仮面ライダースロットル〜憑依ノ章〜(   作:菊川 数時

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遅れました、スミマセン。思いほかバンドリが面白くて……


第八廻 救い

 鼻孔をくすぐるような懐かしい味噌の匂い、魚が焼けるようないい匂い、炊きたてのご飯の水水しい音。天照神楽が覚醒に至るには十分なものだった。

 

「…………十時、もうそんな時間か。」

 

 部屋を見渡す、懐かしい空間だ。ここが自分の部屋と気づくにはあまり時間は必要なかった。体にかかっている布団を畳み、リビングへと向かう。体中に包帯が巻かれていた、丁寧で適切な処置に感嘆した。

 

「…………やっぱり、あの人だよね」

 

 神楽の記憶が途切れた最後の場面はミノタウロスによって捕まえられ、行為を始められる時に《ファイズ》に助けられたことだった。神楽の言うあの人とはその人物を指していた。きっと怪我の処置も、気を失った自分をここまで運んだのも、いま台所で料理をしているのもきっと『あの人』なのだろう。リビングへの扉、彼女はゆっくりと開けた。そこには……。

 

「ーーー高町、恭也…………さん!?」

 

「ん?あぁ、起きたのか………。すまないが台所を使わせてもらってるぜ、もうすぐ朝食ができるから座って待ってろ。」

 

 何気ない表情の高町恭也に促された私は大人しく食卓に座す、チラッと恭也さんの方を見る。あの恭也さんが花柄のエプロンを見に纏って、朝食を作っているなんともシュールな光景だ。しかし、よくよく考えてみれば疑問点がある。あの人は料理なんかできないタイプだ、なのに今現在我が家のキッチンで鮭を焼いて微笑んでいる。これはおかしい、もしかしてこの人は『高町恭也』と呼べるものなのか?そう思ったら体全身の筋肉が強張る。

 

 すると恭也さんが出来上がった朝食を持ってきた、豆腐の味噌汁にホカホカの白いご飯、おかずとしていいくらいに焦げ目の入った皮を持つ鮭と卵焼き。理想的な朝ごはんといえるだろう。

 

「…………俺が、『高町恭也』じゃないと疑っているのは分かる。お前も同じような体験をしたようだしな、『転生者』」

 

 そう言いながら恭也さんは黒革の手帳をテーブルに放り投げた。私の日記である、その中には転生したことや原作のことを書いていた、それで私が『転生者』だと知ったのだろう。

 

「………なら、アナタは私達と同じ『特典』の力を貰った人間なのですか?」

 

「………『特典』?何言ってんだ、『ファイズ』のこと言ってんなら、あれは元々俺が持っていた力だ。」

 

 ーーー呆気にとられた。この人は神様から『特典』を貰っていない!?どういう事だ、この人の言っていることが本当ならこの人は、《本物の仮面ライダー》なの!?じゃあ、つまりこのひとは………!!

 

「ーーーオルフェノク?」

 

「………ッ!?おい、お前なんでそのことを知ってんだ!!教えろッ!!」

 

 物凄い形相で問い詰めてくる、必死に何からか弁明するようにも見えた。でもこれでわかったこの人は、『オルフェノク』なんだ。とても危険な怪人なんだ。正義の味方のようになるためこれは必要なコトだ。焦燥のような物を体中に感じた、それと同時に、身体の中の魔術回路を叩き起こす

 

 魔術回路の起動、工程完了。投影·開始(トレースオン)!!

 

 瞬間、手のひらに夫婦剣 干将·莫耶が精製される。恭也の驚いた表情を他所に私は身体強化の魔術をかける、椅子を思いっきり踏みつけ恭也さんの懐に潜る。

 

ーーー殺った。

 

 確信を感じた瞬間、私は刃を恭也さんの右脇腹へと薙ぎ払った。しかし恭也さんは間一髪身体を少し横にずらしていたので、脇腹に少しかすった程度で済んだ

 

「ッ!?いきなり何すんだ、クソッ人間業じゃねぇぞ!!」

 

「………アナタは、危険だ。バケモノは退治しなきゃならない」

 

 血を流している脇腹を苦悶な表情で抑えている恭也さんを睨みつける。なんだろ、これはきっと正しい筈な事なのに『間違っている』ような気がする………。

 

「………危ない奴は危ないから殺すか……、大層な『正義』だなッ!?」

 

 そういうと恭也さんは近くにあった窓ガラスを破って逃げ出した。ここは10階なのに……。

 

 下を見やると、高町恭也は必死に逃げお失せていた。私も後を追うように窓から飛び出た。

 

 その部屋には朝食の温かい残り香が漂っていた……

 

 

 

●●●▽●●●

 

「………しかし、生きている。というよりは逃げられたとはな」

 

 一連のやり取りを遠くのビルから観察していた少年、林田光輝がいた。

 

「しかし、厄介な。あのミノタウロスを一撃の蹴りで灰にしてしまうだなんて、《仮面ライダー》やはり始末すべきか………」

 

 顎に手を添えながら悩む、しかし光輝にあの《ファイズ》を倒せる手段を考えつかなかった。自身が直接戦わないで。

 

「……、まあアイツの仕掛けが効いているうちは雑魚で相手をしとくべきか」

 

 頭の中でその場しのぎの策を思いつき、自身の背後から、《王の財宝(ゲート·オブ·バビロン)》から一つの紅色の宝玉を取り出す。

 

「コスト的に、竜牙兵かな。大量生産の方針で、さぁターゲットは『高町恭也』と『天照神楽』で。」

 

 なにか宝玉を操作すると光輝はその宝玉をビルの屋上から滑るように手から落とした。ガシャンッというガラスが割れた音を確認した。

 

「ーーーまぁ、十分に抗ってくれよ。《仮面ライダー》、どちらにせよこの世界は正しい世界《原作通り》なのだから………フハハハハハハハハハハ!!」

 

 九条を嘲笑うように光輝は運命を仕組んでいった。

 

 

●●●⑦●●●

 

 

「………どこだ?」

 

 高町恭也の血の痕を追い、鳴海臨海公園へとやって来た。しかし、草むらに逃げ込まれたおかげで血の跡がパタッと消えた。しかし、あの傷だ遠くには行けまいきっと近くにいるはずだ。

 

「ーーーオルフェノク、アイツラは只のバケモノ、この世界の異物だ」

 

 テレビで観ていた時の怪人が居る、それはこの世界には要らない。そう言い聞かせるように呟いた。何かに催促されている様な気分をかき消すように。

 

「ーーーそこッ!!」

 

 気配を感じ、右影の草むらに干将·莫耶の一対を投げつけた。それは勢いを増し草むらの中の気配とぶつかる、そこから現れたのは盾と剣を持った何かの骨の兵士だった。疑問が頭を満たす、しかしそんな時後ろの茂みからもう一人の骨の兵士が剣を神楽目掛け振り下ろしてきた。

 

「くっ!?もう一匹だと!!」

 

 それに気づき瞬殺に受け止める、強い衝撃が手に響く。女子の筋力の事を考慮をしていなかった、神楽はその剣を横へ流し骸骨兵の腹部を薙ぎ払う。

 

ーーー単調だ、これは楽勝だ。

 

 そう思ったのも束の間、横腹に強い衝撃がが奔った。その衝撃は神楽のひ弱な女子の身体を吹き飛ばすには十分な威力であった。空中を舞、海の直上にある木製の簡易歩道へと着地する。

 

「ーーーなん、だっ!?なにが起きたの?」

 

 頭が混乱して状況を上手く把握できていない、口には鉄の味が広がるばかり。そんな神楽をさらに追い込むように森の中から一匹、また一匹と先程の骸骨兵の伏兵が数百という数が神楽を囲んだ。

 

投影開始(トレース·オン)!!……………なんで、なんで機動しないのよッ!?」

 

 魔術が発動しない、何度も同じ工程を繰り返す。しかし魔術回路はうんともすんとも言わない。骸骨兵は段々と神楽へと歩みを進める。

 

ーーー絶望、結局あそこから逃げ出しても私の末路は決まってたのね。

 

 神楽の表情には諦めの意思が見えていた。顔中の穴という穴から液体を垂らして、恐怖に歪んだ顔だ。

 

「ーーーたす、助けてください」

 

「しょうがねぇなっていうか、やれやれだな。」

 

 どこからともなく聞こえた声、そして肌けた肩を叩き彼が骸骨兵の前に躍り出る。そう高町恭也だ。

 

 高町恭也の出現に一層警戒心を見せる骸骨兵を他所にめんどくさそうに頭を掻く。

 

「………なるほど、ね。これは俺たちを狙ってのことか………なら手加減無しだな」

 

「■■■■■■■■ッッ!!」

 

 

 骸骨兵達の声の鳴らない咆哮が空気を揺らす、そして高町恭也目掛けて武器を構え走り出した。そんなのにも臆せず高町恭也はいつの間にか装着していた白金のスロットマシンの様なバックルの三つに連なった赤いボタンを慣れた手つきで叩き込む。

 

《Slot ON》

 

 ベルトの電子音と共に高町恭也を中心とするように拾八のとある紋章が半径十メートルに勢い良く陽気なサンバの音楽と共に展開し回転する。結界にも似たそれは骸骨兵の侵入を許さなかった、無理に入ろうとすると跡形もなく吹き飛ぶ。私はそんなところの中心でその光景を見ていた、この空間の中で金色の光と音が響き渡り、それは幻想的な『世界』が広がっていた、すると高町恭也が右手をゆっくりと前に突き出す。拾八の紋章が高町恭也に集う。

 

《カブト》

 

 次の瞬間、カブトムシの形を模し『ZECT』と書かれた紋章が高町恭也を通り抜け、白金のベルトが入れ替わるように銀色ベルドに変化する。

 

「ーーー来い、カブトゼクター」

 

 その言葉で十分だった。その呼び声に答えるように『それ』は骸骨兵をなぎ払いながら現れ、恭也の手の中に収まった。その手に有ったのは機械づくりの赤いカブトムシだ。そして、高町恭也は少し目を閉じ再び目を開き骸骨兵を睨んだ。

 

「ーーー変身」

 

《Hen-shin》

 次の瞬間、ベルトを中心に銀色の無骨な鎧が展開される。ヒヒイロカネという金属で構成された装甲、カブトプロテクター。そして青い瞳のコンパクトアイ。

 

《仮面ライダーカブト·マスクドフォーム》

 

 天の道を行き、すべてを司る男の力がそこにあった。




次回、変化。
運命は廻り始めた………。
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