灰と執行者のグリムガル   作:黒鍵って最強じゃね?

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我慢出来なくてやってしまった・・・!
基本黒鍵こそが最強です。


執行者は異世界へ

暗いどこかを歩く。目指す先は小さい光の見える所。

何故そこを目指しているのか、自分でも分からない。

 

歩く度に、光へと向かう度に、自分の頭の中から何かが消えていく気がする。知識、記憶、そういったものが減っている気がする。不思議と恐怖心がない。

 

遂には自分の名前しか分からなくなる。いや、まだ何か覚えている気がする。それが何かが自分でも分からず、探すだけでも無駄だと思い、割り切ろうとする。

 

だが、割り切れない。

 

何故か忘れられない。まるで半分忘れかけていることが、自分が生きるために一番必要なことで、それがなければ自分が生きていけないみたいに。

歩きながら、とっさに模索する。突如襲いかかる頭痛。今にものたうち回りたくなる。大声で叫びたくなる。

 

だが歩き続ける。

 

止まる訳にはいかないと、自分の直感が告げている。振り向くな、立ち止まるな、と。

 

光に向かって歩く速度を早める。ここで気付く。頭痛が消え去り、代わりに何故か、戦い方と言うべきものが思い浮かぶ。

 

光まで辿り着く。気付くともう既にここまで来ていた。

黒を超えて、光に入る。

 

眩しい。薄暗い石造りの空間で、まずそう思った。気配を探る。なぜ探ったのかは分からないが、そうしなければいけない気がした。

13人。自分を合わせたこの場にいる人数。彼等は裏に関わっていない、表の人物だと予測する。

待て、何故そんなことを考える?裏とはなんだ?どういう基準で計ったのだ?わからない。ならば考えるのをやめよう。無駄な思考はするべきではない。

 

「もしかして、誰かいる?」

 

男の声、と言ってもまだ声変わりしていない少年の声がする。するとすぐに「あ、うん」や「います」「ああ」といった様々な返答が行われた。

 

全員が外に出られるであろう方に向かって、壁を伝いながら歩く。何故か分からないが、自分だけは床などが良く見える。

 

全員銀髪の男について行く。一番頼りになるからだろう。そういう自分もついて行ってるが、この中で自分から離れようとする者はいないだろう。

 

鉄格子を開き、階段を上り外に出る。新鮮な空気が自分の体を満たすのを感じる。

 

出口のそばには男がいる。だが変だ。なんというか、現代っぽくない?服とは違い鎧や兜のようなヘルメットを被っている。あと剣もか・・・。

 

何故かわからないが、手のひらに剣の塚のようなものを作り出し、左手の指と指の間に三つづつ挟む。

記憶を失う前までの自分が何をしていたのかを考えたくなる。

 

それから案内人のようなものが現れ、自分達はどこかに連れてかれる。まず見えたのは墓。気付くと十字を切っていた。そういえば胸に十字架のネックレスが入っている。

取り出して裏を見てみる。裏には

『Henri kotomine』と刻まれている。

 

十字架をよく触ってみると、その手触りは普通の十字架とは違い、もっと高価な素材で作られている気がする。

 

だがそんな気持ちもすぐに消える。空に浮かぶ『赤い月』によって。頭の中にノイズが走る。月の色は赤だったか?ならばなんだ?この頭の中に浮かぶ、月や太陽とも見える、空に浮かぶ『黒い孔』は?

 

考え事を打ち切りノイズが止まる。これが名前以外に覚えている数少ない記憶。

 

それから義勇兵団レッドムーンというところに連れていかれた。所長のブリトニーという、女性臭漂う男性が、自分達に選択を迫る。

 

義勇兵になるか、ならないか。

 

死活問題だ、と思う。ブリトニーの話によれば義勇兵以外の職は厳しく、働かせてもらえることすらできないことが多い。

それに比べ義勇兵はモンスターを狩って生活すればいい。

 

多少の危険を顧みなければ義勇兵になるしかないだろう。一人前の義勇兵には特典とやらが付くようだし。

 

すると銀髪の男が自分の方に寄ってくる。その手にはカウンターに置いてあったナイフが握られている。

周りの人達が自分を除いて円形に離れる。それもそうだ。見るからにギャングという言葉が似合う銀髪の男が、ナイフを握っているのだから、それは近寄りたくはないだろう。

 

対して自分は不動。精神的な方にもなんの揺らぎもなく、レンジと名乗った青年をただ見ている。

ふと、レンジの後ろに置いてある鏡に自分の顔が写っているのに気づく。白いメッシュが入った黒髪。身長は平均的で、目はどこか無気力に見える。

これが自分か、と今の記憶で初めて自分を認識した。

 

「気に食わねぇんだよ、その眼が」

 

いつの間にか接近していたレンジが自分に向けてナイフを振るっている。その動作は速く、目を見張るものがあるだろう。

周りの人達は目をそらそうとしている。

当然だ。レンジの目は本気、下手をすれば自分がこの場で死ぬかもしれないのだから。

 

 

だが、遅い。

 

ドンッ、と鈍い音がする。下を見ると、レンジが腕を抑えて下に蹲っていた。

 

——————————————————————————

 

何が起きたのか分からなかった。少なくともハルヒロには分からなかったし、彼が何をしたのか見えなかった。

この場を支配しているような銀髪のギャングのような男、レンジがレッドムーンの所長のブリちゃんからナイフを借りたと思ったら、彼に向かって斬りかかった。

 

ハルヒロも、その周りもみんな目を逸らしたり、瞑ったりした。当然だろう。下手したら死ぬ、下手しなくても大怪我はするかもしれないのだから。

あのうるさいキッカワやランタまで黙っている。

 

ドンッ!とナイフで刺したとは思えない音が響く。次に聞こえるのが呻き声。この呻き声はレンジのものだと判断する。ブリちゃんが後ろで「やるじゃない」って言ってる。

 

目を開いて彼の方を見る。彼の足元にはレンジがナイフを持っていた腕を抑えて跪いている。レンジが持っていたナイフは床に転がっている。

 

みんなが驚いているのか、誰も声を発さない。彼は虚ろとは違う、黒い瞳でレンジを上から見下ろしている。

その目は「この程度か?」と語りかけているようにも見える。

 

「・・・ッ!ウラァッ!」

 

レンジが勢いで立ち上がり、左腕で殴り掛かる。狙いはおそらく顔、と言うか頬。女性陣は今にも泣きそうだ。

レンジは服の上からでも分かるくらい筋肉があるから殴られたら痛そうだ、とハルヒロは思う。

 

彼はレンジの腕を片手で軽く払い除ける。マジかよ、アレだけ勢いがあるのに。

 

裏拳なども使ってレンジはひたすら殴ろうとする。その度に彼は軽くいなしていく。

レンジの拳の動きが止まる。顔はひたすら力を入れているのに、腕は動いていない。いや、動かせないのだろう。

 

彼はどこから出したのか二本の剣、1mほどの長さの剣を指に挟んでレンジの拳を掴んでいる。人間業じゃないだろ。

少なくともハルヒロはそんなことをしようとは思わない。

 

「・・・チッ」

 

レンジが拳を引き抜く。彼も剣を霧散させる。その芸当に周りからは感歎の声が上がる。彼は残った柄を握り潰す。

本当にアレはどうやったのか、今すぐ聞きたい。

 

「テメェ、名前は?」

 

レンジが睨みながら名前を聞く。自己紹介の時、彼だけは名前を教えてなく、加えて一言も喋らなかった。

彼は微笑みながら口を開こうとする。

今思ったが、彼は二枚目、俗に言うイケメンの部類に入る人だ。それは同性のハルヒロからでも見惚れてしまうほどの美形だ。

 

「アンリだ。騒がせて悪かったな。これはお詫びだ」

 

彼はアンリというらしい。アンリは失礼、と言いながらカウンターに近づき、銀貨が入っている袋を一つ取る。それと同時にアンリは、先程出したのと同じ剣を3本、どこからか出してカウンターの上に置いて、そのまま事務所を出ていく。

 

するとブリちゃんがアンリが置いていった剣を一本手に取り、刃を品定めするように見る。すごい気迫だ。やはり彼?彼女?も義勇兵なのだろう。

 

「こんないい剣、なかなかお目にかからない・・・」

 

ブリちゃんが静かに剣を置いて布で巻く。ブリちゃんが言っていたことが本当なら、アンリは何者なのだろうか。

話し掛けやすそうな雰囲気の時に聞こうとハルヒロは決めた。

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