「………ねぇ、すずか。最近のなのは何か変じゃない?」
「…………………アリサちゃんも気づいていたんだ」
送迎用リムジンに乗る二人の少女達、その表情から何か深刻な物が見受けられた。金髪の少女、アリサ·バニングスは最近の高町なのはがおかしいことにとっくの等に気づいていた。それは月村すずかも同じであった。
なのはの異変はニ週間前から見受けられた。何か林田光輝と一緒にコソコソしている、聡明なアリサはそれに感づいた。しかしそこに敢えて触れないのはアリサなりの信頼の証なのだろうか。
しかし、ある日ちょうど三日前の日曜日からなのはの態度は一転していていた。焦っている。なんというかそんな感じだ。授業なんて上の空で、なぜか時間を気にするようになった。学校か終わるやいなや限界まで引き絞られた弓の如く、高速で教室を飛び出していく。
これには流石のアリサ達もほっとけないという事で、林田光輝を捕まえて問い詰めた。しかし、林田光輝は笑って誤魔化すばかり『なのはにも色々あるんだよ』ーーーこちらが聞きたいのはその色々なのよッ!!と叫びかけるが息と一緒に飲み込む。
「まったく、光輝はバカだし、なのはは何か変だし、すずか達は『夜の一族』とか言うのだし、恭也さんは………………」
瞬間、沈黙が車内に満ちる。彼女らは思い出していた、つい最近に巻き込まれた事件と血の匂いを未だに…………。そして高町恭也が変身した赤い仮面の戦士の事を……………。
「………………ねぇ、すずか。ほんとにあの『恭也』さんが成ったモノ、あれ何か忍さんから聞いてないの?」
「……よく、分からないんだ。お姉ちゃんは何も教えてくれないし、それに最近『本』ばっか読んでるし。」
無力。その一言がアリサの胸に突き刺さる。守られてばっかりでなにも自分は何もしていないではないか、それがとてつもなくムカついた。
「…………ねぇ、すずか一ついい提案があるんだけど」
だから、知りに行こう。振り出しに戻ろう。あの疑惑が始まったの『場所』へと……。
●●●❖●●●
「■■■■■ツ!!」
竜牙兵はカブトに大群で襲いかかった。しかし、カブトに焦りは見られない、カブトはその手にある《クイナガン》銃モードで一匹一匹を撃ち倒す。
「■■■■■ッ!!」
「……カラカラうっせぇッ!!」
一斉に竜牙兵は剣をカブトの鎧に叩きつけられた、しかしカブトの分厚い装甲には無意味だった。カブトはクイナガンを斧モードに切り替えて、竜牙兵の腹部を横に薙ぎ払った、そしてカブトは何かを確かめるように右手の開閉を繰り返す。
「………………こんなもんか」
ふと呟いた。九条はベルトのカブトゼクターのカブトホーンに手を付けた、眼前には数百という数の敵。しかし動揺はしないまるで自分が勝つのが当たり前だと言わんばかりに。当たり前である彼は『仮面ライダー』。多対一はお手の物である。
九条はベルトのカブトホーンを中くらいの位置まで起こす。するとカブトの装甲がプシューという音と水蒸気を排出し、今か今かと鎧が浮き上がっている。
「■■■■□□□ッ!!」
「ーー……キャストオフ」
《CAST OFF》
カブトホーンを左に倒した次の瞬間、カブトのヒヒイロカネ製の装甲が初2000km/hという超高速で吹き飛ぶ。吹き飛んだ鎧にぶち当たった竜牙兵は跡形も無く消し飛ぶ。脱皮した鎧の中には真紅のアームドが現れる、そして収納されていたカブトホーンが顔に直立して、定位置につく、そして青色のコンパクトアイか輝く。
《Change Beetle!!》
これがカブトの真の姿、《仮面ライダーカブト·ライダーフォーム》だ。分厚い装甲を脱ぎ捨てた高速戦闘フォームである。
「さて、付き合ってやれるほど暇じゃない。…………………『クロックアップ』」
《Clock Up》
瞬間、世界はカブトのスピードに置いて行かれた。超高速で空間を駆けるその力《クロックアップ》はカブトだけに許された『世界』だった。
ーーー遅い、ただ一言に尽きる。カブトは超高速で竜牙兵を蹂躙する。竜牙兵の骨の欠片が幾つも上空に飛ぶ。ゆっくりとゆっくりと地面を目指す。
バキッドカッガキィッンン!!
ある程度の駆除を終わらせ、数十匹を一つの場所にまとめる。するとカブトはベルトのカブトゼクターの《フルスロットルボタン》を順番に押していく。
《one.twe.three……》
準備は整った、そう言わんばかりに腰を低く落とし、カブトゼクターのカブトホーンを逆方向に倒す。そして再び勢い良く角を左に倒す。
「ーーー………ライダー…キック!!」
《Rider kick!!》
カブトが上空に飛び立つ、空中でキックの体制に入る。太陽が重なり合い真っ赤の鎧が神々しさをさらに際立てさせ、まさにその姿は《太陽の神》と言えるものだった。
カブトの蹴りが竜牙兵を巻き込み、《タキオン粒子》が竜牙兵の体中に駆け巡る。
《Clock over》
そして、再び世界は元の時間を取り戻した。竜牙兵達を中心として轟ッ!と爆発する。竜牙兵の体の欠片がカラカラっと音が墜ちる。
爆炎と砂塵の中カブトは『誓い』を指し示した。右手の人差し指が天を指す、突如に一風が吹き砂塵を吹き飛ばす。その指の先には燦々と輝く太陽があった。
祝福の光がカブトに照らされる。世界は『カブト』を待ち望んでいた、刹那自分の背後に殺意が迫ってくるのを感じ、横に避ける。少女だ、『天照神楽』と言う少女が白黒の双剣を構え何か切羽詰まった表情で襲い掛かってきたのだ。
「喰らえッ!!」
神楽がカブトの首元に刃を振るおうと迫る、しかしカブトは即座に少女の顔面に拳を軽く叩き込む。それに怯んだ少女の双剣を奪い、遊歩道の手すりに蹴り飛ばす。実に数秒の間の出来事であった。
●●●★●●●
何が起きたのだろうか、一瞬の出来事に対処仕切れない私はただ背後から吹く冷たい海風に当たるだけしか出来なかった。ふと顔を上げると『カブト』が私から奪った『干将·莫耶』を手に迫ってくる。
ーーー終わりか。
早い諦めであった、何を思って俺は『彼ら』に挑もうとしたのだろうか。勝ち目なんて最初からないのを分かってたのにどうして戦おうとしたのだろうか?
ーーー……嫉妬だ。彼らの偉業に俺は嫉妬したのだ。自分が転生する際何故『無限の剣製』を選んだのか、俺は『覚えて』ほしかったのだ。自分は誰かに知って欲しかったからこの力を選んだのだ。ヒーローの紡いだ歴史は絶え間なく続いている、誰かの心の中に
自分の生前はただ『社会の歯車』として生きていた……いや、『生かされていた』。ふと思った、いずれ自分は死んでしまいこの世から消え去るだろうと。それ自体にはどうしょうもないモノだと割り切っていたが、しかし自分は一体この世に残せるのだろうか?
想像したら、突如体中に寒気と恐怖が湧き上がった。
自分は何も成してはいない、自分はただ一匹の、一個の歯車なのだ。部品が無くなったとしても補充すればいいだけの話。そこに絶対として自分専用の『席』は無い。だから恐れた。『死ぬ』ことを恐れるのではなく『去ぬ』事を恐れた。
だから望んだのだ『ヒーロー』を。自身を救い、世を掬う『英雄』を。
「(どっちにしろ、無意味だったが)」
自分は赦されない罪を犯してしまったのだ、越えてはいけないラインを超えてしまったのだ。『偽物』が『本物』に挑むこと自体が甚だしかったのだ。ゆっくりと目を閉じる、カブトが自分の目の前で立ち止まったからだ。今で言うこの状況は『悪』を追い詰めた『ヒーロー』という図であろう。だったら潔く逝こう、そう思った……………………。
しかし、幾らか待っても何も起きない恐る恐る目を開けると変身を解いた高町恭也が可哀想なものを見るような目で自分を見下ろしていた。
ーーーなんだ、その目は。なんでそんな目で見てくるんだ私を………
その視線に憤りを感じた。すると高町恭也は双剣を地面に落とし、神楽に背を向けて歩き出した。
「待ってェッ!!何故だ、何故殺さない!!」
高町恭也に憤りを顕にして訴える。分からないなぜ自分がこれほどまでに憤っているのか、憎んでいるのか!それがむやに嫌悪感を覚えて気持ち悪くて、悪感情が循環する。すると高町恭也は背を向けたまま立ち止まった。
「………………ずっと前に『人間』を守る、って決めたから」
神楽の何かが瓦解した。『偽物』と『本物』の圧倒的な差を叩きつけられた瞬間を知った、視界が霞む、呼吸が上手くできない。何もかもがあやふやに感じてしまう。ただ………………………哀しい。
「うああああああああああああああ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!ー!ーーーーーーー!!!!!!!!!」
哀しい咆哮が空に空回る。嗚咽は誰にも届かない、ただ哀しい男の血跡が続いていた。
●●●★●●●
「………ここね」
「…………うん」
少女二人が廃墟の前に立つ。少女たちの表情からは決意と恐れが滲み出ているのがわかった。彼女等は、アリサとすずかはやってきたのだ。自分たちが巻き込まれた誘拐事件の現場に。
普通ならトラウマなどで行くことさえ憚る行為と言えるだろう。しかし彼女らはやってきたのだ、知りに来たのだ。自分たちが知りたい真実を追って、ここまで勇気を振り絞って、やってきたのだ。
「アリサちゃん、これ……」
「ん?どうし…………血ね」
二階に登る階段の途中で血痕があった。それにまだ液体としてのみずみずしさが見受けられ、これはつい最近のものだということは彼女らにもわかった。
ーーー何かある!!
血痕を辿っていくとそれは一つの部屋の前で途切れていた。緊張感が彼女らの無言によって構成されていくのがわかる。ゴクッと息を呑む音が聞こえてしまうほどの無音。アリサがすずかと視線を交わす、どうやらすずかは覚悟できたらしい、ドアノブにアリサが手を掛ける。そして意を決してドアを開いた!!
「ーーーなっ!恭也さん!?」
「お兄さん!?」
扉の向こうには壁側に寄りかかって腹部から出血している高町恭也の姿があった。
●●●★●●●
「…………どうしたの、なのは?」
光輝くんが私の顔を覗いてくる。私はその声掛けによって現実に引き戻らされた。お店のテーブルを使って私達はジュエルシードに付いて話し合っていたのだった。
「う、ううん。なんでもないよ光輝くん、それでなんの話だったけ?」
「……大丈夫なのは?なんか疲れてない?お兄さんの件で最近寝れてないでしょ?」
「大丈夫、大丈夫なのユーノ君」
心配してくるユーノくんに笑顔を繕って元気な事をアピールする。それならいいけど、とユーノくんがつぶやく。ごめんねユーノ君、君にあまり心配を掛けたくないんだ。
「ほら、この前のもう一人の魔術師のことだよ」
そうだった、この前すずかちゃんの家でジュエルシードが見つかって封印しようしたら金髪の女の子が現れて私たちに攻撃したんだ。とっても強くて歯が叩かなくて
ボロボロにやられちゃったのだった。
「とりあえず、彼女が何者なのでどんな目的があるか分からないが、彼女は何かしらの意味を持って『ジュエルシード』を狙っているということだけだ」
「ジュエルシードを独占しょうとしてるから、大層な目的とは思えないけどね」
淡々と話し合う二人の間に入れない私はあの少女の事を思い出していた。哀しい目をしていた、何者にも触れさせないようにただひたむきに隠そうとする、そう、まるで…………………。
「………………昔の、今の私みたいに」
「な、なのはぁーー!!」
厨房から転げ出てきた姉、高町美優希が鬼気迫る表情で駆け込んできた。何事か、とお客さんが私達の方を見やる。少し恥ずかしかったのでお姉ちゃんに一杯水を飲ませた。
「……それで、どうしたのお姉ちゃん?」
「そ、そうなのよ!キョーちゃんが見つかって病院に搬送されたの!」
私はその言葉を聞いて走り出した。
次回、ムカシ。
運命は廻り始めた………!!