カンピオーネ~天下一の傾奇者~   作:カラミナト

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三話

堺の町は五畿七道の中で京の都のある山城国を含む畿内に位置する国のうち摂津国、河内国、和泉国の三ヵ国の境界に位置する自治都市である。

 

慶次は淀川に沿って摂津国へと辿り着いたわけだが、堺はその淀川の河口付近に位置する石山本願寺のある難波、住吉神社の位置するところよりも南にある。

 

堺の町は他とは違い商人たちの自治で成り立っている自治都市で、周りを堀で巡らしており、外敵からの攻撃に備えた防衛都市、要塞都市のような姿をしている。

 

ポルトガルの宣教師であるフランシスコ=ザビエルが来日して以降この商業都市には南蛮渡来の物産が立ち並び、そこらにいる堺の民たちとは違い異なる服装、異なる容姿をした少数の南蛮人が闊歩し、更には南蛮人たちの宗教のために建てられた異国南蛮風の南蛮寺が存在したりと堀で隔てられた向こう側はまるで異世界のようである。

そして、海を見れば大小様々な船が大阪湾に所狭しと並んおり、水運で大きな富を上げてきた淡海乃海の姿を観音寺城城下町から何度も見ている慶次でも圧倒される。

更に、一際大きく他の船とは異なる様相をしたキャラック船が停船している。

 

そんな商業の場として栄えている堺の町の商売をする者たちの喧騒が聞こえる中とある店と店の間の人が一人通れるほどの狭い小道に顔を突き合わせている二つの人影があった。

一方は男性の老人で、もう一方は二十代くらいの青年だった。

両人ともに黒髪に浅黒い褐色の肌を持っており、半身は裸で下半身は白のドウティを身に纏っている。

ここまでは同じような容姿だが、眼の色が老人の方は透き通るような碧眼で青年の方は茶色である。更に老人の方は特別に首飾りや腕輪のような様々な装身具を身に着けていた。

青年も身に着けてはいる者の老人と比べると微々たるものだ。

彼らの近くには日ノ本の袴とは違うズボンに異様な形をした襟にマント、それに帽子というこの日ノ本の衣服とは明らかに異なる異国風の衣服を着た南蛮人が二人いる。

 

普通ならば多くの人が往来するこの通りのすぐ近くで小道にひっそりと隠れるように話をしていたならばその異様な容姿と雰囲気から周りの者の目を集めるはずであるが、通りを行く者たちはちらりと見てもそこには特に注目されるべきものはないとばかりに素通りしていく。

 

見る者が見れば分かるであろう。

彼らが人々の目にその姿が止まらない程度の簡単な人払いの呪術を使用していることを。

とはいえ、呪術を操る者はアジア風のいで立ちをした二人であり、西洋の南蛮人はその限りではなくただの通訳である。

 

「分かっておるな。神具をあの者どもよりも先に見つけ出すのだ。」

 

「はい、老師様。いくらラークシャサといえども此度の件は我らバラモン教徒が授かった天啓なれば神具を見つけ出すは我らの役目。そして・・・」

 

「そうじゃ。我らがかのお方に神具をお届けするのだ。されどこれだけは覚えておえ。

確かに此度の件は我らの役目。しかし、あの者どもの力を借りねば取り戻せぬというならば仕方がない。」

 

「ッ!しかし!・・・それでは神具は・・・。」

 

先程までぼそぼそと通訳の者たちでさえも聞こえないくらいの声で話していた二人だったが、老人の言葉を聞いた青年が驚いてつい大きな声を上げてしまった。

さすがに声が大きすぎたと二人を振り向いた通訳たちを見て再び声を落として話し出す。

 

「その時は命を賭してでも我らが直にかの神にお届けするのだ。よいな。」

 

二人が真剣な顔で目を合わせて大きくしっかりと頷きあう。

 

「とはいえこれも全て神具が見つからぬでは意味がない。故にまずは神具を見つけ出すことからじゃ。

この地の呪術師にいぶかしまれずに話を聞くのが最も良いことなのじゃが・・・

まあ、まずはこの地の者に聞くとしよう。」

 

そう言って老師と呼ばれた者は一人の通訳とともにこの小道を離れていった。

この簡単な人払いの術は特定の範囲のみに働く結界であるため、その範囲外へと出た二人は先程までとは違い周囲の注目を集めた。

 

青年はそれを見てさあ行こうかとしたところである一人の人物と目線が合った。

そう。簡単な呪術とはいえ結界を通してこちらをしっかと見ているのだ。その彼は更にこちらに近づいてくるではないか。

 

呪力の及ぶものでこのような簡単な呪術だと呪術師であれば無効化することが出来る。

つまり、彼は呪術師なのだ。

 

これはちょうどよいと青年も彼のもとへと通訳を連れて歩きだした。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

近江国観音寺城の城下町から一週間ほどの時間をかけてようやくこの堺に辿り着いた。

目の前が海に面しており周囲を水堀で囲まれたこの堺の町はまるで海に浮かぶ離れ小島のようである。

 

それに目の前に浮かぶ大小様々な多くの船は壮観である。それにあの一際大きく異様な姿をして船。

 

堺の町に入ると今まで見てきたどの町とも違うその有り様は一週間かけて歩いて来るほどの価値があるものだったと体感させてくれる。

 

観音寺城の城下町とは比べほどにならないほどの店の種類の数と量、それに見たこともない煙管や銃、南蛮の衣服といった南蛮物。それになんといっても異様な姿をした南蛮人や他とは異なる南蛮風の建物。

 

見るものすべてに興味がそそられる。

 

「八幡屋」の番頭に勧められた「魚屋」の千宗易という人物に会いに行って実際に話をし、それに天竺の者についても聞いてみたいものだが、やはりこの他とは違った堺の町並みというのは旺盛な好奇心をここまでかといわんばかりに刺激してくる。

そのまま、田舎から来たお上りさんといった風に周りに見られていることに気付きながらもそれでもまだ堺の町を散策していると非常に興味深いものを発見した。

 

上半身裸で足まで届く腰布だけをまいて少しの装飾品を身に着けた異国人の青年と今まで見てきたいかにもな南蛮人が一緒になっている。

 

慶次にはその青年の姿に見覚えがあった。

あれは平成の日本にいたころ、東南アジアやインドなどの南アジアの僧侶などが身に着けていたものと似ている気がする。

そう。インドだ。

慶次が探していた天竺の者というのは、天竺というのは平成の世でいうところのインドを指すのだ。

 

南蛮人とともに天竺の者もやってきたという噂を城下町の番頭に聞いた。

それは、本当のことだったのだ。

 

見ればどうやら向こうもこちらを見ている。

これはちょうどよいと。思ったよりも早く話を聞けそうだと彼らのもとへと向かった。

 

奇しくもこの時今初めて顔を合わせたばかりの両者はともに自分たちの目的のために相手に対話を持ちかけようとしていたのである。

 

「Quero ouvir falar de um pouco mais.」

 

「少し話が聞きたい。といってます。」

 

インド人であろう青年が何語かわからないが異国語で話しかけてきた。それに続いて、南蛮人がなまりはあれど上手な日本語で話しかけてきた。

南蛮人はインド人の青年の通訳のようだ。

 

「構わない。ちょうど俺も異国の者と話をしてみたかったのでな。」

 

話し終えた後、先程青年が口にしたような異国語で南蛮人が青年に対して話しかける。

同じように通訳をしているようだ。

それを聞いた青年は少し驚きそして呆れたように言った。

 

「É um bom cara.(変なヤツだな。)」

 

「まあ、何とでも言ってくれても構わないさ。」

 

何とも失礼だが、まあ、そんなことは気にするようなことではない。

 

このまま二人は南蛮人の通訳を挟んで話し始めた。

 

「まずは自己紹介から。私はアシシュという。ムガル帝国から来た。」

 

「ムガル帝国?何処だ、そこは。」

 

そんな国なぞ聞いたことのなかった慶次は尋ね返した。平成の世でも聞いたこのないような国名だった。

その後アシシュは地面に何か絵を描き始めた。少し歪ではあるが簡単な世界地図を描いているようだ。そして、彼は自分で描いた世界地図のうちある一点を指した。

インドだった。

 

「なるほど。天竺か。」

 

「”テンジク”?」

 

「そう。唐やこの国では昔からそのように呼ばれているんだ。

そうか、やはり天竺の者だったか。

失礼。俺は前田慶次だ。慶次と呼んでくれ。」

 

簡単に前置きが終わると本題に入った。アシシュはただ異国の者と話したかっただけの毛時とは違ってちゃんとした用があって話しかけてきたのだ。

話をするにあたって人の往来の真ん中にいたために場所を変えようといって先程アシシュがいた場所へと向かう。

 

その場所はアシシュの師である老師が簡単な人払いの結界があったのだがそれはとっくに消えていた。

 

呪術師ならばある程度のそれこそ低位の呪術に抵抗する体質がある。とはいえ、慶次に関しては魔術自体を受け付けないという神殺しならではの特性とさらに高い直観力をも持っているためアシシュの呪術が慶次には効かなかったのだが。

 

「さて、ここから本題だ。

“円環”で思い付く伝承や逸話のある道具を知らないだろうか?」

 

「・・・どういうことだ。」

 

アシシュのその言い方に違和感を感じた。まるで何かを隠すような。そう、まるでこちらには知られたくないことを聞いているのだといったような感じだった。

 

アシシュは最初の一言で不信感を持たれるという大失態を犯してしまい、さすがに呪術師相手に聞くというのは危険すぎただろうかと思いつつも、慶次が羅刹王とは知らずに疑念を拭い去ろうと手を尽くした。

 

「私たちは自国の歴史を調べる学者だ。そこで、ここにおられるようなポルトガル人の方にお願いしてこの日ノ本までやってきたのだ。

この日ノ本に大昔に我らの国から流れてきた物があるというんだ。

私たちはそれを探している。」

 

「なるほど”国学者”というやつか。」

 

羅刹王の単純な思考は態々日本までやってきた異国の歴史学者に向いたようだ。

国学者などという江戸時代に入ってから出てくる学問のことを説明するために少々時間がかかったが。

 

「それでその学者さんは大昔の秘宝ってやつを調べに来たらしいが、こういっちゃ悪いが無理だと思うぞ。

そういうものは大体大切に保管されてて庶民もだが南蛮人ともなれば見せてくれるはずがない。

それとも、それを盗むために態々海を越えてこの地まで来たのか?」

 

アシシュはいきなり核心を突かれてしまった。

そう。彼らは盗む気なのだ。

この国のどこかに安置されているであろう神具の類を。

それを欲する彼らの主のもとへと届けるために。

 

神具。

それは神の武器、あるいは天上の叡智や聖なる呪術の法則を刻み付けた魔導書のようなもので、取り扱いが非常に難しくとも学術や資料、儀式的にも高い価値のある代物だ。

それは国にあっては基本遺跡や地下など前人未到の地にあるようなもの以外は大切に保管されている場合が多い。

 

ただでさえその国において最も重要なものと見てもいいような代物なのだ。もちろんそう簡単に手に入れられるなどとは考えてはいない。

ただでさえいまだにその神具の在り処さえ分かっていないのだ。

 

「いえ、違います。

私たちは調べるために来たんです。それが無理なら書物で我慢します。」

 

「・・・まあ、いいか。それで学者さんたちは何を調べに来たんだって?」

 

「言い伝えでは円環状のものと言われています。それは、天空の、日月の象徴、であるのだとか。」

 

「俺が知っているのは陰陽の太極図だな。」

 

どうせだから協力してもいいかと思いアシシュの問いに答えて陰陽の太極図を地面に描く。

太極図についてはよくは知らないが確かその図は白と黒の異なる色の勾玉が二つ重なって円を描いたもので、陰は月を、陽は太陽を表したものであったはずだ。

 

それをその図を示しながら慶次は自分が知っていることだけを教えていく。

 

「俺が知っているのはこれくらいだな。あとは自分で調べるなり他の人に教えてもらうなりすればいい。」

 

「ええ、ありがとうございました。」

 

そう言ってアシシュは通訳の南蛮人を連れて去っていった。

 

 

「・・・まさか、本当に天竺の者に会えるとは思わなかったが異国の呪術師に会えるとも思わなかったな。」

 

慶次は相手が呪術師であると知っていながら会話をしていた。

それはただ、異国人を、異国の呪術師を知りたいがためただそれだけである。

 

異国のそれも少しでも呪術に触れることが出来た慶次は遠目から見ても分かるほどに何とも嬉しそうな顔で再び町の店や露天などを見ながらその途中で道筋を教えてもらい千宗易に会いに「魚屋」へと向かうのだった。

 

先程会った南蛮人と共に船にのってやって来た天竺の者についての詳しい情報を得るために。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

堺は自治都市である。武力でではないものの力で押さえ込むことの難しい都市としてこの小さな町の存在は非常に大きいのだ。

この堺は、会合衆という堺の有力商人で構成された自治の指導的役割を果たす評定組織によって成り立っている。更にこの会合衆は数は36人おり、その中でもとりわけ有力な10人の納屋衆によって構成されている。

つまり、この小さくも大きな堺の町は10人の上役と26人の中間管理職のような感じで成立しているのである。

 

そして、今目の前にある「魚屋」。

ここの旦那は千宗易という納屋衆に名を連ねるれっきとした堺の商人なのだ。

しかも、千宗易。彼は後の千利休。

茶道で有名な織田信長や豊臣秀吉何かとも親しくなる予定の人物である。

 

まあ、それはそれとして今回は最近来た南蛮人と渡りを付けてくれるかもしれない「魚屋」の旦那千宗易に会いに来たのだ。

 

この「魚屋」は堺有数の大商人の店であるにも関わらず間口は確かに城下町の「八幡屋」に比べて大きいものの予想よりは大きくなかった。さらに、店先に出ている商品の品数は豊富なのだろうが量はそんなに多くはなかった。

 

恐らくは店の奥のここからでは見えない場所かどこかの倉庫に商品の数々は保管されているのかもしれない。

「魚屋」は納屋(倉庫業)なのだ。

 

「何か御用でもおありでしょうか。」

 

店に並ぶ品々を見たり、考え事などをしていたところこの店の番頭らしき人物が尋ねてきた。

 

何やら困った客を見つけて対応に困っていますといった風な顔をしている。

 

ああ、やはりこの着流し姿はおかしいのか。

動きやすいから袴を着ていないだけなんだけどな。

 

「ここの千宗易殿に用があって来た。

一応、知り合いの商人から紹介状を貰ってきている。」

 

そう言って懐に入れてあった一枚の書状を番頭に渡す。

彼は意外そうな顔をして差し出された書状を受け取り、失礼しますと言って足早に奥の方へとさがっていった。

 

そして、しばらくして番頭はゆったりと落ち着いた色の羽織を着た壮年の男性を連れて戻ってきた。

恐らく彼が千宗易なのだろう。

 

「あんさんが傾奇者ですか。確かに、その奇抜な服装はなかなか見ることのない着こなし方ですな。」

 

「そうみたいだな。」

 

書状にそう書いってあったかはたまたそこにいる番頭がいったのかは分からないがどうやら傾奇者というのは自分名称として確立しつつあるようだ。

 

「観音寺城のあやつからの書状は読ませてもらいました。しかし、その話はお聞きできまへんな。」

 

独特の訛りのある話し方でこちらの話を拒否してきた。

 

「理由は?」

 

「うちの取引相手としかも南蛮の商人の方とただ異国の話を聞いてみたいという理由だけでは許可できまへん。」

 

そうか。やはりそう簡単にはいかないか。

しかし、天竺の者を連れてきた南蛮人には彼らのことについて詳しく聞きたいのだ。

一体どうすれば会えるだろうか。

 

いや、この手を使えばもしや・・・

 

「ならばその南蛮人に言ってくれないか。」

 

不適な笑みを浮かべて千宗易に言った。

 

「この国の王がエピメテウスの落とし子が話を聞きたがっていると。内密にな。」

 

天竺から態態やってきたアシシュは呪術師だった。そして、今回南蛮船が堺までやってきたのが呪術に関係しているというのならばもしかしたら南蛮人の中にも呪術師やそれに関わりのある者たちがいるかもしれない。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

今、南蛮船の中にいる。

千宗易に会ったのは前日の夕方近くだった。そして今はその次の日の昼だ。

何故こんな急展開になったのか。

それは、単純に南蛮船内に呪術に関わりのあるものがいたためだ。

それも全員。そう乗組員全員が関係者だった。

 

神殺しという呪術師の王が自分達に会いたがっているということをなにも知らない「魚屋」の丁稚が南蛮人たちに伝え終えたあとは大騒ぎだった。

 

まず最初に宿を未だとっていないということを知った船長は堺の中でも高額の上等な宿を手配して「魚屋」の丁稚を通して慶次に対して今夜はそこに泊まってほしいということを伝えた。

 

これには千宗易は非常に驚いていた。

まるで庶民である商人が帝や親王、天上人である公家に対して行うような対応の仕方だ。

 

問いただしたいみたいだったが、あまり深入りするような事柄でないと商人の勘が働いたのかこれ以上執拗に聞くことはなかった。

 

さて、随分と上等な宿で目を覚ました今日。

昨日の時点で、昼に一緒にランチをとりながらはなしをすることになった。

恐らくは昨夜はディナーは準備が間に合わなかったために次点の翌日の昼食の時間ということになったのだろう。

 

今、場所は南蛮船の内部の手狭だが応接間にてこのランチをキャラック船の船長と共に食べている。

 

この時代に流れ着いて今まで見てきた食べることのできなかった油で揚げられた魚や香辛料のきいた野菜や肉などの食材の数々、そして南蛮人の主食であるパン。

 

どれもこれも食べたことのある料理のどれかに近い食べ物であったので違和感なく食べることができた。

 

「お味の方はいかがでしたか。」

 

「ああ、大満足だ。」

 

それは良かったと船長はポルトガル語で返す。

つい先程、船長との挨拶で気付いたのだが、羅刹王は異国語を随分と早く理解することが出来るらしい。

ポルトガル語を話すアシシュと通訳を置いてとは言え長いこと会話をしたためだろう。

お陰で今、普通にポルトガル語を理解し、そして話すことが出来る。

 

「さて、俺が聞きたいのはあんたがムガル帝国とやらから連れてきた者たちのことだ。

彼らは何をしに来た。そして、何故この船の乗組員は呪術を知るものしかいないんだ。」

 

今回の天竺の者たちの行動の核心をつくような質問だった。

しかし、

 

「申し訳ありません。私は今回のことについて特に何も聞かされていないのです。

この船の船長には呪術を知るものだからと選ばれただけでラークシャサからは六人のムガル帝国人を日ノ本の堺まで送ればよいとだけ言われたのです。」

 

「ん?ラークシャサってのは何なんだ。」

 

「前田様のような神殺しの偉業を成し遂げたお方のことです。」

 

つまり、天竺には同類が存在し、今回の神具を求める騒動の根本にその神殺しがいるということなのだろう。

 

「私が小耳にはさんだ程度であれば、その六人はこの国の神具を主の元へと持って帰るのだとか。

どうもラークシャサは神具を集めるのが趣味だそうで。」

 

言い話が聞けた。

要するに、天竺のラークシャサが六人に命じて神具を持って帰ってくるように言ったのだろう。

 

「なるほど。よく分かった。」

 

「最後に一つ。

俺が神殺しであるということは誰にも話すな。と、これは最初に「魚屋」の聞いたはずだ。

特にこの日ノ本のそして天竺ムガル帝国の者には決して話すな。」

 

ばれると後々面倒になるため釘を刺しておいた。

その後も色々と話を聞いた。

今回の南蛮船の堺への停戦は南蛮人つまりポルトガル人が中国大陸のマカオを手に入れたため、日本と中国との間で中継貿易が出来るようになったためでもあるという。

 

堺での当初の目標は達成したものの慶次の興味の種はまだ尽きない。

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