オリジナルライダー設定集   作:名もなきA・弐

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アニガサキと仮面ライダーセイバーの最新話を観ていたら、いつの間にか出来上がっていました。
それでは、どうぞ。


剣士外典 ワンダーライダーズ
嵐の剣士 仮面ライダーティルヴ


皆さん……ボンヌ・レクチュ~ル!僕はタッセル。

僕は今、小説家にして炎の剣士である『仮面ライダーセイバー』の『神山飛羽真』に注・目・中!

仲間たちとの溝は深まり、苦しい戦いを強いられている彼のこれからにと~~~~っても目が離せないっ!!

で・す・が……今回僕が皆様に薦めたいのは、この三つの本。

これは一つのお話から生まれた三人の剣士たちの物語……皆様の知る世界とは一味も二味も違う、全く別の剣士たちの戦い。

互いを輝かせる虹を護る嵐の剣士・九人の歌の女神たちを見守る蒼き炎の剣士・太陽と海を愛する月の剣士。緑・青・橙の三冊に分かれているよ。

僕がまず薦めるのは、この嵐の剣士。

それでは……バッドエンドから始まる物語をご覧ください。

 

 

 

 

 

人の賑わうショッピングモール。

休日というのもあってか男女や大人子ども問わず賑わっており、全員が楽し気な笑みを見せている。

 

「買い物付き合ってくれてありがとう!」

「ううん、こっちこそありがと。おかげで欲しい本も買えたし」

 

楽し気に談笑するのは二人の少年少女。

少年の方は少しだけ丈の長い長袖の少年……一般男子よりやや少し身長にグリーンの短い髪に可愛らしい顔立ちで、黒いメッシュが入っている。

服装はシングル型のブレザータイプの黒い上着とズボンであり、ボーラーハットを被った少し背伸びしたようなお洒落な格好だ。

帽子の位置を少し調整しながら少年『進藤虹哉(しんどうコウヤ)』は文庫本の入った紙袋を手に持っている。

対して笑顔を見せている少女は虹哉の幼少期からの幼馴染。

ライトピンクのミディアムヘアをハーフアップにし、右サイドは三つ編みのシニヨンで纏めている。前髪は左に流したぱっつん、真ん中の毛だけ特に左に跳ねている。

一見すると凝ったヘアアレンジだが、本人はそれを苦もなくしているのだから如何に女心に鋭くない彼でも、何となく「すごい」というのが伝わる。

 

「っ?どうかした」

「いや、別に……///」

 

髪を軽く掻き上げながら、視線に気づいた少女『上原歩夢』が微笑む。

その仕草に何故か高鳴る鼓動に疑問符を浮かべながらも、少し頬を赤く染めて「何でもない」と返す。

そんな気恥しさを誤魔化すように話題を変える。

 

「そ、そういえばさ!『あの件』なんだけどさ、本当に大丈夫?」

「え?うん、同好会の加入の件だよね」

 

虹哉の急な話題転換に戸惑いながらも、歩夢が頷く。

同好会……それはこの二人が所属する東京・お台場にある中高一貫校『虹ヶ咲学園』に存在する同好会『スクールアイドル同好会』のことだ。

彼らの高校にいると思われるスクールアイドル『優木せつ菜』と、そして他校のスクールアイドルグループ『μ's』と『Aqours』の合同ライブの配信を見て感銘を受けたのだ。

すごい……!

それが、虹哉の受けた印象だった。

元々作家志望でもある彼は、様々な文化に触れるべくこの学校の音楽科を専攻しているのだが、あの時のライブにとても心を奪われたのだ。

あの輝きを見れば、きっと自分の世界が広がるのかもしれない……。

そうして現在廃部寸前の同好会を立て直すべく、歩夢に協力を要請しているのだ。

 

「全然大丈夫だよ、私で役に立てるか分からないけど……」

「歩夢なら無問題だよ!ありがとっ!!」

 

可愛らしい顔から見せる満面の笑みに、頬を赤くした歩夢も笑顔で返すのだった。

 

 

 

 

 

 

『ついに来た……』

 

とあるビルの屋上。

本来ならばいるはずのないその場所に、三つの影があった。

一人は錆びて焦げたかのような漆黒の鉄仮面と甲冑、そして全身に紅のスーツで全身を覆い隠した存在……太陽の光のせいで詳細は分からないが、腹部にはバックルらしき物体と紫色のベルトが巻かれており、下半身に垂らした赤いローブからまるで『剣士』を思わせる。

しかし、景色を見下ろすその視線は禍々しいほどの悪意に満ち、並外れた憎悪を宿している。

左の腰にあるホルダーには赤と金に染まった西洋剣を納めており、剣士の感情に呼応するかのように火の粉が舞い散っている。

対してもう一人は人間の男性。

だがその姿は全身に西洋の甲冑を身に着けており、顔も兜で覆い隠しているためその容姿は判別出来ない。

見る人が見れば、まるで伝承に出てくる勇者を連想するだろう。

 

「さぁ、伝説の幕開けだ……お前の活躍に期待しているぞ」

 

甲冑の男性が最後の一人に振り向く。

それは明らかに人間ではなかった。

空洞状の目と口を持つ青白い顔と骨格を思わせる白黒の甲冑……まるで亡霊や骸骨を思わせるような異形が取り出したのは一冊の本。

背景は燃え盛る炎となっており、タイトルは禍々しいフォントの文字で掌に納まるほどのものだ。

男性の言葉に頷いた異形は、その本を躊躇なく開いた。

 

【KABE KARA GALGOYLE……!!】

 

ページに刻まれるは赤く目を光らせる不気味で醜悪な彫像。

瞬間、異形が開いた本『アルターライドブック』からは弾かれた封印の鎖の残骸と共に、灰色と黒の装甲が飛び出す。

宙へと浮かんだそれらは、しばらく開いた持ち主である異形の周囲を旋回すると音を立てて装着されていく。

頭部は悪魔を思わせるような黒く不気味な角、そして両腕には醜悪な翼のような装飾を持つ灰色の鉤爪……異形『素体メギド』の姿が本の力をその身に宿していく。

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!』

 

やがてアルターライドブックの力を全て宿した素体メギドはその姿を大きく変えた。

まるで悪魔の彫像を思わせるような姿……『壁からガーゴイル』の伝承を宿した本の魔人。

 

『さぁ、この腐った世界を地獄へと叩き落せっ!ワンダーワールドの残骸……「アルターゾーン」へと染め上げろぉっ!!』

 

復讐の剣士『仮面ライダースルト』の叫びに呼応するように、完全体『ガーゴイルメギド』は再び雄叫びをあげた瞬間、この世界は黒く塗り潰された。

 

 

 

 

 

「うわっ!?」

 

突然襲った謎の光に彼等の目に飛び込んだ光景、それに思わず顔を覆い隠す。

光が治まり、次に視界を開けた瞬間、世界を一変していた。

それを一言で表現するなら、極めてファンタジーな光景。

自分たちがいたのは間違いなく大型ショッピングモールだったはず……しかし、地面からは見たこともない植物たちが生えており、宙には竜や魚みたいな何かの化石骨が浮かんでいる。

まるで、異なる世界が現実世界へと浸食しているような、そんな景色が広がっているのだ。

当然、彼らだけではなく巻き込まれた一般人たちもいる。

 

「これは、一体……?」

「コウ君っ」

 

不可思議な世界に、虹哉が抱いたのは好奇心だ。

普段から創作意欲を掻き立てるべくアンテナを張り巡らせている彼からすれば、この光景は写真に収めたいほどだ。

しかし、それをしないのは隣で自分の腕を抱き締めて身体を震わせている歩夢がいたからだ。

「大丈夫」とその手を握り返した時……。

凄まじいほどの爆音が、辺りに響き割った。

 

「っ、何だっ!?」

 

何かの崩れるような音を耳にした虹哉は、反射的に発生源の方へと走る。

慌てて歩夢も後を追うが、数分もしない内に追いついた。

 

「な、何あれ……!?」

 

歩夢が眼前の光景を震えながら指差し、虹哉もその指が示す先を見て息を飲む。

そこにいたのは骸骨のような白い亡霊の異形……。

悪魔のような彫像を連想させる鎧を身に纏った、怪物だ。

その怪物……アルターワールドを展開させたガーゴイル・メギドが視線に気づき振り向く。

 

『何だっ?随分と意気が良さそうだな』

 

近くにある建造物を破壊しながら、明らかに人間の言語を喋るのに向かないであろう魔人の口から声が響く。

それは傲慢で、プライドの高さが鼻につくような言動だ。

しかし、それは何の力も持たない人間たちにとっては恐怖そのもの。

 

「……歩夢っ!」

「きゃっ!?」

 

ガーゴイルの声を聞いた瞬間、虹哉は即座に彼女の手を握り、庇うように連れ走り出す。

歩夢が短い悲鳴を漏らすが、一刻も早く彼は目の前の化物から逃げる。

自分でも何処まで走ったのか分からないぐらい息を切らせながら周りを警戒する。

後ろに視線を送り、怪物が追って来ていないことを理解し、一息吐いた瞬間だった。

 

『どうしたんだい君たち?これじゃ追いかけっこにならないぜ!』

 

魔人の声が響いた。

慌てて見上げれば、背に持たれていた建造物の壁からガーゴイルが出てきたのだ。

上半身を出した魔人はせせら笑うように、恐怖する少年少女の顔を見下ろす。

壁との同化を解除したガーゴイルが地面へと着地した。

 

「ひっ!?あっ、あぁ……」

『良いぞ!恐怖しろっ、絶望しろ!その感情が我らの世界、アルターゾーンを拡大させるのだっ!』

 

腰を抜かした歩夢が、怯え小さく悲鳴をあげる。

その姿に愉悦を抑えきれないガーゴイルが叫ぶ。

 

「歩夢っ!」

 

そんな怯えすくむ彼女を守るために、恐怖心を無理やり抑えた虹哉がガーゴイルに向かって必死に組み付く。

 

「僕がどうにかするから、歩夢は何とか逃げて!」

「コウ君っ!」

 

しかし、その勇気は無謀に他ならない。

ガーゴイルは乱暴に振り解くと、彼の身体を拳や肘、両脚で滅多撃ちにする。

 

「がっ?!逃げてっ、ぐっ!早く……かはっ!?」

 

奮闘虚しく地面に転がる虹哉。

動けなくなった彼を鼻で笑った魔人は、再び歩む夢に狙いを定めると鉤爪を構える。

それを見た虹哉が気力で必死に立ち上がろうとした時だった。

 

【……いつまで待たせるのだ?】

 

声が、聞こえた。

大きくはなかったが、まるで頭の中に響くような声が聞こえてくる。

聞いたことあるような、知らないような声だ。

 

【こちらの準備は整っている。後はお前の番だというのに、何を手間取っている?】

 

声が問いかけてくる。

恐怖や痛みへの逃避で聞こえてきた逃避かと思ったが、どうやら違うらしい。

今の虹哉が置かれている状況を気にすることなく、声は続ける。

 

【それとも、このまま見て見ぬ振りをするか?】

「っ。そんなわけ、ない……!」

 

拳を握り締める。

そうだ、そんなわけがない。

自然と口を開く。

そうだ、分かっているはずだ、

目の前で誰かの命がなくなりそうなのに、見なかったことにするのか……?

違うっ。そんなのは絶対に違うっ!!

沈静化した怒りが再び湧き上がり、目に精気が宿る。

 

【それで良い。その怒りは、お前の持つ優しさから生まれるものだ……なら、既に答えは出ているだろう】

 

分かってる。

目の前の人を助ける。この怒りは、決して間違っているものではないのだから。

瞬間、吹きすさぶ風が周囲を襲う。

 

「きゃあっ!?」

『ぐうっ!?』

 

軽く悲鳴をあげる歩夢は吹き飛ばされまいと屈み、ガーゴイルも突如巻き起こった暴風の発生源を突き止めようと周囲を見渡す。

それはすぐに見つかった。

虹哉の目の前に突き刺さっている剣……そこから風が発生していたのだ。

しかし、その刃から電流が走っている。

 

【我は汝。その剣はお前の心より生まれし聖なる剣……さぁ、臆するな】

 

頭に響く声に従うように彼はその柄に触れる。

瞬間、膨大なほどの暴風と雷が襲う。

痛い、苦しい……。

しかし、それでも虹哉は諦めない。

 

「こんな結末認めない、誰かを不幸にする終わりなんて僕は……だから、抜けろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」

 

柄を握る手に力を込め、そして勢いのまま引き上げる。

するとその剣は抜けた。

まるで主を長い間待ち侘びたかのように、その覚悟の応えるかのように。

虹哉の掲げた剣に、雷と風が収束する。

そして、形を変えた剣だった物体を腰に当てる。

 

【聖剣ティルヴドライバー!】

 

荘厳な声が響く。

それは奇妙な形をしたバックル。

右側には、ダークグリーンの柄と嵐を連想させるシャープな鍔を思わせるグリップハンドルに、黒い鞘もしくはタブレット思わせるような液晶画面。

そして、聖剣は新たな力の欠片を生成し虹哉の手に一冊の本が収まる……それは間違いなく、根源たる大いなる本の一部『ワンダーライドブック』だ。

虹哉は焦ることなく、機械の竜が描かれているダークグリーンの小さなワンダーライドブック『カソクドラゴン』の起動し、そのページを開く。

 

【KASOKU DRAGON!】

【かつて、あらゆる障害を破壊し駆け抜けたのは……たった一体の神獣だった】

 

紡がれるは封じられし伝承。

嵐のように全てを振り切る、竜の神獣……再び閉じた本を右側のスロット……鍔らしき部分へと装填。

目の前にいる魔人を見据えながら、ソードグリップをバイクハンドルのように思い切り捻った。

そして叫ぶ。

 

「変身!」

 

瞬間、ティルヴドライバーのスロットにセットされたワンダーライドブックが展開される。

そのページにあるのは、加速する竜を纏いし剣士の姿!

 

【DOWNLOAD!KASOKU DRAGON~!!♪】

 

カソクドラゴンの持つエネルギーが、嵐の聖剣の持つエネルギーと混ざり合うことで凄まじいほどの暴風が彼の体を覆う。

やがて、それが治まった後に現れたのは一人の剣士。

ダークグリーンのスーツで覆い、メカニカルな銀色の仮面とプロテクターを纏い、右肩には機械竜の頭部をあしらったシンボルがある。

頭部には赤い複眼、Vの字を象ったようなホーンが特徴の機械剣士。

 

【聖剣創造!邪道を征する雷風が、機械の竜と共に走り抜く!】

嵐風剣征嵐(らんぷうけんセイラン)!】

 

その音声と共に、剣士の右手にはソードグリップと同じ柄と鍔、そして白い刀身に緑色のラインが刻まれた一振りの西洋剣が生み出される。

嵐の剣士『仮面ライダーティルヴカソクドラゴン』……新たな聖剣と剣士が、今ここに誕生したのだ。

 

「コウ、君……?」

「待ってて歩夢。すぐに終わらせるから……」

 

不安気な瞳を向ける彼女の頭を優しく撫でると、ティルヴは自身の聖剣である征嵐を構えて走る。

感覚としては、普通に走っただけ……しかし、カソクドラゴンの力で更なる加速を得た彼は、狼狽えていたガーゴイルの懐まで詰め寄ったのだ。

 

『な、何…』

「でやぁっ!!」

 

動揺する隙を逃すことなく、ティルヴは雷風を纏った刃を振るう。

その一撃は、ガーゴイルの彫刻の如き身体を削り、体内に蓄積されたエネルギーを外へと散らす。

呻くメギドに気にすることなく、ティルヴは更なる斬撃を見舞う。

その戦い方は完全なる我流だが、変身者の虹哉の特技でもあるトリッキングがここで活かされる。

嵐の力によって勢いが付与された蹴りが一撃二撃と炸裂し、まるで舞うように繰り出されるアクロバティックな動きはまさに暴風の一言。

 

「よくも歩夢を怖がらせたなっ!これはその分だっ!」

【速読!KASOKU DRAGON!】

 

変身用のソードグリップを握り、二回三回と捻ると音声と共にティルヴの両手足に雷と風のエネルギーが蓄積される。

 

「はぁっ!」

『ぐおああああああああああああああああっっ!!?』

 

止めとばかりに放たれた聖剣の斬撃がガーゴイルの身体を大きく吹き飛ばした。

大量に火花を撒き散らしながら、地面を転がるメギドを前にようやく普段の余裕が出てくる。

 

「どうしたの、もう終わり?見た目通りの古臭くて鈍重な彫刻だな」

『何だとぉっ!!』

「いっそのこと僕が綺麗に研磨してやろうか?そうすれば多少はマシになるかもねっ!」

 

剣先を突きつけながら挑発するように言い放ったティルヴの言葉に、何とか起き上がったガーゴイルが地団太を踏む。

たかが人間如きに、それも聖剣に選ばれたばかりの子どもに舐められている……それはメギドからすればプライドを傷つける行為にも等しい。

『幻獣』のジャンルに選ばれた自分が追い詰められるなど、絶対にありえない……!

 

『くっ、おおおおおおおおおおおおおおっ!!』

 

雄叫びと共に地面を叩いたガーゴイルが周囲の景色を変える。

そこはまるで古びた廃教会……ステンドグラスや照明が粉々に砕かれた内装となっている。

 

『図に乗るなよクソガキッ!俺の力を見せてやる……!!』

 

驚くティルヴにほくそ笑みながら、ガーゴイルは廃教会の壁に背を向ける。

すると、その身体がゆっくり壁と同化を始めたのだ。

慌ててティルヴがメギドを斬ろうとするが、その攻撃は空振りへと終わってしまう。

しばらくの静寂、そして。

 

「ぐあっ!?」

「コウ君!」

 

ティルヴの背中から鋭い衝撃が走ったのだ。

歩夢の悲鳴を聞きながらも、急いで振り向けばそこには鉤爪を光らせるガーゴイルの姿。

 

「このっ!」

『おっと!』

 

征嵐を振るうも、再びガーゴイルは壁の方まで下がると、壁と同化して姿を消す。

そこからはメギド側の優勢だった。

ティルヴの死角から攻撃し、再び同化して逃げるといったヒット&アウェイの戦法だ。

歩夢を人質にする手段をあったが、距離がある上に幻獣のジャンルとなった自分が子ども一人のためにわざわざ人質を取るなどあってはならないからだ。

しかし、攻撃を受け続けているティルヴは冷静だった。

しばらく相手を観察して分かったことだが、あの魔人は攻撃と壁の同化は同時に行えない。

つまり壁と同化しながら自分を狙い撃ちすることは絶対に出来ないということ……ならば話は簡単だ。

 

(攻撃する方向が分かれば良いっ!)

 

ティルヴは征嵐を構え、仮面の下で目を瞑る。

聞こえてくるのはガーゴイルの嘲笑う声、廃教会の軋み、そして……風の流れ。

聖剣を握り直し、深く呼吸する。

一瞬の静寂……左後ろからの異常な風の動き。

 

「そこだっ!!」

『があああああああああああああああっっ!!?』

 

死角に当たる壁から狙って飛び出したガーゴイルを、鉤爪ごとティルヴの斬撃が叩き折った。

勝ちを確信していたメギドは動揺の叫びと共に地べたに叩きつけられる。

 

「壁中遊泳の時間は終わりだよ!こっからは、小細工なしの一本勝負だあああああっ!」

『がっ、ぐべっ!?ぎいいいいいいいいいいいっっ!!!』

 

今度は壁と同化する時間など与えない。

斬って切って斬りまくり、蹴って蹴って蹴りまくる。

ソードグリップを捻り、更に嵐属性のエネルギーを加速させると強化された斬撃と蹴撃がガーゴイルの身体に強烈なダメージを蓄積させていく。

最後に強烈な蹴りを受けたことで、ガーゴイルが吹き飛んだ。

途端に、周囲は再び元の街並みへと戻る。

 

『ぐへっ、がぁ……!!』

 

満身創痍となっているメギドを見据え、嵐の剣士は力強く宣言する。

 

「この世界のバッドエンドは、僕が変えるっ!」

【必殺征覇!TE・TE・TE・TEMPEST!!】

「はぁぁぁぁ……!」

 

ワンダーライドブックを一度閉じてからソードグリップを捻り、再びページを開く。

それと同時に一際高い音声と、嵐の如き暴風と雷が右脚へと集束する。

緑色のエネルギーを光らせながら、ティルヴが地面を蹴って走り、そして空高く跳躍する。

そして、ようやく起き上がったガーゴイル目掛けて右脚を突き出した。

 

「シュツルムシュラーク!はあああああああああああああっっ!!」

『そんなっ、そんなバカなっ!?ぎぃやああああああああああああああっっ!!!』

 

嵐の一撃による直撃を受けたガーゴイル・メギドは自らの敗北を受け入れられぬまま、爆散。

瞬間、体内に宿していたアルターライドブックも音を立てて消滅する。

後に残るは勝利の祝う優しい風を吹かせるティルヴと、その戦いを見守るしかなかった歩夢だけだ。

バックルにセットされているワンダーライドブックを閉じてから外し、ソードグリップを捻ることで変身が解除された。

ゆっくり自分の手を握って開く……身体の何処にも異常はないらしい。

見れば周囲の景色が淡い光に包まれて元通りになっていく。

その光景を見て安堵し、歩夢の安否を確認しようとするよりも早く。

 

「コウ君!」

 

彼女に抱き締められていた。

余程怖かったのだろう、目に涙を溜めて「良かった」と安堵の言葉を漏らし抱き締める力を強くする。

 

「あっ、えと、あのっ///」

 

伝わってくる女子の体温と柔らかさに、思春期の虹哉はただ顔を赤くし動揺することしか出来なかった。

 

 

 

 

 

そんな光景を遠くから一人の少女が見ていた。

毛先が緑色のグラデーションになって首元まである黒髪のツインテールの少女。

実はアルターワールドが展開されたのを察知した少女は『師匠』から受け継いだ聖剣を手に、メギドの討伐へと動いており、囚われた人たちを助けようと動くよりも先に虹哉が変身し、あろうことかメギドを撃破したのだ。

そんな、一連の出来事を見ていた少女。

新たな聖剣の覚醒、嵐の剣士の誕生と色々な出来事があった……それに対して彼女は身体を震わせる。

 

「~~~~~~すっごいっ!!」

 

そして、眠たげな目を見開き輝かせた。

面白いものを見たと言わんばかりに翡翠色の瞳を欄々と煌めかせ、胸に高鳴る鼓動を抑えきれないでいる。

久しぶりに、ピリッとではなくビリリと痺れるほどのときめきに出会うことが出来たのだ。

 

「うん決めた!私っ、あの子を剣士にスカウトする!!」

 

ランプの魔人が描かれたワンダーライドブックを掲げながら少女『高宮侑』は宣言した。

 

 

 

 

 

ひらひらと舞う桜の花びらを、少年が見つめる。

転校して数日だが、この落ち着いてくつろげるこの場所は少年にとってのお気に入りになりつつあった。

オレンジ色の髪を短くし、頭にアンテナのようなアホ毛を生やしており顔立ちは端正だ。

服装こそ学校指定の濃紺のブレザーと青いズボンに、落ち着いた色合いの緑のネクタイを少し緩めている。

何処にでもいる至って普通の高校生だ。

しかし、その手に持っているのは蒼いワンダーライドブック。

何をするでもなく、それを開いたり閉じたりしながらただ穏やかな風を感じている。

 

「平和だなぁ……」

 

細く開けた蒼い瞳を見せ、自然と笑みが零れる。

そんな自分だけの時間を楽しんでいる時だ。

 

「お兄ちゃーーーーーんっ!!」

 

遠くから聞こえた声に視線を向ければ、義妹が手を振っている。

もう高校二年生だというのに、小さいころから何も変わっていない。

彼女が手を振って元気よく跳ねる度に、少年が結んであげた茶髪のサイドポニーが合わせて活動的に揺れる。

そんな彼女に苦笑いしながら、青年は手を軽く上げる。

ワンダーライドブックを懐に入れた彼は、彼女たちの元まで向かうべく立ち上がった。

 

【KING OF ARTHUR!】

 

次なるお話は、蒼き情熱の炎を燃やす騎士王の物語……。




吸収型メギド
この世界で活躍する本の魔人。目を付けた人間から奪ったスキルからアルターライドブックを生成し、アルターワールドで自然発生した素体メギドが本を開くことでその伝承を纏った魔人へと覚醒する。
自らの世界であるアルターワールドを現実世界に干渉させる能力を持ち、メギドが暴れることで侵食させていく。
イメージコンセプトは盗作作家。他人の想いから作った本を使って好き勝手に手を加えるところから着想を得た。

ガーゴイル・メギド ICV子安武人
素体メギドがアルターライドブック『壁からガーゴイル』の伝承を吸収することで覚醒した姿。
頭部に生やした黒く不気味な角、両腕には醜悪な翼のような装飾を持つ灰色の鉤爪を生やした悪魔のような外見で全体的に彫像のような外見をしている。
鉤爪による攻撃が主だが、最大の武器は壁と同化すること。これにより常に死角からの攻撃を可能としている。
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