(※)今回のは自分のアイディアを形にするために投稿したテスト版となっております。今後は改良したり設定を変更することがありますのでご注意ください。
その昔、この世界には誰もが注目した伝説のTCGがあった。
その名は『ブースト・バトルProject』……様々なカードを組み合わせてプレイヤー同士が己のライフポイントを掛けて戦う対人向けカードバトル。
若者や子どもたちのTCG離れや新規層を獲得するため、パソコンやスマートフォンなどをメイン媒体としつつ既存のカードゲームプレイヤーを引き込むための体験会を兼ねた宣伝などを行い、
伝承の妖怪や怪物をモチーフにしたデフォルメながらも万人受けしやすい『ミニオン』のカードデザイン、シンプルながらも奥深いルールとデッキ構築の楽しさ。
そして、このゲーム最大の魅力『プレイヤーの想像を委ねるという点』である。
プレイヤーはこのゲームではあらゆる立ち位置になれる。
かつてのカードゲームアニメの主人公たちのような切り札と共に戦う相棒(バディ)にもなれるし、モンスターや切り札を剣や銃として武装する戦士(ヒーロー)にだってなれる。
そうした想像力を手助けするためのフルダイブゲームも実装された、人類が熱中するほどの進化したカードバトル!……そうなるはず、だった。
企画の中止と突然のサービス終了、それとほぼ同時期に発生した怪人騒動。そして、その怪人を打倒する仮面の戦士がいるという噂……。
世界中から忘れ去られたゲームが、未知の力となって人類に牙を剥く。
とある街にある廃工場。
本来なら誰もいないはずの場所に、二つの影があった。
一人は、スーツを着た成人男性で髪型も容姿も特徴らしい特徴が見当たらない至って普通の民間人だ。
「……約束だ。速く、速く『あれ』をっ」
逸る様子で、彼は相手に縋りつく。
その表情は明らかに正常ではない……血走った眼で必死に懇願しているのだ。
彼は違法薬物の常習犯なのだろうか。
もし第三者がこの光景が目撃していたならば、鬱屈した感情や現実から逃避するために裏社会の人間に多額の金銭でドラッグを買い取ろうとしているように見えるだろう。
しかし、その予想はもう一人の取引相手らしき存在を見た瞬間、外れることになる。
『あっはっは!そう焦らない焦らない』
必死な様子の相手に楽しそうに笑うのは、一体の『異形』。
人の形をした怪人は渦を巻いたようなライトグリーンの身体に染まっており、その体表に三体の白い鼬が張り付いている。
身体のあちこちには鎌を思わせる三日月のような刃を生やしており、身軽な印象を与える。
そして、左腕には映写機のような小型デバイスが装着されていた。
「頼むよ、もう抑えられないんだっ!速く、速くっ!!」
『オーケー。ラッキーカードを引かせるための確定チケットをあげよう』
息も荒げるほどに異常な様子の彼に調子を崩すことなく、鼬と風の怪人は何処からともなく長方形の小さなアイテムを投げ渡す。
そこには黒と黄の二色に彩られた蜘蛛のデフォルメキャラクターが描かれており、見ようによってはアイテム交換用のチケットを思わせる。
「やった……やった!ひ、ひひ、ひひひゃははははぁあああああっ!!」
【TSUCHIGUMO……!!】
側面にあるスイッチを起動した瞬間、カードパックを開封するように出現した土蜘蛛のキャラクターが男性の身体へと入り込む。
高純度のエネルギーで構成された土蜘蛛は憑依した人間の欲望を刺激し、その者に適した能力と姿を与える。
そうして姿を現したのは、一体の異形だった。
『ははっ、はぁぁぁぁっ』
白い簡素な素体の上半身を覆う毒々しい蜘蛛の怪物……筋足にはクレーンアームが取り付けられており、至る所に白い蜘蛛の巣が張り巡らされている。
まるで目についた物は己の所有物だと言わんばかりの、略奪と欲望に満ちた怪人に鼬の怪人は嬉しそうに拍手を行う。
『Hello,ツチグモ君。さっきの姿より、今の君の方が何倍も素敵だ♪』
変わり果てた姿を見て、心底楽しいと言わんばかりの怪人が喜びを露にする。
ツチグモは狂喜に満ちた声を零しながら、新たな姿となった自分の姿を確認している。
自分が望んだ姿、自分が望んだ力、自分がずっと引きたかった切り札に喜びを隠し切れないでいた。
『その力は君の物だ。君の思うがままに、君の好きなようにすると良い……それじゃ』
鼬の怪人は竜巻を巻き起こすと同時に、その場から姿を消した。
しかし、それをツチグモは気にすることはしない。
与えられた
その瞬間のことだった。
【GEIST PARADE!!】
『っ!?』
突如聞こえた音声が、工場内を響かせる。
慌てた様子でツチグモが音の発生源を探ろうと必死に見渡す。
そして、すぐに見つかった。
「……」
一人の人物が自分と同じ形状のチケットを構えた状態で、こちらへとゆっくり歩いてくる。
チケット型アイテムを起動したその人物は逆光で姿が上手く見えない。
しかし、腰に装着された機械には中央部分が円形のディスプレイになっているデッキケースを模した奇妙なユニットが接続されており、右側には上下二本ずつ配置されたマフラーを思わせる装飾とバイクハンドル型のグリップがある。
『な、何だお前はっ!?』
自分の姿に臆せず距離を縮める異質な存在にツチグモが警戒を強める。
筋足からは粘着性の強い糸が生成されており、それを編んだトラップを準備している。
それに気にすることなく、乱入者はチケット……『デッキチケット』の一つである『ガイストパレードチケット』を中央上部のスロットへ装填した。
愛嬌のあるカボチャマスクを被った首無し亡霊のデフォルメキャラが描かれたチケットが認証される。
【DECK SET!】
丸いディスプレイにカボチャマスクのデュラハンが映り、背後にランタンを飾り付けた扉が出現する。
動揺するツチグモにほくそ笑むように、グリップを握った乱入者が短く『あの言葉』を呟いた。
「変身」
グリップを捻ると、マフラーから青白い炎が噴き出した。
まるで魂や鬼火を思わせるような炎は乱入者の身体を包み、洗練されたスーツへと姿を変えていく。
直後にランタンを飾った扉が開くと、可愛らしいお化けを模したキャラクターが周囲を旋回しながらスーツの左側に装着されていく。
身軽ながらも重要な箇所を保護する鎧となり、最後にカボチャマスクのお化けが乱入者の左肩に噛み付くことで変身が完了した。
【ACCELERATION! BEAT DAWN DECK!!】
シャープな造形の右側は昆虫のような丸く大きな赤い複眼を光らせ、左側はランプの光源を思わせるような橙色の軽鎧に身を包んでおり、カボチャを模した複眼が赤く輝いている。
その姿を、ツチグモは知っていた。
人々の望む歪な切り札を渡す怪人と同じデッキ所有者でありながら、それを邪魔せんとする戦士を。
単なる噂話は、事実だったのだ。
『仮面、ライダー……!』
「歪んだお前の心、切り札ごと埋葬してやる」
短く宣言した仮面ライダーが距離を詰めた。
一瞬で間合いに踏み込んだ彼は、動揺するツチグモの鳩尾へ強烈なアッパーを叩き込む。
『うげぇっ!?』
完全な意識外からの攻撃はスペック以上のダメージを与え、前のめりになった身体が倒れそうになる。
しかし、それを許すはずもない仮面ライダーは膝蹴りで顎を強引に打ち上げると、追撃のミドルキックで相手を吹き飛ばす。
【MINION CALL!】
ユニットのボタンを押し、グリップを捻ると音声が再度響き渡る。
すると、デッキケースを象ったユニットから一枚のカードが飛び出すと、仮面ライダーの前で静止する。
大量のお菓子をカボチャのランタンに入れた死神が描かれた『怨菓子将軍・デスブレード』のカードが青白い炎となって大剣へと形作る。
それだけでは終わらない。
【MAGIC CALL!】
今度はボタンを二回押し、再度グリップを捻ると骸骨や布を被ったお化けたちが楽しそうに社交ダンスをしているイラストのカード『ソウルカーニバル』が出現し、仮面ライダーの両手足に青白い炎を灯らせる。
『な……っ!?』
その様子にただならぬ気配を察知したツチグモが糸を乱射する。
蜘蛛の巣を象った拘束の糸は命中すれば相手を一瞬で捕らえてしまうだろう。
しかし、仮面ライダーは鬼火の剣を振るって糸を燃やし、地面を焦がしながら再び走り出す。
焦ったツチグモは何度も糸を発射するが、結果は変わらない。
やがて、再び距離を詰めた仮面ライダーの一閃が禍々しい色の蜘蛛を斬り裂いた。
『ぎゃあああああああああああっ!!?』
肉体どころか魂さえも焼き尽くす斬撃はツチグモに大きなダメージを与え、大量の火花を散らす。
そこから返す刀で一閃、十字に燃える身体を軽快なステップを踏んだ両脚で蹴り飛ばした。
地面を転がり、ようやく立ち上がるころには土蜘蛛は満身創痍となっており、抵抗すらも出来ない状態となっていた。
「これで決める」
デッキケースのボタンを三回押し、再びグリップを捻ると大鎌を構えたカボチャマスクの死神『仮面の死神パレード・ゴースト』のカードが出現する。
それは仮面ライダーの右脚に憑依され、同時に冷たい亡霊の風が周囲に吹き荒れる。
高く宙へと浮いた戦士はツチグモに狙いを定めると、炎を纏った右脚を突き出した。
【JOKER CALL! GEIST PARADE ATTACK!!】
「……はぁっ!」
風と炎を纏ったライダーキックが真っ直ぐに、あり得ない速度で飛来する。
容赦も加減もない、その歪みだけを刈り取るだけの一撃が、ツチグモ目掛けて繰り出される。
やがて、躱すことも防ぐことも出来ない必殺の飛び蹴りが直撃した。
『がっ、あ……あぁぁぁあああああああああっっ!!!』
けたたましい音を立てて吹き飛んだツチグモは絶叫をあげて爆散。
爆発が晴れた先には気を失った男性と、砕け散ったチケットの残骸だけ。
「……俺がやれるのは、ここまでだ」
そう独り言ちるように仮面ライダーが男性の首根っこを掴むと、戦場となった廃工場に目を向けることなく立ち去るのだった。
その光景を、鼬の怪人は観ていた。
ツチグモのチケットを渡した後は本当に立ち去るつもりだったが、仮面ライダーの存在を察知したことで陰から覗いていたのだ。
手頃な駒が倒されたのは癪に障るが、それ以上に面白いものが観れたので結果としては上々だろう。
『楽しくなりそうだ、本当に楽しみだよ。仮面ライダー』
笑う、ただ嗤う。
そんな彼の愉快な心情を反映するように、左腕のデバイスに装填されたチケットが不気味に輝いていた。
チケットに描かれた三体の鼬もまた、笑いを堪えるように蠢くのだった。
龍騎は契約したモンスターカードとデッキで、ブレイドとガッチャードは固有のカードで変身するというものでしたが、今回はDCGの要素を強調したカードライダーとなっております。
変身アイテムをチケットにしたのはソシャゲ系統やカードゲームのイベントなどで見かけるカードやアイテムを交換するためのものから連想し、一つのデッキを使うのに必要なチケットというイメージでチョイスしました。
仮面ライダーや幹部はデッキが完成済みのプレイヤー、怪人はカードそのものでデッキを作っている最中というイメージです。ここからうまい具合に成長することで自分に見合った能力や姿……即ちカードが集まっていき、最終的に一つのデッキ=幹部へと昇格するといった流れです。