魔法科高校の守護鴉   作:ポテチ096

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旧版二話 書き直し中です


旧二話

学校から帰宅した美沙斗は依頼主のもとへ連絡を入れた。

『おや鴉殿、次の連絡は週末だと聞いておりますが』

彼は依頼主に使える執事。依頼主へ直接連絡する手段もあるのだが、緊急の場合以外は彼に取り次いでもらうことになっている。

今回は依頼主ではなく彼と話せれば十分だったのでそのまま会話を続けた。

「今日は別件です」

今日起きた程度のことなら後日の報告で問題ない、美沙斗が連絡したのは依頼主の力を借りたいと思ったからだった。

『と言いますと?』

「数名の身元調査をお願いしたい」

今日までに司波達也と仲良くなったクラスメイト、

西城レオンハルト

柴田美月

千葉エリカ

以上三名が彼に近づいたことに裏がないか、念のため確認しておきたいのだ。

「十中八九問題ないとは思いますが、万全を期したいので」

『かしこまりました。明日の夜には結果をご報告いたします』

「お願いします」

 

通話を終えた美沙斗は普段着に着替え、人を訪ねる為に部屋を後にした。

向かう先はとある寺、そこの主に会うのが目的である。

できることなら関わりたくない面倒な相手なのだが、この街で仕事を行う以上、挨拶くらいしておかないと厄介なことになるのは目に見えていたので、渋々ではあるがそう決断せざるをえなかった。

「失礼、どなたかいませんか?」

「はい、何かご用でしょうか?」

寺の門の前から呼び掛けると、ここの門下生とおぼしき人物がすぐに出迎えてくれた。

「九重先生にお会いしたい。『鴉』が来たと伝えてもらえばわかる筈です」

「かしこまりました、少々お待ちを」

彼の言葉に了解の意を表すために頷こうとした時、不意に美沙斗を違和感が襲う。

ここには彼女を含めて二人しかいない筈なのに、三人目の気配が感じらるような気がしたのだ。

感覚を研ぎ澄ます美沙斗、すると踵を返して主を呼びに行こうとした男の後ろに人がいることを認識することができた。

「お待ちを。どうやら呼びに行ってもらう必要はないみたいです」

「それはどういう……」

美沙斗が困惑している彼の後ろを指差すと、彼はその先を見て驚きとともに美沙斗の言葉を理解するに至った。

「やあ、お久しぶり」

そこに立っていたのはこの寺の主、九重八雲だった。

「来たことに気付かれていましたか、流石ですね。ただ、お弟子さんをからかうのはほどほどに」

「これも修行の一環さ。君、指摘される前に気付けるよう精進しなさい」

「は、はい」

師に己の未熟を指摘された弟子は冷や汗を流しながら恐縮して返答したが、彼を実力不足で責めるのは酷であろう。

九重八雲の本気の隠行を見破れる者など世界中を探してもそうはいないのだ、その事を知っている美沙斗は苦笑しながら彼らのやりとりを見守っていた。

「では鴉殿、話は奥でしよう。ついてきてくもらえるかい」

「わかりました」

 

「事情はわかった。不利益を被らない限りは不干渉の立場でいることを約束するよ」

詳細を伏せた説明で納得してもらえるか不安だったが、すんなり成功したことに美沙斗は胸をなで下ろした。

彼のお膝元であるこの街で活動するにあたって、万が一敵に回してしまっては仕事がやり辛いことこの上ない、それを回避できたことは上々の戦果である。

「しかし、くくっ」

不意に八雲が笑い出す。

「何か?」

「泣く子も黙る鴉殿が高校生のコスプレをしてお仕事とは。笑うのを堪えろと言われても無理というものさ」

「自覚はしてるので、言わないでいただけるとありがたい」

からかわれたのは依頼主に続いて二度目であるが、やはり恥ずかしく思う美沙斗。

「いやいやすまない。だが今の姿を見る限り、若い子に混じっても違和感はなさそうだね」

現在美沙斗が着ているのは普段着、と言っても彼女が通常着用しているものではなく、依頼主がが用意したいわゆるイマドキの高校生といった感じのものだ。

本人こそ似合わないのでバレるのではと思っているが、説明されない限り美沙斗が高校生ではないと気付く者はいないだろう、彼女の姿はそれほど自然に仕上がっていた。

「これは是非制服姿も見てみ……」

「先生?」

美沙斗が軽く微笑んだ刹那、八雲を刺すような殺気が襲う。

それは冗談に対する戯れの報復だと理解していてもなお、向けられた者が死を想起せざるを得ないほどの濃密なものであった。

「私にも羞恥心がありますので、ほどほどにして下さい」

「ははは、すまないすまない」

辛うじて乾いた笑みを浮かべた八雲は、今後彼女をからかい過ぎないように気を付けようと固く心に誓った。

 

翌日の昼休み、食堂へ行こうと思って教室を出た美沙斗は、友人たちと別れて一人で何処かへ向かう司波達也の姿を見かけた。

気になって後をつけてみると行き先は生徒会室で、彼は途中で合流した妹と共に中へと入っていった。

何の用事で訪ねたのかという疑問は浮かんだが、中の様子を調べるにはどうしても失敗のリスクが伴う。

どうするか迷ったものの、デメリットを考えてそこまでの危険を犯すべきではないと判断した美沙斗は、その場を離れて元の予定通り食堂へ行くことにした。

 

注文した食事を受け取った美沙斗は辺りを見渡して空いている席がないか探したが、かなり混雑していて見つけることはできなかった。

とはいえ出遅れてしまった時点でこの結果は予想できていたので、しばらく待てばいいと諦めかけたその時、

「ひょっとして座る場所が見つからないんですか?」

見覚えのある少女から声をかけられた。

彼女の名は柴田美月、司波達也が入学後に親しくなった人物のうちの一人である。

「君は確か……同じクラスの柴田さん」

実際はよく知っているもののクラスが同じというだけで言葉を交わしたこともないため、かろうじて覚えている程度を装うのが自然だと美沙斗は判断した。

「はい、柴田美月です。名前、知っていてくれたんですね」

「名字だけはなんとかクラス全員分覚えたものでね。それで私に何か用でも?」

「よかったらなんですけど、私たちと一緒に食べませんか?友達が四人用のテーブルで場所とりをしてくれてるんですけど、一人分空きがあるんです」

どうやら困っているのを見かねて助け船を出してくれたようだ。

予想外の誘いに一瞬躊躇した美沙斗だったが、せっかくの好意を無下にする理由もないので素直に甘えることにした。

「助かるけどいいのかい?親しい友人同士での楽しい一時に私なんかがお邪魔してしまって」

「邪魔だなんて私もあとの二人も思ったりしませんから、遠慮しないでください」

「それなら喜んでご相伴に預からせてもらうよ」

「では、席まで案内しますね」

そうして美月に連れられて行った先に居たのは、彼女と時を同じくして司波達也の友人となった西城レオンハルトと千葉エリカであった。

「遅かったわね、美月。あれ、その人は?」

「席が見つからなくて困ってたから誘ったんだけど、よかったよね?」

「ええ、構わないわ」

「西城君は?」

「もちろんいいとも」

「二人ともありがとう。遠慮なくご一緒させてもらうよ」

美月がエリカの隣に座ったので美沙斗は自然とレオの隣に座ることとなった。

「ん?あなたひょっとして同じクラスだったりする?」

「ああ。佐藤美沙斗だ、よろしく」

今回使っている偽名を美沙斗は名乗った。

「私は千葉エリカ、よろしくね」

「お前クラスメイトだって気付いてなかったのかよ……俺は西城レオンハルトだ。レオって呼んでくれ」

「よろしく、レオ」

「お、おう」

挨拶を交わす時にレオと目があったのだが、何故かすぐに反らされてしまったことを不思議がる美沙斗。

しかしエリカには理由がわかったらしく、レオの方を見ながらニヤニヤと笑っていた。

「あらあら」

「なんだよ、その気持ち悪い表情は」

「気にしないで、あんたが照れて顔を赤くしてるのが面白いなんてこれっぽっちもおもってないから」

「ちっ、相変わらず性格悪いな」

「もう、二人ともすぐ喧嘩しないで」

軽口を叩き合う二人と、苦笑しながら嗜める美月。

三人の間に良好な関係が築かれていることがはっきりと見てとれるやりとりだった。

「三人とも仲がいいんだね」

「ちょっと美沙斗、確かにあたしと美月は前からの付き合いで仲がいいけど、そこの男とはまったくこれっぽっちも親しくなった覚えないわよ」

「そうだぞ佐藤、柴田とはともかくコイツと仲がいいなんて言われたら気持ち悪くて食欲なくなるからやめてくれ」

「なによ」

「なんだよ」

「「ふんっ!」」

二人の言葉だけで判断するとまさに犬猿の仲といった感じなのだが、険悪さは感じられずにむしろ微笑ましいくらいだった。

それを見ていた美沙斗の頭の中に、ふと以前依頼主から教えてもらった言葉が思い浮かぶ。

「柴田さん、この二人はいわゆる『つんでれ』という奴なのかな?」

「はい、その通りです」

「「違うわ!」」

「やっぱり仲良いじゃない」

息ぴったりのところを見せた二人をからかいながら、その後も三人と楽しい時間を過ごした美沙斗だった。

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