咲-Saki-もし1年後に夢乃マホが飛び級して清澄高校に入学したら   作:神奈木直人

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第41話《阿知賀編③》長野②

阿知賀女子麻雀部顧問の赤土晴絵が先鋒の牌譜を見ていた。

(やっぱり、冬室氷華はとんでもなかったな。この実力なら直ぐにでもプロになれそうな実力だけど、これからどうなるのか期待だな。)

そう考えていると、灼が次鋒戦を始めようとしていた。

「あっ、灼!ちょっと待って。」

「えっ?ハルちゃんどうしたの?」

「次鋒戦、鶴賀の妹尾さんには注意してね。」

「えっ、妹尾さん?・・・分かった。頑張ってみる。」

「よしっ、行ってこい!」

「うん。」

~場決め結果~

妹尾佳織:東

吉留未春:南

鷺森灼:西

沢村智紀:北

 

~東一局~ 親:妹尾佳織

風越 285400

鶴賀 60900

龍門渕 29700

阿知賀 24000

(ハルちゃんに妹尾さんを注意しろって言われたけど、何を注意すれば・・・去年打った時は一度だけ役満を和了ってたけど、それを注意するの?出るかどうかも分からない役満を?でも、ハルちゃんの言う事は絶対!)

(取り敢えず親番だし、一回使っちゃおう。)

ゾクッ

(!?これが、妹尾佳織の・・・灼、頑張れ!)

~8巡目~

(鶴賀の妹尾さん、絶対私を狙ってるだろうな。まぁでも、いきなり役満は無いはず。それにまだ8巡目だしね。行っちゃおうか!)

「リーチ。」

「それ、ロンです。」

(うっ、まさか・・・)

「国士無双、48000です。」

(いきなり国士無双!?)

(ハルちゃんが注意しろって言ってたのはこれだったんだ・・・)

「一本場です。」

~東一局一本場~ 親:妹尾佳織

風越 237400

鶴賀 108900

龍門渕 29700

阿知賀 24000

~9巡目~

(さっきの妹尾さんの一撃、私にやられたらうちが飛んで終わっちゃう。それだけは防がなきゃ!)

「リーチ!」

(鷺森さんがリーチを掛けてきた。ならここはオリで・・・)

(一発消ししておこうかな。)

「チー。」

(一発消された、それでも、私は和了る!)

「ツモ!リーチツモ平和一通。2100・4100!」

(筒子多めの手牌、データ通り。)

(私だったら染めちゃいそうな手だな。)

(もしかして、私の役満を警戒してる・・・?)

~東二局~ 親:吉留未春

風越 235300

鶴賀 104800

阿知賀 32300

龍門渕 27600

~7巡目~

「リーチ!」

(また阿知賀!?この人、凄い・・・)

(またやられる・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ清一。4000・8000!」

(今回は染めてきた。)

(親被りで8000マイナスか、これ、ヤバいかもな・・・)

(これで、親の役満を喰らっても耐えられる。これならまだ戦える。)

(やっぱり、私の役満を警戒してる?)

~東三局~ 親:鷺森灼

風越 227300

鶴賀 100800

阿知賀 48300

龍門渕 23600

(このまま連荘する!)

~9巡目~

(なんだか調子いい感じ、これなら行ける!)

「リーチ!」

(また・・・)

「ロン。7700。」

「えっ・・・」

灼が捨てた牌で和了したのは、龍門渕高校の沢村智紀だった。

(この人、聴牌気配を感じなかった。やっぱり強敵・・・)

~東四局~ 親:沢村智紀

風越 227300

鶴賀 100800

阿知賀 40600

龍門渕 31300

~11巡目~

(やっと聴牌、まだ鶴賀との点差は6万、ここは攻める!)

「リーチ!」

(また阿知賀のリーチ、速くて追い付けない・・・)

(取り敢えずオリで・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ混一。3000・6000!」

「おぉ、やるなー鶴賀の次鋒。」

「ちょっ、真紀!先輩なんですからもう少し言葉遣いを気を付けて下さい。」

「別に、問題無い。」

「一葉が堅すぎるんだよ。」

「私が悪いんですか~!?」

「一葉、試合中だからちょっと静かに。」

(誰のせいだと思ってるんですか!)

「・・・分かりました。」

~南一局~ 親:妹尾佳織

風越 224300

鶴賀 97800

阿知賀 52600

龍門渕 25300

(親番だし、もう一回使っちゃおう!)

(なっ!?妹尾さんの配牌、凄すぎる!)

(去年は偶然って感じだったけど、今は意図的にやってない?これ・・・)

~6巡目~

(いい感じの聴牌、このまま稼ぐ!)

「リーチ!」

「ロンです。大三元。48000です。」

「・・・は?」

佳織の役満は、風越ではなく、灼に直撃した。

(私じゃなくて阿知賀を狙い撃ち!?どういう事なの?)

(これは予想外・・・)

(しかもこれ、直前に58ピン待ちから2萬の単騎待ちに変えてる。もしかして、意図的に私を狙い撃ちした・・・?)

(妹尾先輩がそんな酷い事するか?)

(妹尾先輩はこんな弱い者いじめみたいな事する人だとは思えません。これは、何か裏がありそうですね。)

~南一局一本場~ 親:妹尾佳織

風越 224300

鶴賀 145800

龍門渕 25300

阿知賀 4600

(この点数は流石にヤバい。取り戻さないと!)

~9巡目~

(聴牌した、けど、ここでリーチ掛けたら3600点になる。3900直撃で負けちゃう。なら、ダマで・・・)

~13巡目~

「ツモ。平和一通、1400・2700。」

(和了られた・・・)

(よしっ、取り敢えず和了れた!このまま頑張れ!)

(部長さん、踏ん張って下さい!)

~南二局~ 親:吉留未春

風越 222900

鶴賀 143100

龍門渕 23900

阿知賀 10100

~10巡目~

(やっと聴牌出来た。かなり削られたから、稼がないと。)

「リーチ。」

「ロン!3900。」

吉留未春が出した牌を灼が和了った。

(灼さんがまた和了った!)

(灼、頼れる部長って感じだな。)

(まだまだ、諦める訳にはいかない!次の親番で連荘する!)

~南三局~ 親:鷺森灼

風越 219000

鶴賀 143100

龍門渕 23900

阿知賀 14000

~7巡目~

(よしっ、牌も乗ってきた。これを和了って連荘する!)

「リーチ!」

「ロンです。清一。12000です。」

(妹尾さん!?)

(また妹尾さん!?この人、役満だけじゃないんだ・・・)

(これは、あたしの妹尾先輩強化レッスンが功を成したのかもしれないな。)

(また、またやられた・・・今度は、残り2000・・・)

(これは、厳しすぎやしないか・・・)

~南四局~ 親:沢村智紀

風越 219000

鶴賀 155100

龍門渕 23900

阿知賀 2000

(こんなの、もう嫌・・・頑張って稼いでも、全部妹尾さんに持っていかれる・・・もう、どうすれば・・・)

~8巡目~

(ツモった。だけど、これだとそんなに高くないし、いくら白が強いとはいえ、流石にこの点数は厳しいかも。でも、ここで和了らなきゃ飛ばされるかもしれない。なら・・・)

「・・・ツモ。1000・2000です。」

「これで、終わりですね。」

「お疲れ様、でした・・・」

 

~次鋒戦結果~

風越 218000

鶴賀 154100

龍門渕 21900

阿知賀 6000

 

 

次鋒戦が終わり、佳織が灼に近付いた。

「あの、鷺森さん、その、ごめんなさい。」

「そんな、謝罪するんだったら何であんな事したんですか!」

(灼さん・・・)

「灼、妹尾さんがわざとやったとは限らないんだから、そこで怒るのはお門違いだよ。」

「ハルちゃん・・・でも!この人は」

「灼!あんたが妹尾さんの和了りを止められなかったのが悪いんでしょ?妹尾さんは何の罪もない。たとえ灼の事を一方的に狙っていたとしても、それはあんたが止めればこんな事にはならなかった。それを怒るのは、子供のやる事だよ。」

「・・・はい。すいませんでした、妹尾さん。」

「いえ、こちらこそ、すみません。」

「因みに、うちを飛ばそうとしたのは、鶴賀の作戦だったんですか?」

「え、いえ、そんな作戦は無いです。」

「風越を上回ってるならまだしも、下回ってるのにそんな事しないでしょ。」

「じゃあ、どうして灼に直撃してたの?」

「ええっと、それは・・・」

「あぁ、ごめんね、怒ってる訳じゃないよ。ただ聞いてみたかっただけだから。」

「ええっと・・・」

「私が妹尾さんに示唆しました。」

晴絵の後ろからそんな声が聞こえてきた。振り向くとその声の主は少し手を挙げていた。

「冬室さん?」

「えっ、どういう事?」

 

 

~先鋒戦開始前~

「妹尾さん、ちょっと良いですか?」

「わっ、冬室さん?どうしたんですか?」

「ちょっと、お手洗いの場所が分からないので教えて頂けませんか?」

「えっ、それなら龍門渕さんに聞いた方が良いんじゃ・・・」

「あの人達は・・・今、団体戦の準備をしているので。ごめんなさい、急いでいて速く行きたいのでお願いします。」

「わ、分かりました。行きましょう!」

氷華と佳織が少し歩くと、突然氷華が止まった。佳織がそれに気付いて足を止める。

「どうしたんですか?冬室さん。お手洗いはあっちですよ?」

「それはもう良いです。実は、妹尾さんに折り入って話があったんです。」

「えっ、じゃあ、お手洗いに行きたいっていうのは?」

「今は全然大丈夫です。」

「そうだったんだ、だから龍門渕さん達じゃなくて私に・・・」

「はい。」

「分かりました。お話とは何ですか?」

「次鋒戦で、妹尾さんは阿知賀女子をトビ終了しない程度に潰して欲しいんです。」

「えっ!?どうしてですか?」

「これは阿知賀女子の為の合同練習です。厳しくした方が阿知賀女子の為になるでしょう。」

「でも私、そんな酷い事できるかな・・・?」

「そうですか。ですが、阿知賀を潰して欲しい理由はそれだけではありません。阿知賀女子の中堅の天理白、彼女は去年私が優勝したインターミドルで4位だった人です。私と比べた幾らか劣りますけど、かなり強いとは思います。白さんを自由にさせない為にも、次鋒戦で削っておくのが得策だと私は思いますけどね。」

「そ、そうですか。えっと、それなら、頑張ってみます。」

「ありがとうございます。では戻りましょうか。」

「そうですね。あっ、帰り道は分かりますか?分からないならまた案内を・・・」

「大丈夫です。さっきのは妹尾さんを呼び出す口実でしかないので。」

「そうですか。なら良かった。」

「じゃあ、戻りましょう。」

「はい。」

 

 

~現在~

氷華が佳織に指示をしていた事を公表した。

「そんな・・・何で、そんな事・・・」

(そういえば、試合始まる前に冬室氷華がこそこそしてたな。まったく、姉妹揃って性格悪ぃな。)

「なんで、なんでそんな酷い指示出したんですか!」

(灼ちゃん、泣いてる・・・)

(部長さん・・・)

「灼、止めなさい。」

「だって!」

「灼、同じ事を言わせないで。冬室さんは、確かに普通だったらしちゃいけない指示をしていたかもしれない。けど、それは止められなかった灼が悪いんだ。冬室さんが直接悪い訳じゃない。」

「そう、だけど・・・」

「そうですよ。それに、これは阿知賀女子の為なんですよ?貴女方が成長する為に不利にして簡単には勝てないようにしたんです。」

「そんな、部長さんが泣く程不利にする事のどこが成長に繋がるんですか!」

(白・・・)

(白ちゃん・・・)

「止められなかったのも、泣いているのも全て自分のせいでしょう。私に責められても困ります。」

「失望しました。冬室氷華、貴女だけは絶対に許さない!」

「別に、許されようが許されまいがどうでも良いです。そういえば、貴方は開始前に私に強さを見せつけると言ってましたよね?では見せて下さい。この点差をひっくり返す事が出来るなら、実力を認めましょう。」

「分かりましたよ。貴女の口車に乗ってやりますよ!」

「それは楽しみです。」

「部長さん、あたしに任せて下さい。絶対にこの敵は取ってきますから!」

「白・・・ありがとう。」

「あたしに任せて下さい!」

「うん、期待してる。」

泣いていた灼から少し笑みがこぼれる。

「やっぱり、泣いているよりも笑っている方が可愛いですよ、部長さん。」

「えっ、ちょっ、何言って・・・」

(へぇ~、まさか白・・・)

「じゃ、行ってきます。」

「白、頑張って!」

「任せて下さい。絶対に勝ちます。」

白が席に着いた。

(冬室氷華、貴女はきっとあたし達を潰そうとした事を後悔する。今度はあたしが風越をぶっ潰す番!やってやる!)

中堅戦が、始まる。




書いてる時は特に何も感じなかったのですが、誤字脱字チェックしてたら『これ、まるでライ○ーゲームじゃん!』って思ってしまいました。
そして、申し訳ありませんが、来週は諸事情の為お休みさせて頂きます。

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