ーーー143 Enter
《Blade Mode》
電子音の後、ファイズブラスターを展開させ『フォトンブレイカーモード』を起動させる。そして、ファイズブラスターから黄色の刀身が出現する
「ウラァッ!!」
ファイズはファイズブラスターを力いっぱいに振りかざす、ズバッと豆腐を切るみたいにかんたんに切断されていく木の根。
『■■■■■■ッ!!』
樹木の声の無い絶叫が荒ぶる様子から伺えた。それもそのはず、ファイズブラスターフォームは基本的な攻撃能力は『フォトンブラッドによる毒攻撃』なのだから。
そもそも、フォトンブラッドというのはオルフェノクに対して最も強い毒性が働く物質。その粒子は例え他の生命体に害を及ぼすことはない…………………毒の性能では。これが今回の話のキモとなる、フォトンブラッドはもともとライダースーツを構成する上で膨大の熱量が必要となる。つまりフォトンブラッドは『膨大な熱量を持った毒』ということになる。
切り飛ばした樹木の枝は先端から灰化していく、しかし樹木には強大な再生エネルギが存在していた。両断された枝は先端から再生していく、このままでは埒が明かない、そう考えた恭也はファイズブラスターの『Enter』をプッシュする。
《Exceed Charge》
するとファイズブラスターの刀身から一メートルぐらいに構成された紅いエネルギー剣が生成される。
「しゃがめッ!!」
ファイズは大振りでファイズブラスターを回転させながら周囲の枝を振り切った。膨大なフォトンブラッドで構成された刀身に切断された木の根は青い炎を拭き上げ灰と化す。
「お、終わったんか?」
「まだだッ!」
殆どの枝を破壊尽くしたとしてもまだ本体である樹木にはなんのダメージはない。ファイズはすぐさまファイズブラスターにコードを打ち込む。
ーーー5532。
次の瞬間、フォトンストリームに沿って高濃度のフォトンブラッドがファイズポインターに凝縮されていく。
右脚が紅く光り輝く、それと同時にファイズは走り出した………………………。
「ウッ!?グワアアアアアアアアアアアアッッッ!?」
しかし、急に恭也が苦しみだした。ファイズのフォトンストリームがあやふやになり始めスーツは形を保っていられず、変身が解けてしまう。ガシャッと音を立てベルトが地面に落ちる。
「な、なにが起きたの?」
分からない、恭也は視界が歪む中で思考を張り巡らせた。ふと恭也は右手に力が入らないと違和感を感じた、右手を抱えて見る。
「ッ!!」
驚愕した、というより予想が的中してしまった。恭也の右腕の掌は真ん中が鼠色に染まっており、その部分が灰化していた。
体がついに追いついてしまったのだ。恭也の身体でついにオルフェノクの性能を全て開放してしまった。
《スロットルドライバー》
それは拾八の仮面ライダーの力を一週間ごとに手に入れられる力を持っていた。それ故、そのライダーに変身するリミットと条件を全て兼ね備えなければならない、一種の呪い。その呪いが今更になって帰ってきた、今までの変身は色々と無茶があった、ファイズに変身する為にオルフェノクの因子がまだ完璧に発揮されていなかった。それでも今までうまく変身できたのは幸運と言えただろう、しかし、今のがキッカケで呪いは戻ってしまった。九条は恭也を『バケモノ』にしたしまったのだ……………
「大丈夫!?恭也」
忍の手が差し伸ばされる。しかし、恭也はその手を振り払った。
「きょう、や?」
「…………………俺にはその手を掴む『資格』はない!!」
恭也は走り出した。あらゆる物を放り投げ逃げ出した。
誰もソレを止められなかった。彼のその苦悶な表情から忍はただ涙を流すことしかできなかった………。
ーーーその後、ジュエルシードの樹木は謎の巨大ピンク光線によって封印された。
●●●✖●●●
高町なのはは待ちぼうけていた。急に居なくなった兄、恭也は3日経っても帰宅しなかった。三日前に封印したジュエルシードの樹木にやられたかと心配したが忍が言うには何処かへ消えてしまったという。
いつのことだったろうか、幼い頃公園のブランコに一人で何かを待っていた記憶がある。そのときは林田君が私の手を引いてくれた、一人じゃないと教えてくれた。その時兄は何をしていた?ただ木刀をがむしゃらに振り続けていただけだ。
「ーーー嘘つき」
未来は歪を増すばかりだった。
●●●★●●●
ガシャッ。
金属製の手錠が地面に落ちる、同時に一人の少女が地面に叩きつけられた。
「………ウッ、ううああッ、逃げ、なきゃ」
彼、いや彼女だ。天照神楽その人だった。彼女はあれから5日間拷問され続けた。
ーーーある日は胎盤にこぶし台の蟲を打ち込まれ、腹を食い破られたり。
ーーーまたある日は身体が限界まで風船みたいに膨張され、身体が風船みたいに爆発したり。
ーーーあるい、あるいは………。
そんなことを繰り返せば彼女の精神は壊れるのは目に見えていた、が。彼女の特典【
原作の事件に立て込んでいるのかアイツは最近こっちに来ていない、その内に捕まる前に投影した手錠の鍵を差し込み脱出。神楽は傷付いた身体を引きずり外へと急ぐ、どうやら捕らえられていた場所は何処かの廃墟だったらしいがそんなことを気にしている暇はない。
ーーー早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早くッッ!!
出口だ、廃ビルの出口が見えだした。力いっぱいに足を動かす、逃げ出せる!!希望の光が見えだしてき、雲に隠れていた月が顔を見せた。
ーーーあ。
しかし、そこは希望の光は無かった。月の光が照らす出口の向こう側に一種のジレンマを感じさせる嘘っぽい笑顔を浮かべたそいつがいた。
「…………………こんな日にお出かけかな?お嬢さん★」
「ーーーう、うああああああああッ!?」
林田光輝は怪しく嗤っていた。絶望が私の心を埋め尽くす、もうダメだお終いだ。こいつの特典に勝てるわけがない、私はあの『正義の味方』の様に強くはない。腰が引けてうまく立ち上がらない、呼吸ができない。私はコイツに深いトラウマを刻まれている、服従の意志が根底にこびりついている。
「駄目じゃないか、勝手に抜け出して。まぁ、どっちにしろ今日、殺すつもりだったけどさあッ!!」
「けど僕も鬼じゃない、君には《仮面ライダー》の情報を教えてもらった恩がある。だから、逃がしてもいいと思っている」
驚愕。アイツがそんなことを言うなんてオカシイ。けどなりふりは構っていられない、生きなければどうにかして、生きなければ。
「………一つ、ゲームをしょう」
「ゲーム?」
そういうと林田は指を鳴らす、次の瞬間私の背後からドスンッ!と地響きが起きる。何かいる、恐る恐る後ろを振り返る。
見えたのは茶色の羽毛の2つの剛脚、それを辿る様に視線を上へと向ける。荒い鼻息と獣臭が酷く臭い、それは一層存在感を増していく、その手には三メートルはあるような不格好な棍棒、全身は分厚い獣毛、そして2つの曲湾した巨大な角。それを何かに例えるとしたらギリシャ神話に出てくる魔物【ミノタウロス】
「…………………実はさ、俺の宝具の中に【魔獣創造】というがあったからさ。試しに作ってみるとこれがうまく行ってさ試したかったんだよね。」
林田は未だにニコニコと笑っている。狂ってるこんなの。おかしいよ。唖然している私は林田に対して恐怖を抱くしかできなかった。
「あ、一応訂正しておくけどゲームのルールはこいつから逃げ切ることだけと、たとえ捕まったとしてます殺されないよ」
「…………どう、いう、こと?」
「フフッ、じゃあね【罰ゲーム】のヒント教えちゃうな。ヒントは【ギリシャ神話】、【お姫様】です!!」
ギリシャ神話とお姫様?ミノタウロスのことだから、つまり………………………!!
「ーーー気づいたみたいだね、そうミノタウロスというのはどうやって生まれてきたのかに辿り着くよね。とあるお姫様がポセイドンの呪いを受け、白い雄牛に発情しまぐわって生まれ落ちた存在。それがミノタウロスさっ!!…………後は、言わなくても分かるよね?」
こいつは!こいつは!私が捕まったらミノタウロスの子供を孕ませようとしているッ!!おかしすぎる、こいつは人間を『人間』だと思っていない。最初コイツに出会ったとき普通の『踏み台転生者』だと思っていたが、そんなのじゃないこいつは!【化物】だッ!?
「………さぁ、時間が惜しいからねさっさと始めようか」
「ま、待ってくれ。いや、待ってください!!」
「駄目だよ、か·ぐ·ら·ちゃん!お前の罪はなのはに触れたことだ、それは許されないことだ」
ドスが利いた恐ろしいくらい低い声、陽気な表情が消え圧倒的な殺意と憎悪だけが私を射続ける。
「…………じゃあ、妊娠しない様に頑張ってね!後、舌噛んで死ねないように、ミノタウロスに触れられたら胎内の蟲が媚薬を出すように成ってるから、僕それ喰らったこと無いからよく分からないけど、相当ヤバイらしいよ。じゃあね、ば、い、ば、い!」
その言葉を最後に林田は金色の波紋に包まれ、消える。それと同時に先程まで鼻息を荒くしているミノタウロスが動き出した。
「ヒッ!こ、来ないで!!」
「ーーーブゥモオオオオオオアオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
轟音にも近い猛々とした声が私の耳を劈く、そして暴走した機関車の様にミノタウロスは突進してくる。私は勇気を振り絞って立ち上がり、私の中の魔術回路を叩き起こす。
「『
魔術が不発し困惑しているとミノタウロスの棍棒が顔面に物凄い勢いでぶち当たる。勢いはかぐらを外まで吹き飛ばした。顔の感覚がない血がたくさん流れている、頭がグワングワンと揺れるが、ヘラクレスの宝具によって回復されていく。撲殺ならすでに受けていたので先程の攻撃では死ななかったようだ。
「なんで、魔術が!?」
魔術回路には異常は無い。しかし、神楽の魔術は起動せずスカを繰り返すだけ。
「ヴモオオオオオッ!!」
「ヒィッ!!孕みたくなあいッッ!!」
再び突進してきたミノタウロスにとてつもない生存本能が感じられる。かぐらを子を成すだけの道具として手に入れるそんな風に興奮していたミノタウロスから逃げるという手段を取ったかぐら。
ーーー嫌だ、嫌だアッ!!私まだ『人間』でいたい!!
●●●☆●●●
どれだけの距離を走っただろうか、天照神楽は体全身の痛みを堪えながら逃走していた。
ーーーなんで、こんなふうになったのだろうか?
彼女、いや彼は転生する前は至って普通の好青年だった。トラックに轢かれそうになった子猫を助けて死んでしまった彼の行動に胸を打たれた神なる者は彼を『魔法少女リリカルなのは』の世界な転生することにした。
彼は喜んだ、生前好きだったアニメの世界に行ける、それ程嬉しいものがあるかと大層はしゃいだ。そのうえで彼は決意した、『物語』を破壊し、みんなを幸せにすると。その誓いを込めて彼は『正義の味方』の特典を選んだ。
何回目だろうか、過去を振り返るのは……。
瞬間、足から力が抜ける。森の中で彼女は倒れ伏す。
ーーーダメだ、早く、立ち上がらなきゃ
しかし、彼女の足はビクとも動きやしない。ドスンッドスンッ、ミノタウロスが地面を揺るがしながら近づいてくる。そして、鼻息が届く距離まで接近を許してしまった、ミノタウロスは彼女の両足を掴み持ち上がる。神楽とミノタウロスのむさ苦しい情熱が篭った瞳がぶつかり合う。
そして、彼女の下半身部の更に奥から熱いモノをかんじた。その熱は彼女の身体、そして頭を侵していく。
それに答える様にミノタウロスのソレが下半身からそそり勃つ、ソレは人間の比を軽く越して長く、そして太い。神代の雄のフェロモンが彼女の精神をかき乱す。
ーーーもう、むり…。
消えかけの自我の中で彼女は一つの存在を思い出す。
《仮面ライダーファイズ》
子供の頃、憧れたヒーローの存在がかろうじて彼女の自我を踏みとどめた。でも何かできる訳でもない、状況は絶望的。投影魔術も使えなければ、助けも呼べない。それでも彼女は言うのだろう、呼ぶのだろう。
どんな世界も救う最強のヒーローの名前を!!
「助けて、………………《仮面ライダー》ッ!!」
闇が深まる森に木霊する希望の名前、だから『彼』はやって来るのだ、助けを呼ぶ声が聞こえる限りにッ!!
「……………変身ッ!!」
《Awakning!!》
森の深淵の中に眩い紅い光が満ち溢れる。次の瞬間、闇の中で紅い閃光が動いたのが見えた。するとフワッと地面に引っ張られる感覚が起きるがそれはすぐさまなくなる。神楽の目の前には黄色の瞳の戦士がいた、どうやら戦士がミノタウロスの腕を切り飛ばしたのだろう、ミノタウロスは地面を転がって痛みに悶えていた。
戦士は近くの木に神楽を寄りかかせる、すると戦士は優しい声音でこう言った
「大丈夫、もう大丈夫だ。よく頑張った、後は俺に任せろ」
彼は怒りに燃えるミノタウロスに向き合う、ミノタウロスは血管を浮き上がらせ、仮面の戦士を睨みつける。
「ヴモオオオオオッンッ!!」
ミノタウロスが叫ぶ、それはまるで神楽が自分のモノだと言い張るように。
「ごちゃごちゃ、うるせぇ。ガキに発情すんじゃねぇよ!!牛野郎ッ!!」
大きくて広いその走り出す背中を微睡んだ意識の中で神楽は見送る、その背中に何かを安堵し、瞳を閉じた。
次回、救い。
運命は廻り始めた………。