艦娘に転生……って、俺男だぞ!?   作:スライストマト

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5話 決戦!鎮守府正面海域

突然のラッパの音に目を開けると、窓から日差しが差し込んでいた。

○六○○。起床時刻だ。

 

「もう朝かー」

遠くからカモメの鳴く声が聞こえる。窓を覗くと、まだ低い太陽が海を蒼く輝かせていた。

 

「やっぱり、戻らなかったか……」

感覚のリアルさだけじゃない。

深い眠りから覚めた爽快感が、今いる世界こそが現実であることを保証していた。

 

「まあいいけど」

これからも仲間が増えていく。

俺が居なくても艦隊がうまく戦えるようになるその日まで、力を尽くそう。

決意を新たに、朝食の待つ食堂へと向かった。

 

 

 

食事が済むと、花音が今日の予定を話し出した。

「今日はこのあと○八○○までに一回目の出撃をし、報告。新たな艦を建造し、建造時間中も繰り返し出撃します」

結構ハードそうだな。

 

「一戦で撤退して、疲労を回復させた後再度出撃という形を取ります」

休憩あるならまあ大丈夫かな?

 

「新たな艦娘が生まれ次第艦隊に編入させ、○七○○まで連戦し、その後夕食を取り解散します。昼食はどこかの休憩のタイミングでとりましょう」

てことは十一時間もやるのか!?

昨日は二回しか出撃しなかったのに。

一気に増えたな……

「以上です。二人とも準備お願いね」

「はいっ!」

「おう!」

飛鷹とともに返事を返し、食堂を後にした。

 

 

艤装を着けて海洋に出ると、また花音をおぶって旗艦ベルトで固定する。

そういえば花音はこれ、恥ずかしくないのかな?

俺もしてはご褒美だけども。

後で帰ったら聞いてみるか。

 

「準備できたら行くわよ」

「俺は問題ない」

「いつでも大丈夫よ」

「じゃあ出発!」

旗艦ベルトが光り、体が自然に前進する。

飛鷹は俺の動きをみてついてきているようだ。

 

 

やがて光が止まり、海域への入り口へと到着した。

花音は震えながらも飛鷹に指示を出す。

「飛鷹、戦闘準備!」

「はいっ!偵察機、直掩機、発艦初め!」

 

飛鷹が巻物を広げ、二種類の飛行機を青空へと飛ばす。

 

頭上を舞う戦闘機の群れが羽音を唸らせ、幾重にもかけられたリボンのように飛行機雲を作り出す。

 

「準備できたわ!」

「いくぞ」

「ええ」

「はいっ!」

一歩前へと踏み出すと、海流に巻き込まれて戦闘海域へと運ばれた。

 

戦闘はまたも一瞬で決着した。

やはり空母は強い。敵の攻撃範囲外から一方的に攻撃できるのだから。

俺の、駆逐艦の出る幕はなかった。

 

すると突然、飛鷹が声をあげる

「提督!敵駆逐艦が完全に沈んでいきません!」

たしかに、前方の煙の柱は近づいてきている。

 

「おい!あれどういうことだよ!?」

振り返り、花音へと問う。

 

すると、先程まで震えていたのとはうってかわって、元気に溢れた返事が返ってくる。

「あれはきっと、ドロップね!」

 

「ドロップ?」

「深海棲艦が艦娘へと生まれ変わる現象よ!迎えに行きたいわ!近づいて!」

「わかった!」

仲間が増えるのか!どんな奴かな?

 

 

体の大部分を沈めたまま流されてくる深海棲艦に近づくと、海中の深海棲艦が形を変え始めた。

「これが……」

ドロップという現象なのか……!

 

みるみると形が変わっていく。

髪は薄いピンク色、体は今の俺と同じほどの大きさになると、深い紺に赤いリボンのセーラー服に身を包む。

 

手や足の先まで人の形になった所で目の前へと浮上して直立し、口を開いた。

 

「こんにちは、白露型駆逐艦「夕立」よ。よろしくね!」

 

背後の花音が声をかける。

「初めまして、夕立。よろしくね」

 

夕立は可愛くお辞儀をすると艦隊に向き直り口を開く。

「みんな夕立と仲良くしてくれたら嬉しいっぽい!」

ええ子やー。仲良くするぞ。

「よろしくな」

「よろしくね!」

「ぽい!」

「では帰投します。吹雪、六時の方向へ」

「はいよ」

俺は進路を反転すると、そのまま母港へと帰投した。

 

 

鎮守府前の埠頭へと到着すると、花音が背中から降りて指示を出す。

「次の出撃は○八三○です。夕立は吹雪と相部屋にします。案内してあげてね。出撃の五分前にはここに集合してください」

「おう!」

「はいっ!」

「ぽい!」

「それでは解散します。吹雪は夕立を案内したら工厰で合流しましょ」

「わかった」

今日は二人も仲間が増えるのか!

「それじゃあ夕立、ついてきて」

「ぽいっ!」

 

 

部屋へ向かいつつ、隣を歩く夕立に鎮守府の説明をする。

「夕立は三隻目、海域はまだ突破していない。施設なんかはあとで案内するね」

「わかったっぽい!」

これでわかるのか。

「じゃあここが俺達の部屋だから」

すると後ろを歩く飛鷹が夕立に向かって口を開く。

「隣が私の部屋よ。いつでも遊びに来てね!」

「ぽいっ!」

「じゃあ俺は工厰いくから。またな」

「はいっ!」

「ぽいっ!」

 

 

花音は工厰前に立っていた。

「工厰には秘書艦と一緒に入らないといけない決まりなの」

「そうか。待たせて悪かったな」

「ううん、大丈夫。いま来たとこだから」

なんかデートみたいだな。

あ、俺は女の子だったか。

 

前に突っ立てるのも難だし促すか。

「じゃあ入ろうぜ」

「……うん」

緊張からか小さく返事をした花音と共に、工厰へと入る。

 

 

「今日は戦艦を狙うわ!」

聞いたことあるぞ!

「戦艦!ヤマトとか?」

「うーん、大和は出来ないんじゃないかしら……」

「そういうもんか」

「長門とか陸奥とか、あとは金剛型が心強いわね」

「へぇー」

一つも知らん。

「狙うってことは、他が出るかもしれないのか?」

「そう。今回は重巡、軽巡あたりが出るかしら?」

「ほぉ」

よく分からんな。

「じゃあいくわよ!」

 

花音はアーケードゲームのような機械を操作して帰ってくる。

昨日と同じように資材が滝のように降り注ぎ、最後に棒のようなものが落ちていく。

たしか開発資材だったな。

 

蓋がしまると花音が機械へと歩み寄る。

「建造時間は何時間かしらね!?」

「戦艦だといいな」

「うん!……総建造時間一時間半、残り一時間二十九分」

「それは?」

「利根型か最上型の……重巡ね……」

花音はがっくりとうなだれもう一度画面を覗き込むと、再び肩を落とす。

「……行きましょう」

「ああ。元気出せって。重巡だって初めてなんだし、強いんじゃないか?」

「たしかに、軽巡や駆逐艦よりは強いけれど、燃費は悪いし……」

残念な艦種なのかな?

 

「また今度狙おうぜ」

「そうね……戻りましょ」

「ああ」

こうして俺達二人は工厰を後にした。

 

 

その後夕立を交え四人で三回ほど出撃をし、正午を迎えた。

 

食堂で昼食を食べ終えると、提督が神妙な面持ちで口を開いた。

「今日はこのあと、工厰で新しい仲間を加え、鎮守府正面海域のボスへ挑戦します!」

「おう!」

ついにボス戦か!

 

「ボスに行けるかは運次第だけど、ボスは軽巡洋艦、しかも取り巻きの駆逐艦が複数いるわ」

軽巡と駆逐艦の力の差はわからないが、最低でも三倍以上の戦力なのだろう。

 

「新たに加わる重巡を合わせれば、決して勝てない相手じゃない。でも、手を抜いていい相手でもないの。みんな、絶対に油断しないで」

「おう!」

「はいっ!」

「ぽい!」

 

「それじゃあ工厰に移動します。着いてきて」

花音を先頭に、食堂を後にした。

 

工厰につくと、花音がドッグへとかけより、機械を操作する。

「重巡!出てきなさい!」

失望を全く感じさせない元気な声でそう言うと、ドッグの蓋が開く。

 

中には、やや緑がかった灰色の髪が美しい、高校生くらいの艦娘が立っていた。

焦げ茶色のブレザーや茶色のニーソックスがとてもよく似合っている。そして口を開いた。

「鈴谷だよ! 賑やかな艦隊だね! よろしくね!」

 

 

「こんにちは鈴谷!あなたに会えるなんて嬉しいわ!」

あれ?なんかめちゃくちゃはしゃいでるな。

「チーッス!よろしくね!」

「あっちは秘書艦の吹雪。それから飛鷹と夕立であなたは四人目よ」

「みんなもよろしく~」

 

ニコニコと笑って手を振る姿はとても軽いが、可愛らしい。

「これから第一海域のボス攻略に向かうわ!着いてきて」

「はーい」

新たな仲間を加え、俺達は再び出撃した。

 

「偵察機!直掩機!発艦始め!」

「鈴谷の偵察機も行くよー!」

全員の戦闘準備が整った所で前進し、海流に乗った。

 

海流が収まると、駆逐艦が出現する。

しかし、いつも通り飛鷹の攻撃機と爆撃機が一瞬で撃破してしまった。

鈴谷は不満そうな顔で口を開く。

「つまんない~。私も活躍して提督に誉められたい~」

「次がんばりましょ」

花音はやや硬い声でそう言うと、前進を指示した。

しかし背中から伝わってくる震えはひときわ激しくなる。

周囲にばれないよう、囁く。

「大丈夫だよ。安心して」

そう、俺達には強い仲間がいる。

飛鷹、夕立、鈴谷。

鈴谷は敵の軽巡より強いはず。ならば俺達に負ける理由はなかった。

 

一歩前へと出ると、視界が目まぐるしく回る。

「なんじゃこらーーー!」

 

花音が後ろから説明する。

「分岐になると、秘書艦が渦潮に回されるのよ」

「なんで俺だけーーー!」

叫び声が青い空へと響きわたる。

 

 

回転が止まると、海流によって前進し始めた。

左斜め後ろに見える仲間達も、同じように動いていく。

「花音。どうなんだ?」

「これは……ボスルートね」

ついにボス戦か……緊張してきた。

「やったわねっ!」

飛鷹は元気そうだ。

「でもちょっと怖いっぽい……」

俺もそうっぽい。

「鈴谷がいるからには安心じゃん?」

頼んだぞ鈴谷!

 

やがて前進が止まる。

周囲を警戒するが、敵影はない。

五人に緊張が走る。

 

「敵艦発見しました!敵軽巡一、駆逐三です!」

飛鷹が敵を発見した。

 

「第一次攻撃隊!発艦始め!」

攻撃機と爆撃機が直掩の戦闘機と共に敵へと向かっていく。

 

そして水柱が上がるが、煙は上がらない。

 

「攻撃、失敗しました!」

なに!?

 

背中から花音の声が聞こえる。

「最初の駆逐艦よりは回避力が高いのよ。頑張って!」

聞いてねーぞ!?

 

敵の艦隊が視認できる所まで近づいてきた。

いままで見たことがある鯨のような敵が二種類、計三体と、パイナップルに顔が書かれたような独特な形状をした敵が一体。

後者が軽巡だろうか?

草のように飛び出ているものは主砲のようだ。

正直気持ち悪い。

 

鈴谷が敵の軽巡を指差す。

「キンモーーー!」

同感だ。

 

鈴谷が放ったやや大ぶりな砲弾が軽巡に向かって飛んでいく。

しかし、敵の軽巡に命中することはなかった。駆逐艦が身を呈して守ったのだ。

 

「なんだいまの!?」

「敵も旗艦を庇って来るのよ。一隻は倒せたわ!頑張って!」

 

「おう!」

ここで当てなきゃ男じゃない!

思いをのせた砲弾が敵の駆逐艦を粉砕する。

 

さらに夕立が残る駆逐艦へと主砲を向ける。

「残ったハ級を倒すっぽい!」

しかし砲弾はわずかに横にそれる。

そして敵の軽巡洋艦の主砲と雷撃が飛鷹を捉える。

「ああっ!消化ポンプが故障して……」

飛鷹の艤装からは煙が上がっている。これではもう戦えない。

まずい……

 

「主砲の装填まで回避だ!」

 

俺の指示に全員で回避運動をするが、鈴谷は敵の駆逐艦に密着され、主砲と魚雷を浴びる。

 

「ああん!痛いっ!」

やや刺激的な声をあげる鈴谷を見ると、敵の軽巡が背後へと回り込み主砲を構えている。

 

「鈴谷っ!避けろっ!」

 

しかし正面の敵に気をとられていた鈴谷はかわせない。

もろに砲撃を食らい、艤装から煙をあげている。

 

「まずい……形勢が……」

逆転されてしまった……

 

装填が終わった主砲を軽巡へと向けて放つ。

「当たった!」

だが、沈まない。

もう一、二発いれないと……

「夕立も頑張るっぽい!」

夕立の放った砲弾が敵の軽巡へと直撃し、体勢が傾く。あと一押し!

 

しかし敵の軽巡は向きを変え、飛鷹へ狙いを定める。

 

……これ以上の被弾は命に関わる!

「間に合えーっ!」

「ちょっと吹雪!?」

 

驚く花音を無視し飛鷹と敵軽巡の間に入り込むと、敵の雷撃が足元で爆発し、砲弾がぶつかる。

「痛ってぇ!」

駆逐の時とは比べ物にならない痛みだ。

視界が霞む。

「やられたっぽいーー!」

見ると敵の駆逐艦の攻撃が夕立を捉えたのか、夕立の体勢が崩れている。

 

夕立も限界のようだ。

俺一人になってしまった……が、

「やられてたまるかーーっ!」

花音の誰も沈ませないという言葉。

共に戦う皆。

 

俺は、絶対に、

「守ってみせる!」

主砲を構えトリガーを引くと、ちょうど装填が終わった主砲から砲弾が発射され、敵の軽巡洋艦を沈ませる。

そして敵の駆逐艦へと向き直り、魚雷発射装置のボタンを押す。

「当たれーー!」

六つの雷跡が敵の駆逐艦へと伸びていき、大きな水柱をあげる。

 

入れ違いに敵が砲弾を射出する。

しかし砲弾は右頬を掠め、わずかに後ろの水面へと着弾する。

そしてついに、敵の最後の一隻が轟沈する。

 

気付くと拳を空へ突き立て、雄叫びをあげていた。

「やったぞーーーっ!」

俺の声に皆が万歳をする。

 

皆、大きく損傷していた。

だが、全員生き残った。

何かが一つ違えば、全員海の底に沈んでいたかもしれない。でも。

「良かった」

小さく呟き振り返ると花音の顔がそこにあった。

 

花音は笑顔で頷くと口を開く。

「本当に良かったわ」

抱き合いたい気分だったが、ベルトをしているのでできなかった。

早く帰ろう。

 

「帰りは?」

「十時の方向に直進よ」

「わかった」

 

 

俺を先頭に、一同は海域を後にした。

 

 

 

 




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