涼宮ハルヒで妄想   作:神納 一哉

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過去にどこかに投下したかもしれないものを加筆・修正しました。


スズミイヤー

「ふわぁ…」

 

「どうしたの?みくるちゃん?」

 

「あっ、いえ、なんでもありません。ちょっと、寝不足で…。ふわぁ…」

 

「さすがSOS団のマスコットね!あくびまでかわいいわ!」

 

「そ、そんなことないですぅ~」

 

「キョンも見習いなさい!」

 

「なにをだ!」

 

「色々よ!」

 

「わけわからん」

 

「ふわぁ…」

 

ん?今、朝比奈さんが俺とハルヒを見比べたように見えたけど…。気のせいか?

 

――――――――――

 

「どうです?一局」

 

「また返り討ちにしてやるぜ」

 

「それはどうでしょうか?」

 

「悪いが、お前に負ける気はしない」

 

「これは手厳しい」

 

「…」

 

「…と、これはこれは…。ああ、独り言です、ふふふ」

 

「なんだよ、気持ち悪いな」

 

「いや、失礼。なるほどなるほど…」

 

「…」

 

――――――――――

 

「これを着けて欲しい」

 

「なんだ?これは?」

 

朝早く呼び出され、長門のマンションの前で渡されたのは、補聴器のような機械だった。

 

「これは、涼宮ハルヒの考えていることがわかる、スズミイヤー」キリッ

 

「…は?」

 

「これを着けることにより、涼宮ハルヒの考えていることが聞こえてくる観測装置。一昨日は朝比奈みくる、昨日は古泉一樹に学校で着けてもらい、総合判断で貴方に装着してもらうのが良いという結論に至った」

 

「いやいや、ちょっと待て。朝比奈さんと古泉も着けたのか?」

 

「そう。私も三日前に着けた」

 

「で、今日は俺の番だと?」

 

「被験者の意見を総合して、貴方が着けるのが一番だという結論に達した」

 

「なんだか良くわからないんだが、着ければいいんだな?」

 

「…」コクリ

 

「ずいぶんごついけど、目立たないか?」

 

「装着すると他人からは見えなくなる」

 

「そうか」

 

「…貴方を信じてる」

 

「どういうことだ?」

 

「涼宮ハルヒと、貴方を信じてる」タッタッタ

 

「あ、おい、長門…。行っちまった」

 

長門に渡された手の中にある機械―スズミイヤーなるもの―を見つめる。何かで見た補聴器に良く似た機械。

 

まあ、長門にはいつも世話になっているからな。

 

それに朝比奈さんや古泉も体験して、その上で俺に着けろと言っているんだから、悪いことにはならないだろう。

 

まあ、それじゃあ、ひとつ着けてみますかね。

 

耳にイヤホン部分を差し込む。微かなノイズの後に、馴染みのある声が聞こえてきた。

 

『今日も快晴!絶好調!』

 

やれやれ。元気なことで。まあ、ハルヒらしいな。

 

『む!あのパン屋の影に不思議な気配がするわ!もしかして小人さんが!?』

 

…え?

 

『マンホールから怪しい音が!地底人が攻めてきたのかしら!?』

 

おい…。

 

『いけないいけない。不思議探索は週末なんだから、学校行かないと!』

 

と、俺も学校に向かわないと。

 

それにしても、やっぱりハルヒはハルヒなんだな。

 

――――――――――

 

「これはぁ~。もう確定ですぅ」ハァ

 

「同感ですね。いやはや、参りました」ハァ

 

「…」

 

「あそこまであからさまだと、下手な小細工するよりも、キョン君に着けてもらった方が早いですよね?」

 

「そうですね。彼も涼宮さんのことは憎からず思っているはずですので」

 

「でも、ひいちゃう…かも?」ハァ

 

「…まあ、そうですね。場合によっては距離をとってしまうかもしれませんね」ハァ

 

「どういうこと?私にはわからない」

 

「ふぇ!?なぜって、その…想われすぎちゃうと重く感じてしまうといえばいいのでしょうか?」

 

「強すぎる想いは人によっては、逆に想われる人にとっては枷になってしまうのですよ」

 

「スズミイヤーを朝比奈みくるに渡す七時間前、涼宮ハルヒは彼のことを繰り返し呼んでいた」

 

「は、はわわわわわっ!?それって、それって…」カァァッ

 

「まあ、涼宮さんも年頃の女性ですからね…」

 

「わからない」

 

「わからなくてもいいですぅ!」

 

「ええ、まあそうですね。それよりも…彼にスズミイヤーを着けて貰うということでよろしいですか?」

 

「はい。これ以上隠し続けるのには無理があると思いますので」

 

「涼宮ハルヒの想いは日に日に大きくなっている」

 

「まあ、それについては同意します」

 

「キョン君がどう思うか…ですよね」ハァ

 

「彼なら、受け入れてくれると信じましょう」

 

「そうです…ね」ハァ

 

「…」

 

――――――――――

 

「おはよう、キョン」

 

「おーす。キョン」

 

「おはようさん」

 

『キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』

 

「!?」

 

な、なんだ!?

 

「あん?どうしたキョン。鳩が豆鉄砲食らったような顔してさ」

 

「どんな顔だよ!?」

 

「いやいや、皆まで言うな。…アレだろ?また、機嫌を損ねたんじゃないのか?」ニヤリ

 

「…あー、まあ。そんなところだ」

 

『馴れ馴れしくキョンと肩組んでるんじゃないわよ!』

 

「まあ、ガンバレや」ポンポン

 

「あ、ああ」

 

一見した感じはいつものように不貞腐れたように椅子に座っているハルヒ。だが、さっき聞こえた声は気のせいじゃなければ俺に対してのことになるわけで。

 

「…おはよう」

 

「…おはよう」

 

挨拶を交わしてもテンションはいつもと変わらない。

 

鞄を掛けて椅子に座る。特にこれと言って話すこともないからハルヒに背を向けたままだ。

 

『今日は少し余裕を持って来たのね。あんまり汗かいてないし。もう、キョンの匂いしないじゃない…』

 

匂い?何を言っているんだハルヒ。

 

『今日は、どうやってスキンシップしようかしら?どうせなら匂いが嗅げるようにしないと…』

 

…。

 

『そうね、団のホームページでも弄ってもらおうかしら。肩に手を置いて覗き込んだりして。ふふ。想像したらちょっと興奮しちゃった…』

 

…。

 

俺は携帯を取り出して長門にメールを打つ。勿論、ハルヒにはばれないようにだ。

 

――――――――――

to 長門 from キョン

 

団長殿が俺の匂いを嗅ぎたいとご乱心

――――――――――

 

――――――――――

to キョン from 長門

 

問題ない。

――――――――――

 

おい!問題ないのかよ!

 

――――――――――

 

耐えた。俺は耐えた。

 

授業中に聞こえてくるハルヒの言葉。やれ『あの耳をハムハムしてみたい』だの『突撃して倒れこんだついでに舐めちゃおうかな』だの『体育の後はキョンの匂いが濃くって幸せ』だの…。

 

いったいなんなんだハルヒ。

 

授業が終わるや否や、俺は部室へと向かう。

 

ドアノブを捻ると、鍵はかかっていなかった。よし、長門はいるようだ。

 

「おい、長門…」ガチャ

 

「…ふぇ」

 

そこには、下着姿でメイド服に両手を通した格好で固まっている天使がいた。

 

「!!失礼しました」ガチャ

 

朝比奈さん、そこまで無防備なのはどうかと思いますよ。着替える時は鍵くらいかけてください。

 

「…何?」

 

扉の向こう側から長門の声。その後ろで朝比奈さんの『あわわわわ』といったような声が聞こえている。

 

まあそれは置いといて、俺は扉に向かって声をかける。

 

「ハルヒは、いつもあんななのか?」

 

「あんな、とは?」

 

「…俺の匂いを嗅ぎたいとか、舐めまわしたいとか…」

 

「いたって普通」

 

「…そうか」ガクッ

 

なんてこった。我が麗しの団長殿は…変態だったってわけだ。

 

「おや、着替え中ですか?」ニコ

 

「ああ、まあそうだ…な」

 

「どうかしましたか?」

 

「ああ。団長殿が…な」

 

「…ああ。少し偏執的ですが、愛情表現にはかわりありませんよ」ニコ

 

「…そうか」

 

「むしろ、情熱的で羨ましくもあります」

 

「ペロペロ、ハムハムがか?」

 

「おや、恋人同士ならそのくらいするでしょう?」

 

恋人同士なら、そのくらいする…だと?

 

…いや、でもまてよ、確かに古泉の言うことも一理あるな。

 

『キョンと古泉君はっけーん!』

 

「みくるちゃん、まだ着替えてるの~!?」

 

「あっ、いいえ。もう着替え終わりました。どうぞ~」

 

「さあ、二人とも突入よ!」

 

「あ、ああ」

 

「畏まりました」

 

『このままキョンの背中にタッチ!』ピトッ

 

「押すなよ、ハルヒ」

 

「却下よ!」

 

「やれやれ」

 

『シャツ越しにキョンの汗が手に…ふふふ。キョンの匂い』

 

…。

 

「さてと、キョン!こっちにきなさい!」

 

「なんだよ?」

 

「ホームページの更新をするわよ!」

 

「へいへい」

 

「ほら、さっさと座る!」ワクワク

 

『座ったところに両肩に手を置いて、と。ああ、キョンの匂い』スンスン

 

ハルヒの重さを両肩に感じながら、俺は気付いた。甘い香りがする。

 

「……ハルヒ」スンスン

 

「何よ?キョン」

 

「…シャンプー、変えたか?」スンスン

 

「よ、良くわかったわね!!」

 

『え?キョンがあたしの匂いを嗅いでるの?え?え?』

 

「いい匂いだ」

 

「!馬鹿」カァッ

 

『キョンの匂いも良い匂いなんだけど』スンスン

 

…ああ、そうか。団長殿は変態ではなかったんだな。

 

俺の認識不足だ。畜生め。

 

好きな相手の匂いは嗅がずにはいられないってことだよな?ハルヒ。

 

「……ハルヒ」スンスン

 

『嗅がれてる。あたしの匂い、キョンに嗅がれてる』

 

「何よ?」スンスン

 

『キョンも嗅いでるから、あたしも嗅いでいいよね』

 

「この世の不思議を解き明かしたいんだけど、協力してくれるか?」スンスン

 

『良い匂い。不思議って何?』

 

「内容にもよるわね」スンスン

 

『ああ、キョンの匂い…。止まらないよぉ』

 

「なに、簡単なことさ。ちょっと首筋の匂いを嗅がせてくれ」スンスン

 

「…え?」スンスン

 

『キョン?』

 

「お互い、嗅ぎ合うってのはどうだ?」スンスン

 

『キョンと嗅ぎ合う…』

 

「…」スンスン

 

「…」スンスン

 

「…」スンスン

 

「これは、退散した方がよいでしょうか?」ボソボソ

 

「そのようですね」ボソボソ

 

「…」コクリ

 

「で、では、失礼します~。更衣室をお借りして着替えよう…」コソコソ

 

「鍵だけお願いしますね」コソコソ

 

「…」コソコソ

 

ガチャ、パタン

 

「…キョ、キョン」スンスン

 

「なんだ?」スンスン

 

「嗅ぐ…の?」スンスン

 

「…ああ」スンスン

 

「じゃあ、いったん離れるね」

 

「ああ」

 

「えーっと、それで、どうする?」

 

「お前さえ良ければ、正面から」

 

「…馬鹿」

 

『嗅がれちゃう、キョンに嗅がれちゃう…』

 

「……ハルヒ」ギュ

 

「…あ…」

 

『抱きしめられた!?え?なんで?』

 

「…」スンスン

 

『あ…。キョンの匂い…』

 

「…」スンスン

 

『抱きしめられながら、キョンの匂い…夢みたい』

 

「…あー。ハルヒ」スンスン

 

「何よ?」スンスン

 

「いい匂いだな」スンスン

 

「馬鹿」スンスン

 

駄目だ、もう耐えられん。すまん、ハルヒ。

 

「…」ペロペロ

 

『…え?』

 

「…」ペロペロ

 

『ペロペロ…していいんだ。キョンに』

 

「…」ペロペロ

 

「……ハルヒ」ペロペロ

 

「……キョン」ペロペロ

 

こうして、俺たちはお互いをペロペロし、クンクンし、ハムハムしあった。

 

スズミイヤーはいつの間にか外れていた。もしかしたら長門が回収したのかもしれない。

 

だがそんなことはもうどうでもよかった。なぜなら、俺たちはかけがえのない仲間を手に入れたのだから。

 

そんなふたりのペロリストが恋人になるまではまだ暫くの時間が必要なのだが、それはまた別のお話。

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