クリスマス狂想曲   作:神納 一哉

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過去にしたらばに投下したものを加筆・修正しています。


3 12月22日 期待

――――――――――

 

ふたたび、携帯電話が振動する。

 

(まさか、アイツじゃないわよね)ドキドキ

 

少しだけ期待して見た着信画面には、年下の友人の名前が表示されていた。

 

「もしもし。初春さん」

 

『御坂さん?いきなり質問してすみません。カミジョーさんって、彼氏ですか?』

 

周りが騒がしい場所からにもかかわらず、なぜか小さな声でぼそぼそと話す初春。だが、それは問題ではなかった。

 

「な、な、なんで初春さんがアイツの名前を!?」カァッ

 

『えっとですね、学校帰りにお友達とハンバーガーを食べていこうってことになったんですけど、後ろの席で高校生の二人組が御坂さんの名前を言っているのを聞いてしまいまして』

 

「へ、へえ~…」

 

『アオピさんとカミジョーさんて人が好きな女性について話し始めてですね、…御坂さん、カミジョーさんて方に寮の前で抱きついたりしたんですか?』

 

「あ、あ、あれは、仕方なかったのよ!理事長の馬鹿ボンがしつこかったから!!」カァッ

 

『あー、抱きついちゃったんですねー。すごいなあ』

 

「あ、あのね、初春さん…」アセアセ

 

『ええと、話し始めたみたいだからどうぞー。音声最大にしますね』ピピピ

 

「あ、ちょっと…」

 

おそらく通話音量を最大に設定したのだろう。周りの喧騒に紛れて、聞き覚えのある声が聞こえてきて、美琴は口を噤んで耳を澄ました。

 

『だからなんでそうなるんですか!!』

 

『女の子への熱い想いを語り合いたいんや!あ、別にちびっこシスターへの想いでもええで?』

 

(ちびっこシスターって、インデックスのことよね?)

 

『黙秘権を行使する!』

 

『他に好きな子がいるんか?まさか姫神ちゃんじゃないやろうな?』

 

『姫神は…いい友達ってことだ』

 

(…)ホッ

 

『ホンマ?』

 

『うん。まあ美人だと思うけどな』

 

『やっぱ、超電磁砲がええの?』

 

(!!)ドキドキ

 

『御坂は…、アイツといると楽なんだよな…。なんていうか色々…』

 

(え?それって、どういうこと?)ドキドキ

 

『それ、本人に言ってやれば喜ぶんちゃう?』

 

『言えるか!恥ずかしい』

 

(え?え?)ドキドキ

 

『女は好きな男には甘えて欲しいって思うもんやで?』

 

『だ、だいたいだな、御坂が俺なんかのこと…』゙ニョゴニョ

 

(もしかして、アイツ照れてる!?わたしのこと想像して)ニヘラー

 

『傍から見ればあの子、完全にカミやんにホの字やったけどな~』

 

(うぇっ!?そんな風に見えてたの?わたし!?)カァッ

 

『テメエの言うことには騙されない、騙されないぞ!』

 

『ま、カミやんは明日、あの子のことよう見てみるんやな』

 

(アイツの友達もいいこと言うじゃない!)ニヘラー

 

『なあ、カミやん』

 

『なんだよ』

 

『やっぱ、オーソドックスに『好き』って言うんがええ?』

 

『またストレートだな』

 

『カミやんもそう言うのがええんちゃう?』

 

『し、知るか!』

 

『ちょっとカミやん、姫神ちゃん役やってや』

 

『は?』

 

『ボク、今から練習するから』

 

(れ、練習?)

 

『ちょ、ちょっと待て!』

 

『いくで…。やっほー。姫神ちゃん。いつも綺麗やな』

 

『う…。青ピ君。なに。急に』

 

(って、真似するんかい!何気に声高いし!!…姫神って人は知らないけど、そんな話し方なの!?)

 

『いつもそう思ってるんやで。姫神ちゃん綺麗やさかい』

 

『変な青ピ君』

 

『姫神ちゃん。ボク、姫神ちゃんのこと、好きや!』

 

『え。冗談。…だよね?』

 

『マジやで。姫神ちゃん。好きや!』

 

『うわ、ちょっと待てテメエ!いきなり肩を抱くな!!目を瞑るな!唇を突き出すな!!てかそんなことしたら間違いなくボディーブロー喰らうぞ馬鹿野郎!!』

 

『いやよいやよも好きのうちって言うやないか!』

 

『馬鹿かテメエ!』

 

『くっ。カミやんもやってみればわかる!…なによ!こんなところに呼び出して!!』ズバーン

 

『な、なに言ってやがる?いきなり!?』

 

『あなたが呼び出したんじゃない!私、こう見えても第三位だし、忙しいんだけど?』ツーン

 

(へ!?)

 

『なっ!?もしかして御坂の真似か!?』

 

『まさか、なにも考えてないなんてことはないでしょうね?』(多分、高飛車お嬢様っぽかったからこんな感じだろう)

 

『…ちょっと待てテメエ。知りもしないのに勝手に御坂を作るんじゃねえ!!』

 

(え?もしかしてアイツ、怒ってくれている?)ドキドキ

 

『ツンデレお嬢様なんてポイント高いで?』

 

『アイツはそういうのじゃねえんだよ!』

 

『ほー。じゃあどういうのなんや?』

 

『アイツは…なんていうか、甘えるのが下手な奴なんだよ。でも、そこが可愛いって言うかなんて言うか…』ゴニョゴニョ

 

「!!」(か、可愛い!?可愛いって言った?)カァッ

 

『わぁ。御坂さんのこと可愛いって言ってますね』ボソッ

 

「うにゃぁっ!?」ビクッ(そうだった、初春さんの携帯だったんだっけ…)

 

『なんかさらっと惚気てるん?』

 

『そ、そ、そ、そんなことないぞ!』

 

『…カミやん、まさか、特定の女の子のこと『可愛い』とか言っておいて、惚気てへんなんて言わへんよな?』

 

『う…』

 

『よし、ボクも姫神ちゃんの可愛さについて語るで!』

 

『さっきみたいに妄想はするんじゃねえぞ!』

 

『好きな子で妄想するのはむしろ健全なんやで』

 

『場所を考えろって言ってるんだ』

 

ぎゃあぎゃあと言い争いを始めた高校生を背に、初春は小さく微笑みながら囁くように言った。

 

『うふふ。よかったですね。御坂さん』

 

「な、な、な、なにが!?」カァッ

 

『可愛いって』

 

「うにゃあっ!?」///

 

『うふふ。明日のデート、楽しみですね』

 

「デ、デ、デ、デ、デート!?」

 

『はい。セブンスミストでお買い物らしいですよ。カミジョーさん』(御坂さんになにかを買ってあげる予定なのは内緒にしておこうっと)

 

「そ、そうなの?」

 

『はい。あ、じゃあ切りますね。また今度お話しましょう』

 

「あ、うん。また、ね」(セブンスミスト…。特売じゃない…。これって、これってやっぱり初春さんも言ってた…デ、デ、デ、デ、デートってやつかしら!?)ドキドキ

 

携帯を枕元に置き、代わりに側にあった人形を抱き締めてブンブンと頭を振る。

 

(きゃーきゃーきゃー!!)カァァァッ

 

ガチャッ

 

「ただいまですの。お姉さ…ま?」ドサッ

 

ベッドの上でカエルの人形を抱き、ヘッドバンキングをしているルームメイトを見て、黒子は手に持っていた鞄を足元に落とした。

 

「まさかこれは…精神系能力者の仕業!?」ハッ

 

「可愛いって…言ったよね?ね?うふ、うふふふふふ…」ブンブン

 

(…え?可愛い。…ま、まさか…)ワナワナ

 

「脈ありってことよね?ね?どうしようゲコ太?ねえ?どうしたらいい??うふ、うふふふふ…」ブンブン

 

(脈アリって…)ワナワナ

 

「ふぇっ!?黒子!!アンタいつ帰ってきたの!?」ビクッ

 

「た、たった今ですの。ただいまですの。お姉様」

 

「お帰り♪黒子♪いつもご苦労様」ニコニコ

 

「ご機嫌ですわね。お姉様」

 

「あはは。ちょろっとね~」ニコニコ

 

「何か素敵な事がありましたの?」

 

「まあね~」ニコニコ

 

「可愛いものでも見つけられましたの?」(落ち着くのですわ。黒子)

 

「可愛い!?うふ、うふふふふふ」ニヤニヤ

 

「お、お姉様…」

 

「可愛いって…うふふふ。わたしのこと可愛いって…」ニヤニヤ

 

「お、お姉様!?お気を確かに!?」

 

「ふにゃ~」///パタン

 

「お、お、お姉様ぁぁぁぁぁっ!?」

 

――――――――――

 

「~♪」

 

「とうま。なにかいいことでもあった?」

 

「ん?別にないけど?」

 

「鼻歌を歌ってるなんて珍しいんだよ」

 

「うぇ!?俺、歌ってたか?」

 

「うん。歌ってたよ」

 

(俺、もしかして御坂と買い物に行くのを楽しみにしてる?)「…うまい具合に出来たからかも」

 

「いい匂いなんだよっ!チキンライスなんだよ!?」ワクワク

 

「慌てるなインデックス。このチキンライスにふわふわの卵焼きを載せると…」

 

「!!」ワクワク

 

「そう、ボリュームも増えて、なおかつ美味いオムライスになるんだ!」

 

「す、すごいんだよ!とうま!!」キラキラ

 

「もう少しで出来るから、スフィンクスにご飯あげといてくれるか?」

 

「わかったんだよ!」パタパタ

 

(…御坂が?いやいやまさか…)

 

卵をボウルでかき混ぜながら、少年は茶色の髪の少女のことを思い起こす。

 

学園都市第三位の超能力者、超電磁砲の異名を持つ名門女子校に通う中学生の少女。

 

(御坂とはなんだかんだいって縁があるな。勉強も教えてくれるし、たまに食事なんかも作ってくれるし、インデックスのことも何かと面倒見てくれるし、学園都市の外にも一緒に行くようになったし…)

 

『ただし、今度はひとりじゃない』

 

(…って、手を掴まれたときは驚いたよなあ。なんか迫力あったけど)

 

『一応お揃いなんだから、あっさりなくしたりしないでよね』

 

少女の言葉が頭の中を過ぎる。

 

(…あれって、そういう風に解釈していいのだろうか?)ウーム

 

あれから、何かあるとストラップの有無を確かめられるようになった。

 

携帯を取り出して見せるときに、少女が嬉しそうな笑顔を見るのを密かな楽しみにしていたりもする。

 

(俺、もしかして御坂のこと…)

 

コンロの火を点けると、何かを振り払うように頭を軽く振ってからフライパンに油をひく。

 

(ええい!考えるの止め!とりあえず今は夕飯の支度だ!うん)

 

無理矢理に思考を断ち切り、上条当麻はぐっと菜箸を握り締めた。

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