「はは、やったぞ、成功だ。ははははは、勝てる! このサーヴァントでなら!」
打ちっ放しのコンクリートに包まれた狭い部屋。明かりはパソコンの明かりのみ。白衣を着た男が不気味なまでに笑い続けていた。
冷え切った室内とは裏腹に男の哄笑は、とある感情の熱で溢れている。
「ははは! 後悔させてやる! 僕に令呪と復讐の機会を与えた、そのことを!」
男の傍らには人影があった。背丈が百八十センチ以上はある、細身の青年。緑がかった黒の礼装服。同色のマントとシルクハットを着こなす姿は一見すれば紳士の出で立ちだ。しかし、彼は尋常ならざる気配に満ちていた。瞳は凍てつくほどの威圧感を孕んでいると同時に、燃え盛るような憎悪に囚われている。静かに佇んでいるだけ。それだけのはずなのだが、全身から放たれる気魄によって獰猛な獣と対峙しているかのような錯覚に陥ってしまう。
静けさと激しさを併せ持つ青年――サーヴァントが、口を開いた。
「俺を呼んだ貴様は、何を為し遂げるつもりだ?」
よく通る声だった。相手を選定するためなのか、峻厳や凄烈といった色が含まれているように感じられた。気の弱い人間であれば、声を発することすら難しいだろう。あるいは、卒倒してしまうかもしれない。
しかしながら、男は物怖じせずに答えた。
「決まっている。復讐だ。サーヴァントとしてのお前は、その権化のようなものだろう?」
「そうか。俺を呼ぶに相応しい理由があるようだな。だが、貴様の願望はそれだけか? 聖杯になにを望む?」
「願望? 聖杯? そんなものはない。いらない! いるはずもない! 必要なのは、復讐を果たすための憎悪だ。それを為すための手段と力だ! 聖杯は壊す! 徹底的に! くくっ、そうだ、壊すんだ!」
狂気を纏った笑みを浮かべながら、マスターである男は答えた。
サーヴァントの表情に変化はない。品定めでもしているかのように、マスターの顔を見つめ続けていた。
「では、復讐を果たした、その先は?」
「その先?」
白衣の男は静止した。
空白。虚ろな瞳でサーヴァントを見返す。
「ない、な」
男はぼそりと呟いた。
先ほどよりも激しく、怒りに満ちた笑みを浮かべる。
「ない。ないぞ! 『先』など必要ない! 必要なのは『今』だ! 必要ならば、未来すらも燃料にしてしまえ! 復讐さえ叶えば、燃え尽きてしまってもいい!」
紳士姿のサーヴァントは高らかに笑う。
自らのマスターに、共感できる部分があったのかもしれない。
「クハハハ! いいだろう、マスター。貴様の復讐すべき相手の名は、なんだ!」
「復讐の対象者……それは間違って生まれたモノ。出来損ないで、失敗作で、欠陥品のホムンクルス……そのモノの名は――」