咲-Saki-もし1年後に夢乃マホが飛び級して清澄高校に入学したら 作:神奈木直人
先鋒前半戦が終わり、休憩時間となったが、各校の先鋒選手は誰も移動せずに座ったままだった。
(いやぁ、私がこんな差を付けられて前半戦を折り返すとは思わなかったよ。流石は臨海のエースだね。)
「いやぁ、こんなに負けるとは思いもよりませんでしたよ。凄いですね。四季縁さん。」
「それはどうも。それにしても余裕そうな顔をしていますね。西園寺麻衣さん。」
「そうですか?そんな事無いと思いますけど。」
「まぁ、そうでしょうね。今回の決勝戦で勝つのはほぼ確実に私達臨海女子ですから。」
「・・・へぇ、随分と自信がお有りのようで。寝言は寝て言って貰えますか?」
「ふふ、やっと本音がお目見えしたな。それに、寝言なんかじゃないよ。この決勝戦は清澄にも白糸台にも、勿論阿知賀にも負ける気がしない。」
「へぇ、そりゃあ楽しみですね。」
「で、でも、清澄にはマホちゃんも咲ちゃんもいるじょ!あの二人はそう簡単には勝てないじぇ!」
「確かに、夢乃マホは怖いな。だが、宮永咲は本当に強いのか?」
「当然だじぇ!咲ちゃんならきっと決勝の為に何か凄いのを残してそうだじぇ!」
「そうか、でもそれをしているのは清澄だけではない。うちのシアンも準決勝以上のとてつもない物を残しているよ。」
「知ってるじょ。マホちゃんが言ってたじぇ。」
「何?どういう事だ?」
「あー、もしかして開会式になんか違和感があったのってあいつが原因だったんですね。」
(あいつ・・・やはりシアンの言っていた通り夢乃マホと西園寺麻衣は何か争いがあったみたいだな。)
「言われてみれば確かに開会式で違和感があったな。もしかして夢乃マホはその時に出場選手全員を見透かしていたという事か?」
「そういう事だじぇ。」
「成る程、本当に面白い事をしますね、夢乃マホは。それにしても四季縁さん、浅はかな発言は控えて貰いたいですね。我々白糸台もベストメンバーですよ。臨海ごとき余裕で倒せるくらいに。」
「ほう、エースである西園寺麻衣がこのような結果に終わっているのにか?」
「ふふふ、貴女は何も分かってないですね。ここからですよ。私の恐ろしさを身をもって体験させてあげますよ!」
「そうか、それは楽しみだな。」
「余裕でいられるのも今の内ですよ。」
「そうか、それにしても、こんな話をしたところで机上の空論に過ぎないな。」
「対局は机上で行われますけどね。」
「中々上手い事を言うじゃないか。」
「ありがとうございます。」
「ふふ、さて、では机上の対局を始めようか。」
「そうですね。楽しい対局にしましょうね。」
『さぁ、休憩が終わり先鋒後半戦が始まります!小鍛冶プロ、前半戦の批評をお願いします!』
『批評ですか・・・そうですね、始まる前は白糸台が優勢かと思いましたけど、臨海が予想以上に強かったですね。それに、四季選手が和了れない東四局では西園寺選手ではなく片岡選手が和了ってましたからね。清澄高校も東場ならチャンスはあるかもしれませんね。しかし、阿知賀女子は今の所は目立った活躍は無いですね。決勝戦では全然和了れない人はどんどん凹んでいってどんどん離されてしまいますからね。阿知賀女子は厳しい立ち上がりですね。』
『批評のはずがいつの間にか批判になってしまった小鍛冶プロでした~。』
『えぇ!?何その言い方!別に批判なんかしてないのに!』
『はいはい、天然なのは分かったから。』
『天然でもない!』
『はいはい、じゃあ後半戦開始します!』
『もぉ~!』
~場決め結果~
片岡優希:東
松実玄:南
四季縁:西
西園寺麻衣:北
~東一局~ 親:片岡優希
臨海 153600
白糸台 123400
清澄 71000
阿知賀 57000
(まずは和了るか。)
~4巡目~
「ツモ。タンヤオ清一ツモ。4000・8000。」
(うわぁ、いきなり倍満和了ってきたか。まぁでも、一応8000は和了れるけどね。)
(やっぱり、こいつ強いじぇ・・・東場でも全然勝てる気がしないじょ・・・)
『最初に和了ったのはやはり四季選手でした!』
『やはり実力では彼女が一番上を行っていますね。しかし、この後に西園寺選手がどう動くかですね。特に西園寺選手の親番は。』
『小鍛冶プロが意味深な発言をしています!果たしてその真意は何なのか!』
『私の事は実況しなくていいよ!』
~東二局~ 親:松実玄
臨海 169600
白糸台 119400
清澄 63000
阿知賀 53000
(完全に臨海と白糸台に差を付けられてるじぇ。このままやられる訳にはいかないじょ。)
~5巡目~
「リーチだじぇ!」
(清澄が先制した。それに比べてまだ臨海は何も仕掛けてない・・・いや、この捨て牌、そして役満が出る二局、これはまさか・・・!)
(清澄は浅はかだな。失点が8000から9000になるだけだというのにそんな無駄なリーチをするなんて・・・)
「ツモ。国士無双。8000・16000。」
(うわぁ、やっぱり国士無双張ってたのか・・・本当に強いなこの人。でも、これはちょっとチャンスかもしれないね。)
(そんな、5巡目で国士無双なんて、あり得ないじょ・・・)
(これが、全国最強レベル・・・)
~東三局~ 親:四季縁
臨海 202600
白糸台 111400
清澄 54000
阿知賀 37000
『あっ・・・』
『ん?どしたん?なんかあった?』
『いや、松実選手に少し変化があったので・・・』
『変化?特に何も感じられませんでしたけど?』
『いや、えっと、この局で松実選手が何かを起こしそうな気がします。』
『おぉ?これは小鍛冶プロの未来予知能力が発動したのか~!?』
『そんな事出来ないよ!』
『この予想が外れたらプロを辞めるそうです!』
『そんな事一言も言ってないよ!それに辞めないよ!』
『今日はツッコミが冴え渡ってますね~。』
『私解説だよね!?』
『さて、試合に戻りましょう!』
『えぇぇ!?』
~4巡目~
「カンです。」
(え、阿知賀・・・しかも、ドラカン!?しかもカンドラも同じ牌だじぇ!?)
(眠っていたドラゴンを起こしてしまったか・・・?)
(逆鱗に触れちゃったのかな?)
「リーチです!」
(こういうのって、ノリに乗ってるとどんな強い相手も凌駕したりするからね、この局は諦めた方が良いかもね。)
(これ、ヤバいじぇ・・・)
(来た・・・)
「ツモです!リーチ一発ツモドラ10。8000・16000です!」
(うわ、裏捲らなくてもドラ10で役満とかヤバすぎでしょ・・・)
(こういう輩は風船に似ている。空気が入ると爆発力があるが、それが無くなってしまえばただの弱々しい残骸になる。だからこの局での役満は阻止しないという選択は案外吉だったのかもしれないな。爆発力を引き摺られる方が厳しいからな。)
『まさか役満を和了るとは思いもよりませんでした!』
『そうですね。私もびっくりです。』
『やっぱり小鍛冶プロは予想が当たってドヤ顔を浮かべています!』
『そんな事無いってば!』
~東四局~ 親:西園寺麻衣
臨海 186600
白糸台 103400
阿知賀 69000
清澄 46000
(この局はきっと和了れるはずだじぇ!最下位になったからここで和了るじょ!)
~2巡目~
「リーチだじぇ!」
(2巡目とか速いね~。ツモ和了りして欲しいな。ここで清澄がツモ和了りをしてくれたら私が1位になる事が確定するから。)
(白糸台に連荘されずに清澄が和了ってくれるのは助かるな。ここで清澄が和了れば先鋒戦はこちらが勝つだろうな。)
「ツモ。リーチ一発ツモ純チャン三色で4000・8000だじぇ!」
((よし、これで勝てる!))
『さぁ、東場が終わりました。』
『ここからが西園寺選手の力の見せ所ですね。期待です。』
~南一局~ 親:片岡優希
臨海 182600
白糸台 95400
阿知賀 65000
清澄 62000
(さて、私の回収カードは4枚ある。まずは臨海の4000の回収から行きますか。)
~5巡目~
「ロン。チャンタ三色。8000。」
(まずは私から攻めてくるか。まぁ、点差を埋めたいだろうから当然か。)
(始まった、西園寺さんの得点回収。私は役満和了って8000点取ったから16000点取られちゃう・・・)
~南二局~ 親:松実玄
臨海 174600
白糸台 103400
阿知賀 65000
清澄 62000
(次はどうしようかな。清澄と阿知賀・・・先に清澄かな。)
~5巡目~
(やっぱり南場になると全然だめだじぇ。)
「ロン。一通清一で16000。」
(もう、最悪だじょ・・・)
『またまた西園寺選手が直撃だぁ!前半戦や先ほどの東場では四季選手に押されていましたが、今は西園寺選手が完全に支配しています!』
『これはもしかしたら臨海を逆転する可能性も見えてきましたね。』
~南三局~ 親:四季縁
臨海 174600
白糸台 119400
阿知賀 65000
清澄 46000
(さて、お次は阿知賀だね。)
(西園寺麻衣、もしかして私が四局だと振り込まないのを知らないのか?ただ和了れない局だと思っているのか?だとしたら此処で阿知賀に直撃をしたらオーラスは私が西園寺麻衣の和了り牌を止めている間に阿知賀か清澄が和了れば勝てる。阿知賀に直撃してくれ!)
~6巡目~
「ロン。タンピン清一。16000。」
(西園寺麻衣が阿知賀に直撃した!?これで私の勝ちはほぼ確実の物になった!しかし西園寺麻衣は致命的なミスをしてしまったな。相手のデータ不足もそうだが、西園寺麻衣の性格が出てしまったな。西園寺麻衣は大きい回収は最後に残す傾向にある。私の事を最後に攻撃して見事逆転勝利という完璧な勝ち方を追い求めるあまり凡ミスをしてしまったな。西園寺麻衣、私の勝ちだよ!)
(ふふふ、本当に勝つのは、四季縁さんじゃなくて私ですよ?)
~南四局~ 親:西園寺麻衣
臨海 174600
白糸台 135400
阿知賀 49000
清澄 46000
(さてと、メインディッシュと行きましょうか!)
(いやはや、西園寺麻衣には残念だな。これまでだからな。まぁ、よく頑張ったとは思うがやはり私達の方が強いという事が証明されてしまったな。)
~4巡目~
「リーチ。」
(流石に聴牌は速いな。まぁ、和了れないがな。)
(マホちゃんが四局の臨海は絶対に振り込まないって言ってたじぇ。それなのに最後に残しておくなんて、間違えたのか?でも、余裕そうな顔してるじぇ。何だか怖いじょ・・・)
~8巡目~
(そろそろ阿知賀か清澄が和了る頃だろうな。残念だな西園寺麻衣。この勝負、私の勝ちだ!)
(やっと来てくれたよ。まったく、遅いよ来るのが。)
「ツモ。リーチツモ混一一通。6000オール。」
(なっ!?ツモ和了だと!?という事は回収はされていないからまた跳満の手が出来るという事か?いや待て、西園寺麻衣はもしかして最初からこれが狙いだったのではないか?私が振り込まないのを知っていてツモ和了りを待っていたのか?ならば、私が振り込まない限りこの連荘は終わらない。そうしたら清澄が飛んで私達が負ける。ならば、私が振り込むしかない。なんだこれは、まるで、ドラマとかでたまに見る、借金取りがお金を貰うまで家を荒らしたりするような物ではないか!西園寺麻衣、異常過ぎる・・・)
(ようやく自分の過ちに気付いたみたいですね。四季縁さん。でももう遅いですよ。)
~南四局一本場~ 親:西園寺麻衣
臨海 168600
白糸台 153400
阿知賀 43000
清澄 40000
(やっと自分が負ける事に気付いたみたいですね。では、一思いにやってしまいましょう!)
(このまま私が塞き止め続けたらまたツモ和了されてしまう。ならば仕方ない。プライドを捨てよう。)
「ロン。純チャン三色一盃口。18300。」
(これで西園寺麻衣の回収は全部無くなった、これで終わりか。)
「最後に逆転されるとは思わなかったよ。お疲れ様だ。」
「何を寝ぼけた事言っているんですか?まだ連荘は終わらせませんよ?」
「・・・えっ?」
「当然じゃないですか。清澄も臨海も弱体化しているのに連荘を終わらせちゃうなんて勿体なさすぎるじゃないですか。さぁ、続きを始めましょう?」
(こいつ、本当に清澄を飛ばすまで続けるつもりだ・・・)
~南四局二本場~ 親:西園寺麻衣
白糸台 171700
臨海 150300
阿知賀 43000
清澄 40000
(オーラスで1位なのに連荘するこの感じ、去年の宮永さんみたいだよ・・・)
(このままだと、まずいじょ・・・)
~7巡目~
「リーチ。」
(西園寺さんがリーチした!)
(うぅ、ダメだじょ!全然聴牌出来ないじぇ!)
(この状態の私じゃ、何もする事が出来ない・・・)
「ツモ。リーチツモ清一。8200オール!」
(これが、西園寺麻衣・・・強すぎる。少しでも勝てると思ってしまった自分が恥ずかしいくらい完敗だな。しかし、まだ何か私に出来る事は無いのか!?)
~南四局三本場~ 親:西園寺麻衣
白糸台 196300
臨海 142100
阿知賀 34800
清澄 31800
(ん、なんだこの感じ・・・そういえばさっきも似たような感覚があったような・・・そうだ、阿知賀!阿知賀がまたドラゴンを起こしたのかもしれない!ならばこちらも協力しよう。)
(これはちょっとばっかし厳しいかもね。まぁ、そこそこ稼げたし、無理に和了らなくてもいいか。絶対に振り込まないモードになろうっと。)
~8巡目~
(阿知賀に聴牌気配、さて、私は勿論出さないし臨海も出さないだろうから、出すとしたら清澄かな?まぁ、清澄が出したら点数危ないけど。)
(ここで一番優勝出来る可能性を広げられる打ち回しは、これしか無いだろう。)
「あっ!それ、ロンです!タンヤオドラ7、16900です!」
(え、臨海が振り込んだ!?まさかこの人、後の方々に託したのか?だとしたら、清澄が振り込む前に自分が振り込めばまだ勝てるかもとか思ったのかな。しかし、中堅まで回してしまったら夢乃マホが待っているというのが分かっているのか?この人は。)
「まさか、最後に貴女が振り込むとは思わなかったです。」
「私も、二回も四局で振り込むとは思わなかったよ。でも、一回捨てたプライドは、案外簡単に捨てられるらしい。」
「成る程、貴女は、私には及びませんがやっぱり強いですね。」
「そうだな。」
「じゃあ改めまして、お疲れ様です。」
「あぁ、お疲れ様だ。」
~先鋒後半戦結果~
白糸台 196300
臨海 125200
阿知賀 51700
清澄 31800