東方偏執狂~ブタオの幻想入り~   作:ファンネル

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第二十一話 陥落

 

 

 

 ブタオを図書館へ送り込んで翌日。

 レミリアは、普段と変わりなく生活していたが、他の三人――。フラン、咲夜、美鈴は気が気ではなかった。

 レミリアが言った『妙案』とは――

 

 ブタオを図書館へ送る。

 

 ただそれだけであった。他は何もない。

 

 本館と図書館は管轄が違うため、咲夜も美鈴もブタオの側にいられない。フランは使用人ではない為、ブタオのフォローが出来ない。

 つまり、ブタオは明確な敵意を持った者のところへ、単体で裸同然で行ったにも等しい。

 

 自殺行為だ。

 

 三人は、レミリアに対し反対の立場をとるが、レミリアの考えは変わらない。

 彼女は『運命』と言った。

 運命を操る程度の能力を持つレミリア・スカーレットの言葉である。

 十分な信憑性を持ち合わせているが、心配なものは心配だ。

 

 レミリアを抜かす三人は、特に打ち合わせもせずに、自然に図書館の入り口前に集まっていた。

 

「咲夜さん。妹様も……」

「美鈴……。貴女も?」

 

 みんなブタオが心配で堪らなかった。

 一目、様子を見ようと集まったのだった。

 たった一日しか経ってはいないが、どんな様子なのか――。

 

 図書館の扉を開ける。

 

 そこには、三人の目を疑う光景が広がっていた。

 

「ぶひ。そして王はこう言うのでござる。『…そうか、余は…この瞬間のために…生まれてきたのだ…!』と。王はずっと、自分が何のために生まれてきたのかを考えていたでござる。王は最後の最後で、その答えをついに悟ったのでござる!」

 

「……ひぐぅッ! めッメルエム……。悲しい最後ね。でも二人は幸せだったのよね……?」

「悲しい最後ではあったが、二人は納得していたでござる。幸せな最後であったと思いたいでござる……。あのシーンは、何度思い返しても涙腺が崩壊するでござる。ぶふぅ……。吾輩も思い出したら涙が……」

 

 ブタオとパチュリーは、互いに寄り添いながら熱い議論を交わしていた。

 ブタオの話を、パチュリーは魔法を駆使して、何枚もの白紙に書き込んでいた。それはもう凄い早さで。

 

「ねえねえ! 続きッ! 早く続きを話して! 記録するから」

「ぶ、ぶひぃ……ぱ、パチュリー殿ッ。ち、近いでござる。吾輩、恥ずかしいでござるよぉ」

 

 何とも意気揚々な二人。

 特にパチュリーは、ブタオを敵視していたにも関わらず、すっかりと心を開いている様で、ブタオと会話している時だけは、まるで乙女のような優しい表情になっていた。

 

 まぎれも無く、恋する乙女の顔であった。

 

「……え? 何これ」

 

 本棚の影から二人の様子を覗いていたフラン達は、一体何がどうしてこんな事になったのか、把握できずにいた。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 ダイジェスト……と言う事になるのだろう。

 あまりにもあっけないパチュリーの陥落。

 そこには、類稀なる陰謀や神算鬼謀があったわけではない。

 ことは非常に単純であったのだ。

 

 二人は、『同類』であった。

 

 似たモノ同士、惹かれあった。ただそれだけなのだ。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 事の経緯を説明しなければならないだろう。

 

 レミリアが、ブタオを襲ったあの日――。

 

 ブタオは、レミリアの寝室で目を覚ました。

 

「ぶひ? ここは……」

 

 前後の記憶があいまいだ。なんで自分は裸なのだ。昨日何が起きたのか頭を整理する。

 そして思い出す。

 

「そ、そうでござるッ! 吾輩は昨日、レミリア殿に……」

 

 辺りを見渡してもレミリアの姿はない。ここには自分ひとりだけだ。

 昨日の情事を思い出してか、ブタオは顔に熱が灯るのを感じた。

 突然襲われたのだ。

 一体、どうしてあんな事になったのか――。混乱するブタオではあったが、一つ確かな事がある。

 

(あの時のレミリア殿……凄く色っぽかったでござるなぁ~。それに凄く気持ちよかったでござる。ぶひひ)

 

 何とも気持ちの悪い顔で、そんな事を思っていた。

 

『痛い、やめてッ』

 

 と、叫んでいたブタオではあったが、そこには確かな快楽もあって、またして欲しいと思ってしまっている。

 

 とんだマゾである。

 

 そんな気持ちの悪い事を思っていると、部屋の扉が開き、レミリアが入ってきた。

 

「あら? 起きたの」

「れ、レミリア殿……ッ」

 

 裸だったため、ブタオはベッドのシーツで自分の裸体を隠す。

 乙女の様な仕草に、レミリアはまたムラムラと来たが、さすがに警戒と不安の表情が見てとれるために、そこは自重した。

 レミリアは、ブタオに近付きベッドに腰掛け笑いかける。

 

「昨夜はごめんなさいね。最近、血を飲んでなかったから、つい我慢できなくて……痛かったかしら?」

「ぶ、ぶひ……少し驚いたでござるが大丈夫でござる」

 

 さすがにまたして欲しいなんて恥かしいことは言えず、ブタオはすぐさまレミリアのベッドから起き上がろうとするが、立ちくらみを起こしたようで少しふらついた。

 レミリアは倒れないように、ブタオを支えた。

 

「……さすがに血を吸いすぎたかしら。だいじょうぶ? ブタオ」

「だ、大丈夫でござるよ。ちょっと油断しただけでござる。気をしっかり持てば十分に仕事出来るでござるよ」

「無茶はいけないわ。今日の仕事は休みなさい。私から咲夜に言っておくから」

「し、しかし、それではサイクルに狂いが……。皆に迷惑をかけてしまうでござる。それにようやく仕事が楽しくなってきたのでござる。出来る事なら、休みたくはないでござるが……」

「……ふ~ん」

 

 なにか思案するかのように、レミリアは視線を落とす。

 

「ちょうど良いのかもしれない」

「ぶひ?」

「ねぇ、ブタオ。仕事を休みたくないと言うのなら、しばらく図書館で働いてみない?」

「図書館、でござるか?」

「ええ。紅魔館の本館と違ってのんびりとしたところよ。貴方にも図書館の仕事を覚えて欲しいし、療養がてらやってみない?」

「仕事を療養がてらとは思いたくないでござるが、ここの図書館は前々から気になっていたのでござる。やってみたいでござる」

 

 オタクのブタオにとって、本物の魔導書なんてあこがれの逸品である。

 

「決まりね。それじゃ、図書館の管理者に話しをつけておくから」

「管理人?」

「あなたは、まだ会ってないわね。――パチュリー・ノーレッジ。私の友人で、紅魔館の誇る一流の魔法使いよ」

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 翌日、ブタオは身なりを整え、図書館へと向かった。

 話はすでに通してあるらしく、適当なあいさつを済まて、すぐに研修を行うとの事であった。

 

 紅魔館の大図書館

 

 初めて入ったブタオの目に映ったのは、奥行きが霞んで見えるほどの広い空間と、その空間を埋め尽くすほどの蔵書であった。

 

 圧巻である。

 

 紅魔館の本館も凄いが、ここは別の意味で凄い。

 紅魔館にも慣れたブタオではあったが、新しい職場であったためか初心に戻ったようだった。ひどく緊張している様で、震えた声で目の前の女性に声をかけた。

 

 

「は、初めましてでござる。吾輩、レミリア殿の命令で数日の間ここで働く事となったブタオと申す者でござる! 短い間ではありますが、よろしくお願いしますでござる!」

「……よろしく」

 

 目の前の女性、パチュリー・ノーレッジは無表情のままにブタオにあいさつを交わし、傍に居た小悪魔に全てを任せて、自分は呼んでいた本に再び視線を落とすのであった。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 パチュリー・ノーレッジに油断はなかった。

 一挙手一投足。ブタオの挙動を見逃しはしない。目の前であいさつをするブタオに対し、パチュリーは、無表情ながらも強い敵対心を持って接していた。

 

「……あなたの事、レミィから聞いているわ。数日間、この図書館で研修するんですってね」

「そうでござる! よろしくでござる」

「私は、あなたに直接指導したりなんかしないわ。仕事に関しては、全部この子に一任するから」

 

 そう言って、傍らに立っている一人の少女を指した。悪魔っぽい羽と尻尾をはやした赤髪の少女であった。

 

「初めましてブタオさん。数日の間、あなたの指導係になる小悪魔です。みんなからは、『こあ』って呼ばれてるから、こあって呼んでね」

「よろしくでござる、こあ殿」

 

 軽いあいさつを交わし終えたところで、こあとブタオは仕事を始めるのであった

 

「ブタオさん。ここの業務について説明しますね。主な仕事はパチュリー様の読み終えた本を片づけたり整理したりです。片手間に出来る簡単な仕事ですよ。手持無沙汰の時は、図書館内を見て回ったりしてても良いですよ」

「ぶひ!? 本当でござるか!? 吾輩、本物の魔導書とかに興味があるのでござる! 見ても構わぬのでござるか!?」

 

 子供の様にらんらんと目を輝かせるブタオではあったが、こあは笑顔のままに忠告した。

 

「構いませんけど、あまりお勧めはしませんよ? ここの図書館、危険な魔導書とかも多くて。見ただけで発狂したり、魂を抜かれたりする様な危険度の高い魔導書もありますから」

「……やっぱ止めておくでござる」

 

 笑顔でとんでもない事を言うこあであった

 

 簡単な仕事の説明を受けたブタオはその後、『待機』と言う名のヒマに陥り、何とも落ち着かなかった。

 社会人のみんなも経験あると思うが、新人の時ってやる気があり余っているのに出来る事が少なくて、先輩達に『何かお手伝いする事ありませんか?』と尋ねても『大丈夫だよ~』なんて言われて、周りが一生懸命に仕事してるのに何も出来なくて、落ち着かなくて……

 

 あるよね? みんなも。

 

 まさにブタオはこの状態であった。

 

 こあには、『何か用事があったら呼びますから、好きに過ごしていてください』なんて言われてしまい、ほったらかしにされる始末。

 仕方がないから、ブタオは図書館内を散策する事にしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 本棚の影から、ジーっと監視されている事にも気付かずに……

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 本棚の影――。

 ブタオから死角となるこの位置に二人は居た。

 

 こあとパチュリーである

 

「パチュリー様。言われたとおり、彼を単独にしましたが……」

「御苦労さま、こあ」

 

 ジーっと二人はブタオの動向を影から観察していた。

 ブタオが来て以来、紅魔館はおかしくなってしまった。みんな色狂いになってしまった。

 

 ブタオの能力も。また、ブタオの目的も分からない。

 一体、何の目的があって紅魔館を懐柔しようとしているのか。

 幻想郷に対して、何か大きな異変を目論んでいるのではないか?

 

 なんにせよ、紅魔館の住民を狂わせた事実に変わりはない。

 一切の油断も無く、パチュリーはブタオの一挙手一投足に注視する。

 そんなパチュリーを、こあは少し冷めた目で見ていた。

 

「あの……パチュリー様? ちょっと尋ねても良いですか?」

「ん? なによ」

 

 ブタオから視線を外さずに対応するパチュリー。

 

「あの人って、そんなに危険な人なんですか? なんか私にはそうは思えないのですが……」

「……何の根拠があってそんな事を言うのかしら?」

「いや私って下級クラスとはいえ立派な『悪魔』ですから。人の悪意とかそう言ったのが分かると言うか敏感と言うか……。ほんのちょっとの対話でしたけど、あの人からは何の『悪意』も感じませんでしたから」

「……そんなの分からないじゃない」

 

 こあの発言に対し、パチュリーは反論する。

 

「善悪の定義なんて立場によって180度変わるものじゃない? 妖怪にとって人を驚かせたり襲ったりする事は立派な正義だけど、人間からすれば『悪』なことこの上ないじゃない。あの男の目的が分からない以上、悪意が無いからと言って安心するのは早計だわ」

「それは、まぁ……そうでしょうけど。でもそんなに疑ってるんなら、いっその事、拷問にでもかけて吐かせたらどうです? そこまでしなくても催眠術でもかけて心の内を全てさらけ出させるとか」

「考えなくもなかったけど、レミィ達のあいつへの情愛を鑑みると危険すぎるわ。下手に手を出したら私達が殺されるわよ? だからあの男に直接手を出す事も出来ない」

「……それは怖いですね」

 

 故にこうして動向の監視と言う消極的な手しか取れずにいる。

 目的さえはっきりすれば取れる対応もあるのだが。

 

 そんなこんなで本棚の影からジーッとブタオを見つめるパチュリー達。

 二人の視線に気付かないまま、ブタオは図書館内を巡っている。

 果てしなく続く本の道。古風な内装でありながら明るく清潔感が漂っている。ほのかに鼻孔をくすぐる古本の持つカビ臭さも、この空間にマッチしていて決して嫌らしくない。

 そんな空間を見渡し、ブタオは感嘆の声を上げる。

 

「見事な所でござる。蔵書量の圧倒差がありながらも決して窮屈さを感じない……。いつまでもいられてリラックスできる場所でござるな。――ぶひ?」

 

 ふとブタオは足を止めて、目の前にある本棚に注目していた。

 その本棚だけ、他の所とは様相が違っていた。古風な本の多いこの場所にあって、そこだけが凄く浮いているのだ。

 足を止めて、その本棚を注目しているブタオを見て、監視していた二人もどうした事かと首をかしげる。

 

「あれ? あの人、どうしたのでしょうか? あの場所に魅入っちゃってますね」

「あの本棚は……」

 

 パチュリーが何か言いかけようとしたその前に、ブタオの絶叫が図書館をこだました。

 その声にパチュリー達は、ビクっと体を強張らせる。

 

「ぶひいいいぃッ!? し、信じられんでござる……どうして、『コレら』が幻想郷にッ!?」

 

 ワナワナと手にとって震えるブタオ。

その様子を見て、パチュリーが思わず身を乗り出した。『あの本たち』は自分にとってかけがいのない大切な本なのだ。幻想郷にあってはこの上なく希少な――

 

「ちょっとッ! 何をしてるのよッ!」

「ぶひ!?」

 

 パチュリーの怒鳴り声に、ブタオもビクリと強張らせる。

 思わず言い訳じみてしまった。

 

「ぱ。パチュリー殿……も、申し訳なかったでござる! し、仕事中にその……『漫画』を読もうとして……つい懐かしくて」

 

 そう。ブタオの手には、古き良き『日本の漫画』があったのだ。

 世界に誇る日本のサブカルチャーとも言うべき存在。その『漫画』が、この異世界とも言うべき幻想郷にあった事は、ブタオにとっては青天の霹靂であった。

  

 ブタオが魅入っていたその本棚には、日本の漫画が置かれている場所であったのだった。

 本カバーは少し汚れていて、本そのものも少し黄色くなっていて、随分古いものであると言うのが分かる。巻数もまばらで、所々抜けている巻もある。

 パチュリーに注意されて、ブタオは恐る恐ると漫画を元の場所へと置く。

 

「な、懐かしい……?」

 

 ブタオの言葉にパチュリーが反芻する。

 

「ねえちょっとあなた。あなた今、『懐かしい』って言った?」

「ぶひ? そ、そうでござるが……。これなんて、吾輩が小学生の時に読んでいたものでござる」

 

 ブタオが手に取ったのは、80年代の古き良き思い出の漫画たち。辛い時に支えになってくれた思い出の深い……。

 パチュリーは、ゴクリと生唾を飲み干し再度たずねる。

 

「そ、それじゃぁ……これは?」

 

 パチュリーの手に取ったのは、横○光輝の三○志。まず日本にいて知らぬ人の方が少ないだろう。

 

「読んだ事があるでござるが……」

 

 質問の意図が分からず、ブタオは首をかしげながら答える。

 

「それじゃこれは?」

 

 今度はHU○TER×HU○TER。

 この中であっては、比較的新しいものではあるが、勿論知っている。

 

「勿論知っているでござる。と言うか、ここにある漫画は全て読破してるでござるよ?」

 

 全て読破していると言ったブタオに、パチュリーは体が震えた。その様子は決して怒っている様なものではなく、どこか期待に震えている様な――。

 

 

 

 

 

 ――ブタオは知らない。

 

 忘れられた存在が流れ着くこの幻想郷において、現代日本の図書がどれだけの価値があるのかを。

 

 漫画は外の世界のサブカルチャーとも言うべき存在だ。

 人々から忘れられるはずもない存在が幻想郷へ流れ着いたのはただの偶然であろう。それゆえに、幻想郷では漫画の絶対数が少ない。

 流れ着く漫画は、何かのどこかの巻であり、はっきり言ってその一冊だけでは何の物語なのか分かりやしない。

 

 しかし、そこは『知識と日陰の少女』と言われたパチュリー・ノーレッジ。

 

 彼女は、漫画の持つ魔力に心を奪われてしまっていた。

 

 何かの漫画のどこかの巻――。

 起承転結。何がどうしてこうなって、そしてこれからどうしていくのか。

 

 パチュリーは、知りたかった。

 

 たった一冊の本から、様々な夢想に耽り、物語の世界を縦横無尽に広げていったが、それはあくまでも読み手である自分の思い描いた世界。

 作者は、物語の世界をどう紡いでいくのか。

 物語の主人公達の未来は――。

 

 パチュリーは知りたかった。

 

 そして目の前に、その答えを知る者がいる。

 

 とぼけた顔して大切な家族に何かしたかもしれない容疑者。醜く嫌悪を持ってしかるべき相手。

 

 パチュリーの持つ知識欲が――。ブタオへの嫌悪を大きく上回った瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

「主人公が最後に死んでしまう物語は、駄作だと思う?」

「そうは思わんでござる。主人公とは物語のメインであるものの、物語の中には主人公以外のキャラもきちんと生きているわけで……。吾輩が駄作だと思う作品は、描写不足によって敵キャラが味方になった時の心情表現がうんぬんかんぬん――」

 

 わいのわいの。

 

 二人の漫画議論は、互いに時間を忘れるほどに熱く、そして楽しいものであった。

 パチュリーのブタオに対する嫌悪はすでになく、同じ趣味を持つ同士として親近感を感じていた。

 

(やだ……凄く楽しい! 同じ趣味を語れる日が来るなんてッ)

 

 ブタオへの懸念なんてどこ吹く風。初めはブタオの人となりを調べる為と自分に言い聞かせてきたが――。パチュリーの心は、ブタオに惹かれつつあった。

 ラノベを熱く語るブタオの横顔のなんと凜々しいやら。

 横顔を覗いて、偶然に目が合った瞬間など、心臓が飛び出るかと思うほどの衝撃だった。

 今も、とてもドギドギしている。

 でもちっとも苦しくなくて、むしろ温かくて――

 

「主人公以外の男とくっつくヒロインって―――」

 

 そんな風にブタオと熱くマンガ談義していると、そんな自分を酷く冷めた視線に気付く。

 

 咲夜と美鈴とフランの三名であった。

 

「あ……」

 

 三人の視線に気付いたパチュリーは、途端にバツが悪くなり、羞恥と焦燥から顔を真っ赤に染めながら冷や汗を流す。

 

「………」

「………」

「………」

 

 そんなパチュリーを見て、三人の視線はますます冷たくなっていく。

 

「あ、あは……あはははは!」

 

 三人を前にパチュリーは笑うしかなかった。

 

 

 

 

 

 




数ヶ月ぶりの投稿です。
PCのない生活してました。
ゆっくりと自分のペースで書いていきます。
これからもヨロです

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