のろりそろりと更新していきたいと思います。
よろしくお願いします。
『次、次は---駅です……出口は左側です……』
目が覚めた。
どうやら、疲れ果てて眠っていたようだ。
眠る前のことが全く思い出せない。
私は頭を振り、窓の外を見た。
「…あれ?」
電車の窓から流れる景色は、私には全く見覚えの無いものだった。
近くに建ち聳える高層ビル。
それは何故か、摩天楼を想起させた。
……はて、乗り過ごしたのだろうか?
手元の時計を見てみる。
時計は、午後十時半を指していた。
私が電車に乗ったのは十五分前の筈、私の家の最寄駅までは最低でも三十分はかかる。
乗る路線でも間違えたのか、時計が壊れているのか……。
今思えば駅の名前も聞き覚えがない。現在地を聞いてみようと思い、辺りを見回してみる。
そこである違和感に気付いた、周りに人が全くいないのだ。
やはり時計が壊れていて、とんでもない田舎に迷いこんだのか?
それならあの高層ビル群は何だというのだ。
ここに来て、私の頭を言い様の無い不安が埋め尽くす。
人間、知らないところに独りと言うのは中々心細いものがある。
「取り敢えず次で降りるしか……ないか」
降り損ねたか別の路線に乗ったのなら一回降りて引き返せば良い。
まだまだ終電の時間には早いであろう。
私はどっかりと椅子に座り、本を読み始めた。
◇◇◇
おかしい。
何かがおかしい。
そう思ったのは十分を過ぎた頃である。
そんなに駅と駅の距離が開いているのか……?
本を閉じ、窓の外へと視線を移す。先程の高層ビル群が遠ざかっている。
しかし、その間にもぐんぐん電車は進んでいく。一体全体、何処に向かっているというのだ?
周りには民家すら見当たらない。無論、灯りなどもない。
そして、電車はトンネルへと突入した。
まもなく駅に着くという旨のアナウンスが流れる。
やれやれ、この調子では向こうから出る電車があるかも分からないな……。
がらがら、がたん。
「ん……?」
連結部のドアが唐突に開き、女性が入ってきた。
なんだ、私の他にも人がいたのか。
今度は安堵が私の心を埋め尽くした。
女性は此方を一瞥。一瞥という表現が正しいかは分からないが、こう言った。
「あら、貴方……迷い込んでしまったのね」
迷い込んだ?こんな田舎に、ということか?
「あ、はい……そう見たいです。乗る電車を間違えた様で」
「ふふっ……」
くすくす、くすくす。
女性は笑いを漏らした。
何がおかしい。私が電車を乗り違えたことがそんなに滑稽だったのか?
私が女性を睨んでいると、
「あら、ごめんなさい。ここに来る人、みんな口を揃えてそう言うのよ。」
「どういう……ことですか?」
「大事なことを忘れているの。可哀想な人の魂ね」
「貴方、さっきから何を言って……」
「良いわ、思い出させてあげる。貴方がさっき、何をしてしまったのか……」
女性はそう言って、私の額に指をとん、と当てた。
電車はトンネルを抜けた。
そこは、もう現世で無い事を。
私は取り返しのつかないことをしてしまっていた事を。
全て思い出していた。
「地獄へ、ようこそ。魂さん」
さて!彼の前でくすくす笑っている女性は何者なんでしょうか。
そして、この列車は一体何なのでしょう。
次回、『堕、墜』
地獄へ、ようこそ。