突き付けられたような鋭い敵意、同時に響く足音。

ブーツの踵から生じる音が徐々に近づいてくる。

最初はゆっくりだったが、それは段々と速くなる。

やがて、足音の主がこちらまで走って来ること気づいた時にはオウルベアが大きく怯んでいた。

 

『な、あっ!?』

「……」

 

異形の身体に飛び蹴りを叩き込んだ影は着地と同時に襲われていた男性の方を振り向く。

その人物は、奇妙な出で立ちをしていた。

紺色のコートとフードで全身を隠し、顔には白い仮面を被った怪人物。

背丈や体格から青年であるのは間違いない……しかし仮面の右側には三日月を思わせる赤いペイントが施されており、その下にある冷たい視線が背筋を凍らせる。

 

「……行け」

「へっ?」

「出口が既に破壊した。この場で死にたくないなら、全力で走って逃げろ」

 

その言葉に、男性は慌てて走った。

警察に助けを求めるのか、それとも病院に行くのか、それとも今夜の不運を夢だと思い込んで家に帰るのか、少なくともフードの人物からすれば興味などない。

目的は、人間狩りのディスピールそのものなのだから。

 

『……人の狩りを邪魔して何のつもりだ?「人狼」さんよぉっ』

 

不機嫌さを隠そうともしないオウルベアにフードの人物……『人狼』は口を開く。

 

「お前の勝手な行動で仮面ライダーどもが勘付き始めた。こちらは忠告したにも関わらず犯行を続け、更にはエスカレートしている始末……『アルカナノーツ』は貴様の処分を決定した」

『ディスピールの基本原理は「楽しいこと」だろ。だったらお前らの話なんか聞かねぇっ!俺は、俺を無視した雑魚どもをっ、狩りたいんだよっ!!』

 

手前勝手に吠えるオウルベアが威嚇するも、人狼の動揺はない。

むしろ、最後の警告すらも無視した相手の矮小さに侮蔑の感情すら宿っている。

 

「俺の仕事は、他のディスピールの『楽しい』を邪魔する連中の排除だ」

 

そう言い放ってからコートを軽く開き、腹部に巻き付けていた奇妙なベルトを露にする。

右側に口を開いた獣を象ったゼンマイ(巻鍵)が備わった、奇妙なバックルだ。バックル前部分の両側には緞帳のような赤い装飾が施され、中央のディスプレイは宛らミュージカルや演劇を行うステージのような形をしているなど全体的に舞台を思わせる。

ステージを象ったディスプレイには既に何らかのアイテムが装填されており、赤い眼を光らせたデフォルメチックな三日月のキャラクターが描かれている。

しかし、三日月には獰猛な牙を剥き出しにて笑う獣のようでもあり、まるで月に向かって吠える狂気の人狼をも彷彿とさせた。

 

【WOLOUPGAL DRIVER!】

 

名を告げたドライバーがスロットに装填されたアイテムを認識し、待機音声を鳴らす。

流れる音楽は物語の始まりを告げるように壮大ながらも音程の外れた音色が敵対する者の不安を煽る。

右手で巻鍵を摘まみ、左手の人差し指をゆっくり突きつけた後に首を掻っ切る仕草をしながら慣れた様子で『あの言葉』を呟いた。

 

「変身」

【LIGHT UP!】

 

持ち手を回した瞬間、認証した音声と共にディスプレイが赤い光で淡く彩られる。

人狼の頭上に紅い満月型のエネルギーが質量を持って出現すると、彼の身体を照らし始める。

まるで主人公に向けられたスポットライトのように、これから起こる運命を暗示するように……鮮血の光を浴びた人狼の身体に変化が起こった。

月と同じ鮮血のスーツが全身を覆い、その上に闇夜を思わせる紺色の刺々しいアーマーが装着されていく。

両手足にはアーマーと同色の毛皮が装備され、首元から狼の尻尾を思わせるマフラーを靡かせる。

 

【EIGHTEEN THE MOON……! THAT IS BERSERK HUNTER WOLOUPGAL】

 

頭部は狼を思わせる三角の角を生やしており、左側に「ⅩⅧ」のローマ数字を象った赤い複眼が不気味な存在感を放つ。

最後に左手で右側のマスクを引っ掻き、傷跡のような赤い三本線のバイザーを光らせて変身が完了した。

その姿はワーウルフ、ライカンスロープ、ルーガルー……世界各地の伝承にある人狼そのものであり、月夜に狂う狂戦士(ウールヴヘジン)

名はウルーガル。『月』の大アルカナを宿した『仮面ライダーウルーガル』……それが変身した人狼の名だ。

 

「ハンティングタイム・スタート」

『幹部どもの飼い犬風情が……!』

 

先制攻撃をしたのはオウルベアからだ。

肥大化した腕から繰り出す熊の如き鋭い爪で引き裂こうとするが、ウルーガルからすれば単調な攻撃でしかない。

難なく回避すると、カウンターとばかりに強烈な右フックを打ち込む。

 

『ぐぶぅっ!?』

 

前のめりになったオウルベアの隙を見逃すはずもなく、ウルーガルの追撃が始まる。

顔面に左ストレートを叩き込み、両肩を掴んだかと思えば今度は膝蹴りを何度も浴びせる。

それはオウルベアの屈強な肉体に確実なダメージを与え、まともな反撃すらも与えないほどに苛烈だ。

やがて、ディスピールが妙な違和感を覚える。

 

『げぇっ!がっ、あぁっ!?何だ、攻撃が急に重く……ぐえっ!!』

 

そう、攻撃の威力が徐々に上がっているのだ。

見ればウルーガルの全身には返り血のような赤いエネルギーが纏わり憑き、攻撃だけでなく戦い方さえも苛烈となっていく。

増していく攻撃は次第に暴力的となり、鳩尾に拳を叩き込んだかと思えば顔面に膝をめり込ませる。

 

「……ラァッ!」

 

強烈な頭突きを浴びせたウルーガルが、脇腹を抉るような蹴りでオウルベアの巨体を吹き飛ばした。

呻き声と共に地面を転がる怪人はすぐに起き上がれず、苦しむことしか出来ない。

 

「所詮は弱い奴にしか粋がれない雑魚か」

『っ、あぁぁぁあああああああああっ!!』

 

その嘲笑に怒りをプライドを刺激されたオウルベアが叫んだ。

屈辱に身体を震わせながら、両肩に生やした銃口からエネルギー弾を発射する。

しかし、ウルーガルは躱すこともせずに拳と蹴りだけで弾いた。回避する必要もないと言わんばかりに、それを見せつけるように……。

 

『あっ、あっ、ひっ!?』

 

狩猟者を気取った小悪党の足が、一歩下がった。

目の前にいるのは絶対的な強者であり狩人。オウルベアの戦意は既に失われており、その表情は恐怖に染まっていた。

 

「見せてみろ、お前が無様に這い蹲る姿を」

 

吐き捨てた言葉と共に高く跳躍すると、巻鍵を二度回して必殺技を起動。

オウルベアが苦し紛れに銃弾を発射するも、その全てが弾かれる。

それでも恐怖から逃れようと滑稽に乱射する怪人の頭部に向かって、渾身の蹴りが放たれた。

 

【SHOW TIME! MOON FINAL!!】

 

マスクの複眼とバイザーが光り、スポットライトに照らされたウルーガルの全身に赤いエネルギーが迸る。

三日月のような獣が噛み砕くエフェクトと共に踵落としが頭頂部に炸裂。「うげぇっ」と短い悲鳴をあげて倒れそうになるオウルベアの顎を、今度は思い切り蹴り上げた。

 

【SHOW`S OVER!】

『ごっ、がっ!ぎゃああああああああああああっっ!!!』

 

壁に叩きつけられたオウルベア・ディスピールは爆散。そこから金髪に染めた男性が倒れると同時に何かが砕ける音が小さく響く。

身に着けている衣服はボロボロ、身体中も傷だらけで誰が見ても再起不能なのは明白だった。

 

「ひっ、ひぃぃぃっ」

 

目の前の狩猟者から必死に逃げようと身体を這って動く男性にウルーガルの変身を解除した人狼は、その顔面を思い切り蹴り飛ばして気絶させる。

首根っこを掴み、溜め息を吐くとその場を後にするのだった。




 以前活動報告で紹介した狼モチーフの仮面ライダーウルーガルです。自分の思うカッコ良いを寄せ集めたダークライダー寄りのオリジナルライダーとなっております。立ち位置としては魔進チェイサーで怪人を逃がしたり意にそぐわない個体を始末する役割を持っています。
 専用の武器はありませんが、必要となればその辺にある鉄パイプなどを使いますし敵の武器を奪うことも辞さないダーティな戦法がウリです。相手にダメージを与えたり自分がダメージを受けるとスペックが上昇するという性質を持ち、持久戦になればなるほど強くなります。ただし、体力などは回復しないため変身者自身のスペックが問われます。
 大アルカナがモチーフなので狼から連想して『月』をモチーフにしています。先行きの不安を暗示するため、朧気な不安≒情緒の安定しない狂気みたいに解釈しつつ三日月と人狼の要素を掛け合わせました。
 ドライバーのデザインは舞台劇。月のタロットカードはザリガニや狼が地上から見上げている構図となっているため、上空にある月をスポットライトに見立てました。摘まみを捻って照明を点けるようにゼンマイを回して変身します。ギーツに登場したゾンビバックルをイメージしてもらえれば。
 怪人の名前はドイツ語でゲームを意味する「シュピール」と歪などを意味する「ディスリスペクト」から。縫いぐるみが共通モチーフで継ぎ接ぎのような身体が特徴となっています。
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