第零廻
「たすけてくれ」
後ろを振り返る幻聴だ。無視する。
青年、
何もない世界を振り返ることなく歩き続ける
最近はよく幻聴が聞こえる、主に自分の目の前で死んでいった人たちの憎悪に染まった声とかが基本だ。
『なぜお前だけ』とか
『お前が間に合わなかったせいだ』とか
俺が生きている事が可笑しいかのように…
そうだ、俺は生きられないはずなんだ。
星は砕けたというのに……。
生きたい、という執念だけが今の俺を動かしている。
,『頼む、誰でもいい誰か……』
ヤメてくれ、もう俺はお前は救えないんだ
俺は遅すぎたんだ、だからもう俺に[無力感]を実感させないでくれ……
『オレ、の、妹、の友達、を………たす、けて、くれ』
足が不意に止まら、砂漠の砂の舞う音しか聞こえない世界に今更、俺は何を期待してるんだ?
『きっと、妹は……、友達が……酷い目にあったと知ったら…きっ、と、悲しむ、俺は妹には…………[笑顔]で、いて、ほしいんだ!!』
その時、脳裏を過ぎった一人の青年の姿。
青年は誰かに笑っててほしかった、だから戦い続けた。
だから、九条誠一は走った。
今聞こえるこの声は、誰かの『笑顔』のために戦っている。
そして、その思いは今何処かの誰かに踏み躙られている
助けを求めている……例えそれが幻だったとしても。
「もう、誰一人だって死なせてたまるものか!!」
走った、走った、走った、走った、走った、走った。
今にも消えそうな声を頼りに走り続けた、そして辿り着いた
崖だ。恐ろしいモノが黒い口を開けて待って居るようだった
微かに、波の音と海のしょっぱい匂いがする。
ここに飛び込むというのか、と九条誠一は小さく嘲笑った。
でも、たしかに崖の下からあの声はする、ならもう迷いはない。
いざ、飛び込もう。意を決したその時光が水平線の向こう側から現れた
あぁ…こんな『世界』にでも日は昇るのか。
彼は懐から現れた、白金の〈スロットルドライバー〉を腰に巻き付けた。
それと同時に、崖から飛び降りた。
重力の強い力に引っ張られていく…………
九条は落下中にベルトの3つに連なるボタンを右から左へと叩き込む。
《Slot ON》
無機質な電子音と共にスロットの場面が回転する
《555》
場面が写したのはギリシャ文字のΦ、そして白金のベルトは入れ替わるように銀色のベルトが巻かれる。
バッシャアッッッ、と水しぶきがあがった…………
「ッ!?………グハァッ、オエッ………」
目が覚めて最初に感じたのは血の味だった……
「ッ!?恭也!気がついたのね!」
そして、見慣れない黒髪ロングの女、膝枕されてるのか…
首を動かして周りを見渡す。ここは、どこかの廃墟らしい
「おや、生きていたのかい?騎士くんは……」
嫌な気配を感じ、体にムチを打ち身体を起き上がらせる
そこには、一人の男が居た…白いスーツを着ていて、顔はスッとしていて、さながら美男子と言った所だ……
しかし、その背中から真っ黒の羽が生えていた。
「内蔵はあらかた破壊しといたはずだが……まぁ、いい
もう一度………殺せばイイヵぁ〜」
狂気に満ちたその声に後ろに居た三人が小さく悲鳴を上げた
俺はとっさに〈ファイズフォン〉に変身コードを打ち込もうとする
『お前が戦うから、いや、お前が存在するだけで罪だ!!』
「ッ!?……。」
「……ケータイ?それで助けでも呼ぶつもりかい?言っとくけど今の僕は無敵だよ」
手が止まってしまう、あの憎悪が未だに俺のココロを蝕んでいる。また、同じ過ちを繰り返すのでは無いか……そんな迷いが俺を惑わす。
でも………。
「……恭也」
温かい手が俺の左手に重なる、黒髪の女性の瞳は恐怖を表していた、でも彼女は笑っていた。必死に笑顔を作っていた……。
スッと俺は立ち上がった。身体の感覚はもう無いのに何故か立ち上がっていた、俺の血液が足元で湖を作ってしまう程重症なのに。
「………俺は、もう迷わない。迷ってるうちに人が傷つくなら………!!」
ー555 Enter
『Standing by』
「戦う事が罪ならば……俺が背負ってやる!!
【変身】ッ!!」
『Complete!』
瞬間、まばゆいばかりの流体エネルギー、フォトンブラッドが駆け巡り、誠一の全身が超金属ソルメタルで覆われる
超金属の仮面の騎士、ファイズがここに降臨した。
次回、憑依。
運命は廻り始めた………