灰と執行者のグリムガル   作:黒鍵って最強じゃね?

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半年以上サボっててすんませんでしたああああああああ!!!!!

しゃーないねん。他の作品へ現を抜かしてたんだから。
色々と忙しかったんだから。

だから!僕は!悪くない!

嘘です。全部作者が悪いです。


闇泥

「どわぁっ!!」

 

間抜けな声を出して投げ飛ばされる。これで何度投げられたか、もう数えてすらいない。最初の頃と比べて投げ飛ばされる回数は減ったとおもう。受け身も上手くなった。

強くなっている・・・と思う。マナトの指揮はもっと的確になったし、モグゾーの剣速も上がった。ユメの弓は少しは当たるようになったり、シホルも積極的とは言えないけど戦えるようにはなった。俺も小手先の技術だけど、上達したと思う。ランタは・・・もっとうるさくうざくなった。

 

アンリと訓練を始めてから二週間近く。この間にアンリのことが少しだけわかった気がする。

 

まず不器用だけどかなり優しい。アンリはどうやら俺たちと同じ義勇兵の宿に泊まっていたらしい。俺たちに教えてくれるまでほとんど帰ってなかったそうだ。そりゃあ見かけないわけだ。

まぁ、それは置いておいて、俺達はいつ金が尽きても可笑しくない。極限まで生活を切り盛りしていかなきゃならない程に貧乏だ。

そんな俺たちに、アンリは必要なものを全部持ってきてくれた。悪いと思って受け取らないつもりだったけど、思いと体は別だった。気づいた時にはアンリから受け取っていてしまった。

その後アンリは、成長したらいずれ返してもらうって言ってた。

 

他にも、料理が上手い。俺達は当番制でなんとか作ってこれだけど、アンリの訓練が始まってから毎日ヘトヘトで飯なんて作っていられなかった。それを見たアンリが今ある食材を使って、色々と作ってくれた。

その時はみんな、久しぶりに沢山食べた。モグゾーとランタなんておかわりしまくってた。

 

後は・・・これは間接的にアンリと関係あることだけど、最近シホルがアンリと仲がいい。いや、別に俺達がアンリと仲が悪いってわけじゃない。アンリは案外聞き上手だったりする。なんせランタのウザ長い話をずっと聞いてるんだから。

いや、そうじゃない。今はアホランタじゃなくてアンリとシホルの話だ。

 

アンリは結構月を見ている。紅い月をだ。なんで見ているか、一番仲がいいマナトに聞くと、「分からない」だそうだ。前は一人で見てたのに、最近は近くにシホルがいる。別に何かを話してるわけじゃない。ただそこにいるのが当たり前って感じになってきている。

なんというか・・・少しだけアンリが羨ましい。

嫉妬しているんだよ、俺は。ほら、シホルって可愛いじゃん?それに胸も・・・大きいしさ。いや!別に胸ばかり見ている訳じゃなくて、自然とそこに目が行っちゃうんだよ。男の性?ってやつ?

まぁお似合いなんだよね、あの2人。シホルは言わずもがなアンリはイケメンだし気遣いもできるし。それにシホルはアンリといるといつも笑顔だし。仲間として、シホルには幸福でいてほしいと思う。

あー、でもこのままだったらシホルがパーティーから抜けちゃうかもしれない。まぁそれはそれでシホルがいいなら別にいいんだ、と思う。

 

でももし抜けたらどうしようか。

また新しく誰かを引き入れる?そんな簡単に行くはずがない。

 

「前途多難だな・・・」

 

——————————————————————————

 

アンリは早起きだ。より正確に言えば遅寝早起き。

アンリは2時間横になっていれば、自然と体は好調となり万全のコンディションを誇る。

ハルヒロ達の訓練をするまでは朝から夜まで、ほとんどを資金調達で費やしていた。少し離れたところにいるコボルトと呼ばれる狼のようなモンスターを日帰りで何匹か倒したこともある。

本来であればコボルトの生息地域にはオルタナから数日かかるのだが、それはパーティーを組んだ者達のみである。

ソロのアンリは余計な荷物も少なく、全力で周りを気にせずに走ることが出来る。大幅なショートカットを加えながら行けば、アンリなら一日で往復できる。

 

一見周りから戦闘狂に見られているアンリだが、アンリは別に戦闘狂という訳では無い。それしかすることがないからそれをやる。要は成り行きに任せただけである。誰しもが好んで義勇兵になる訳では無い。それはアンリとて同じこと。

 

そんなアンリの数少ない趣味の一つが料理である。食材を持つと心が安らぎ、極度の集中状態に入れる。何かを作ることが楽しいと思っている訳では無いが、底知れぬ楽しさを感じているのは事実だ。

現にぶっつけ本番で作るのは案外好きだ。

 

閑話休題。

 

タオルと替えのシャツを持って部屋から出る。行き先はない。強いて言うならば走るだけだ。それも縦横無尽に。

軽くストレッチをして終わると同時に駆け出す。ダン!という豪快な音と共に走り出したアンリはパルクールのように駆け回る。

 

時にはステップで。時には暗黒騎士の使う移動法で。時には真っ直ぐに。

 

様々な走り方、と言うよりは無茶苦茶な走り方というのは脇腹や体がよく痛む。だがアンリは速度を落とさない。ジワジワと攻めてくる苦痛に耐える。

苦痛を味わいながら走るのも鍛錬のうち。アンリは別にマゾヒストではない。戦闘中に攻撃を受けても耐え切れるようにする、いわば精神修行だ。

 

朝日が登り始めると同時に貸宿へ戻る。今度は一直線に、音をなるべく立てずに。

 

来た時よりも圧倒的に速い時間で到着。過度な緩急を率いた運動。走り終えたアンリのシャツは汗で濡れており、アンリの髪には汗の雫がついている。近場の川で水を被る。持ってきた替えのシャツに着替え、タオルで水を拭う。

 

「そろそろ・・・アイツらだけでやってもらうか・・・」

 

「誰に何をやってもらうんだ?」

 

後ろからアンリに話しかけたのはマナト。手にはジャガイモの入ったザルを持っており、これから朝食を作ろうとしているのが分かる。

 

「はぁ・・・今日はお前達だけでゴブリンを狩ってこさせようと思ってな。いつまでも訓練では、色々と成長出来ないものもある」

 

「やれるかな、俺達に」

 

「やれる、というかやってもらわなくては困る。折角教えたんだ。ここら辺で俺の、お前達のしてきた事が無駄ではないと証明しなくてはな」

 

アンリの言葉にああ、と同意する。アンリに教わってから、確かにみんな上達しているとマナトは実感を得ている。動きのキレや効率が、少しづつ良くなってきている。

 

「あ・・・アンリ君、マナト君」

 

「おはよう、シホル」

 

「おはよう」

 

どこからがやってきたシホル。明朝ということもあってまだ眠いのか、少し眠たそうな雰囲気を出している。アンリとマナトは挨拶をしてシホルの方へ向く。

 

「じゃあ俺はもう行くから」

 

マナトが少し急ぎながらこの場を後にする。その時アンリに見えないようにシホルへアイコンタクトをする。マナトが何言おうとしたのか自然と理解できたシホルは、顔を少し赤らめる。

 

「あ、アンリ君は今日も朝から?」

 

「ああ。朝は体の調子を整えるのに丁度いい時間だからな。それに朝ならオルタナを好きなように走り抜くことができるしな」

 

「・・・ちゃんと寝てるんだよね?」

 

「無論だ」

 

寝てる、と言っても睡眠時間が2時間なのはおかしいと、シホルははじめの頃思ったが、今となればそれが普通のことで、更に短くしていないかが心配になる。

その心配は親切心か、もしくは仲間として来るものか、それはシホルさえ分からない。いや、分からないようにしている。

それを理解したら、今が壊れるかもしれないから。

 

「どこか行くの?」

 

「ああ。今日は少しな。だからシホルからみんなに今日は好きにしろと伝えておいてくれ」

 

頼んだぞ、と言ってアンリはシホルに背を向けて宿の方へ向かう。一人残されたシホルは少し頬を膨らませながら心の中でバカと呟いた。

 

——————————————————————————

 

オルタナから出たアンリは、森の近くの滝へ来ていた。木々が生い茂り、動物達が池で水を飲んでいる。アンリは手頃な岩の上へ乗り、右腕の袖を捲る。

 

「出てこい」

 

そう呟くとアンリの腕から滲み出るように真っ黒な泥のような何かが出てきて、15cm程の小人を形作る。小人は全身が真っ黒だが、目のある位置には白い双眸がある。

 

「ケケっ、久しぶりだなぁご主人様」

 

嘲笑うかのように小人が話しかけてくる。この小人はエレメントと言い、魔法使いの魔法の元となっているらしい精霊である。だが精霊は基本言葉を発さない。そしてまだ魔法使いとなって日が浅いアンリからエレメントが出てくるはずがない。

 

「久しぶり、というのは俺と貴様には当てはまらないだろう。何せ貴様は常に俺と共にいるのだから」

 

「ひゅー、言ってることは気持ち悪いけどまぁ事実だしな。それで、俺を呼び出したってことは」

 

「ああ。いつものだ」

 

アンリがそう言うと小人はアンリの肩に飛び乗る。アンリはそれを確認すると、手を意識して詠唱を始める。

魔法を使うには詠唱が必要だ。それはどんな魔法でも。そして使う属性によって詠唱も変わってくる。アンリが一番扱うのは闇魔法と呼ばれる、あまり使う者達がいない魔法だ。その魔法だけは使用者が極端に少ないため、どのような効果があるのか、突出している事が分からず、また使用者によって全く違う使い方が発見されているギャンブルのような魔法となっている。

故に闇魔法を扱うものは暇ができたからやって見る魔法の寄り道のような扱いとなる。

 

アンリが意識するのは呪い。体を止める、目を眩ませる、意識を飛ばす。様々な効果が見られる呪いを泥のような形として飛ばすことで、アンリの魔法は効果を発揮する。

 

詠唱が終わる。アンリは左側にいた鹿に掌を向け、そこから球形状の泥を射出する。泥は鹿を蝕むようにその身へ浸透し、やがて全てを吸い込まれると、鹿はガクリと地面に倒れふす。

 

それを見るとアンリはゆっくりと近づき、鹿の首元へ手を付ける。そしてゆっくりと心の中で60秒を数える。すると60秒ピッタリになり、鹿は目を覚まし、ゆっくりと立ち上がって何事も無かったかのように立ち去っていく。

 

「ふむ、成功か」

 

「おうおう、はじめの頃と比べると大分持ったじゃねぇか」

 

アンリがしたのは一定時間、泥に触れた対象の意識を奪う魔法だ。アンリはこの魔法を開発し始めた当初は飛ばすことさえできず、対象に当たったとしても数秒しか持たせることができなかったが、今では60秒も持たせることができた。これは大きな進歩である。

 

「さて、では次に———」

 

アンリがそう言いかけると強烈な風がアンリを叩きつける。ヒュオオオもいう不気味な音が森の木々を揺らす。

 

「いや、早めに戻っておくか」

 

そう言うと小人は何も言わずに泥と化し、アンリの腕へと戻っていく。アンリは滝へ背を向けて、この場をあとにした。




シホルを病ませたい。
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