砂塗れの幻想の中………
とても懐かしく感じて、悲しくなる……
砂漠の大地に二人の男女
『もう、終わったんだ。何もかも全部終わったんだよ!……、だからこれ以上俺に終わらさせないでくれ!!』
『………ダメだ、お前は色んな人の思い、夢を潰した………その罪は重いぞ!!スロットル!!』
『姉さん!もう、ショッカーは居ないんだ、もう戦わなくて良いんだ!!』
『違う!私は自分の意思で戦っている、誠一……貴様を殺し、全ての責任を私が背負う!!』
『香織姉さん!!』
『誠一!行くぞ、【変身】!!』
『俺の罪は俺で背負っていく!【変身】!!』
《Slot Change》
そして、全てが七色に染め上げられる……………………
「………嫌な、話だ」
見知らぬ天井を見上げて、『高町恭也』だった者は呟いた。
結局、俺の症状は短期的な記憶喪失ということになった
身体の怪我の方はもう完治してるらしく、すぐに退院することができた……治りが早すぎると普通に思うところだろと俺は医師の話を聞きながら思ったが
『高町家だからね、仕方ないね!』
と医師は大声で笑って言った………
その後、病院から出て最初に連れて行かれたのは『高町恭也』の自宅でもあり喫茶店でもある『翠屋』だった……。
「恭也、ここが貴方の家よ」
高町桃子が教えてくれた。
店内はそれなりに客足があった、常連らしき男達から挨拶をされた時、急なことだったので「……ぁあ」としか答えられなかった、俺の態度にビックリした表情を見せた男達は俺の体調を気遣ってくれた、優しい人達だ。
その後、疲れているだろうと士郎が『俺の部屋』へと案内してくれた。
『高町恭也』の部屋。きっと、普通なら帰ってきたと嬉しがるかもしれない、けどここにいるのは『高町恭也』であって『高町恭也』ではない者だ。なんとなく、自分がどんな状況か理解できた。
「……奪っちまったのか、俺は。高町恭也の居場所を………………」
最低だ。自分が本当に嫌になる、俺は『高町恭也』の未来を潰してしまったのだ。改めて、それを認識した。
これから自分は『高町恭也』の思い出、夢、希望を無意識に踏み躙るのだろうか……そう思うと急に泣きたくなった、でも泣いてはいけないと自分に言い聞かせる。本当に泣きたいのは高町恭也のはずなのだから…………
高町家にやって来て三日が経った…
俺は今、店のレジカウンターの隣で頬杖をして退屈そうに外を眺めていた……。店の仕事を覚えるのは容易くこなすことが出来た、元々実家がパン屋を営んでいて、よく店の手伝いをしていた、その容量でいったら簡単に出来た
ふと、空いた右腕で〈ファイズフォン〉を開ける
15∶45。そろそろ、アイツが帰ってくる頃かな…?
「ただいま〜!」
元気溢れる声がドアの隙間から流れる春風とともに聞こえてきた、アイツだ。高町恭也の妹、高町なのはだ。
「あ〜、うん、お帰り……」
「お兄ちゃん、ちゃんとお仕事してる?」
「うっせぇー、余計なお世話様だ」
近づいてこちらに体を乗り出してくるなのはに向かってデコピンを喰らわせる、「はうッ」と言いながらなのははおでこを抑える
「きょーちゃん!ほら、もっと笑顔でお仕事しよ?」
店の奥から出てきたもう一人の妹、高町美由希。なんか俺に良く引っ付いてきてうざったらしい
「あ、そうそう、今日ね、アリサちゃんが家に遊びに来たいって言ってるんだけど……、いい?」
「もちろん、いつでも歓迎よ。ね、きょーちゃん?」
「あ〜、うん…別にいいんじゃないのか?」
「ありがとうなの!おにちゃん!」
嬉しそうにピョンピョン跳ねるなのは、横目でそれを見ながら俺は、少し不安要素たる存在の来訪を危惧していた。そんな俺の様子に気がついたのかなのはは苦笑いを浮かべながら俺を見た。
「林田くんは今日来ないって」
林田光輝、最初に出会ったのは俺が退院してすぐのことだった。記憶喪失だと言う事を知ったアイツは愛想よく俺に色々な事を教えてくれた………
「……やっぱり、お兄ちゃん記憶を失う前から林田君の事が苦手なんだね」
「………別に」
嘘だ。俺はアイツがなんか気に食わない、特になのはに向けるあの舐め回すような視線がなんとなく危ない感じがした、ああ言う奴は一番信用できない。
「………さてと、」
「ん?どこに行くの、きょーちゃん?」
「サボる。後は任した」
俺はそう言って店のカウンターを飛び越え、店の前に駐車してあったオートバジンに乗り込む。
「ちょ、きょーちゃん!!」
美由希の声を遠くに置いていく、今日は快晴。春風が何か良い物を運んでいた
「クシュッ、あれ風邪かなぁ〜?」
転生者、林田光輝は真っ暗の闇で戯ける。
「まぁ、こんなとかに居るとね……ねぇ、踏み台?」
彼は前方に居る人物に尋ねる、それは少年か少女か判別し難いモノだった、身体のあちこちに暴行の痕、生きてるのが可笑しいそんな状態だった
「ぅッ……あぁ…ッ」
「あぁ、そうだったね。今の君舌、無いんだっけ」
少年はその目を冷徹に染め、背後の金の波紋から液体の入った瓶を取り出し、地面に転がるそれにぶち撒ける。
少しの間、ソレは人としての形を取り戻していた、ふとその子供は自身の下半身部分から違和感を感じた。ない、あるべきものがない!
「あれぇ、もしかして女体化の薬の方を掛けちゃったかな?ごめんね〜!」
わざとらしい声音で意気揚々としている光輝に対して、天照神楽は何もかもが瓦解仕切っていた。何処からだろう、何を間違ったのだろう?彼も光輝と同じように転生者であった、神に間違われて殺されてしまった彼は転生特典とこの転生場所【魔法少女リリカルなのは】の世界にやって来た、彼は大好きなアニメの世界に来れて大いにはしゃいだ、その後の彼の素行は俗に言うテンプレ踏み台、其のものだった………嗚呼それが彼の失敗だった。林田光輝に監禁されてしまったのだ、最初こそ毅然としていた彼だったが、徐々に屈辱的な拷問に神経をすり減らしていた。自身の能力で逃げ出そうとしたが彼を縛る黄金の鎖がそれをさせなかった。それもそのはず、彼の選んだ特典は2つヘラクレスの【十二の試練】と【無限の剣製】、対する林田光輝は古代の英雄王、ギルガメッシュの【王の財宝】である。あまりにも大きすぎる力の差、それが天照神楽の敗因であった……
「……ゆる、………し、………て…」
「……はぁ〜!何言ってのかなぁ〜き、み、は!君はね僕の運命の人にちょっかい出したんだよ、万死に値するね!!」
幼い少年の瞳は狂気が染まっていた。その目が一番恐ろしい、人間がする様な眼ではない
「今日も君をね、殺そうかなと思ったんだけど………質問に答えてくれたら今日は許してあげようかと思うんだよ」
藁に縋るような思いだった、自分はかれこれ一週間も監禁されていた、その度に一日一回殺されていた、特典のおかげで何回も生き返っているのだ、でも確かにこのままこの状況でいけば五日後には死ぬ。それを何とかして回避したかった、そのため逃げ出せるチャンスをいつも狙っていた、そのための日数を稼げる。顔をゆっくりと上げる、希望が湧いてきた。
「……ほん、と?」
「嘘じゃないよ、僕は嘘が嫌いなんだ」
その言葉を信じた、今はそれしかないと思った。
「聞きたい事とはこれだ」
光輝が神楽に一枚の写真を突きつける。
「これ………なに?」
その写真には黄色の瞳の仮面の戦士が写り込んでいた…。
天照神楽に希望を与える者はまだあらわれない………………。
「……ハァ」
月村忍は広い自室てため息をついていた
「………なんで、恭也がああなっちゃつたのよぉ〜」
その原因は、『現在』の『高町恭也』だった
氷村の誘拐事件のあと、記憶を失った高町恭也は人が変わってしまった。無愛想で不親切、百年の愛も冷める程の性格になってしまったのだ。
「…まぁ、それだけじゃないんだけど」
ふと、ベットの枕元にある銀色のボックスを開ける。それは銀色のベルト、そう高町恭也が変身する為のベルトがそこに保管されていた
吸血鬼の血に完全に目覚めた氷村を圧倒した力の一片、自分が知らなかったあの力、どうしてもそれを知りたかった、それに内臓をグチャグチャされたというのにそれが一晩で治ったのだ、あの一家は人外の巣窟だがこれはあまりにも行き過ぎていた。そうまるで………、嫌そんなはずはないと自分の考えを否定する。このままでは埒が明かない
「………連絡しますか……」
忍は傍らに置いてあった携帯電話を手にする、その着信名は『高町恭也』と書かれていた
「あ、もしもし、恭也?今ひま、…………暇なんじゃない。どうでもいいけど、今から家に来なさい…………家の場所を知らないだって?どうにかしなさい、自分で!………なんで怒ってるですって!?ああ、もう!!」
忍の電話している表情はまさに恋する乙女だと綺堂さくらは語る。
次回、ベルト。
運命は廻り始めた………