怖いのはモチーフやアイテムが被ることじゃない…名前が被ることです。
【POSSESSION…!!】
太陽の明かりが当たらないとある場所で、掌に収まるサイズの禍々しい赤いスイッチを手に持った女性は無表情のままボタンを押した。
すると、不気味な電子音声と共に砂嵐のような灰色のノイズに包まれる。
ノイズが晴れると、その場にいたのは先ほどの女性ではなくボウガンとアーチェリーをモチーフにした装飾が全身に覆われているマゼンタカラーの異形の名前は『シュート・ゲノピング』……ゲノピングスイッチに宿ったエナジーを肉体に憑依させることで、遺伝子構造を変化させた怪人である。
『人間関係?目上の礼儀?くだらないっ、私はアーチェリーが出来ればそれで良いの」
「だから」と彼女は召喚した弓を構える。
『私の邪魔をする者は、消えなさい』
無情にも仲間たちがいる練習場へと矢を放とうとした瞬間だった。
突如聞こえたエンジン音に思わず振り向いてしまう。
そこにいたのは一人の少年であり、ヘルメットをし少しだけパーマがかった童顔が露わになるとそのままシュートへと対峙する。
『何、あなたは?』
「仮面ライダー。名前ぐらい聞いたことはあるだろー、ゲノピング」
何処かのんびりしたような、それでいてはっきりとそう答えた少年『芦河玲斗』はダークグリーンのバックル『カギトドライバー』を腰に当てると、そこから黄色いベルトが伸びて固定される。
そして次に玲斗が取り出したのはゲノピングスイッチと酷似したオレンジ色のスイッチ。
しかし、それはシャープなデザインをしたそれは何処か洗練されたような印象を与える…戸惑うシュートに気にすることなく彼はボタンを押した。
【自由な個性!STANDARD!】
音声が鳴ったのを確認してから、ドライバーの左側にあるスロットにスタンダードスイッチをセットする。
「変身っ!」
【POSSESSION! STANDARD…STA・STANDARD! FEVER!!】
右側に存在するサイドハンドルを掛け声と共に引いた瞬間、新たな電子音声と共にスーツが彼の全身を包む。
そうして変身を遂げた瞬間、最後の電子音声と共に打ち上がったオレンジ色の花火がその姿を照らした。
三角の白いホーンに、鮮やかなオレンジカラーのスーツ…そして赤く丸い複眼がゲノピングを睨む。
「俺は『仮面ライダーカギト』。派手に行くぜっ!」
そう宣言したカギトは専用武器である片手剣『スタンダードセイバー』を逆手に構えて攻撃する。
突然変身した存在に一瞬だけ困惑していたが、斬撃を受けてしまったシュートはすぐに冷静さを取り戻し、距離を取ってから弓を構える。
『くらいなさいっ!!』
シュートは弓から矢を引いて放つと、散弾のように弾幕が乱射される。
凄まじいそのスピードを凌駕するように、カギトはスタンダードセイバーで攻撃を弾く。
『このっ!私の矢を受け流すなんて!こんなの許されるはずないッ!』
自分の攻撃を躱されたことでシュートは両肩のボウガンから放ちながら攻撃の手を激しくするが、攻撃パターンを既に見切っているカギトはスタンダードセイバーと軽やかなステップで回避しながらも相手との距離を詰める。
『なっ!?こ、この…』
「遅いっ!ふっ!!」
距離を詰められたシュートは弓を近接武器のように振り下ろす。
しかし、それを待っていたかのように武器を一回転させて完全に受け流すと、カウンターとばかりに回し蹴りを浴びせる。
『がっ!?』
バランスを崩したシュートに追い討ちが襲い掛かる。
スタンダードセイバーを彼女の鳩尾に向かって斬り上げると、シュートが煙を上げながら後退する。
『そ、そんな……』
「どうした、そろそろ終わりー?」
カギトの鮮やかな連続技を受けたシュートは後ずさる。
剣先をシュートに向け、勝負はついたと言わんばかりのトーンのカギト。
『まだっ!まだよっ!!確かにあなたは強いっ!でも、私は絶対に終わらないっ、私は、私は未来のアーチェリー選手なのよっ!?何れアーチェリー界を支える逸材、それが私っ!!』
ダメージが蓄積されているにも関わらず、シュートは立ち上がると、上空に向けて矢を放つ。
まるでスコールのように降り注ぐエネルギーにカギトは驚きながらも回避を始める。
しかし、縦横無尽に降る高密度のエネルギーとシュートの追撃によってカギトの身体がから火花が散る。
その様子にショートの余裕も戻ってくる。
『ほら、ほらほらほらぁっ!!!』
間髪入れずに集中砲火する彼女を横目に、カギトは冷静にドライバーにセットしていたスタンダードスイッチを外す。
そして、この場を打開するためのスイッチを手に取る。
「……なら、これだ!」
【聖槍剣!DURANDAL!!】
カギトが手にしたのは紫色のデザインをしたデュランダルスイッチ。
それをONにした彼は素早くスロットにセットしてレバーを引く。
【POSSESSION! DURANDAL.DURARARA・DURANDAL! FEVER!!】
スーツが紫色に染まった瞬間、鮮やかな紫色の花火が新たに打ち上がる。
ボディと両腕には重厚な西洋のアーマーが装備され、手には片手サイズのランスが装備されている。
剣でもあり、槍の伝承も併せ持った聖剣デュランダルの力を憑依した形態『仮面ライダーカギト デュランダルフィーバー』だ。
『ふ、ふんっ!姿が変わったところで何になるのよっ!!』
構えもせず、ただ仁王立ちするその姿にたじろぐが、自分が優勢であることにかわりはないシュートはカギトに向かって矢の弾幕を放つ。
攻撃を受けているのはカギトの方…しかし彼は全く動くことはない。
それどころか、ダメージが届いている様子すらない。
『なっ、嘘でしょっ!?そんな…!』
全く攻撃に動じないカギトに調子を崩されたのか、シュートの焦りによる声が響く。
動揺する彼女に、仮面の下でほくそ笑んだ彼は紫色に染まったランス『デュランダルランス』を構えると直進を開始する。
『…っ!?く、来るなっ!!』
重厚なその姿に恐怖したシュートは攻撃を激しくするが、気にすることなくカギトは突進すると思い切り彼女にデュランダルランスを突き立てた。
『きゃああああああああああああああああああああああっっ!!!』
鈍重ながらも、一撃の重さに特化したその攻撃にシュートは苦しげな悲鳴をあげる。
ダメージが抜けていないシュートの顔を掴んで持ち上げる。
俗に言うアイアンクローである。
悲鳴と共に逃げようとするシュートだが、完全に力負けしている状況では逃げられるわけがない。
「そーら、よっ!!」
『ぐふっ!?』
そして、そのままシュートを地面に叩きつけるとランスを持っていない空いた手で鋭いアッパーカットが打ち込まれる。
流れるように足を掴むと、カギトはそのままジャイアントスイングの要領で振り回し始める。
『いやあああああああああっ!!!や、やめ…!』
「オラァッ!!」
凄まじい勢いで、投げ捨てられたシュートはもはや満身創痍であり、立ち上がることさえやっとの状態である。
そして、止めを刺すべくカギトはデュランダルランスにあるスロットにスイッチを装填する。
【DURANDAL FEVER! DOKKA-N!!】
必殺技を告げる電子音声が鳴り響くと、カギトはその重厚な姿に似合わぬ跳躍を始める。
同時にデュランダルランスからはエネルギーが収束されていき、許容量ギリギリまでの高圧エネルギーによって紫色に発光する。
怖気つくシュートに気にすることなく、デュランダルランスを下へと向けたカギトはそのまま自由落下を開始した。
「やああああああああああああああっっ!!!」
『きゃあああああああああああああああっっ!!』
必殺の一撃『パラディンバースト』を受けたシュート・ゲノピングは、激しい火花と煙を上げながら絶叫と共に爆散する。
爆炎からは女性が砕けたスイッチの残骸と共に倒れるように現れた。
「……ショウイチ叔父さんに連絡、とー…」
スマホを取り出すべく懐をまさぐりながらも、彼は別のことを考える。
結局のところ、この女性はゲノピングスイッチを渡されただけ…スイッチをばら撒いているということ以外、深く知ることまでは出来ていない。
「じっくり行きますかー」
そう一人ごちた玲斗は叔父へと連絡を取るのであった。
フォーゼの放映時期に「星座モチーフじゃないゾディアーツを考えてみよう」という黒歴史を自分なりに考えてみたのが仮面ライダーカギトです。
仮面ライダーカギト
「芦河玲斗」がカギトドライバーとアームズスイッチで変身する仮面ライダー。橙色のパーマがかった童顔が特徴の少年で子ども扱いされることもあるが本人は特に気にしていない。ややマイペースだが悪人でも手を差し伸べる優しさを持つ。
『アームズスイッチ』に詰まった世界各地の伝説に登場する武器のエネルギーを憑依することで様々な力を発揮する。
ゲノピング
名前の由来は「ゲノム(遺伝情報の全体・総体)」と「ドーピング」の造語。人間がゲノピングスイッチに宿ったエネルギーを憑依することで遺伝子に変化を起こす。
変身条件は至って単純で『特定の物事や人に対して、ある種の執着心があること』…シュートだった女性はアーチェリーへの真摯さがトリガーとなって変身し暴走した。