Fate/ture L   作:麻婆ピザ

3 / 16
セイバー 初陣2

 さながら雷撃を思わせる槍が、光輪と激突した。

 衝撃は大気を震わせたが、一瞬のできごとでしかない。槍は弾かれ、地に落ちていく。

 光輪はバルバロッサを縦に引き裂いた。

 二つに分かれた肉体は屋根の上を三度ほど跳ねた後、地面へと落下していく。

 それを見届けたラーマはようやく緊張を解いた。

 屋根へ着地すると、低速の回転となった剣が彼の手元にまで戻ってきた。

 羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)

 それは魔王ラーヴァナを倒すために、生まれた時からラーマが身につけていた『不滅の刃』だ。

 元々は魔性の存在に対して絶大な威力を誇る矢だ。それを無理やり剣に改造したため、投擲武器としての側面が強く残ったのだろう。

 ――まずは一騎か。

 決して楽な戦いではなかった。判断を誤れば、この勝利は得られなかった。間違いなく強敵だった。けれど、今回の闘争は楽しいと感じられた。闘いやすい相手だったことが原因かもしれない。

 この先の闘いはもっと苦しくなるはずだ。単純な戦闘のみならず、策謀や罠といった搦め手もあるだろう。

 この勝利に酔いしれず、気を引き締め直さねばならない。

 そう決心した直後だ。

 背筋が凍りついた。

 不思議なことに、気配はない。

 視界や音は? どれも正常だ。殺意は? 感じられない。

 危険はない。脅威となる者が存在しない。

 にも関わらず、ラーマはこの胸のざわめきを拭えない。嫌な予感がする。

 ――来る。

 ラーマは咄嗟に右方向へ飛んだ。気のせいであれば、それでよし。無意味な行動であったとしても、恥じることはない。自らの直感を信じた。

 己が居た位置を見遣る。するとそこには、一本の槍が空を切っていた。

 そう。フリードリヒ・バルバロッサが、槍を突いていたのだ。

 混乱する頭が状況を理解しようとするよりも早く、体が動いた。

 相手に向けて剣を一閃。されど、刃は虚しく空を裂いた。

「やはり、難しいか」

 抑揚のない声は後ろから届いた。バルバロッサはラーマの後方に移動していたのだ。感情のない瞳でこちらを見ていた。

 ラーマは振り返り、構える。冷たい汗が伝うのを感じ取った。

 距離は五メートルほどだろう。互いの武器が届く位置だ。

 沈黙が続いた。空気が張り詰める。

「悪いが目的は済んだ。さらばだ、コサラの王よ」

 それだけを言い残して、バルバロッサは去っていった。

 あまりにもあっさりと引いてしまった。そのことに、ラーマは呆気に取られていた。

 すでに気配がない。探したところで無駄だとラーマは感じた。

 いくつもの疑問だけが残った。

 最後の背後からの一撃。これは明らかに質が違う。幾合も剣と槍を重ねたがゆえに、はっきりとわかった。まるで別人だ。

 正面突破を好む、威風堂々とした男。

 隙あらば背後からでも襲う、影のような男。

 姿は同じでも、果たして本当に同じ人物なのか?

 そして何よりも、バルバロッサが復活したことだ。彼は、たしかに両断されたはずだ。サーヴァントといえど、修復が困難なほどに。一体どういうカラクリがあるのか? なにか見落とした点はないのか?

 情報が少ない。足りない。いくら考えても、疑問は増え続けるばかりだった。

 ふと、魔力消費が激しかったことに思い至った。魔力はマスターから提供されているため、使い過ぎれば命を削りかねない。心配になったラーマはマスターの元へと駆ける。

 ついでに、勢い余って家まで両断したことを、どのように説明するか。謝罪の方法も含めて、ラーマは考えを巡らせていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。